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ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD CHAPTER [ オーレッド強襲

前スレッド No.139
11 マーシュ 2007/02/09 Fri 00:06:26 DXjf..D3Q.5iAv
ACE COMBAT 5 INVISIBLE THE GOD Chapter [ OSEAN ASSAULT
エースコンバット 5 インヴィシブル・ザ・ゴッド 第8章 オーレッド強襲

まえがき。
当初は10スレッド未満で完結させたいと思っていましたが、なにやら雲行きが怪しく、10スレッド未満に収まるか微妙なところです(汗

 オーシア国防空軍第24飛行隊 “ガーディアン・イーグルス”
 Osean Air Defense Force 24th Squadron “Guardian Eagles”

 セレス海を中央とし、その東側に位置する『オーシア連邦』の国防空軍。15年前のベルカ戦争での経験者を指揮官とし、オーシア空軍の中でも上位に位置する部隊。元々は数百機から成る大規模な航空師団だったが、平和主義のオーシア第48代大統領 “ビンセント・ハーリング” の軍事予算削減により、4個飛行隊まで縮小されている。

 ◆第1飛行隊『バード隊』 1ST Squadron “Bird Team” Captain:Luis F Banderas
 所在はマクネアリ基地。保有する機体はF-15イーグルで、指揮官は “ルイス・フランコ・バンデラス” 大佐。

 ◆第2飛行隊『ホーク隊』 2ST Squadron “Hawk Team” Captain:Aslan Ford
 所在はオーレッド。保有する機体はF4ファントムU及びF5タイガーU。指揮官は “アスラン・フォード” 中佐だった。

 ◆第3飛行隊『イーグル隊』 3ST Squadron “Eagle Team” Captain:P J Marshal
 所在はハイエルラーク基地。この中では一番新しく、解体された旧第1飛行隊の名前を受け継いだ。指揮官はポール・ジャック・マーシャル大佐だった。

 ◆第4飛行隊『スワン隊』 4ST Squadron “Swan Team” Captain:Park Rae won
 所在はオーレッド・メガフロート基地。これは市街地への防音対策とし、オーレッドの湾のすぐ外に作られた人口大地の上に築かれた基地。指揮官はパク・レウォン少佐。


―――――ユークトバニア共和国空軍、第501飛行隊「ゴールゥビ・ガルボーイ」
       Yuktobania Republic Air Force 501st Squadron

 セレス海を中央とし、西側に位置する巨大国家 『ユークトバニア共和国』 の空軍の一部隊。 通称「リパブリック・コマンド」(共和国特殊部隊)で、ユークトバニア空軍の中では最強の部隊だと思われる。同じユーク内では、アグレッサー(訓練における敵役)を務める “オヴニル” 飛行隊が唯一対等に腕を競える飛行隊である。

 バクーニン   Bakunin
 ユークトバニア共和国軍、第501飛行隊ゴールィビ・ガルボーイのオリオン小隊に所属するパイロット。 無口で無愛想に見えるが、ただ単に意志が強く即座に行動をするタイプなだけである。年齢や出身は不明だが、武器の有無を問わず戦いを熟知し、ありとあらゆる兵器を使いこなす能力を持つ。

 アレキサンダー・ネイガウス  Alexander Neigaus
 本名はアレッアンドロ・ジョバンニ。出身はラティオ共和国。 501飛行隊ゴールゥビ・ガルボーイ、オリオン小隊指揮官。 ベルカ戦争、ユージア戦争など数々の戦場を生き残った歴戦の勇士で、若い新人のパイロット育成に尽くす。


◆オーシア国防海軍、第8艦隊所属・航空母艦エンデュアリング
 Osean Marine Defense Force  OFS(Osean Federation Ship) Enduring
 オーシア第3艦隊の空母「ケストレル」に続きヒューバート級航空母艦の8番艦として建造されていたが、ハーリング大統領が軍事予算を削減した為に建造は中止された。 だが、第3艦隊のヴァルチャー、バザードの航空母艦が相次いで失われたため、急遽最新鋭技術を盛り込んだ航空巡洋艦として建造再開が決定された。
 対空、対艦、対地、対潜武装を持ち、あらゆる目標との交戦を可能としている。ステルス性を持ち単独でもかなり手強い存在であるが、それらの能力の代償として格納庫のスペースが大きく削られてしまい、搭載できる航空機はヒューバート級の半数程度である。
 また、艦長は第3艦隊のスヴェン・ウォシャウスキー大佐の予定だったが、ユーク軍による「セント・ヒューレット軍港」襲撃の際に戦死し、他の候補者も前線に狩り出されたため、残った若い士官の中でもっとも優秀なマオ・アンダーセンが艦長として任命された。
 僚艦はイージス巡洋艦「シルバー・キャニオン」「ディープ・アビス」と対地攻撃に特化した最新鋭のステルス駆逐艦「アンドリュー・W・スミス」と情報収集艦「セレニティー」など他多数。
12 マーシュ 2007/02/09 Fri 00:10:44 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第70話 『運命の闘い』  The Duel of the Fates


 「マーシャル大佐ぁぁぁ――――――っ!!!!!」

 バクーニンの放ったミサイルがマーシャルのファルコンを撃墜した。パラシュートは確認できず、ただ残骸がジラーチ砂漠の広い砂丘に堕ちて行くのみ。

 かつての友人がスコットの命を狙い、それを助けようとしたマーシャル大佐。だが、その選択の代償は些細なものではなかった。

 「<臆病者が戦場に出てくるからこうなる。 要するに、お前が招いたことだ>」

 突如現れたスコットを交戦寸前にも関わらず受け容れてくれたマーシャル大佐。 彼は少々子供っぽい部分を持ち合わせ、飛行隊長としての素質にかけているようにも見えたが、それでもイーグル中隊のメンバーを見守り、時に叱り、時には助けていた。だが、そんなマーシャル大佐は今此処に散ってしまった。

 かつての友人。 バクーニンの手により。

 「うおおおおおっ!! バクーニンっ!!」

 スコットの叫びが怒りを表しているのは一目瞭然だった。 彼のファルコンは最大推力でバクーニンのターミネーター目掛けて突き進む。

 「<俺に勝てると思っているのか? 戦場で感情に流されると早死にするぞ。  ……俺も人のことは言えんが>」

 バクーニンのターミネーターに2発のミサイルが迫る。彼はバレル・ロールでそれを切り抜けると、QAAMでスコットのファルコンを捕捉する。そしてすぐさま発射ボタンを押した。 だが、ミサイルは機関砲で撃ち落され、もう片方も簡単に振り切られてしまう。

 「よくもマーシャル大佐を!」

 スコットは反撃としてミサイルを発射し、回避行動に入るバクーニンに機関砲で追い討ちを加える。しかし、バクーニンにとって後方からの攻撃はそれほど脅威ではない。こちらは後方へもミサイルを発射できるし、コブラ・クルビットでオーバーシュートさせることも簡単なことだ。 バクーニンはこれまでどおりコブラ軌道でスコットをオーバーシュートさせようとする。だが、バクーニンの真横にはスコットのファルコンが。

 「<お前もコブラか!? だが所詮は物真似!>」

 バクーニンはコブラ状態から水平翼の制御ペダルを踏み込むと同時に操縦桿を倒し、機首をスコットのファルコンの方へ向けて機関砲を発射した。ファルコンの方が小型で扱いやすく小回りの利く機体だが、ターミネーターも可変式のノズルを装備しているためそれには劣らない。 機関砲が思うように命中しなので、バクーニンはミサイルを発射した。

 「くっ! まずい!」

 ミサイルが直撃する寸前にチャフ・フレアを放出して難を逃れるスコット。だが、爆風の衝撃で機体は大きくバランスを失い、きりもみ状態で降下してゆく。エンジンも停止し、機体は変則的な回転で降下する中、バクーニンのターミネーターが上空から迫る。このままでは明らかに止めを刺される。
13 マーシュ 2007/02/09 Fri 00:11:25 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――――第71話 『堕ちる』  Fall of the Wings


 きりもみ状態で降下する中、スコットは最後の賭けに出た。機首が真上のバクーニンの駆るターミネーターの方を向いたときにミサイルを放つ。それしか手段はない。

 「<今度こそ終わりだ!>」

 「まだだ! 僕を見くびるな!」

 バクーニンが先手を討つ。だが、その直後スコットもターミネーターを捕捉し、ミサイルを発射。2発のミサイルは交差し、それぞれの目標へ突き進む。そして2回の爆音。

 「<馬鹿な……俺がスコットに……! ベイルアウトする!>」

 堕ち行くターミネーターから座席ごとパイロットが射出される。

 「―――こちらAWACSブルー・ドヴ。 イーグル4、ムスタングヘ大丈夫ですか?」
 「こちらムスタング、機体を立て直せない!」

 スロットルを何度も操作するが、エンジンは息を吹き返さない。きりもみによる回転速度は徐々に速くなり、操縦桿も次第にまったく動かなくなってきた。だが、墜落時に何かの助けになるかと思い、ランディング・ギアを出したらうまい具合にそれが機能し、機体を立て直すことが出来た。

 「ムスタングヘ。たった今、地上軍が敵前哨基地を制圧しました。 お、お疲れ様です」

 水平飛行に戻ったスコットの元にステラとミラが寄ってくる。 …やはり1機足りない。

 「ステラ、大丈夫?」
 「私は平気。 でもミラが……」

 ステラによると、スコットがバクーニンと空中戦を繰り広げている間に他のターミネーターと交戦していたのだが、数で勝る敵に完全に押されていたらしい。そしてミラには4機の敵機が集中し、撃墜されるのは時間の問題だったのだが、意外な援護があった。イアンが友軍の対空戦闘車両をかき集めてミラを援護し、見事彼女を救った。 だが、生き残ったターミネーターがそんなイアンらを燃料気化爆弾で一気に焼き払ったのだ。

 「いあんはね、みらをまもるってやくそくしたの。 だから、みらもいあんをまもるの」

 「ミラはあれからずっとこの状態で……」

 まるで人形だ。

 イアンを失ったショックが相当強かったのだろう。

 「それで……スコットは何とも無い? 怪我とかは……」
 「僕は大丈夫だよ。 でも、これからどうすればいいのだろう……」

 すると、ミラがしゃべる人形のような口調でこう言った。

 「みらはね、おりこうさんなの。 だから、ようじがおわったらおうちにかえるの」

 ミラの言うとおりだ。あれこれ考えるのはハイエルラークに戻ってからのほうがいいだろう。3人はAWACSに確認などを取り、ハイエルラークへと進路を取った。 ジラーチ砂漠の敵飛行場は使用可能だが、今は他部隊で埋まっているそうだ。
14 マーシュ 2007/02/09 Fri 23:15:34 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第72話 『戦争を支える王者』  The Lord of the War
 ―――オーシア連邦・ハイエルラーク基地   Location:Heierlark Air Force Base

 ガーディアン・イーグルス第3飛行隊イーグル中隊はスコットとステラの二人きりになってしまった。 隊長であったマーシャルは戦死し、生き残った三人の内の一人「ミラ・バーク」は婚約者を失い、大きなショックを受け精神崩壊。 もはやパイロットとしては使い物にならず、今はバーナ学園都市にある精神病院に入院している。

 だが、悪いことばかりではなかった。 イーグリン海峡で第3艦隊の護衛をした時に撃墜され戦死したと思われていた「ベン・ウォーカー」と「ノア・クルーズ」が此処ハイエルラークに戻ってきたのだ。 更に足りない機体を補う目的と敵特殊部隊を2度も撃退した功績を認められ、ハイエルラーク飛行隊に増員と共に「F-2 ヴァイパー・ゼロ」というファルコンの派生形が配備されたのだ。

 「しばらく見ない間に随分とキマっているな、隊長」と、ベン。

 司令部からは敵エースを撃墜したスコットを隊長に。との推薦が挙がっている。 スコット本人はステラに隊長をしてもらいたかったが、司令部がそう言うのでは仕方が無いし、ステラ自身は「2番機がいい」と主張。更にベンとノアはブランクがあるのでやはりスコットという結論だった。

 「それで、あれはどうします? ヘンダーソン大尉?」

 基地の整備兵。かつてスコットを無理矢理機体に乗せた 『ハロルド・シューマッハ軍曹』 がある機体を指摘した。それはジラーチ砂漠の基地で回収した敵リパブリック・コマンドのターミネーターだ。軍曹の話によると陸軍の中に数名帰国する人が居たのだが、輸送機にはかなり余裕があったらしく、ついでに分解して乗せてきたらしい。

 「んなぁ、俺って目が悪いのか? ここに 『ノース・オーシアグランダーI・G』 って」

 そこはコックピットの部分にある部品だろう。

 「確かにグランダーだな。 だが、これはオーシアの軍用機メーカーだぜ? なぜ敵が?」

 「これは、つまり、どういうことなの?」

 スコットにそう聞く一同。無論、スコットに聞いても分かるはずがないのだが。

 「先日からいろいろといじっているのですが、これはかなりの代物ですぜ。 部品数と工程が減らされ、その上強度も性能も低下はなし。おそらく2機の予算で3機の製造が可能ってところだ…です」

 だが、通信機器には欠陥があり、敵側にも通信が漏洩することが判明していた。空中戦の際、敵の無線が混入する理由がこれなのだろう。 後にシューマッハ軍曹はこの件をグランダー社に問い合わせたが、望むような答えは戻ってこなかった。軍司令部も同様に。

 「それにしても残念なだなぁ。 サンド島部隊が戻ってきていなかったら、俺たちが『ノヴェンバー市』での「平和式典」の展示飛行をする筈だったんだろ?」

 とはいえ、ブランクのある二人と新人生が補充された今、展示飛行どころではない。
15 マーシュ 2007/02/09 Fri 23:17:31 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第73話 『JOURNEY HOME ―― ジャーニー・ホーム ――』  Journey Home

 ノヴェンバー国際スタジアム。オーシア南海岸ノヴェンバー市の中央に存在する最大約7万人収容可能の巨大スタジアムだ。 アップルルース副大統領演説の演出の為サンド島部隊がスタジアム上空で警護することとなっている。

 (オーシア国民の皆さん。どうかこの放送に耳を傾けてください)

 「お断りだぜ」

 (私、オーシア大統領を代理する副大統領の前にある同胞の歓声を! 彼らはユークトバニアへの怒りに燃え、彼らを屈服させるまで戦いの矛を収めないことを誓っています!)

 「そりゃぁ あんただけだろ」

 (さあ、お聞きくださいこの歓声を!  ……市民の皆さん、その歌は……静粛に!)


 「―――ステラ。 ノアっていつもテレビ向かって話して……」
 「いつもこうだ、隊長」と、ベン。


 「ソーツ・エンドレス・イン・フライト  デイ・ターン・トゥ・ナイト……」


 “ジャーニー・ホーム” まで歌いだすノア。 ナイス・ヴォイスだが、彼にはダヴェンポート大尉同様、ロックン・ロールの方が似合いそうだ。 今カメラがスタジアム上空のウォードッグを映している。 だが、遠方に鳥の群れが見える。実際には鳥ではなくユーク軍機で、数秒後にはスコット達の居るハイエルラーク基地にもスクランブル警報が発令された。


 「キタキタキタキタ―――!!! スクランブルエッグ!」

 「ノア! お前は少し黙れ!」
 丸めたオーシア・タイムズでノアの頭を叩くベン。 正直ハリセンがあるといい。

 「皆は此処で待っていて。私とスコットが行くわ!」

 訓練生は連れて行けない。スコットとステラはすぐにハンガーへと走り、ヴァイパー・セロへと乗り込む。ハンガーを出てタキシングを開始し、滑走路にたどり着くと、ハンガーから更に2機のヴァイパー・ゼロが姿を現す。

 「隊長とステラだけじゃ不安だ。俺も行くぞ! 管制塔、タキシング許可を!」

 「以下略で俺も行くぜ! アルビオン、タキシングを開始!」

 ブランクがあるとはいえ、ベンとノアもかつてファルコンを自在に操ったパイロットであり、基本が同じヴァイパー・ゼロを乗りこなすには短期間の訓練でも十分なのかもしれない。それに、万が一になっても「機体は消耗品、パイロットが生還すれば大勝利」であるとバートレット大尉が言っていたので、スコットは彼ら二人を寮機として迎え入れた。


 「僕は隊長としてみんなを無事に連れて帰る。 約束する。絶対に」

 「こちらハイエルラーク・コントロール。イーグル1、離陸を許可する」

 淡雪が降る中、フルスロットルで飛び立つスコット。 ステラ、ベン、ノアもそれに続いた。目指すは南海岸にあるノヴェンバー市だ。
16 マーシュ 2007/02/09 Fri 23:20:33 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第74話  『8492』  “8492”
 ―――――2010年11月29日  オーシア・ノヴェンバーシティ    2010/11/29 Location:OSEA | November City

 「味方は……私たちだけ?」と、ナガセ。

 「こちらサンダーヘッド。スクランブル体制をとっていたマクネアリ空軍基地の滑走路が離陸失敗で塞がった。 今ハイエルラークからイーグル中隊がこちらに向かっている」

 目標や詳細は不明だが、ユークトバニア空軍がスタジアムに接近し、副大統領演説を警護していたウォードッグが応戦を開始。いくらラーズグリーズといっても、孤立無援で多数の敵には立て打ちできないだろう。

 「こちらイーグル・リーダー。 サンダーヘッドへ、あと3分で目標地点に到着する!」

 全速力でノヴェンバースタジアム目指すイーグル中隊。


 ――― だが。


 「こちらオーシア空軍8492飛行隊だ。 ノヴェンバー市へ急行中の各隊へ、我々も引っかかっちまった……。 ったく、よく出来た演習だぜ。 帰等せよ」


 同じようにノヴェンバー・スタジアムへ急行していた友軍のイーグル・プラス4機がスコットたちの前方から接近してくる。アクティブやMTDとも言われるあのイーグルを駆るのはアグレッサー部隊だったはず。 彼らもスクランブルで上がったが、これはどうやら演習だったようだ。やれやれという具合に引き返してゆく。

 「んなあ隊長、これって演習だったのか? あいつら帰っていくゼ?」と、ノア。

 スコットは事実を確認するために、すぐにサンダーヘッドへ問い合わせた。 だが、応答が無い。しかし、さっきは繋がったのに、何故?

 「8492飛行隊からガーディアン・イーグルスへ。 スタジアムは平和式典につき、侵入禁止空域だ。直ちに引き返せ。進入すれば軍法会議ものだぞ」

 確かにウォードッグ以外の航空機がスタジアム上空へ侵入されることは許されていない。 彼らの言うとおり、違反すればただではすまないだろう。

 「こちらイーグル・フォー。765飛行隊へ、あんたらはスタジアム上空を見てきたのか? 直接な」

 「イーグル4へ、“8492”だ! 正しく呼べ! スタジアム上空に異常は無い。 我々は先に帰る。そちらもすぐに帰還せよ」

 4機同じタイミングで旋回し、スコットたちの元を離れてゆく8492部隊。 スコット達もそれにならい、方向転換して引き返し始めた。だが、数分後、再びサンダーヘッドと思われる無線が流れ込む。


 「……ガッ …どの基地も…… ガガッ …まともに取り合わない … ガッ …か! ……スタジアム ガッ で空中戦なんだぞ!」


 かなりノイズが酷い。 というか、これは本当に演習なのだろうか? そのとき、再び8492から通信が入る。

 「今の無線はあらかじめ録音したメッセージらしい。 気にせず帰等してくれ」


 そういわれ、不審に思いながらも帰等するイーグル中隊。 明らかに何かおかしいが。
17 マーシュ 2007/02/09 Fri 23:31:40 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第75話 『ラーズグリーズ・ダウン』  Razgriz Down


 「こちらAWACSサンダーヘッド! スクランブルの各機、戻るな! ノヴェンバー市への空襲は続いている! これは演習ではない! 繰り返す!これは演習ではない!」

 「これも録音か? どうするイーグル・リーダー? 行くのか?帰るのか?」

 何やらずいぶんとややこしいことになってきた。 スコットはもう一度だけサンダーヘッドに問い合わせてみる。 すると、今度は返事があり、この空襲は本物だと判明した。

 「イーグル・リーダーより各機、ノヴェンバー市へ急行してラーズグリーズを支援する!」
 「了解! イーグル2、交戦!  ケイが待っている!」
 「グラディウス了解した。イーグル3、交戦!」
 「アルビオン、ラジャ。 イーグル・フォー、エンゲイジ!」


 一方、ウォードッグことラーズグリーズはスタジアムに迫る敵ステルス攻撃機部隊を全滅させていた。 ステルスというのはレーダーに映りにくい飛行機のことだが、ラーズグリーズにとって、ステルスなど目くらましにもならないのだろう。 だが、数で押されるうちに、チョッパーことダヴェンポート大尉が被弾。危険な状態にあった。

 「こちらサンダーヘッド。ダヴェンポート大尉、大丈夫か?」

 「スタジアムの中央なら誰も居ないな。 そこに……無理だな。 電気系統がいかれてんだ。キャノピーがとばねえ。 イジェクションシートも多分駄目だ」

 レバーを引けば操縦席の防風がとび、その後に座席ごとパイロットを機体から打ち出すというのが最近の脱出方法だが、機体の受けたダメージにより脱出システムが故障してしまったようだ。

 「あきらめるなチョッパー!がんばるんだ!チョッパー!」


 「へへっ、いい声だぜ」


 その台詞の後、彼の機体は黒煙を吐きながら高度を下げ、そのまま非難が完了した無人のスタジアムへと堕ちていった。


 遠方からスタジアムへ急行するイーグル中隊。レーダーで敵機と交戦するラーズグリーズを確認できるが、ラーズグリーズの反応は3つしかない。


 …………


 「……ウォードッグ、よく持ちこたえてくれた。援軍が到着した。 敵機は撤退してゆく」

 イーグル中隊の接近とともに撤退してゆくユーク軍機。


 「諸君、地上からの連絡を伝える。避難中の混乱での少数の負傷者をのぞき、スタジアムでの市民の死者はゼロ。 彼は――最後まで模範的パイロットであった」

 ひし形の編隊を維持し、ラーズグリーズの後方から接近するイーグル中隊のF−2。スコットたちが到着したとき、スタジアムからは黒煙が上がっていた。 それは、最後まで任務を遂行した戦士の功績を称えるのと同時に墓標にも見えた。


 「―――ダヴェンポート大尉へ、敬礼!」


 沈み行く夕日の中、スコットたちはラーズグリーズを追い越し、スタジアム上空を通過した。  他の友軍機も到着し、撤退する敵機の後を追ってゆく。
18 マーシュ 2007/02/10 Sat 22:26:16 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第76話 『迫り来る混沌のオーラ』  Chaos Aura Coming
 ―――――オーシア首都・オーレッド  Location:Osea Oured

 ノヴェンバー市での出来事から数日後、スコットたちイーグル中隊をはじめ、オーシア本国に残る航空隊は全て首都オーレッドに集結していた。敵航空部隊がどのようにノヴェンバー・スタジアムへ侵入したかということで、実地検証をしていた偵察機がオーシア首都オーレッドに向かうと思われるユークトバニア艦隊を発見したのだ。

 「ミッチェル中佐、何故今まで気がつかなかったのですか?」

 ひとりのパイロットがそういうと、ミッチェル中佐は別の資料を手に取りながら会議を進める。

 「このユーク艦隊は中立国 “オーレリア連邦" を通過している。 我々の国防ラインの隙間であり、また、オーレリアは今内戦のため、周辺海域の警備がおろそかになっている。内戦は内陸部なからな。おそらく島のひとつやふたつ沈んだとしても気がつかないだろう」

 会議室のモニターが切り替わり、敵艦隊の映像が映される。小型艦から大型艦までよりどりみどりだ。主戦場が内陸となった今、海軍は海上輸送路の切断ぐらいかこのような強襲しか目的が無いのだろう。

 「敵艦隊はあと2日でオーレッド近海に到着する。諸君も知っての通り、わが軍はユーク本土の攻略に戦力を集中し、本土が手薄になっている」

 更にモニターが切り替わり、オーレッド近海の地図が表示される。オーレッドは入り組んだ湾内に位置し、首都にたどり着くにはこのフィヨルドを通過しなければならない。敵の侵攻から首都を守るには、この湾口さえ通過させなければいい。

 「わが軍はこれを迎え撃つため、5個艦隊をオーレッド湾口に展開する。参加するのは第1艦隊、第5艦隊、第8艦隊、第15艦隊、第19艦隊。 これらの艦隊で主と防衛部隊を組織。旗艦は第5艦隊の空母「バーベット」とし、第15、19艦隊が先頭で防衛線を張る」

 今現在、確認される敵戦力は戦艦が1隻。イージス艦が3隻。空母が4隻。巡洋艦が8隻。駆逐艦、フリゲートが数十隻とのことだ。司令部の予想では、後から首都に上陸・制圧するために地上部隊を乗せた揚陸艦がやってくるので、発見した場合は優先して攻撃しろと警告した。

 「今回の作戦では敵エースを2度も撃退したわが軍のエース、ガーディアン・イーグルスが作戦に参加する。腕利きのサンド島は不在だが、諸君らも彼らに負けないパイロットであると私が証明しよう」

 会議室のモニターにオーシア空軍のエンブレムが表示される。 会議はここで終わりだ。


 「では、諸君の奮闘に期待する」


 ―――後に知らされたことだが、今回、イーグル中隊以外にも24航空隊。他のガーディアン・イーグルスも参戦するとのことだ。サンド島上空で第2飛行隊指揮官のフォード中佐が戦死したため、その部隊は解体されてしまったそうだが、第1飛行隊、第4飛行隊は現存で支障なく参加するのだろう。
19 マーシュ 2007/02/11 Sun 22:56:28 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第77話 『オーシアン・アサルト』  The Osean Assault

 「敵、ユークトバニア艦隊接近中! わが艦隊との交戦圏内まであと10分!」

 侵攻する敵艦隊から首都オーレッドを守るべく、オーレッド湾外海に展開したオーシア艦隊。かき集めた戦力とはいえ、これだけの数があれば十分なほどだ。 だが、大型艦を中心とした敵艦隊の数もそれ以上である。それに敵艦隊はまだほかにもいる可能性があるのだ。

 「OFSバーベットより全軍。  敵を一隻たりともオーレッド湾に侵入させるな。すべて湾外で撃退せよ!」

 防衛艦隊の旗艦、空母バーベットの艦長が無線で全軍にそう呼びかける。 空母バーベットは15年前のベルカ戦争にも参加した歴戦の船で、随伴する航空団もかなりの実力とのことだ。

 「OFSセレニティーより空母バーベットへ、敵艦隊の先頭はフリゲートとコルベットです。その後方から大型艦が続いています」

 第5艦隊の側面に展開するオーシア第8艦隊の情報収集艦「セレニティー」の管制官がAWACS「ブルー・ドヴ」と連携して情報収集に努める。 なお、第3艦隊にも「アンドロメダ」というセレニティーの同型艦である姉妹艦が存在する。

 「全艦、攻撃用意!」

 防衛艦隊の先頭は第15第19艦隊。その後方に第5艦隊。そしてその第5艦隊の側面に第1艦隊と第8艦隊が展開している。 そして今、第1艦隊の「ヒューバット」、第5艦隊の「バーベット」第8艦隊の「エンデュアリング」からそれぞれの航空隊が出撃した。


 「敵も味方もものすごい数だな……」
 「ああ、グレイトだぜ」

 あたりを見回しながらそうつぶやくベンとノア。参加している航空隊は空軍が約40機。海軍飛行隊が予備戦力を含めて180機ぐらいだ。今空に上がっているのは約60機ほどである。あとは必要に応じて空母から増援が出てくるだろう。

 「イーグル中隊、聞こえるか? こちらバード・リーダーのバンデラス大佐だ。 イーグル中隊の噂は聞かせてもらっている。 頼りにしているぞ」

 側面から同じ24航空隊のバード中隊がイーグル中隊に接近してくる。更に反対側からも同航空隊の真っ白なタイフーン戦闘機がやってくる。間違えでなければ、第4飛行隊の「スワン隊」のはずだ。

 「私はスワン隊を取り仕切る “パク・レウォン” 少佐だ。ヘンダーソン君、マーシャル大佐は気の毒だった。 だが、決して彼の死を無駄にしないように頑張ってくれ!」

 「は、はい!」

 レウォン少佐。どこかで聞いたような覚えがある。確か、502航空隊の指揮官であるブルーベル大佐のファーストネームが「レオン」だったようなそうでないような……


 「スコット、どうしたの?」と、ステラ。

 「いや、レオンとか、レウォンとか、似た名前の人が多いなぁと思って」


 ひょっこりとそこにノアが介入する。

 「でも、隊長もそれに負けていませんぜ。陸軍に1字違いの兵士がいるだな」


 それはなぎれもなく陸軍のスコットのことだ。ただ、ベンもノアもそれほど珍しくない名前だとは思うスコット。
20 マーシュ 2007/02/15 Thu 19:53:25 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第78話 『オーレッド強襲』  Attack on the Oured

 「敵艦隊の前衛が攻撃圏内に入りました! こちら目掛けて突撃してきます!」

 「OFSバーベットより全艦艇へ!攻撃を開始せよ! 1隻たりともオーレッド湾へ侵入させるな! 航空機部隊は敵航空機を排除し、敵艦隊の前衛を排除せよ!」

 第15艦隊と第19艦隊の艦艇が対艦ミサイルによる迎撃を開始する。それとほぼ同時に、ユーク軍艦隊もミサイルで反撃を仕掛けてきた。 敵艦隊は防御用の機関砲でミサイルを防御しつつオーレッド湾口向かって全速力で向かってくる。

 「おおし! オーシアのエースはラーズグリーズだけじゃぁねぇと敵に見せ付けてやろうぜ! 隊長!」

 ノアがそう叫ぶと、スコットはその勢いに乗るかのような口調で前方に火力を集中するように命令を出した。ステラ、ベン、ノア、スコットの順でLASMを敵艦船に発射し、敵艦隊の前衛6隻の内3隻の撃沈に成功する。

 「各機、各艦、ガーディアン・イーグルスに続け!」

 防衛艦隊の旗艦、空母バーベットの艦長が味方の士気向上を促すようにそう叫ぶ。空母バーベットのブルーム艦長は長年の経験から「戦争における最大の鍵は兵士の士気である」という答えを紡いでいるため、どんな戦場でも兵士の士気には気を使っていた。

 「スワン・リーダーからイーグル・リーダーへ、我々は後方で援護する! 敵艦船は任せるぞ」

 孤立して敵の集中攻撃を受けるのは痛いので、イーグル中隊を含むガーディアン・イーグルスはひとつのグループとして戦闘を続ける。 だがそのとき、オーシア軍機を無視して戦線後方を目指す敵編隊が確認される。どうやらその集団は防衛艦隊の旗艦「バーベット」に向かっているようだ。

 「こちらOFSバーベット! 現在敵戦闘攻撃機の攻撃を受けている! 至急援護を!」

 「OFSシバリーより航空機部隊へ! 敵の数が多くバーベットを護りきれない!手を貸してくれ!」

 ユークトバニアのVTOL航空機ライトニングUとハリアー、フリースタイルがバーベット向かって群がる。VTOLというのはヘリコプターのように滑走路なしで離着陸できる能力を持つ航空機のことだ。

 「旗艦が狙われている! スコット、援護に行きましょう!」
 「分かった、みんな!」

 対艦攻撃を中断して空母バーベットの援護に向かう一同。スワン隊のタイフーンがXLAAで先制攻撃を仕掛け、フリースタイルとハリアー数機を排除した。そして通常ミサイルの射程に入るとスコットたちも残りの敵機の攻撃に移る。

 「ケツに食らいついた! 食らえ!」

 ノアのヴァイパー・ゼロが空母バーベットに降下する敵のライトニングUを上から銃撃する。敵機には風穴が開き、煙を吐いて海面へと激突した。だが、数発の流れ弾がバーベットのブリッジに命中していた。 これはまずい。ノアはばれる前に早々と次の目標へ移行する。

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