ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD LAST CHAPTER PARTU 歌集
前スレッド No.143
- 51 マーシュ 2007/03/16 Fri 20:20:43 DXjf..D3Q.5iAv
- ACE COMBAT 5 INVISIBLE THE GOD LAST CHAPTER PARTU ADHOC CARMINA
エースコンバット 5 インヴィシブル・ザ・ゴッド 最終章・第2部 それだけの為の歌集
作者まえがき。
知恵を絞って何とかきれいにまとめたいと思っておりますが、なかなか思うようにいかないものです(汗
なお、これはエースコンバット5のサイドストーリー小説ですが、どちらかというと新シリーズを1本分創れそうなぐらいの物を目指しています(それでもまだかなり遠いですが)(笑)
また、感想や意見、指摘はそれぞれのスレッドにどうぞ。
Contents 目次
―――――Chapter 1 Phantom Menace 第1章 見えざる脅威
#00 『その時、僕は空中にいた』 Red Alert
#01 『新たな部隊』 The Guardian Eagles Part1
#02 『なりゆき』 The Guardian Eagles Part2
#03 『開戦』 “Open The War” Part1
#04 『ソーズマン』 “Open The War” Part2
#05 『狭間の第1派』 “Naval Blockade” Part1
#06 『ケストレルを守れ』 “Naval Blockade” Part2
#07 『やばいもん見ちまった』 I shouldn't have looked
#08 『海上封鎖線』 “Naval Blockade” Part3
#09 『ヘヴィーなサーフボードだぜぃ』 Kestrel’s Alive
#10 『ミラのシャーベット』 Mira’s Sherbet
―――――Chapter 2 A Blue Dove for the princess 第2章 姫君の青いはと
#11 『姫君の青い鳩』 A Blue Dove for the princess
#12 『タービンの回転が上がらねぇ!』 These turbines won't start up!
#13 『ウォードッグ・リーダー』 Wardog Leader
#14 『初陣』 “First Flight”
#15 『アーチャー』 Archer
#16 『日没の空』 Skies of Sunset
#17 『サンド島からの手紙』 Letters From Sand Island
#18 『待ち合わせはイーグリン海峡で』 “Rendezvous”
#19 『第3艦隊集結』 “Rendezvous” Part2
#20 『艦隊の死』 “Ballistic Missile”
―――――Chapter 3 The Demon of the Razgriz 第3章 伝説の悪魔
#21 『雪の降る空』 Snow Skies
#22 『旅立ち』 Odyssey
#23 『サンド島防衛戦』 “Front Line”
#24 『伝説の悪魔』 Demon of Legend
#25 『Aサット照準』 A-sat Targeting System
#26 『ラーズグリーズの悪魔』 The Demon of the Razgriz
#27 『シンファクシ』 “Scinfaxi”
#28 『ミラのカキ氷』 Mira’s Frappe
#29 『悪夢?』 The Doom?
―――――Chapter 4 Road to Yuktobania 第4章 ユークトバニアへの進軍
#30 『食卓の鬼神』 The Cock of Round Table
#31 『15年前』 “15 Years Ago”
#32 『ザ・ベルカン・ウォー』 THE BELKAN WAR
#33 『円卓の騎士』 The Knight of the Round Table
#34 『ベルカのお肉』 The Belkan Beef
#35 『憎しみの連鎖』 “Chain Reaction”
#36 『コインの表側』 Face of the Coin
#37 『進軍』 Road to Yuktobania
#38 『あおいはと』 A Blue Dove for the princess Part2
#39 『紅の海』 Crimson Sea
#40 『戦闘開始』 Engage
―――――Chapter 5 A Fateful Encounter 第5章 運命の再会
#41 『戦闘機乗りの名誉にかけて、一歩も引き下がるな!』 Knight of the Skies
#42 『今こそイージス(盾)の使命を果たす』 Aegis
#43 『女将アンダーセン』 Admiral Mao Andersen
#44 『ゴールゥビ・ガルボーイ』 Blue Dove
#45 『運命的な再会』 A Fateful Encounter
#46 『ユークトバニアの精鋭』 The Republic Commando Part1
#47 『オーシア海軍の剣士』 Swordsman
#48 『リパブリック・コマンド』 The Republic Commando Part2
#49 『この大空にオーシアの翼をはためかせん』 The Wing of the Osean
#50 『決別への引き金』 The Trigger
―――――Chapter 6 The Blue Skies of Promise 第6章 約束の青空
#51 『解放。そして、告別』 Call of the Freedom
#52 『お帰りヘンダーソン君』 Mr. Henderson Welcome Back
#53 『丸刈り頭の兵士たち』 jarhead
#54 『グリム兄弟』 brother’s Grimm
#55 『約束の青空』 The Blue Skies of Promise
#56 『あの空の向こうへ』 He’s Wings
#57 『ブルースカイ・オブ・プロミス』 The Blue Skies of Promise Part 2
#58 『約束』 Promise
#59 『ラーズグリーズの帰還』 Retune of the Razgriz
#60 『ゼロ・アワー』 Zero Hour
- 52 マーシュ 2007/03/20 Tue 22:42:37 DXjf..D3Q.5iAv
- Contents Part2 目次の続き
―――――Chapter 7 Skies of Gladiator 第7章 虚空の剣闘士
#61 『砂漠の矢』 “Desert Arrow”
#62 『砂漠の電撃』 “Desert Lightning”
#63 『師団司令部なんてくそらくえだ』 Fool of the division HQ
#64 『プライベート・イアン』 Saving Private Ian
#65 『ヘルヴォルの守護神』 Guardian of the Hervor
#66 『ヴァチャーズィ』 Yuktobanian Knights
#67 『スカイ・オブ・グラディエーター』 Skies of Gladiator
#68 『戦う理由』 Why We Fight
#69 『エース対エース』 ACE COMBAT
―――――Chapter 8 Osean Assault 第8章 オーレッド強襲
#70 『運命の闘い』 The Duel of the Fates
#71 『堕ちる』 Fall of the Wings
#72 『戦争を支える王者』 The Lord of the War
#73 『JOURNEY HOME』 ”Journey Home”
#74 『8492飛行隊』 “8492”
#75 『ラーズグリーズ・ダウン』 Razgriz Down
#76 『迫り来る混沌のオーラ』 Chaos Aura Coming
#77 『オーシアン・アサルト』 Osean Assault
#78 『オーレッド強襲』 Attack on the Oured
―――――Chapter 9 Deus Ex Machina 第9章 機械仕掛けの神
#79 『西部戦線異常あり』 The West Front
#80 『オーレッドの戦い』 Battle of Oured Part1
#81 『深い感銘を与える』 Battle of Oured Part2
#82 『巨大の名を持つ戦艦』 Battleships Incoming
#83 『神のめざめ』 Awakening of the God
#84 『死にたくなかったら道を開けな』 Cross Fire
#85 『金色の馬』 Golden Horse
#86 『私を怒らせたら、どうなるか分かっているんだろうね?』 Heretic Commander
#87 『機械仕掛けの神』 Deus Ex Machina
―――――Chapter 10 Resurrection of the Razgriz 第10章 ラーズグリーズの復活
#88 『デウス・エクス・マキーナ』 Deus Ex Machina PartU
#89 『業 −カルマー』 Karma
#90 『ふたたび。 リザレクション・オブ・ザ・ラーズグリーズ』 Repetition:Resurrection of the Razgriz
#91 『ミラのクリスマスケーキ』 Mira’s Christmas Cake
#92 『ヘルヴォル飛行隊』 The Hervor Squadron
#93 『シーニグラード解放作戦』 The Last Operations
#94 『丘でのにらみ合いが終わる』 End of Standoff
#95 『最後の始まり』 Final Engage
#96 『アスガルドの丘』 Asgard Hill
#97 『バタリオン・リーダー』 The Battalion Reader
―――――The Last Chapter ”INVISIBLE THE GOD” 最終章 目に見えない神
#98 『再来、ユークトバニア共和国の特殊部隊』 Advent:The Republic Command
#99 『アドラー』 Adler ―Wing of the Grander I・G―
#100 『ジャッジメント : インヴィジブル・ザ・ゴッド』 JUDGMENT:THE INVISIBLE THE GOD
#101 『壁なき世界』 A World With No Walls
#102 『ラグナロクの始まり』 Introduction of Ragnarok
#103 『再臨:目に見えない神』 Advent:The Invisible the God
#104 『昇華:目に見えない神』 Sublimation:The Invisible the God
#105 『混迷の世界』 World of Chaos
#106 『混迷の終わり そして、最後の旅立ち』 End of Chaos And Final Odyssey
#107 『神の子羊』 Agnus Dei
#108 『覚醒:目に見えぬ神』 Awakening:Invisible the God
#109 『最後の決戦』 Armageddon
#110 『約束の空間』 Promised Place
- 53 マーシュ 2007/03/20 Tue 22:45:33 DXjf..D3Q.5iAv
- ―――――――――――第106話 『混迷の終わり そして、最後の旅立ち』
End of Chaos And Final Odyssey
―――――Location:Yuktobania Cinigrad Dec 30,2010
ユークトバニア・シーニグラード2010年12月30日
「ブラック・ナイト各車へ、状況は把握したな? これよりユーク軍部隊と共同でデウス・エクス・マキーナに攻撃を開始する。 だが、どうすればいい!?我々の攻撃ではまったく歯が立たないぞ!」
先の戦闘で両軍とも大きな損害を被っている。合流してようやくそれなりの軍団になったが、シールドと分厚い弾幕と装甲の前に苦戦している。包囲したのはいいが、護衛の通常部隊が邪魔で仕方がない。また、バクーニンは司令部に連絡を取り、サンダーヘッドにDEMの設計図を転送するように依頼していた。
「こちらサンダーヘッド。各部隊聞け。デウス・エクス・マキーナの解析が完了した。これは旧ベルカ軍が開発していた最終決戦兵器 “スキーズブラズニル” を引き継いだもので、あらゆる妨害を突破して敵国首都を蹂躙することを目的として作られている。これを止めるには、4箇所あるキャタピラに1箇所ずつ集中攻撃を加えていくしかない。 まずは右前方のキャタピラを破壊する。全部隊、攻撃せよ!」
キャタピラへの集中攻撃はキャタピラの破壊が目的ではない。攻撃を受けるとキャタピラ破壊を防ぐためエネルギーシールドを展開するわけだが、キャタピラは人間で言えば足であり、DEMの車体全体を支える重要な部分。そこを防護するには大量のエネルギーを使用するらしく、そこに攻撃を加えることでシールド・ジェネレーターを一時的にオーバーヒートさせることができるらしいのだ。
「こちらエーデルワイス・スリー。 シールドに防がれているぞ! キャタピラにダメージ無し!」
「<どういうことだ! キャタピラが弱点じゃなかったのか!?>」
キャタピラ部分のシールドは確かに他部分より貧弱ではあるが、キャタピラ自体が特殊合金で造られ、その上防護シールドとなるとかなりの耐久度を誇る。それ以前にシールド技術そのものが高度なため、戦車砲程度ではシールドを破れない。
「<地上部隊へ。こちらバクーニンだ。この程度ではシールドを破れない。合図で一斉に攻撃するぞ>」
こうなると全部隊で一斉に同時攻撃するしかない。オーシア、ユーク軍の全戦車、装甲車、自走砲、ロケット砲全てで右舷キャタピラを狙う。
「<合図で撃つんだ。 ――今だ、撃て!>」
最初に戦線後方のロケット砲部隊がロケットを放ち、それが着弾する時を狙って各車両が大砲をDEMの右舷キャタピラに撃ち込む。同時に1ヶ所に集められた攻撃はDEMのシールド・ジェネレーターに大きな負担を与え、オーバーヒートさせシールドをダウンさせる。
「AWACSから各部隊へ。シールドが消えている間にシールド発生装置を攻撃せよ!」
- 54 マーシュ 2007/03/25 Sun 17:54:12 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第107話 『神の子羊』 Agnus Dei
両軍の集中攻撃を受け、デウス・エクス・マキーナのシールド・ジェネレーターはオーバーヒート。シールドがダウンし、シールド発生機であるジェネレーター自身も無防備になる。シールド発生装置はランドセルのようにDEMの背中にあり、地上からでは破壊が困難である。そこでシールドが消えている間に航空機部隊がそこに攻撃を集中する。
「お……ん? ランドセルっぽい部分の上っ側が開いているぞ? 何か出てくるな。 新品の教科書か!?」
「気をつけろノア、敵戦闘機が出てくるぞ!」
「<ワイバーン… 神の子羊か! スコット、気をつけろ。あれは無人タイプのワイバーンだ。有人機では出来ないような動きをしてくるぞ>」
バクーニンらユーク軍にとどまらず、スコットたちオーシア側もワイバーンの性能は熟知していた。だが、前回戦ったワイバーンは有人でまともに機種転換テストを受けていなかったパイロットが乗っていた為、本来の性能を発揮していなかった。今回のワイバーンはそれよりもっと厄介だろう。
「イーグル1より各機へ! ベンとノアが攻撃する!他はカバーを!」
「グラディウス了解だ! イーグル3、目標への攻撃を継続する」
「俺らかよ! まぁいいか。隊長、援護を頼む!」
ベンとノアのヴァイパー・ゼロが加速してDEMに再接近する。すると、突然ワイバーンがこちらの編隊に割り込み、アキラの機体を一瞬でスクラップに仕立て上げた。
「くそ! やられた! 皆後を頼む!」
何とか脱出には成功したアキラ。正直金魚すくいを紙網ではなく金属のおたまですくったような感じだった。無人ワイバーンの戦闘プログラムは思ったよりも完成されているらしい。
「<シールドは消えた!これよりキャタピラの破壊に移る。各車続け!>」
「ここからではシールド発生装置を狙えない! 航空機部隊、そちらは任せる!」
DEMのキャノンやミサイルの攻撃を受けつつも、両軍の地上部隊は引き続き右舷キャタピラに攻撃を集中する。特殊合金で出来ているとはいえ、シールド無しでは全ての攻撃を無力化することは出来ない。
「こちらナイト・リーダー。主砲以外にもレーザー砲があるぞ。気をつけろ! 各車両、地形を盾にしつつ反撃せよ!」
激しい戦闘によりシーニグラード郊外の地形は荒れ果て、歩兵のみならず車両が隠れることが出来るぐらいにおうとつが出来ている。だが、DEMの火力であれば地形を気にせず相手を攻撃することも出来る。 DEMは破壊神なのか。それとも新たな世界の創造神なのか。陣営や見方によって変わるだろう。
「キャタピラの結合部分を狙え! 一斉射撃だ!」
- 55 マーシュ 2007/03/25 Sun 17:55:14 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第108話 『覚醒:目に見えぬ神』 Awakening:Invisible the God
「こちらエーデルワイス6! ターゲットの右舷キャタピラを破壊!」
「いいぞ!次は左舷前部キャタピラを狙え! DEMの機動を奪う!」
シールドが回復したら再び1ヶ所に攻撃を集中してジェネレーターをオーバーヒートさせる。シールドがダウンしたらキャタピラの攻撃し、シールドが回復したらまだ繰り返す。航空機部隊がシールド・ジェネレーターを破壊するまではこれの繰り返しだ。
「合図で撃て。 ……今だ、撃て!」
時間がたつにつれて両軍の連携は見事なものになってゆく。この連携を前にDEMの防護メカニズムはタマネギの皮のように剥がされ、丸裸になるのは時間の問題だろう。それでもタマネギを切った際、目を刺激されるようにDEMも痛烈な反撃を返してくる。
「あのミサイル対空砲が厄介だ! 俺が行く!」
アレックスのヴァイパー・ゼロがDEMの方へ機首をむけ、ベンやノア友軍航空機を狙うミサイル砲塔の攻撃に向かう。だが、そんな彼の背後に無人ワイバーンが迫る。それを援護すべくアンナとステラがミサイルを放ったが、ワイバーンはミサイルの直撃を受けてもなおアレックスを追撃し、彼向けてミサイルを発射してから爆発した。
「イーグル5が撃墜された! くそ、DEMはまだ破壊できないのか!?」と、リチャード。
そのとき、地上部隊の一団から緊急入電が入る。ワイバーン数機が友軍の地上部隊を護衛していた戦闘機部隊を全滅させ、友軍地上部隊を攻撃しているのだ。航空援護を失った友軍は敵ワイバーンにとっては絶好のカモでしかなく、放置しておけば全滅させられるだろう。
「<スコット。あちらは俺に任せろ。 お前はハウエルを阻止しろ。俺もすぐに戻る>」
バクーニンと彼の寮機が方向を変えて友軍の支援に赴く。スコットたちは引き続き地上の主力部隊と連携してDEMへの攻撃を続ける。
「ノア、次でシールド・ジェネレーターを潰すぞ! 3度目の正直だ!」
「オーケイ、ベン! 次で決めるぞ!」
対空砲火を潜り抜け、ベンとノアが遂にDEMのシールド発生装置を破壊する。同時に左舷のキャタピラも破壊され、シールドを復元できなくなったDEMは一気に弱体化。形成は大きく傾いたかに見えた。 DEMは前面両方のキャタピラを失い、ほとんど動けない状態の上にシールドも失っている。あとはこちらの陣営が包囲攻撃すれば勝利は確実だと思われたが、主砲レーヴァテインが発射体制に入っていることに気がつく。
「イーグル1から各機!主砲の発射を阻止する!火力を主砲に集中!」
絶大な破壊力を誇るレーヴァテイン。もちろんその主砲の発射を見逃すわけにはいかない。スコットたちは連続で主砲レーヴァテインにミサイルや爆弾を叩き込みそれを粉砕。発射体制に入っていたレーヴァテインは青白い光を放ち爆発した。
「――デウス・エクス・マキーナとレーヴァテインは大破。これでシーニグラードはもう安全でしょうね」
ステラはそういうが、まだ何かあるような気がする。これで終わりであればそれに越したことはないが、やはりまだ何かが起こりそうだ。やはりこれは予感ではなく確信である。 主砲と機動力は無に等しいが、武装の半数は機能しており、まだ次の手を隠し持っている可能性が高い。
- 56 マーシュ 2007/03/29 Thu 00:27:20 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第109話 『最後の決戦』 Armageddon
「おわっ! 脱皮しやがった! 今度はどうなるんだ!?成虫か!?」
「ノア、昆虫じゃないんだぞ! だが、いやな予感がするぜ ……いや、予感というか、確信だ。 隊長もそう感じるだろ?」
行動不能に陥ったデウス・エクス・マキーナは、ノアが言うように幼虫が成虫になるため脱皮しようとするように外部装甲を剥がしてゆく。そして、最終的にDEMは自爆し、そこから幽体離脱するかのように黒い影が浮き上がる。黒いオーラに包まれた物体は徐々に高度を上げ、やがて傘を開くのかのように大きく広がる。
「俺たちは夢でも見ているのか? なぜあんなものが存在するんだ!」
「こちらナイト・リーダー。全員落ち着け。 世の中にはレーザーを放つ巨大建造物もあれば、隕石を降らせる要塞まである。今回もその一例に過ぎん。必ず撃破出来るはずだ」
ブラックホールを連想させる黒いオーラに包まれる物体の正体は判らない。だが、ハウエルと関係するのは確かだろう。 デウス・エクス・マキーナ第2形体はその黒いオーラの中から、多数のどす黒いレーザー弾を放出して猛反撃を再開してきた。 スコットやバクーニンらもそれに対しミサイルで反撃するが、ほとんど効果がない。
「まるで映画のクライマックスだな…どうする隊長?ミサイルのダメージが無さそうだ」
「これじゃぁ命がいくつあっても足りなぜ 何か手はないのか?」
ベンの言うようにどれだけこちら側が攻撃を加えても、DEMには損害もなければ穴も開いていない。スープの中にスプーンを入れてかき混ぜているようなものだ。 そのとき、DEM第2形体が大規模なレーザーを放ち、友軍地上部隊にたった一撃で大損害を与える。戦闘車両はアルミ缶のように押しつぶされ、大地も粉のように吹き飛ばされた。
「<ザバーカ、ミドヴェーチ各隊との交信途絶!>」
「<ここは絵本の世界じゃないんだぞ! いったいどうなっている!?>」
圧倒的な火力に再び混乱する友軍。そんな中スコットはなんとか自分の部隊を保とうとしていた。
「みんな、諦めちゃ駄目だ! イーグル1から各機、攻撃を続行!」
とにかくミサイルを撃ち込むが、これでは無駄撃ちに過ぎない。周囲の友軍の被害も増える一方で、このままでは全滅してしまうだろう。だが、スコットは今戦い続けるしか選択肢がなかった。
「なぁ、ベン。 今思ったんだが、あれだよな。 “押して駄目なら引いてみろ” 」
「ノア、何が言いたい?」
「つまり、外からの攻撃が駄目なら内部から攻撃するんだよ。 よく映画でやっているだろ!地球に激突する小惑星をどう食い止めるかって考えるとき、誰もが普通に外部からの攻撃で対処しようと思うが、結局手段は内部から爆破するしかないって」
「私も何となくそれがいいと思う。内部から攻撃できないかしら?」
「<確かに、内部からがいいかもしれない。 あの黒いオーラは空間のゆがみで、異次元へ通じているらしい。あの中に突入すればおそらく奴のいる “エレクトロスフィア” にたどり着くだろう。証拠はないが、このままだと手も足も出ないというのは確かだ>」
ノア、ベン、ステラに続き、バクーニンまでもが言い加わる。 本当にあのオーラの中へ飛び込んで大丈夫なのだろうか?だが、DEMをこのまま放置しておくのも危険に変わりはない。レーヴァテインは破壊したものの、あの不気味なレーザーは驚異的だ。
- 57 マーシュ 2007/03/29 Thu 00:28:06 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第110話 『約束の空間』 Promised Place
疑問や不安を抱えつつもデウス・エクス・マキーナ内部に突入した一同。スコット、ステラ、ベン、ノア、アンナ、リチャードとバクーニンを含めるターミネーター4機。計10機は暗闇を進むうちに開けた空間へと出る。そして、彼らの行く手に待ち受けるのは意味不明な形のオブジェだ。
「(―――何故人類は時代や世界が変わっても争いを止められないのか。 人類は目に見えずとも確かに存在する壁によって区分けられ、それが争いの原因となっている。人種、出身、宗教、性別、外観。 全ての人類はサブリメーションを経て壁のない平等な存在となる。それこそが争いのなき新たな世界への第1歩だ)」
その奇妙なオブジェから響くハウエルの声。あのオブジェやハウエルの正体など細かいことは殆ど判らないが、あのオブジェは間違いなくハウエルと関連しているだろう。 すると、オブジェの手前に光の粒子が集まり何かの形を作り出し始める。
「<あれは……リノヴァティオ・マーヴか? 実体化しているのか!?>」
「マーヴって、多弾頭独立目標なんとかミサイルのことだったか?」
「複数個別誘導再突入ミサイルのことだ、ノア」
スコットはMIRV(マーヴ)という言葉をまったく知らなくはなかった。核ミサイルの1種で、その1発で複数の場所を攻撃できる核兵器だ。よって、それがオーシアやユークのような大都市に大損害を与えるのは間違いないだろう。だが、リノヴァティオとは一体何なのだろうか。
「<リノヴァティオ・システムは次世代の攻撃プログラムだ。全世界同時攻撃を想定した国境なき世界のV3マーヴを……だが、紙上の空論だった代物が何故… いや、とにかくあれを破壊するぞ!全機俺に続け!>」
各自ミサイルで謎のオブジェを攻撃する。次々とミサイルは命中してオブジェは爆炎の嵐に包まれるが、何か手ごたえが妙だ。気がつくとカーテンが開けられるように黒い幕が薄れ、徐々にアスガルド丘の風景が復活してくる。どうやら元の場所に戻ってきたようだ。先ほどの黒いオーラは外部からの妨害を妨げるための代物だったらしいが、スコットらが侵入したため、結局意味が無かったのだろう。
「こちらサンダーヘッド。目標物からのカウントダウンと思える信号を受信した。リノヴァティオ発射まであと5分。 各部隊、デウス・エクス・マキーナを完全に破壊し、ミサイルの発射を阻止せよ!」
謎のオブジェは十字架のような形に変形し、その十字架に貼り付けられるかのようにリノヴァティオがある。
「ナイト・リーダーから各車! 攻撃を再開しろ!目標を完全に破壊するんだ!」
「ナイト7からナイト・リーダーへ。ミサイルは……撃ってもいいのか?」
DEMは宙に浮かび、シーニグラードからはある程度距離がある。ここで爆発させても直接的に被害が出ることはたぶん無いだろう。この状態であれば、直接ミサイルを狙って攻撃すれば簡単に決着が付くのではないか?だが、そう思ってこちらが攻撃を加えようとした時、リノヴァティオを包み込むかのようにオブジェの一部が変形。結果直接ミサイルへの攻撃は不可能となってしまう。
「まるで空飛ぶミサイル・サイロだな」と、リチャード。
- 58 マーシュ 2007/03/29 Thu 00:29:31 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第111話 『エイセス』 ACES
夕日は沈み、空は徐々に黒く染まる。そんな中オーシア、ユークの両軍は第4勢力である壁なき世界の軍勢を撃破。両軍の生き残りはDEMと交戦を続けるスコットらの援護射撃を開始する。これまでの戦闘で両軍ともかなりの戦力を消耗しているため、DEM単体の火力を超越するとは言いがたい。
「パスタみてーなビーム撃ってきやがるな。 気をつけろみんな!」
「ノア、うまそうだからってレーザーに突っ込むなよ!」
DEM第3形体は目標を追尾するレーザーを放ってくる。正直そんなレーザーを何処から放出しているか分からない。ただ表面から蒸気のように発生してそれがレーザーとなって襲い掛かってくる。
「(―――かつて、恐竜と呼ばれる生物が地球上から退場したように、人類という種族もこの星から退場せねばならない。だが、我々は新たな世界で存続する。サブリメーションによる最後の旅立ちを行使しなければ、人類は保管されぬまま絶滅してしまうだろう。エレクトロスフィアはそのために用意された箱舟だ)」
各部隊の攻撃を受け、オブジェには徐々にひびが入り砕け始めている。散っていく破片はダイヤモンドのごとく輝きを放っていた。まるでおとぎ話に出てくる天使が空を舞うかのように。また、その物体に再接近する赤と青の翼も。
「僕は精神だけの人類にはなりたくない。目で見て、手で触って五感で感じる。 時にはそういった違いによる差別を前に逃げ出したくなるときもある。―――でも、人間はそういう苦難を乗り越えて初めて和解して成長することができるだ。 旅立ちとか差別をなくすといっているけど、新しい世界へ逃げただけでは何も変わらない」
「<スコットの言うとおりだハウエル。お前のやっていることは無駄だ。 ただ人類の精神を保管しても壁は取り除けない。俺たち人間は互いに受け入れることで……>」
「(貴様らのような若造に何が判る?この世の中、そんな綺麗事で解決できれば常に平和だ。人は万能ではない。全ての問題を解決し、あらゆるものと融和するのはほぼ不可能だ。今こうしなければやがて人類は自ら絶滅への切符を押し付けることになる。15年前のベルカ戦争ではやたら無闇に核爆弾を乱用し、多くの犠牲者を出したにもかかわらずその5年後、ユージア大陸ではロケットを乱用してこの惑星全域を危機に陥れた。次の段階になれば人類そのものが消滅する。だから私はそうなる前に人類を保管して絶滅を回避する!)」
すると、リノヴァティオを搭載したミサイルが点火。徐々に上昇してDEMを離れ始める。また、DEMは役目を終えたかのように起動を停止し、ガラスのように砕け散った。スコットらは上昇するミサイルを追撃しようとするが、わずかに生き残った無人ワイバーンが進路をさえぎる。
「<っ! 邪魔をするな!>」
バクーニンはアドラーの散弾ミサイルでワイバーンをまとめて吹き飛ばした。続けてスコットが最大推力でミサイルに接近。射程に入ると残ったミサイルを全てリノヴァティオ・マーヴに向けて発射した。 ミサイルは難なく命中し、マーヴは太陽のような爆発とともに消滅した。
「……終わった……のか?」
残るものは何も無い。
- 59 マーシュ 2007/03/31 Sat 01:09:31 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第112話 『暁のシーニグラードの空、二つの翼は冬の嵐と共に戦に終幕を下す』 “Winter Storm”
―――――Location:Yuktobania Cinigrad Dec 31,2010 ユークトバニア・シーニグラード上空2010年12月31日
「ヘンダーソン大尉、離陸は許可されていない。直ちにタキシングを中止せよ。繰り返す。こちらシーニグラード管制塔。貴機の離陸許可は出ていない。直ちに……」
翌朝、スコットはただ一人で離陸。ステラやベン、ノアをはじめヘルヴォルのメンバーには内緒で。ハウエルは撃破され、マーヴも破壊したので戦争はこれで終わるはずであるが、スコットにはまだやり残したことがある。
マーシャル大佐を殺めたかつての友人。バクーニンとの決着だ。
「<来たか、スコット……>」
無線越しに聞こえるバクーニンの声にはなにやら“安易”を感じられた。まるで「ようやく楽になれる」と言わんばかりに。
「バクーニン、本当にこれでいいのか? 確かに僕たちは互いに傷付け合い元には戻れないところまで来ているかもしれない。でも、だからってここで戦う意味があるのか?」
もしスコットがバクーニンをここで倒せば、おそらく彼の敵を討とうとするものが現れるだろう。また、スコットが死んでもステラやベン、ノアが同じように報復をしないとも限らない。ここでどちらが勝利しても必ず後で付けを払うことになるだろう。しかし、バクーニン本人の口から予想外の事実を聞かされる。
「<俺はだな、まだ重要な事実を隠している。 俺は6年前お前の前から消えた後、ある恩人に従事して “灰色の男たち” の秘密メンバーになった。そして今もその組織の最終計画を担っている>」
ミサイルが届かず、レーダーに映る距離でヘッドオン状態の二人。スコットのヴァイパー・ゼロ・カスタムとバクーニンのアドラーの距離は徐々に縮まるが、重大な話題を前にした二人にとって、その間の時間は決して長くは無かった。
「<このアドラーにはSOLGという人工衛星の管制システムが組み込まれている。今そのSOLGがどこにあるか分かるか?>」
人工衛星であれば恐らく軌道上。宇宙空間だろう。だが、それだけでないのは確かだ。
「<SOLGは15年前に作られた攻撃用軍事衛星だ。すでにベルカの核が搭載され、あと5分もすれば大気圏に突入する。そのままオーシアの首都、オーレッドにSOLGは体当たりして壊滅に追い込む予定だ>」
「バクーニン!何故まだそんなことを! もう戦争は終わったんだ!やめてくれ!」
戦いは終わったのに、何故彼は戦いを続けるのだろうか。スコットには理解し難かった。また、核弾頭を搭載した巨大人工衛星が大都市のど真ん中に落ちれば、壊滅的打撃は免れないだろう。
「<男として、一度決めたことは最後までやり遂げる。おれは死んでいった仲間たちのためにも、自分に与えられた使命を最後まで遂行する! それが出来なければ生きている理由はない!>」
彼の過去に何があったかはよくわからない。だが、スコットからすればただの強がりか意地っ張りにしか聞こえない。
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