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ACE COMBAT 5 INVISIBLE THE GOD LAST CHAPTER

前スレッド No.142
42 マーシュ 2007/03/08 Thu 22:00:15 DXjf..D3Q.5iAv
ACE COMBAT 5 INVISIBLE THE GOD LAST CHAPTER ”INVISIBLE THE GOD”
エースコンバット 5 インヴィシブル・ザ・ゴッド 最終章  目に見えない神様

まえがき。

やはり、10スレッドを突破。毎回ながらかなりのボリュームですが、そろそろ完結いたしますので、もうしばらくお付き合いください(笑


――――――――――主な登場人物・組織   Main Character and Group

 オーシア国防空軍第24飛行大隊 “ガーディアン・オブ・ヘルヴォル”
 Osean Air Defense Force 24th Battalion “Guardians’ of the Hervor”

 オーシア軍は「ラーズグリーズの悪魔」の損失により低下してしまった兵士たちの士気復元と敵への畏怖を目的とした「ヘルヴォル飛行隊」を設立。オーシア軍司令部は傍受した敵の無線から、このヘルヴォルが敵に与える影響はかなりのものだと判断。ガーディアン・イーグルスの各中隊の生き残りを母体とし、F-2ヴァイパー・ゼロ・カスタム(スーパー改)とF-15イーグル・プラス(MTD)16機で編成される飛行大隊へと強化。 なお、ガーディアン・イーグルスの中で最も生存率の高かったイーグル中隊が基礎となっているため、コールサインは「イーグル」が使用されている。


 スコット・ヘンダーソン  Scot Henderson   TAC Name:“Mustang”
 本作の主人公。 数々の経験をつみ、ガーディアン・イーグルスの隊長となる。学生時代に仲がよかったなぞの多い友人「バクーニン」との予期せぬ再会。そして宿命に悩まされるが、それらを解決する唯一の手段はこの戦争の終結だと確信し、全力で戦い続ける。

 ステラ・バーネット  Stella Burnet   TAC Name:“Firefly”
 父親を探すために軍に入隊。だが、父親とも呼べるマーシャル大佐が戦死し、予期せぬ旧友と再会して苦悩するスコットを支え続ける心優しく面倒見のよい少女。スコットと彼女の関係は恋人未満友人以上。

 ベン・ウォーカー  Ben Worker  TAC Name:“Gladius”
 イーグリン海峡で散弾ミサイルにより撃墜されるが、生還。 空中戦においては機関砲と爆弾による対地攻撃を得意とするが、その反面空中戦におけるドッグファイトはあまり得意ではない。

 ノア・クルーズ  Noah Cruise  TAC Name:“Albion”
 出身はベルカ国境の町ルーメン。相棒のベンとは地上でも空中でもよいコンビを見せる。時折お笑いやコント(?)もやる。彼がボケでベンが突っ込みというのがホームポジション。操縦技術にではベンと対照的にミサイルと機関砲によるドッグファイトを得意とする。反面、対地・対艦攻撃は若干苦手。二人で短所を補い合うベストマッチなコンビ。

 アレックス・ウォルコット Alex Walcott  TAC Name:“Caelum”
 ハイエルラーク基地所属の訓練生。シーニグラード解放作戦直前に訓練をすべて完了。イーグル5としてスコットの指揮下に加わる。出身はオーシア。階級は少尉。TACネームはCaelum(カエルム)

 アキラ・オオバヤシ Akira Oubayashi  TAC Name:“Nova”
 ステラ同様 “バーネット孤児院” 出身。 彼は他の訓練生と共にサンド島防衛部隊に配属されるはずだったが、前日の雪合戦で捻挫。転属を見送られる。これにより彼は教科未終のままシンファクシと対峙することを免れ、運よく生き残る。後にイーグル6としてスコットの指揮下に加わる。ステラいわく、彼の出身は「ケイと同じ」である。階級は少尉。TACネームはNova(ノヴァ)

 アンナ・デ・ローサ Anna De Rosa  TAC Name:“Aeon”
 ラティオ共和国出身の少女。平凡な毎日に飽き飽きし、スリルと興奮を求めて軍に入隊。曲芸飛行のようなスタントを好むため、マーシャル大佐には怒られることが多かった。 後にサンド島防衛部隊として転属。シンファクシの攻撃を受けるが奇跡的に生還。その後サンド島部隊失踪につき、再びハイエルラークへ帰還。イーグル7としてスコットの指揮下に加わる。 階級は少尉。TACネームはAeon(イーオン)

 キム・ジンソク  Kim Jin Sock  TAC Name:“Prius”
 元エクストリーム・ハリケーン中隊の隊長。階級は中尉。ジラーチ砂漠での任務中「リパブリック・コマンド」と遭遇。スコット達と共闘するが、寮機をすべて損失。後にイーグル8としてスコットの指揮下に合流。TACネームはPrius(プリウス)

 リチャード・オルグレン Richard Algren  TAC Name:Resona
 元ガーディアン・イーグルス、スワン中隊の副長。彼自身優秀なパイロットなのだが、指揮の経験がまったく無く、ヘルヴォル第2分隊の分隊長に任命されても上手く指揮できず、最終的にはスコットに全体の指揮を任せる。階級は中尉。TAC ネームはResona(リソナ)
43 マーシュ 2007/03/08 Thu 22:04:05 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第98話 『再来、ユークトバニア共和国の特殊部隊』  Advent:The Republic Command

 「リパブリック・コマンドとか言ったか? 奴等がマーシャル大佐を……! ノア、行くぞ! 大佐の仇を討つ!」
 「勿論だぜベン! ……っと!待った! 敵の中に1機未確認機がいるぞ!」

 敵部隊のカラーリングは前回と同じ青だが、ターミネーターの編隊に1機だけ違う航空機が混ざっているようだ。 こちらは16機で相手は20機。戦力面ではこちらがやや不利だが、戦いの勝利を決定するのは戦闘機の性能でも数でもない。それらを動かすパイロットの実力と力量、チームでの連携だ。

 「<……大佐、ここは俺らに任せてくれ!ネイガウス隊長の仇は俺が討ってみせる!>」
 「<分かった。だが油断するな。やつらはそこらのオーシア軍とは比べ物にならない>」

 リパブリック・コマンドの青いターミネーター部隊がXLAAによる先制攻撃を仕掛けてくるが、これはスコット達にとって予想できたことだ。ヘルヴォル各機は散開して敵のミサイルをやり過ごすと、第2分隊のイーグルがXMAAで反撃。多数のミサイルが交差したが、どちらにも損失はない。

 「こちらファイアフライ。みんな、リパブリック・コマンドはとても強いのよ。少しでも油断したらそれが死に繋がる。攻撃に夢中になって後ろを取られないように注意して!」

 両者とも陣形を解除して格闘戦に突入する。今までであればターミネーターに格闘戦を挑むのは自殺行為に等しかったが、ヴァイパー・ゼロ・カスタムであれば十分に渡り合えるはずだ。第2分隊のイーグル・プラスも機動性には優れる機体なので、ターミネーターに遅れはとらない。

 「イーグル9、目標を捕捉した! 攻撃に移る!」

 オルグレンのイーグル・プラスがミサイルを敵ターミネーター向けて発射する。対する相手は急旋回で回避し、オルグレンもその後を追う。ターミネーターはオルグレンをオーバーシュートさせるため、コブラ・クルビット軌道を実行。オルグレンを追い抜かせるが、彼の後方で援護していたイーグル・プラスが敵機に機関砲で銃撃を加える。

 「よし、俺が止めを刺す! イーグル5、フォックス2!」

 被弾した敵機にアレックスのミサイルが命中。敵機は火だるまになってアスガルドの丘にある防御陣地に堕ちていった。 単独では勝てない。こちらは1機の敵機に対して数機で攻撃する。

 「くっそー! イーグル13、被弾した! 脱出する!」

 寮機が敵機に撃墜されてしまったが、幸いパイロットは無事脱出した。その敵機の背後にスライディングのごとくすべりこむノアのヴァイパー・ゼロ。

 「これはマーシャル大佐の分だ! 食らえ!」

 ベンがヘッドオンで真正面から敵ターミネーターにミサイルを叩き込んだ後、さらに側面から迫る敵機にミサイルを発射。木っ端微塵にした。

 「今のはイアンとミラの分だ!」

 敵部隊は練度の低いパイロットを組み込んでいるのだろうか? 予想したほど手ごわくない。 だが、段は禁物だ。
44 マーシュ 2007/03/10 Sat 22:15:32 DXjf..D3Q.5iAv
 ――――――――――第99話 『アドラー』  Adler  ―Wing of the Grander I・G―

 「くっそー! イーグル13、被弾した! 脱出する!」
 「トレヴァーがターミネーターに撃墜された! トレヴァーが撃ち落されたぞ!」

 寮機が敵機に撃墜されてしまったが、幸いパイロットは無事脱出した。その敵機の背後にスライディングのように滑り込みをするノアのヴァイパー・ゼロ。

 「これはマーシャル大佐の分だ! 食らえ!」

 ベンが後方から敵ターミネーターにミサイルを叩き込んだ後、さらに側面から迫る敵機にミサイルを発射。木っ端微塵にした。

 「今のはイアンとミラの分だ!」

 新人でも部隊に組み込んでいるのだろうか?思ったほど手ごわくない。


 「<お前らだけじゃ手に負えない! 俺が行く!>」

 戦闘空域から少し離れたところで待機していた敵の新型機が向きを変え、戦闘空域に向かってくる。真っ青で見たことのない新型機は異常な威圧感を与えるが、それ以外にも何かを感じ取れる。そして、スコットはそれが何かをすぐに感じ取った。

 「―――バクーニンか!?」
 「<やはりスコット、お前か……>」

 青いターミネーターが反転、旋回して新型機の後方でフォーメーションを組みなおす。バクーニンの駆る戦闘機はこちらの把握していない未確認機。おそらく貧弱な戦闘機ということは無いので、手ごわい相手だろう。

 「バクーニン!聞いてくれ! この戦争は裏でベルカが……」
 「<そんな事は知っている! それならスコット、お前はなぜ戦場に身を置く!?>」

 新型機の下部にあるウェポン・ベイが開き、大型のミサイルが発射位置に固定される。

 「ミサイル! ブレイク!ブレイク!」

 大型のミサイルがヘルヴォル向けて放たれる。ミサイルはスコットら第1分隊の後方にいた第2分隊の周辺で炸裂。空間を飲み込むほどの大爆発を起こした。逃げ遅れた4機のイーグルが爆風により機体を損傷し、次々に脱出した。

 「くそッ! みんなやられちまったか! それに今のは何だ!?潜水艦からの散弾ミサイルと同じだったぞ!」

 ベンの言うとおり今のはシンファクシやリムファクシから発射される散弾ミサイルと同じだ。たった1機の戦闘機がこんな武器を使用するのは少々反則的である。だが、今スコットらは高度2000フィート以上を飛んでいた。それでもこのミサイルは空中で炸裂し、周辺にダメージを与えたということは、潜水艦発射の散弾ミサイルよりも強力なのだろう。

 「<―――オヴニル戦法で行く! 2機で1機を狙え!>」

 そう指示を下した後、バクーニンの新型機はスロットルを最大にして突進してくる。敵のど真ん中に突入するのは賢いとは言い難い。それだけ彼は腕に自身が在るのだろう。

 「バクーニン、君も知っているなら話は早い! 戦闘を中止し、部隊を引き上げてくれ!僕らがこれ以上戦っても何も得はしない! 戦う理由だってないはずだ!」

 「<理由ならある! 俺はお前の隊長を殺し、俺はお前の隊長を殺した。 それに、俺はまだ自分の使命を果たしていない!ここで引き下がればシーニグラードに暮らす人全員が皆殺しにされるからだ!>」

 スコットらはバクーニンの言っていることが理解できない。オーシア軍は敵軍を駆逐し、首都シーニグラードを解放するのが目的で、破壊や虐殺が目的ではない。恐らくバクーニンは軍の上層部にオーシア軍がそのような非道に走るとでも言われたのだろう。

 「バクーニン!僕はこの戦争を止めたい!ただそれだけなんだ!邪魔をしないでくれ!」

 ヘッドオン状態で接近したふたりは激突寸前で交差。反転し、再びヘッドオン状態に。


 「<……これ以上話しても無駄みたいだな、スコット! 言っておくが、この『アドラー』は旧ベルカ兵器産業のグランダーIG社による技術の結晶だ。お前にこれ以上遅れはとらん!>」
45 マーシュ 2007/03/12 Mon 20:28:35 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第100話 『インヴィジブル・ザ・ゴッド』 JUDGMENT:THE INVISIBLE THE GOD
―――――Location:Yuktobania Republic Asgard Hill 2010/12/29
       ユークトバニア共和国、アスガルド丘 2010年12月29日

 スコットたちの「ヘルヴォル」飛行隊と、バクーニンらの「リパブリック・コマンド」の空中戦は外の者を寄せ付けぬ戦いだった。両者とも一部が経験の浅い新人だが、他は経験を積んだ歴戦の勇士。両者のレベルが非常に高く、その空域に侵入したほかの航空機は竜巻に流される木の葉のように叩き落される。

 「<クソっ!ソコロフが撃墜された! イーグル・プラスよりヴァイパー・ゼロの連中に注意しろ! 守護神ヘルヴォルを侮るな!>」

 アスガルド丘上空では両部隊の飛行機雲が渦を描いている。背後を取ったと思えば、別の機体が背後を取り、逃げる機体をさらに援護する機体。上昇して敵を振り切ろうとする者もいれば急降下による加速で逃げる者も。

 「まだついてくる! こちらイーグル9、誰か援護してくれ!2機に追われている!」

 「みんな、こんな時こそ冷静になるんだ!自分を見失ったらそこで終わりだ! イーグル1よりイーグル10、イーグル14、イーグル9を援護してくれ!」

 スコットは敵に追われていない寮機にリチャードの援護を依頼した。スコットはバイオリニストであるが、指揮者の経験もあるため、洞察力や指揮には優れるほうだ。

 「隊長、あの新型機がまたやって来る! 気をつけろ!」と、ベン。

 バクーニンのアドラーがスコットの機体に4発のミサイルを発射。スコットは急いで方向転換し、背後から迫るミサイルをバレル・ロールや急旋回でやりすごそうとする。更に先ほどの散弾ミサイルの追い討ちがあったので、更に距離を置く。

 「―――バクーニン! 君は一体……! この戦争のことを何処まで知っているんだ!」

 彼はあまりにも謎が多い。友人であったスコットにすらフルネームを明かさず、何時の間にかユークトバニア空軍に所属。更にはベルカの陰謀のことも知っている。もしかすると、先ほど言っていた “市民が虐殺される” という言葉もまんざら出鱈目ではないのではないか?


 「<この戦争はベルカの陰謀だと思っているだろ? だが、それはまだ序章に過ぎない。その裏にあるのは……>」

 そのとき、青白いレーザーがバクーニンのアドラーに直撃寸前の距離で通過した。ブレイクして回避行動をとり、姿勢を立て直したバクーニンを含め、一同はすぐさまそのレーザーの発射元に注目した。

 「<バクーニン隊長、あれはもしや……!>」

 「<くそ! 間違いない! “インヴィジブル・ゴッド” だ! こんなに早くきやがったのか!?>」


 レーザーを放ったのはオーシアのハウエル将軍が搭乗する戦車、「デウス・エクス・マキーナ」だ。 だが、インヴィジブル・ゴッドとは何のことだろうか?
46 マーシュ 2007/03/13 Tue 21:53:33 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第101話 『壁なき世界』 A World With No Walls

 「ハウエル将軍閣下はようやくお出ましか? もう塹壕は片付いているっての。 まったく、自分の足は汚さずってやつか。 キングコブラ・リーダーよりキングコブラ各車、DEMの進路上にいると轢かれるぞ。移動しろ」

 アスガルドの丘の頂上を蹂躙し、デウス・エクス・マキーナはユークトバニア首都、シーニグラードとそれに隣接する都市フランブルク目掛けて丘を下り始める。それを食い止めるべくユーク陸軍の機甲部隊がDEMに集中砲火を浴びせるが、DEMはまさに「神」のごとくあらゆる攻撃を受け付けなかった。

 「<全部隊へ!1歩も退くな! 我々の背後にはユークトバニア市民がいるのだ!何としてでも敵戦車を撃破せよ! 撃て!撃てぇ!>」

 「<こちらサバーカ4! 敵戦車にダメージ無し! 繰り返す!目標に損傷無し!>」

 攻撃を続けるユーク戦車部隊だが、DEMもただ黙って攻撃を受け続けるはずがない。DEMは主砲「レーヴァテイン」で眼下の敵戦車を一気になぎ払い、まるで火山噴火が起きたかのような爆発で地形を変化させる。 そのレーザー、レーヴァテインはそのまま照射を続け、斜線上に展開する友軍を巻き込みつつ首都シーニグラードに隣接する都市「フランブルク」を蒸発させ壊滅状態に追い込んだ。


 「<フランブルクが……消えた…>」

 「<何てことだ……フランブルク市が……! 畜生、虐殺好きのオーシアめ!>」

 上空は大きなきのこ雲が出来ている。 今の攻撃はどう見ても誤射や流れ弾ではなく、明らかに攻撃目標ではない市街地を狙っていた。オーシア軍の兵士らは予期せぬ光景を前に、進軍を止めただ呆然としていた。

 「これも何かの作戦か? 市街地を巻き込むなんて聞いていないぞ? ハウエル将軍は何やってんだ? しかも味方にまで……!」

 「作戦の訳が無い…… こちら、オーシア陸軍第5大隊所属のエーデルワイス中隊指揮官。ハウエル将軍、応答願います。これは一体どういうことですか? 今の攻撃は明らかに市街地を狙った規定違反です!」

 続けざまにDEMが車体表面にあるミサイル射出ポッドを開き、前方に展開するユーク軍機甲部隊に攻撃を開始する。もはや一方的だ。

 「こちら、オーシア第24飛行隊ガーディアン・オブ・ヘルヴォルのヘンダーソン大尉です! ハウエル将軍、これはどういうことですか!? 何故友軍と市街地にまで攻撃を!?」

 返答はなく、デウス・エクス・マキーナは古代神話に登場する伝説の破壊神のごとく攻撃を続けた。この姿は “ 大地に死を降り注ぐラーズグリーズの悪魔 ” の姿を連想させられる。


 「<フランブルク司令部、応答せよ!敵戦車の攻撃により被害多数!支持を乞う!>」

 「<駄目だ!フランブルクは壊滅している! シーニグラード司令部に連絡を取れ!>」

 フランブルクを壊滅に追いやったデウス・エクス・マキーナの主砲、レーヴァテインは凄まじい量の蒸気を上げていた。 次の攻撃目標は明らかにユークトバニア首都、シーニグラードだ。
47 マーシュ 2007/03/13 Tue 21:54:16 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第102話 『ラグナロクの始まり』 Introduction of Ragnarok

 デウス・エクス・マキーナに搭載されたレーザー発射砲「レーヴァテイン」により、ユークトバニア首都シーニグラードに隣接する大都市フランブルクが消滅。突然の出来事に混乱する両軍をよそに、デウス・エクス・マキーナはオーシア地上軍を引き連れて撤退し始める。主砲、レーヴァテインはエネルギーの再チャージとメンテナンスなどの為、丸1日以上の時間を要しないと第2射を発射できないのだ。 オーレッド湾では2連射していたものの、そのせいでレーヴァテインは大破し、それ以降今までずっと修理していたらしい。

 また、オーシア軍通常部隊も大きな損害を受けており、一時撤退して体制を立て直す必要があった。それに、1日待てばレーヴァテインの第2射で確実にユーク軍と敵国首都を壊滅に追いやれるのであれば、今無理に突撃するよりも1日待つほうが明らかに利口である。当初の目的であるアスガルド丘は攻略したのだから、一応作戦は成功なのだ。制圧したアスガルド丘の陣地に主力部隊を残し、損害の多い部隊は前線基地まで後退した。


 また、ほぼ同時刻に「セレス海」海上にてユーク軍艦隊とニカノール首相を保護した「オーシア第3艦隊」が遭遇。ニカノール首相が戦闘停止を叫ぶが、「灰色の男たち」の一員、いわば「交戦派」であるユーク艦隊司令官はこれを敵と認めて戦闘が発生。中途乱入したオーシア艦隊を含み乱戦へと発展したが、オーシア第3艦隊とユーク軍ニカノール首相支持派、そして第3艦隊に同行していた「ラーズグリーズ」が勝利を収めたとステラの携帯にナガセから連絡があったそうだ。


 明日、再びデウス・エクス・マキーナはシーニグラードへ侵攻するのだが、オーシア軍の前線基地では信じられない出来事が起こっていた。ユーク軍の機甲部隊が堂々とオーシア軍の基地にやってきて、次々とDEM内部に乗り込んでいくのだ。ハウエル将軍の直属の士官によると、それらは市民のレジスタンスだとか、投降した捕虜とか、こちらに寝返った部隊とかのことで、それ以上は何も判らなかった。

 また、ヘルヴォル飛行隊は損失の補充が無いまま明日の作戦に参加することとなった。DEMへの航空攻撃を防ぐため、スコットらが先行して制空権を確保しろとのことだ。 スコットたちだけではなく、多くのオーシア兵が疑問や困惑を感じていたが、ハウエルは意思を改めること無く明日の最終作戦を決行するつもりだ。中にはレーヴァテインによる虐殺を恐れたり反対したりするものが軍から逃亡しようとしたが、ハウエル直属の部隊が容赦せず手を下したため、事実上ユークトバニアに展開するオーシア軍は完全にハウエルが掌握していた。 スコットたちもまた、この戦いから身を引くことができず、戦うしかなかったのだ。
48 マーシュ 2007/03/13 Tue 22:00:31 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第103話 『再臨:目に見えない神』  Advent:The Invisible the God
―――――Location:Yuktobania Cinigrad Dec 30,2010 ユークトバニア・シーニグラード2010年12月30日

 レーヴァテインの修理は完了し、後はエネルギーを再チャージすれば発射可能となる。それまでは通常部隊が敵軍を抑えておくことになった。スコットらヘルヴォル飛行隊は先行して制空権を確保するわけだが、そんな彼らを出迎えたのはやはり「リパブリック・コマンド」だった。

 「<やはりオーシアの守護神だ! 全機、気を抜くな!>」

 遠距離ミサイルによる攻撃の後、両者は格闘戦に突入して雌雄を決する。やはり、敵部隊の一部が弱く感じる。敵部隊も戦闘による損失を補うために経験不足な新人を組み込んでいることは明らかだ。

 「<アンドロポフが撃墜された! 押されている!>」
 「<まだだ! 現状を維持しろ!>」

 今回スコットたちを出迎えてきたリパブリック・コマンドの15機中、5機を撃墜した。こちらの損害は第2分隊のイーグル・プラスが2機。敵の残りは10機、こちらは12機だ。

 「隊長、この勢いなら勝てそうだな。 もうこっちが負ける気配はないぜ」
 「気を抜くなよノア、まだ終わっていない」

 敵のターミネーター向けてミサイルを発射するベン。敵機はチャフ・フレアを散布しつつブレイクでミサイルを振り切るが、ベンは更に後方から機関砲で追い討ちを加える。ベンが狙っている敵機を援護しようと別のターミネーターが出現するが、ノアがその敵機を機関砲で粉砕した。

 「<隊長機に攻撃を集中しろ!>」

 バクーニンがそう言うと、数機のターミネーターがスコットのヴァイパー・ゼロに群がる。また、それらの敵機を追うスコットの寮機も同じように群がる。 その光景を見たノアはスコットに対して「敵からも好かれる」等とジョークを飛ばした。

 「気をつけろアンナ、右から敵機だ。 俺が援護する!」
 「私はいいからアキラを援護して! こっちは自分でどうにかするから!」

 戦闘が継続し、敵の数が低下してバクーニンのアドラーを含めて5機になった時、突如細いレーザーが戦闘空域に突き刺さる。そのレーザーはキムのヴァイパー・ゼロとリチャード以外の第2分隊を巻き込み空中で炸裂した。

 「今の攻撃……!デウス・エクス・マキーナからよ! ……どういう事?」と、ステラ。

 「おい!こいつはどういうことだ!? ハウエル将軍!ちゃんと説明しやがれ! ってか、引きこもってねぇで出てきやがれ!」


 「<無駄だ>」

 ノアの叫びに返事をしたのはハウエルではなくバクーニンだった。

 「どういうことだ!?」と、ベン。

 「<ハウエルはこの世に実在しない。奴は15年前にスーデントールで死んだ後、新たに作られた世界で精神のみが残っているだけだ。そして、今の世界とその世界、『エレクトロスフィア』を丸々入れ替えようとしている。  ――つまり、奴は『目に見えない創造神』ということだ>」
49 マーシュ 2007/03/13 Tue 22:01:22 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第104話 『昇華:目に見えない神』  Sublimation:The Invisible the God


 「バクーニン、君は何故そんなことを………」
 「<それはだな、スコット……。   俺は奴の部下だからだ>」

 スコットは衝撃を受けたが、不鮮明な部分が多く、何がなんだかあまりよくわからない。 すると、そこにハウエル本人が介入し始めた。

 「(まさか貴様が生きているとはな。しかも敵軍のヘンダーソンと知り合いの上、ユークでエース・パイロット気取りか。 世の中不思議なものだな。 貴様らがバクーニンと呼んでいるその男はベルカ戦争の後期、いわば15年前核爆発のあったスーデントールにいて被爆者となった。私も核爆撃に遭遇して命を落としたが、奴は被爆だけで命を取り留めた後、「ある組織」に引き取られ治療を施された後、その組織の少年兵になった。父親もその組織、『国境なき世界』の一員だったようだが、当時未完成のエレクトロスフィアの事故に巻き込まれたそうではないか)」

 DEMの株格納庫が開放されると、そこから戦車が続々と現れて徐々にDEMの周囲を取り囲む。だが、これらの部隊は昨晩オーシアの基地に来ていたユーク軍部隊と非常によく似ている。というか、そのものだ。

 「(司令官より“ 壁なき世界” 各員へ。 これより “ファイナル・オデッセイ” 作戦を開始する! 知っての通り、オーシア側は別働隊が担当する。我々の任務はこちら側、ユーク区域を浄化することにある。最初で最後の戦いに必ずや勝利をもたらしてくれ)」

 まさかハウエルからバクーニンの過去を知らされるとは思っても見なかったスコット。だが、今の説明通りだとすると何かおかしい。そう、何故バクーニンがハウエルの妨害をしようとしているかだ。

 「<奴(ハウエル)はこの出来事が片付き次第、全ての人類を「サブリメーション」(昇華)させるつもりだ! 俺はこの計画を10年前に知り、それを妨害しようとして裏切りが発覚した。それで俺は連れと共に組織から逃亡し、たどり着いたのがエルジアのサン・サルバシオン。つまりスコットの町だった>」

 ハウエル将軍は前段階として全ての人類を「肉体」という牢獄から解放するため、彼はベルカ戦争時に設立されたクーデター組織「国境無き世界」をベースに『壁なき世界』を設立したそうだ。


 「あの時バクーニンが言っていた “ この戦争の舞台裏にある真実 ” 真実とはこのことだったのか……! くそっ!」

 何も知らずに戦っていた自分たちがどうしようもなく感じたが、今やるべきことははっきりしている。このままハウエルを放置すれば全ての人類を滅ぼすことになるだろう。それを止めるにはハウエルを撃破することだ。

 「バクーニン。 僕らは互いに大事なものを奪い、かつての仲を修復できない状態かもしれない。でも、今は……」

 「<お前の言いたいことは判る。 スコット、お前との決着は後回しだ。 今はハウエルを阻止する! 手を貸してくれ!>」

 昔のような関係に戻れれば理想的だが、恐らくそれは難しいだろう。だが、今だけでも共同戦線を展開し、この事態に対処できれば後はどうにかなるはずだ。 ほぼ同時に違う方角から両軍の航空機部隊の増援が出現する。
50 マーシュ 2007/03/16 Fri 19:56:40 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第105話 『混迷の世界』  World of Chaos

 全ての壁を撤去しようとする『壁無き世界』 そしてシーニグラードを守りぬこうとする『ユーク軍』と引き続きそのユーク軍と交戦する『オーシア軍』の残存部隊。そしてこの戦いの真相を知り、ハウエルを阻止しようとするスコットやバクーニンの『独立勢力』 5つの勢力が激突するこの場所はたちまち混迷を極めた。

 「だめだ! ミサイルを食らった! ベイルアウトする!」
 「ヘンダーソン大尉!こちらイーグル9! またウィングマンが撃墜されました!自分を残し第2分隊は全滅です!DEMの対空砲が強力すぎます!」

 「どうするんだスコット。 俺は隊長についていくが、犬死はごめんだぞ」と、ベン。

 こちらの被害は増える一方だが、DEMはいまだ健全である。ただでさえ火力が足りないというのに、これ以上戦力を消耗させられたらたまったものではない。

 「それで、リパブリック・コマンド・リーダー。 どうやってデウス・エクス・マキーナをぶっ潰すんだ? 弱点を知ってんのか?」と、ノア。

 「<シールドを展開している間、通常の攻撃程度ではDEMにはダメージを与えられない。 まずはシールドを無力化して、その上で弱点を集中的に狙う>」

 バクーニンによると、DEMはシールドを展開する為多くのエネルギーを必要とする。そのエネルギーは動力や武器システムにも供給されており、何らかの形でDEMに多くのパワーを使用させればシールドは一時的にダウンするそうだ。

 「<シールドをダウンさせるにはシールドそのものに高負荷を与えるか、レーヴァテインを撃たせるか…いや、これは駄目だな。とにかくエネルギーを消耗させればいい!>」

 そうは言われても、ヘルヴォルとリパブリック・コマンドだけの火力ではシールドを破れないし、大きな負担を与えることもできないだろう。DEMを超特急で走行させ、エンジン部に相当な負担を与えるということも困難だ。 とにかく攻撃を加えるものの、殆どの攻撃は迎撃用のミサイルや対空砲で撃ち落され、残りもシールドにより防がれてしまう。

 「私たちだけでは戦力が足りないわ…… どうすればいいの?」
 「諦めちゃ駄目だ、みんな! ここでハウエル将軍を止めないと、本当に人類は消し去られてしまうんだ! 僕は決して最後まで諦めない!」

 ヘルヴォル飛行隊とリパブリック・コマンドだけではDEMの撃破は絶望的だった。だが、ほかの航空機や地上部隊の援護があれば話は別だろう。しかし、地上は見てのとおり混乱しており、とてもではないが共同でDEMと戦ってくれるとは思えない。

 しかし…

 「なあ、下の様子がおかしくないか?」
 「どういうことだ、ノア?   ……ん、確かに妙だな」

 よく見るとオーシア、ユークの両軍が協力しているように見える。どうやらユーク軍とオーシア軍がハウエルの陣営を包囲しているようだ。何があったかサンダーヘッドに問い合わせてみると、今オーレッドにハーリング大統領とニカノール首相が現れ、戦争は終わったと宣言しているのだ。そして、この戦争は第3者による陰謀だと明かし、その第3者であるベルカはオーシアかユークのどちらかを壊滅に追いやるだけの力があると。

 「ステラ、もしかしてこれはナガセ大尉達が上手くやったのかな?」

 「ええ、きっとケイ達があちら側でベルカの陰謀を暴いたのよ! 私たちもこちらの問題を片付けましょう!」

 友軍はハウエルがベルカ側。灰色の男たちだと勘違いしているのが何だが、放置すれば世界が危ういというのと、この戦争の黒幕だということに代わりは無い。 サンダーヘッドの支援を受け、両軍の部隊と共同でDEMの攻撃に移るスコットたち。

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