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ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD CHAPTER \ 機械仕掛けの神

前スレッド No.140
21 マーシュ 2007/02/15 Thu 20:26:01 DXjf..D3Q.5iAv
ACE COMBAT 5 INVISIBLE THE GOD Chapter \ DEUS EX MACHINA
エースコンバット 5 インヴィシブル・ザ・ゴッド 第9章 機械仕掛けの神

まえがき
「ジミー・グリム」は忘れてください
「ブルース・グリム」でお願いいたします

Contents  目次

―――――Chapter 1 Phantom Menace   第1章 見えざる脅威

―――――Chapter 2 A Blue Dove for the princess   第2章 姫君の青いはと

―――――Chapter 3 The Demon of the Razgriz   第3章 伝説の悪魔
#21 『雪の降る空』  Snow Skies
#22 『旅立ち』  Odyssey
#23 『サンド島防衛戦』  “Front Line”
#24 『伝説の悪魔』  Demon of Legend
#25 『Aサット照準』  A-sat Targeting System
#26 『ラーズグリーズの悪魔』  The Demon of the Razgriz
#27 『シンファクシ』  “Scinfaxi”
#28 『ミラのカキ氷』  Mira’s Frappe
#29 『悪夢?』  The Doom?

―――――Chapter 4 Road to Yuktobania   第4章 ユークトバニアへの進軍
#30 『食卓の鬼神』  The Cock of Round Table
#31 『15年前』  “15 Years Ago”
#32 『ザ・ベルカン・ウォー』  THE BELKAN WAR
#33 『円卓の騎士』  The Knight of the Round Table
#34 『ベルカのお肉』 The Belkan Beef
#35 『憎しみの連鎖』  “Chain Reaction”
#36 『コインの表側』 Face of the Coin
#37 『進軍』 Road to Yuktobania
#38 『あおいはと』 A Blue Dove for the princess Part2
#39 『紅の海』  Crimson Sea
#40 『戦闘開始』  Engage

―――――Chapter 5 A Fateful Encounter   第5章 運命の再会
#41 『戦闘機乗りの名誉にかけて、一歩も引き下がるな!』  Knight of the Skies
#42 『今こそイージス(盾)の使命を果たす』 Aegis
#43 『女将アンダーセン』  Admiral Mao Andersen
#44 『ゴールゥビ・ガルボーイ』 Blue Dove
#45 『運命的な再会』 A Fateful Encounter
#46 『ユークトバニアの精鋭』 The Republic Commando Part1
#47 『オーシア海軍の剣士』  Swordsman
#48 『リパブリック・コマンド』 The Republic Commando Part2
#49 『この大空にオーシアの翼をはためかせん』  The Wing of the Osean
#50 『決別への引き金』  The Trigger

―――――Chapter 6 The Blue Skies of Promise 第6章 約束の青空
#51 『解放。そして、告別』  Call of the Freedom
#52 『お帰りヘンダーソン君』  Mr. Henderson Welcome Back
#53 『丸刈り頭の兵士たち』  jarhead
#54 『グリム兄弟』  brother’s Grimm
#55 『約束の青空』  The Blue Skies of Promise
#56 『あの空の向こうへ』  He’s Wings
#57 『ブルースカイ・オブ・プロミス』  The Blue Skies of Promise Part U
#58 『約束』  Promise
#59 『ラーズグリーズの帰還』  Retune of the Razgriz
#60 『ゼロ・アワー』  Zero Hour

―――――Chapter 7 Skies of Gladiator  第7章 虚空の剣闘士
#61 『砂漠の矢』 “Desert Arrow”
#62 『砂漠の電撃』 “Desert Lightning”
#63 『師団司令部なんてくそらくえだ』  Fool of the division HQ
#64 『プライベート・イアン』 Saving Private Ian
#65 『ヘルヴォルの守護神』 Guardian of the Hervor
#66 『ヴァチャーズィ』 Yuktobanian Knights
#67 『スカイ・オブ・グラディエーター』 Skies of Gladiator
#68 『戦う理由』 Why We Fight
#69 『エース対エース』 ACE COMBAT

―――――Chapter 8 Osean Assault 第8章 オーレッド強襲
#70 『運命の闘い』 The Duel of the Fates
#71 『堕ちる』 Fall of the Wings
#72 『戦争を支える王者』 The Lord of the War
#73 『JOURNEY HOME』 ”Journey Home”
#74 『8492飛行隊』 “8492”
#75 『ラーズグリーズ・ダウン』 Razgriz Down
#76 『迫り来る混沌のオーラ』 Chaos Aura Coming
#77 『オーシアン・アサルト』 Osean Assault
#78 『オーレッド強襲』 Attack on the Oured

―――――Chapter 9 Deus Ex Machina 機械仕掛けの神
#79 『西部戦線異常あり』 The West Front
#80 『オーレッドの戦い』 Battle of Oured Part1
#81 『深い感銘を与える』 Battle of Oured Part2

Coming Soon........
22 マーシュ 2007/02/15 Thu 20:32:51 DXjf..D3Q.5iAv
 ――――――――――第79話 『西部戦線異常あり』  The West Front

 スコットたちが空母バーベットにまとわりつく敵機を撃退するとほぼ同時に、友軍艦隊が敵艦隊の前衛を排除した。 だが、次は大型の巡洋艦を中心とした第2派が接近してくる。先ほどの前衛はまだほんの序の口だ。

 「こちらAWACSブルー・ドヴ。敵空母から戦闘機と攻撃機の増援部隊です。 気をつけてください」

 「OFSバーベットより各空母へ、こちらも戦闘機の増援を出撃させろ」

 一同の前方から8機のシー・フランカーとライトニングU。そして巡洋艦『リェヴォリューツィア』を取り囲む駆逐艦隊が迫る。第15艦隊と19艦隊が先ほどの前衛艦隊の時と同じように一番近い敵から狙う。だが、これらの部隊は先の戦闘で消耗してしまっているため、駆逐艦や巡洋艦の激しい攻撃を前に次々と沈められていってしまう。

 「こちらブルー・ドヴ。第19艦隊の旗艦 “イーグリン・ハーバー” が撃沈されました! 西側の防衛ラインが危険です!」

 第15艦隊と19艦隊はかつて輸送船を護衛するために8艦隊に編入されていた艦隊だそうだが、今回はマオ・アンダーセンの指揮下から離れ、独立して行動している。だが、それらの旗艦の沈没により指揮統制に乱れが生じ、陣形も崩れ始めていた。 第1艦隊は12隻。 第5艦隊は8隻。 第8艦隊は11隻。 第15艦隊は9隻。 第19艦隊は13隻で、オーシア軍防衛艦隊の残りは53隻。

 「駆逐艦3隻が防衛線を突破! 第5艦隊のバーベットへ向かっています!」

 友軍艦船は他の敵の相手で防衛線を突破した敵艦の対処ができない。そこで、スコットたちはその3隻の駆逐艦にLASMの狙いを定める。

 「っと、スコット隊長。 ここは俺に任せてくれ! イーグル3、発射!」

 ベンの発射した長距離対艦ミサイルが白い線を引いて敵艦向かって飛んでゆく。敵艦船からミサイルに対して機関砲による迎撃があったが、別の友軍機からの攻撃によって敵艦船にミサイルが直撃し、敵艦は船体中央から火を噴きながら海中へと姿を消した。

 「ユーク駆逐艦 ヴァージュヌイ、撃沈! 引き続き周囲の敵艦を狙え」

と、セレニティーの管制官。あの船の情報収集と管制力はとても高く、敵艦の情報をはじめ、友軍の艦艇や戦闘機の機関砲の残弾まで把握しているそうだ。
スコットたちは旋回し、残りの敵艦に向けてミサイルを発射した。

 「駆逐艦は沈んだようね。 次はあの巡洋艦を攻撃しましょう。 スコット、その周りの駆逐艦と中央の巡洋艦。どこから攻める?」

 防衛線の突破を試みた敵駆逐艦を撃破し、スコットと陣形を組みなおすと同時に次の段階を伺うステラ。直後にベンとノアも背後につく。 中央にいる旗艦を沈めれば統制が乱れてこちらが有利になるだろうが、そうしようとすれば他の敵艦から集中攻撃を受けてしまうだろう。

 「みんな、まずは周辺の護衛艦から叩こう! 護衛艦の数を十分に減らしてから旗艦を狙う!」

 かつて、バートレット大尉は「生き残ってこそなんぼ」だと言っていた。 敵を倒したり誰かを救うのではなく、生き残ることが英雄になることだと。 確かに生き残っていればいくらでもそれらのチャンスがめぐってくるだろうし、当たり前のことだ。
23 マーシュ 2007/02/15 Thu 20:33:58 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第80話 『オーレッドの戦い』  Battle of Oured Part1
―――――オーシア・オーレッド湾外海  Location:Osea | Oured

 「第15艦隊と第19艦隊が壊滅!? いかん!!中央突破されるぞ! 全軍へ通達!総力をあげて敵巡洋艦を攻撃せよ!! OFSバーベットよりガーディアン・イーグルスへ、至急支援を乞う!」

 ここまで大規模な戦闘だと戦力の消費も相当なものだ。おそらくはこの戦争。21世紀最大の戦いであるだろう。しかし、これだけの戦力を持っているのに、何故敵軍は本土防衛の為にこれらの戦力を回さなかったのだろうか? これだけの戦力があれば十分に本土への上陸を阻止できたはずである。

 「まだあんなにたくさんいるのか……」

 コックピットのヘッド・アップ・ディスプレイ越しに呟くスコット。いまだ多くの敵反応がある。また、スコット達の少し前方では空母ヒューバット所属のホーネットが苦戦しつつも敵艦船と交戦していた。

 「こちらバード・リーダー。高度を下げないとSAMに狙われるぞ!低く飛べ!」

 「スワン・リーダーからイーグル・リーダーへ。 上で仲間ががんばっている間に敵艦を沈めよう」

 少々気の毒だが、上空で友軍のホーネットが敵の注意を惹いている間にスコットたちガーディアン・イーグルスは低空から敵艦隊に接近する。どちらにしろ、友軍航空隊を救うにはこうするしかない。 そして、射程に入り次第各自対艦ミサイルをリリースした。


 「<レヴォリューツィアより各艦! 右舷より接近するオーシア軍機を叩き落せ!>」

 スコットたちは穴を掘るかのように徐々に敵艦隊の防衛ラインを崩してゆく。あとは旗艦レヴォリューツィアの直衛である駆逐艦グムラクを排除すれば旗艦への攻撃が可能になるはずだ。

「<空母アドミラル・レオノフに航空機の増援を要請しろ! 今すぐだ!>」


 ベンとノアがそのグムラクにLASM放った結果、駆逐艦グムラクは被弾。黒煙を吐きながら反転し、戦線からの離脱を開始する。

 「こちらOFSシバリー。ユーク軍巡洋艦が射程に入った。これより航空機部隊援護のため、旗艦に攻撃を開始する」

 敵巡洋艦を護衛する小型艦を排除し、オーシア巡洋艦「シバリー」が僚艦の「アイオライト」と「エイカーソン・ヴィレッジ」と共に旗艦レヴォリューツィアへの攻撃に移行する。まだ周辺には小型艦が残っているが、それらには他の友軍が対処している。 スコットたちをはじめ、航空機部隊と艦隊による集中攻撃の結果、旗艦レヴォリューツィアは浸水により沈没。周辺の敵艦もそれと同じ運命をたどった。

 「ユーク巡洋艦 レヴォリューツィア、撃沈! 敵艦隊撃滅!  敵艦隊、第3派が前進を開始!あの戦艦を中心とした主力部隊です!」
24 マーシュ 2007/02/18 Sun 21:30:40 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第81話 『深い感銘を与える』  Battle of Oured Part2

 何とかユーク巡洋艦レヴォリューツィアを撃破したオーシア軍。だが、まだ戦艦『ヴヌシーチェリヌィ』を中心とし、その周りを取り囲む空母「アドミラル・レオノフ」と「ウートガルザ・ロキ」、「ヴァフスルーフォニル」「アドミラル・ツァネフ」の4隻からなる主力艦隊が残っている。更にその外周には巡洋艦や駆逐艦の大群が護衛として随伴していた。

 「こちらの残存戦力は!?」と、ブルーム艦長。
 「わが艦隊の残存艦艇は26隻です!」

 オーシア軍防衛艦隊の戦力は50パーセント以下に低下している。それに対し、敵艦隊はまだ主力を温存しているため、ここからかなり苦しい戦いになるであろう。

 「こちらブルー・ドヴ。今セレニティーが攻撃優先度を決定しました。航空機部隊は敵空母を攻撃し、制空権を確保してください。 空母をやっつければ敵航空勢力に大きな打撃を与えることができます」

 そういうものの、敵空母は殆ど敵艦隊のど真ん中にいる。そう簡単には攻撃させてくれないであろう。オーレッド湾口には防御用として陸軍の大砲やロケット砲が配備されているが、正直あまりアテにできない。

 「OFSバーベットより全艦艇へ! 密集陣形を取りこちらの火力を強化する! 続けて敵艦隊の先頭に火力を集中しろ!」

 海上では敵主力艦隊とオーシアの残存艦隊が交戦状態に入る。だが、数で勝る敵艦隊に立て打ちするにはあまりにも荷が重過ぎるため、密集形態をとって戦力を集中する。 だが、敵航空機部隊が空母ヒューバットに集中攻撃を加え、大きなダメージを与えてしまったために後退を余儀なくされた。これによりこちらの航空戦力は更に減少し、オーシア軍機は攻守のバランスが取りづらくなる。

 「こちらバード・リーダー。空母ヒューバットが戦線を離脱した。 我々とオメガ隊が艦隊の防御を引き受ける! イーグルとスワン、ヘイローは敵艦隊を!」

 航空機部隊が役割を分担するころ、海上ではユーク戦艦「ヴヌシーチェリヌィ」が巨大な大砲を用いて小型で非力なオーシア艦をなぎ払っていた。ミサイルとは違い、砲弾は撃ち落すことが困難で防御ができない。

 「駆逐艦エメラルド・クロスが沈んだ!大砲で撃たれているぞ! 早く敵戦艦を撃沈しろ!砲撃をやめさせるんだ!」

 「護衛が多すぎてミサイルが撃ち落とされてしまいます!」

 敵戦艦に対してミサイルによる集中攻撃を実施するが、周辺の護衛に阻まれてしまう。戦艦を狙う前に、まずは護衛を取り除かなければならない。

 「大きい……戦艦を見たのは初めて。 ユーク軍はいつの間にあんな準備をしていたのでかしら?」

 「ステラ、あれは少し昔のオーシア戦争時代の代物だ。それを近代使用に改造しただけで、結局は時代遅れの船にしかすぎない」

 「ベンの言うとおりだ。でかけりゃいいってもんじゃない。 まあ、あれだけ的が大きいなら撃てばあたるだろう。 ……いや、味方の攻撃からすると、そうでもないようだな」

 「とにかく、敵空母と戦艦を排除しないと! みんな!攻撃準備!」
25 マーシュ 2007/02/19 Mon 20:46:35 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――――第82話 『巨大の名を持つ戦艦』  Battleships Incoming

 「っと! 敵戦艦の主砲がこっちを向いているぞ!」

 ユーク戦艦「ヴヌシーチェリヌィ」の巨大な主砲が火を噴き、空の一空間を爆発させる。本来は地上や艦船を攻撃するための大砲であっても、空中で炸裂する砲弾を撃てば対空砲としても機能できるようだ。砲塔は前部に2機あるので、それぞれが違う目標に攻撃することも可能なのだろう。

 「各機散開!」

 スコットはすぐに寮機を散開させた。かたまっているといい標的になるからだ。出来れば最初に戦艦を仕留めて友軍への被害を最小限にしたいところだが、周辺の護衛を排除しないとミサイルは撃ち落されてしまうだろう。また、敵航空戦力も障害であるため、空母の排除も必要となる。

 「こちらヘイロー3. 我々が敵空母を護衛する敵艦を叩く!そちらは空母を!」

 空母バーベット所属のホーネット部隊がLASM対艦ミサイルで敵駆逐艦を撃沈し、空母の守りを手薄にする。

 「よし、もらった! グラディウス、発射!」
 「艦載機ごと海に沈めてやるぞ! 食らえ!」

 友軍機の援護の中、ベンとノアが2発ずつ対艦ミサイルをリリースし、即座に反転して離脱した。ミサイルは1発が撃ち落されたものの、残りの3発は命中。敵空母は爆発炎上して傾斜。ずぶずぶと沈み始める。

 「<空母ヴァスフルーフォニルが撃沈された!各艦、あのヴァイパー・ゼロに警戒しろ!」

 それに続き、スコットとステラもLASMで敵巡洋艦と空母を攻撃した。空母ウートガルザ・ロキは沈黙し、巡洋艦ウミェールイは大破。僚艦とともに戦線からの離脱を開始する。だが、それに負けじと敵艦隊も嵐のような対空砲火で反撃を実施してきた。

 「ノア! 8時方向の駆逐艦はまだSAMが生きているぞ!」
 「了解だ!」

 撃破したと思っても、時折対空砲のみが生きている場合がある。一部の武装は艦橋から独立しており、そこが破壊されても戦闘を続けられるように設計されているそうだ。

 「僕が援護する! ムスタング、発射!」

 空母を撃破したスコットは機首を敵駆逐艦の方角へ向け、LASMを発射した。ミサイルは命中し、SAMは船体ごと海中へと姿を消した。 更に友軍のラファールやイントルーダーが周辺の敵艦船に攻撃を続行し、徐々に敵戦力を減らしている。だが、敵艦隊の中には他の艦艇を遥かに超越する迎撃力を有する「イージス艦」が存在し、友軍航空隊をあっという間に叩き落してしまった。

 「何がイージスだ! 俺に任せろ!」

 ノアが対空砲火を潜り抜け、ユークイージス艦「ヴドゥームチヴイ」にミサイルを数発発射した。続けてベン、スコット、ステラもミサイルを発射し、嵐のような弾幕を押しのけて敵艦から火を吹き上げさせた。
26 マーシュ 2007/02/19 Mon 20:54:45 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第83話 『神のめざめ』  Awakening of the God

 「ユークイージス艦ヴドゥームチヴイ、撃沈! 敵艦隊の対空攻撃力が弱体化した。引き続き残存敵艦への対処に移る」

 随時報告される戦果だが、被害報告のほうが多いようだ。すでにオーシア艦隊の残存兵力は25パーセントまで低下しており、このまま敵戦艦に突撃されれば高確率で突破されるであろう。

 「OFSバーベットより全艦艇! 一歩も退くな! 我々は何としてでも……!!」

 そのとき、ユーク戦艦ヴヌシーチェリヌイの主砲が爆音をうならせ、空母バーベットのブリッジに直撃弾を叩き込んだ。バーベットのブリッジはほぼ完全に吹き飛ばされた。沈没こそは免れているものの、あれではもう戦闘継続どころか、指揮を執ることもままならないだろう。

 「くそッ! バーベットがやられた! ちょっとマズいぞ!」


 「こちらOFSエンデュアリング。 旗艦バーベットとの通信途絶により、これより本艦が指揮を引き継ぐわ」

 旗艦バーベットが戦闘不能に陥る中、第8艦隊の空母エンデュアリングが防衛艦隊の中央に移動し、各艦の陣形修復を試みる。マオ・アンダーセンはこの緊迫した状況を前に、作戦中にも関わらず言葉遣いが勤務外同等になっていた。

 「OFSシバリーから空母エンデュアリングへ。本艦は貴艦の左舷をカバーする!」
 「こちらOFSクリスタル・リバー。本艦も後に続く。 対艦、対空戦闘用意!」

 やがて乱れていた陣形は綺麗に修復され、何とか防衛線の再構築が完了する。しかし、それでも敵主力艦隊に対して劣勢である事実は覆すことが出来ない。 航空機部隊も何とかして敵の旗艦に攻撃を試みるが、やはり分厚い弾幕を前に阻まれてしまう。

 「どうする隊長? これじゃぁ手も足も出ないぜ。 片っ端から敵艦を沈めるのも、敵の旗艦を狙うのもかなりハードだ」

 ノアが半分諦めかけていたそのとき、空母エンデュアリングのマオ・アンダーセンから通信が入る。

 「ステラ、聞こえるかい? 私だよ」
 「マオ姐さん!」

 スコットはこのとき、少しながら驚いた。マオが以前輸送船団を護衛した時とはまるで別人だからだ。ステラは少々荒っぽいが面倒見のいい姉御肌だと言っていたが、あの時はまだ緊張していたのだろう。今は非常に堂々としている気がする。

 「今から私らが敵の旗艦向かって突っ込む。ミサイルは撃ち落されてしまうから、砲撃で戦艦を攻撃するのさ。 だから、あんたたちも援護してくれないかい?」

 「スコット!」

 スコットはステラに言われるまでも無く、エンデュアリングを援護するつもりだ。

 「分かった。 みんな、エンデュアリングと敵戦艦の間にいる敵艦を排除してくれ!」
27 マーシュ 2007/02/25 Sun 19:59:58 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第84話 『死にたくなかったら道を開けな』  Cross Fire

 「<全滅を覚悟でしょうか? オーシア艦隊が突撃してきます。 ……しかも空母が先頭です!>」
 「<空母が先頭だと!? 奴等、いったい何を考えている!?>」

 マオ・アンダーセン中将の空母エンデュアリングが先頭に立ち、敵艦隊へ突撃を試みる。今までに空母が敵艦隊に突撃するということがだれだけあっただろうか? だが、開戦直後、第3艦隊の「ケストレル」も敵艦隊に突撃していた覚えがある。そして、そのケストレルの艦長がマオの父「ニコラス・A・アンダーセン」だ。 流石父と娘。血のつながりが無くても、似た部分を持ち合わせている。

 「死にたくなかったら道を開けな! 轢かれて大怪我しても助けてやんないよ!」

 空母エンデュアリングが進路上に立ちはだかるユークの小型ミサイル・ボートに体当たりをお見舞いした。ミサイル・ボートは真っ二つに引き裂かれ、エンデュアリングの巨体とマオの気迫に押しつぶされた。

 「すげぇ……体当たりまでしやがった」と、ベン。
 「大怪我どころじゃねぇな。こいつは。 マーシャル大佐も敵わねぇわけだ」と、ノア。

 エンデュアリングはステルス能力も持ち合わせるため、ミサイルのレーダー照射も受けにくく、ミサイル攻撃の可能性を軽減している。また、ミサイルで攻撃されても防御兵装が充実しているため、極めて生存製が高い。

 「何ぼやっとしているんだい!あんたらも手を貸しな! 私の空母が沈んでしまうよ!」

 マオは結構独特な喋り方をする。スコットはステラにマオの出身国を聞いたところ、「ケイと同じ」だとのことだ。だが、ケイ・ナガセ大尉がどこの出身かを知らないため、そう言われても分からない。

 「エンデュアリング、全速前進。舵中央進路そのまま! 一気に行くよ!」

 敵艦隊の十字砲火を受けつつも、オーシア艦隊は主砲が使える距離まで徐々に迫りつつある。敵襲により数隻落脱する艦もあったが、エンデュアリングは粘り強く主砲の射程まで接近する。

 「あの駆逐艦が邪魔だ! 俺が始末する!  アルビオン、投下!」

 誘導爆弾で進路を妨害する駆逐艦を撃沈するノア。あと数隻の駆逐艦と巡洋艦を排除すれば敵戦艦を主砲の射程距離に捉えることが出来る。

 「OFSアンドリュー・スミス。 敵戦艦が射程に入った!これより本艦は独自に攻撃を開始する!」

 最新鋭のステルス駆逐艦「アンドリュー・W・スミス」号が主砲で敵戦艦への攻撃を始めた。この新鋭艦は戦艦の大砲には及ばないものの、他の艦艇よりは大型で射程の長いキャノンを装備している。また、対地攻撃兵装も充実しているそうだ。

 「アンダーセン中将、まもなく敵戦艦が主砲の射程距離に入ります!」

 「全艦、砲撃用意!」

 各艦の主砲が敵戦艦に照準を合わせ始める。
28 マーシュ 2007/02/25 Sun 20:00:57 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第85話 『金色の馬』 The Golden Horse

 マオ・アンダーセン中将率いるオーシア残存艦隊はユーク艦隊に突撃。ミサイル攻撃を防御しつつ肉薄し、至近距離で旗艦のヴヌシーチェリヌイに砲撃を始める。ミサイルは防御できても、砲弾や魚雷を撃ち落すことは出来ない。接近してしまえばこちらにも十分に勝算があるはずだ。

 「<わが艦隊の懐に飛び込んでくるとはいい度胸だ! 全艦、オーシア軍の巡洋艦と空母に攻撃を集中せよ!>」

 戦艦ヴヌシーチェリヌイの主砲がエンデュアリング側面に展開する駆逐艦を粉砕する。このまま突撃を実行すれば明らかに被害は拡大するだろう。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
 空母エンデュアリングと敵戦艦の間に位置する巡洋艦『ザラトーイ・ローシャチ』が対艦・対空共に激しく応戦。進路と射線を妨害している。スコットたちはすぐさまその艦に攻撃を実施した。

 「別々の方向から攻撃しよう!僕とステラは右舷。ベンとノアは左舷から攻めてくれ!」

 スコットたちの少し前方で3機のイントルーダー攻撃機が敵艦への攻撃に向かっていたが、1機が敵戦闘機により撃墜され、もう1機が敵巡洋艦にやられてしまった。残る1機も敵戦闘機に追い回されているので、ステラはすぐにミサイルで友軍機を追い回す敵機を排除した。

 「助かった、支援に感謝する。 アルバトルス各機、集合しろ!今度は我々が彼らを支援する!」

 すると、友軍のイントルーダー4機がイーグル中隊を援護する為、周辺で陣形を組み始める。特に見返りを期待したわけではないが、仲間がいるのは心強いものだ。

 「こちらグラディウス。位置についた。 いつでもOKだ!」

 「よし、攻撃開始!」

 複数方向から放たれた多数のミサイルにより敵艦に多数の命中弾を与える。まだ撃沈には打撃が足りないようなので、更にミサイルや爆弾で攻撃を加えた。敵艦は傾斜しつつも主砲や機関砲、ミサイルで反撃を続けるが、スワン隊の放ったミサイルが止めを刺した。

 「<こちらザラトーイ・ローシャチ! 限界だ! 沈没する!>」

 応戦しつつも敵巡洋艦は船首から傾斜し、そのまま海中へと引きずり込まれて完全に姿を消した。これで完全に敵の旗艦ヴヌシーチェリヌイの直援はいなくなった。

 「OFSディープ・アビスより各艦へ!敵戦艦の守りはほぼ排除した! 総力を挙げて敵の旗艦を撃沈するのだ!」

 オーシア軍の各艦艇が敵戦艦ヴヌシーチェリヌイに集中攻撃を開始する。砲弾、ミサイル、魚雷をありったけ撃ち込むつもりで。 だが、その巨体はオーシア軍の攻撃を全て吸収しているかのように見えた。

 「<ふざけた真似を! 砲手!一斉射撃だ! オーシア艦隊どもをなぎ払え!>」

 大型の船が異状にまで。衝突しそうにまで異常接近している。少し離れたところには多数の敵艦が存在するが、それに構わず敵戦艦へ攻撃を集中した。
29 マーシュ 2007/02/28 Wed 22:18:31 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第86話 『私を怒らせたら、どうなるか分かっているんだろうね?』   Heretic Commander

 「全艦突撃せよ!繰り返す、全艦全速で突撃せよ! 全ての火力を敵戦艦に集中しろ!!」

 砲撃、魚雷など全ての攻撃手段を用いて敵戦艦に集中攻撃を加えるオーシア艦隊。正直敵から見ればここまでするマオの作戦は異端なものかもしれないが、彼女は尻尾を巻いて逃げ出すような人物ではないだろう。

 「<何てことだ!オーシア艦隊に包囲されつつあるぞ! 各艦に連絡!本艦に集合し、陣形を立て直させろ!>」

 他のユーク艦が旗艦ヴヌシーチェリヌイをサポートするために接近してくるが、スコットたちガーディアン・イーグルスの各機がそれを阻止。オーシア艦隊を敵艦船の攻撃から防護する。更に友軍の被害を軽減するため、ヴヌシーチェリヌイ本体にも攻撃を加えた。

 「<敵機により1番砲塔大破! 2番砲塔も攻撃を受けています!>」

 戦艦の砲塔は前に2基。後方に1基ある。ベンが前方の1基を誘導爆弾で破壊し、続いてノアももう1基の砲塔を粉砕した。これで友軍への被害を軽減できるだろう。だが、ヴヌシーチェリヌイにはまた多くの武装が残っているので、油断は出来ない。

 「上空から艦隊を援護する! スワン中隊全機、敵戦艦に火力を集中!」

 パク少佐のスワン隊に続き、対艦攻撃可能なオーシア軍機は敵戦艦に火力を集中した。また、それら以外のものは敵航空機の迎撃に向かう。

 「こちらホーク・リーダー。的航空機は我々に任せろ。 ホーク隊各機、敵戦闘機を友軍に近づけさせるな!」

 航空機部隊が上空で奮戦する中、空母エンデュアリングは敵戦艦ヴヌシーチェリヌイと正面衝突しそうにまで接近。両艦は互いの乗員が見える至近距離で交差を始める。ここまで接近してしまえば敵戦艦の主砲の死角に入るわけだが、その主砲よりも数段小さい副砲が多数。エンデュアリングを狙っていた。

 「<信じられん!敵空母が真横に!何てことだ! 側面砲台!砲撃初め!>」

 ヴヌシーチェリヌイの側面砲台が火を噴き、エンデュアリングを多数の水柱が襲う。それと同時に2発の砲弾がエンデュアリング船体に命中した。

 「左舷に被弾!火災発生! 消火急げ!」

 「私を怒らせたらどうなるか分かっているだろうね!? ファランクス!射撃開始!」

 被弾したエンデュアリング。マオはすぐにファランクスの斉射を命じた。ファランクスから吐き出された銃弾が敵戦艦のブリッジに直撃するが、こんな嫌がらせの引っかき爪程度では無論効果はあまり無い。相手にとってはやかましい目覚まし時計といった所だろう。

 「<砲手は何をやっている!? あの目障りな空母と航空機部隊を始末しろ!>」
30 マーシュ 2007/02/28 Wed 22:19:37 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第87話 『機械仕掛けの神』  Deus Ex Machina

 巡洋艦シルバー・キャニオンと駆逐艦レシライア、アンドリュー・スミスが砲撃でヴヌシーチェリヌイの副砲に攻撃を加え、エンデュアリングへの攻撃を阻止した。更にスコットたちが後部の主砲を爆撃で粉砕する。

 「ったく! なんてタフなんだ!まだ沈まないぞ!」
 「諦めるんじゃねぇノア!攻撃を続けるぞ! こちらグラディウス。旋回してもう一度攻撃する!」

 誘導爆弾で敵戦艦の後部主砲を破壊したベンとノアが旋回してもう一度攻撃する間に、スコットとステラがLASMで敵艦の船尾に直撃弾を叩き込む。それにより敵艦の機関室に浸水が発生し、機動力を奪った。

 「<こちら艦長! 司令部の『オベルタス “少佐” 』に伝えろ! わが艦、『デウス・エクス・マキーナ』との接触・破壊に失敗! だが最後まで奮戦!>」

 戦艦ヴヌシーチェリヌイは機動力と護衛艦、3機の主砲全てを失い総崩れとなっていた。だが、残りの武装で最後の猛反撃に転じた。

 「<全武装、全砲門開け! 最後まで退くな!>」

 ヴヌシーチェリヌイから弾幕の嵐が吹き上がる。対するオーシア軍も集中攻撃で対応した。ヴヌシーチェリヌイの巨体に容赦なく大量の魚雷が命中し、大量の水柱に飲まれながらも副砲や機関砲、ミサイルを掃射して反撃。まったく衰えを感じさせない勢いだ。

 「スコット。弾幕の薄い後方から行きましょう」

 ステラの言うとおり後方の弾幕が薄い。スコット達は後方から敵戦艦に接近。敵戦艦は水柱と爆発。黒煙に隠れて目視では良く見えないが、ミサイルでの攻撃に支障は無い。ロックすると敵艦向けてミサイルを発射した。ミサイルは真っ直ぐ敵艦に向かって突き進み、ど真ん中に命中した。

 「<あの青い戦闘機を叩き落せ! もっと弾幕を補強せよ!>」

 ヴヌシーチェリヌイの対空ミサイルがスコットとノアのヴァイパー・ゼロ向かって放たれる。スコットはバレル・ロールで。ノアはブレイクしてミサイルをやり過ごすと、再び攻撃態勢に戻り爆弾で反撃した。

 「おうし! 決まった! 敵戦艦撃破!」

 敵戦艦は爆発。徐々に海中へと沈んでゆく。

 「<こちら司令部。ヴヌシーチェリヌイ。君らが相手にしているのは―――>」
 「< “ラーズグリーズの悪魔” だというのか?>」

 「<―――いや、違う。 “ヘルヴォルの守護神” だそうだ。>」

 「<そうか。 奴等が……>」

 敵の残存部隊は撤退。オーシア軍はこの戦闘での勝利を確信した。

 「よくやったねアンタ達。これで私たちの勝利だよ! セレニティー、他の艦隊の状態はどうなってるんだい?」

 「こちらセレニティー。 ………アンダーセン中将! ソナーに反応!水中から何かが接近中です! 総数は2!」

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