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ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD CHAPTERX 運命の再会

前スレッド No.135
47 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:57:46 DXjf..D3Q.5iAv
ACE COMBAT 5  INVISIBLE GOD Chapter X A Fateful Encounter
エースコンバット 5 インヴィシブル・ゴッド 第5章 運命の再会

この小説は「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」の2時創作作品となります。
分類ではサイドストーリーに属し、本編のネタバレも多数ありますので、読む際はご注意ください。なお、「リザレクション・オブ・ラーズグリーズ」と多少の矛盾点が生じています。

Contents 目次

Chapter1 Phantom Menace  第1章見えざる脅威
#00 『その時、僕は空中にいた』  Red Alert
#01 『新たな部隊』  The Guardian Eagles Part1
#02 『なりゆき』  The Guardian Eagles Part2
#03 『開戦』  “Open The War” Part1
#04 『ソーズマン』  “Open The War” Part2
#05 『狭間の第1派』  “Naval Blockade” Part1
#06 『ケストレルを守れ』 “Naval Blockade” Part2
#07 『やばいもん見ちまった』  I shouldn't have looked
#08 『海上封鎖線』  “Naval Blockade” Part3
#09 『ヘヴィーなサーフボードだぜぃ』 Kestrel’s Alive
#10 『ミラのシャーベット』  Mira’s Sherbet

Chapter2 A Blue Dove for the princess  第2章 姫君の青いはと
#11 『姫君の青い鳩』  A Blue Dove for the princess
#12 『タービンの回転が上がらねぇ!』  These turbines won't start up!
#13 『ウォードッグ・リーダー』  War dog Leader
#14 『初陣』  “First Flight”
#15 『アーチャー』  Archer
#16 『日没の空』  Skies of Sunset
#17 『サンド島からの手紙』 Letters From Sand Island
#18 『待ち合わせはイーグリン海峡で』  “Rendezvous”
#19 『第3艦隊集結』  “Rendezvous” PartU
#20 『艦隊の死』  “Ballistic Missile”

Chapter3 The Demon of the Razgriz  第3章 伝説の悪魔
#21 『雪の降る空』  Snow Skies
#22 『旅立ち』  Odyssey
#23 『サンド島防衛戦』  “Front Line”
#24 『伝説の悪魔』  Demon of Legend
#25 『Aサット照準』  A-sat Targeting System
#26 『ラーズグリーズの悪魔』  The Demon of the Razgriz
#27 『シンファクシ』  “Scinfaxi”
#28 『ミラのカキ氷』  Mira’s Frappe
#29 『悪夢?』  The Doom?

Chapter4 Road to Yuktobania  第4章 ユークトバニアへの進軍
#30 『食卓の鬼神』  The Cock of Round Table
#31 『15年前』  “15 Years Ago”
#32 『ザ・ベルカン・ウォー』  THE BELKAN WAR
#33 『円卓の騎士』  The knight of the Round Table
#34 『ベルカのお肉』 The Belkan Beef
#35 『憎しみの連鎖』  “Chain Reaction”
#36 『コインの表側』 Face of the Coin
#37 『進軍』 Road to Yuktobania
#38 『あおいはと』 A Blue Dove for the princess Part2
#39 『紅の海』  Crimson Sea
#40 『戦闘開始』  Engage

Chapter5 A Fateful Encounter  第5章 運命の再会
#41 『戦闘機乗りの名誉にかけて、一歩も引き下がるな!』  Knight of the Skies
#42 『今こそイージス(盾)の使命を果たす』 Aegis
#43 『女将アンダーセン』  Admiral Mao Andersen
#44 『ゴールゥビ・ガルボーイ』 Blue Dove
#45 『運命的な再会』 A Fateful Encounter
#46 『ユークトバニアの精鋭』 The Republic Commando Part1
#47 『オーシア海軍の剣士』  Swordsman
#48 『リパブリック・コマンド』 The Republic Commando Part2

Coming Soon...............
48 マーシュ 2006/12/29 Fri 01:00:25 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第41話 『戦闘機乗りの名誉にかけて、一歩も引き下がるな!』  Knight of the Skies

 オーシア陸軍の大規模機甲部隊を輸送しているこの輸送船団が到達すれば、この戦争を早期終結させる可能性も見出せる。しかし、それは敵も承知のこと。全力で輸送船団を海の藻屑とするべく、大規模な軍団を惜しみなく投入しているようだ。

 「<ジョールトゥイ・リーダーから各機へ、ビェールイとチョールヌイ隊到着までに上空の消毒を完了させる。 フスィヴォー・ハローシヴォ>」
 「<了解した。 これよりオーシア艦隊への攻撃を開始する>」

 オーシア艦隊の対空砲火を受けつつも、ユークトバニア軍の大編隊は艦隊上空のフィルマ隊やイーグル中隊にXMAAなど遠距離ミサイルを送ってくる。

 「イーグル1、レックスだ! 敵のど真ん中に飛び込むぞ!」
 「大佐!?」
 「敵だって突っ込んでくるとは思ってないだろ!? いくぞ!」

 飛来するミサイルの嵐を潜り抜け、敵編隊のど真ん中に突入するイーグル中隊。 縦横360度からミサイルと銃弾が飛び交い、下では艦隊が、上では各種銃弾と戦闘機が飛び交う修羅場と化した。

 「ブルーベル大佐! ジャミングです!レーダー使用不能!」
 「わかっている! みんな、戦闘機乗りの名誉にかけて、一歩も引き下がるな!」

 イーグル中隊の後方からは、ブルーベル大佐のフィルマ隊が。前方からはユーク軍の後続部隊。 まるで蜂の大群に襲われているかのようだ。

 「敵が多過ぎる! アマデウス、指示を!」
 「くそっ! アニー・シックスが撃墜された! 俺が穴を埋める!」

 空中戦の基本は無防備な相手の背後から攻撃を仕掛けることだが、ここでは背後以外からでもミサイルや銃弾が飛んでくる。 生きるか死ぬかは運しだいかもしれない。

 「シャーベット、後ろに敵機。 私に任せて!」
 「援護に感謝します、ファイアフライ。 しかし、敵はまだ多数」

 スコットに向けて3発のミサイルが迫っている。これらすべてを回避するのは難しいので、スコットは海面すれすれまで降下し、水しぶきができるほどにまで低空に飛んだ。さらにそこで追加燃料タンクを切り離し、発生した水しぶきにミサイルが突っ込むのを確認した後、上昇して戦線へと引き返す。

 「ムスタング、フォックス2」

 敵爆撃機の真下からミサイルを放つスコット。爆弾装が開いているところにミサイルが入り込んだ為、空中で爆弾もろとも大爆発を起こした。 しかし、戦闘機と爆撃機がごちゃまぜになっている空など見たことがない。まるで古のオーシア戦争時代。まだプロペラ機時代の風景みたいだ。

 「敵の電子戦機を探さないと。このままでは味方の被害が増加する!」
49 マーシュ 2006/12/29 Fri 20:29:08 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第42話 『今こそイージス(盾)の使命を果たせ』 Aegis

 「駆逐艦ホワイト・パール、大破! 戦闘不能! 右舷防衛ライン崩れます!」
 「こちらアンダーセン、損傷を受けた艦は後退させて! その船にもっとも近い艦が代理防御を!」

 いつの間にか空中戦の主戦場が艦隊上空に変わっている。その一部分から艦隊を狙うのはユークの爆撃機部隊。その集団が次々と艦隊の中央を航行する輸送船向かって対艦ミサイルをリリースした。

 「2時方向より更にミサイル! 叩き落せ!」

 オーシア海軍のイージス艦隊が一斉にミサイルを発射して敵ミサイルの迎撃を試みる。ユーク軍は物量にものを言わせる飽和攻撃みたいだが、こちらも性能面では負けてはいない。イージス艦隊の迎撃により大半のミサイルは撃ち落され、残りもファランクス等できれいに片付けた。

 「こちらセレニティー。 レーダーが低高度から接近を試みる敵航空機を察知。 11時方向からホウカム攻撃ヘリコプターが17機」

 「奴等、我我を馬鹿にしているのか? ヘリごときディープ・アビスの敵ではない!」

 オーシアイージス艦ディープ・アビスのディアス艦長は余裕に満ちた声でヘリの始末を命じた。 ヘリはハエのごとく叩き落されたが、それでも勢いは止まらず続々とこちらに接近してくる。 ユークトバニア、ヘリコプター部隊の意地とでも言うのか?

 「艦長!残弾数が!弾が尽きます! 弾薬の消耗が激しすぎます!」
 「補給艦を呼べ! 本艦に隣接して補給を開始させろ!」

 「しかし艦長、戦闘中です! 補給中に攻撃を受けたら……」
 「ここで補給せずにいつ補給する? 急がせろ!」

 上空の制空権は非常に不安定だった。すでに敵攻撃機は艦隊上空へ侵入し、敵戦闘機も味方機も艦隊の上空で戦闘を繰り広げている。

 「こちら補給艦アクア・ヴィデ。敵の攻撃が激しくて接近できない! 補給中断を!」

 そのとき、上空から攻撃機のものと思える残骸が降り注ぎ、アクア・ヴィデの真上に激突した。 不幸にも補給物資に引火したのだろうか? 艦は凄まじい爆音と共に轟沈した。 更に先ほどの敵爆撃機が反転し、艦隊の後方から再び長距離ミサイル攻撃を仕掛けてくる。

 「6時方向に敵爆撃機、ミサイル発射を確認! 迎撃急げ!」

 すぐさま艦隊がミサイル迎撃の為に応射を開始。 艦隊と爆撃機部隊の間で爆発の嵐が続々と発生した。 しかし、その爆炎の中から更にミサイルが迫る。


 「―――っ! 総員、衝撃に備えろ!」

 イージス巡洋艦ディープ・アビスのすぐ後方を航行する駆逐艦レイク・バゼットが迫りくるミサイルを迎撃しきれず、2発の直撃弾を受けて火を帯びた破片と残骸を撒き散らしながら海面に横たわり轟沈した。

 「アンダーセンから巡洋艦シルバー・キャニオンへ。レイク・バゼットがやられた。トランスポーター3の側面に移動して。 後方のフリゲート4隻は陣形を維持」

 輸送船を護衛する艦船が沈めば他の艦が前へ出て応戦する。 マオは輸送船団を守る為に第8艦隊を失う覚悟を決めていた。
50 マーシュ 2006/12/29 Fri 20:29:47 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第43話 『女将アンダーセン』  Admiral Mao Andersen

 マオ・アンダーセンが指揮を執る空母エンデュアリングは、半年前に就役したばかりの最新鋭空母である。この船は空母と巡洋艦の能力を併せ持った航空巡洋艦であり、ステルス性、武装が大幅に強化されている試作軍艦だ。

 「提督、敵艦隊が主砲の射程内に入りました! 既に先頭のフリゲート艦が交戦を開始しています!」

 「―――照準、ユークトバニア駆逐艦アトリーチュヌイ。 砲撃はじめ!」

 空母エンデュアリングには船体左右に2門の試作キャノン砲を装備している。これは対艦、対地、対空あらゆる目標への使用を考慮された万能砲だが、連射が効かない為多数の目標に対処できないのが欠点である。 しかし、他に装備されているRAMやファランクスが近接防御を担当する為、主砲の短所はこれらが補っている。

 「セレニティーから状況報告。 艦隊の被害、フリゲート9隻、駆逐艦3隻、巡洋艦1隻損失。 輸送船トランスポーター1,2小破、駆逐艦ポート・ライガー中破」

 「こちらディープ・アビスのディアス大佐だ! 敵艦隊からの攻撃熾烈!」

 そのとき、エンデュアリングの側面から数機の青い航空機が接近してくる。対艦ミサイルで武装したターミネーターの狙いは輸送船ではなく、艦隊の中枢である空母だ。

 「提督!4時方向にユークのターミネーター戦闘機! 急速接近中!」

 ユークトバニアの識別信号を出しているが、カラーリングが他とは違い青を基盤としている。それらのターミネーターはエンデュアリング向かって一斉にLASMを発射。 用事が済むと帯状に散開し散り散りに逃げてゆく。

 「敵機、ミサイル発射! 対艦ミサイル8発接近中!」
 「近接防御! ファランクス、ローリング・エアフレイム・ミサイル撃ち方始め!」

 マオの号令と共にエンデュアリングに装備された防御兵装が一斉に火を吹く。射撃管制システムの改良により、遠方の目標にはRAMが。至近距離の目標にはファランクスが対応する。ただし、場合によってはRAMも至近距離を防御することもある。

 「―――こちら空母エンデュアリングのアンダーセン。各艦へ、敵艦隊の旗艦を無力化し、本海戦の主導権を獲得します。私の合図で一斉射撃を開始。 全艦、撃ち方用意!  ハープーン・ミサイル、1番から4番照準―――」

 敵の青いターミネーターが放ったミサイルの撃墜を確認すると、今度は艦隊の進路を妨害する敵艦隊、旗艦への攻撃へ移る。

 「目標、ユーク海軍巡洋艦スヴィェズダー。 全艦、撃ち方始め!」

 一斉に対艦ミサイルを放つオーシア艦隊。それぞれのミサイルが空へと駆け上がり、上空には薄いくもの巣が出来上がった。 やがてそれらのミサイルはユーク艦隊旗艦スヴィェズダー目掛けて突き進み、敵艦の放つ弾幕を押し返して多数の直撃弾を叩き込んだ。
51 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:53:43 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第44話 『ゴールゥビ・ガルボーイ』 Blue Dove
―――セレス海・上空  Location:Ceres Ocean

 「チャールズ・セブン何処にいる!? ウィングマンから離れるな!」

 「ビールズ・スリーからチャールズ・リーダーへ、今誰かがやられたぞ。お前のウィングマンじゃないか!?」

 落としても墜としても敵は続々とやってくる。 これでは敵爆撃機や攻撃機どころの話ではない。

 「アマデウスよりフィルマ全機へ! 空母エンデュアリング上空に集結しろ! 体勢を立て直して再度攻撃を仕掛ける!」

 「アニー・グループ、了解。 フォーム・アップ(集合)だ」
 「ビールス・チーム了解、各機、エンデュアリング上空を目指せ」

 一斉にエンデュアリング上空へ引き返し始めるフィルマ大隊。いつの間にか各部隊とも多数の損失を出している。

 「チャールズ・ワン、了解」
 「了解。ビールス・チーム各機、エンデュアリング上空へ」

 ブルーベルの部隊はアニー(A)、ビールズ(B)、チャールズ(C)、ディック(D)の4分隊に分けられている。それらの部隊を統括するのが指揮官のブルーベルだ。

 「いいぞスコット。 ジャマー(電子戦機)を全部叩き落したな!」

 スコットは荒れ狂う空の中、何とか敵の電子戦機掃討を成し遂げた。ステラのカバーもあったので、敵の妨害は最小限で済んだ。

 「イーグルス、これより敵攻撃機と敵爆撃機の攻撃に移るぞ!」

 遠距離から艦隊を狙う敵爆撃機と戦闘攻撃機は厄介な存在だ。これ以上それらを野放しにしておくわけにはいかない。 イーグル中隊は苦戦するフィルマ大隊とエンデュアリング直援部隊を支援しつつ爆撃機の掃討に向かった。

 「いたぞ。ベアが6機だ。 スコット、全部落とすぞ!」
 「了解です!」

 マーシャル、スコットはステラとミラの援護の下ベア向かってミサイルを発射した。あまり接近すると後方に装備された機関砲の歓迎を受けてしまうので、ミサイルを放った後はすぐに離脱して別の目標に移る。

 「正面から敵のフォックスハウンドだ! ヘッドオンする!」

 3機のフォックスハウンドがスコットたちに迫る。その背後ではエンデュアリングに所属する海軍航空隊のライトニングUの部隊が、激しい戦闘を繰り広げていた。

 「後ろか!」

 機関砲を撃ちながらすれ違った後、スコットは目で敵を追いながら機体をそちらに旋回させる。3機のうち1機はマーシャルがすれ違いときに撃墜していた。 飛び交う飛行機やミサイルが目障りだが、確実にその敵機に追いつきロックオンを確認すると、ミサイルでその敵機を撃墜した。

 「こちらブルー・ドヴ。 ステラ、ミラ、気をつけて! そっちに手ごわいのが向かっている!」

 スコットたちイーグル中隊はこの戦闘に参加している中では、エースに分類される可能性が高い。だが、もちろん敵にも同じようなエースはいるのだろう。
52 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:54:53 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第45話 『運命的な再会』 A Fateful Encounter

 マーシャルのファルコン目掛けて飛来して来るのは1機の青いターミネーターだ。真っ青な機体は他の敵とは違い、何か特別な威圧感を与える。

 「くそ! ケツに喰らいつかれた!」

 青いターミネーターがマーシャルの背後から機関砲で銃撃してくる。マーシャルは木の葉のように舞い踊って銃撃を回避し続けるが、敵もそれに負けずしぶとい。 このままではマーシャルが危険なので、スコットはすぐさま援護に駆けつけた。

 「マーシャル大佐、僕が援護します!」

 コックピット内にあるHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)に表示されるガン・サイトが徐々に敵ターミネーターと重なり始める。重なったときに引き金を引けば、銃弾は敵機に命中するはずだ。

 「気をつけろスコット! こいつは手ごわいぞ!」

 ガン・サイトに敵機が重なった瞬間、スコットは引き金を引いた。機関砲から銃弾が吐き出され敵機に向かっていくが、敵機は急に機首を上に引き上げ、その場で急減速し始める。

 「コブラ……クルビット軌道!?」

 青いターミネーターがスコットのファルコンの上を転がるように、垂直回転ですり抜けていく。そして、敵機がスコットの真上に指しかかった瞬間、敵のパイロットと視線が一致した。


 ――――――――――嘘だ。


 従来であればヘルメットや酸素マスクにさえぎられて相手の素顔を確認することはできない。ただ、イーグル中隊では気圧調整機能の付いた最新モデルを採用しており、外見上は宇宙服のものと近く、視界確保の為に前面はグラスファイバーで作られ、素顔が見えるようになっている。

 また、相手のほうは偶然か故意か判らないが、酸素マスクを外していた。 そしてその相手は機体を水平に戻すと、スコットのファルコンの後方につく。


 「バクーニン! 僕だ!スコット・ヘンダーソンだ!」

 「<……スコット!? 無事だったのか!?>」


 荒れ狂う空を飛ぶ2機の航空機は周囲の流れに身を任せて飛行を続ける。


 「こちらイーグル1. スコット、どうした!?」

 マーシャル、ステラ、ミラもスコットらのあとを追おうとするが、敵の妨害が激しく思うように接近できない。

 「なぜバクーニンがユークトバニアに……それも軍隊に! 5年間の間に何があったんだ!?」
53 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:56:09 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第46話 『ユークトバニアの精鋭』 The Republic Commando Part1

 「<俺は戦う為だけに生まれたようなもんだ。 だが、お前だけは殺したくはない>」

 青いターミネーターと追跡劇を続けるスコット。 どうやらその敵機のパイロットとは面識があるようだ。

 「やめてくれ!僕たちは「友達」だろ! バクーニンにとって、戦争とか名誉とか、命令は友達より大事なのか!?」

 しかし、相手からの返事はなかった。青いターミネーターは機関砲でスコットのファルコンに襲い掛かっている。 放たれる銃弾、機体をかすめる銃弾。青いターミネーターに乗るパイロットにはスコットの友人の面影はなかった。

 「くそっ!」

 ロックオン警報に続いてミサイルアラートが鳴り響く。 スコットは機体をひっくり返し、攻撃妨害用のチャフ・フレアを散布しながら降下する。バックミラーでも確認するが、ターミネーターはまだ背後についている。

 「スコォォォォォォット!!」

 スコットのファルコンと敵ターミネーターの間に割り込ませるかのように、銃弾とマーシャルのファルコンが飛び込む。敵ターミネーターは姿勢を乱し、スコットの追撃を中止した。

 「マーシャル大佐!」
 「これでおあいこだぜ! だが、今夜はおごれ!」

 スコットのもとにイーグル中隊が合流する。これで数の上ではこちらが有利だが、基本性能では明らかにあちらが上だ。ただ、数年前に隣国ユージア大陸での戦争ではたった5機のターミネーターが数十機の敵を相手に圧勝したという記録がある。

 「単独では勝てない。連携して相手を追い込まないと」

 ステラが機関砲でけん制しつつ、ミラがミサイルで撃墜を狙う。だがそう簡単には攻撃を命中させられない。まるで小さな鳩を出来の悪い弓矢で狙っているかのようだ。

 「こっ、こちらブルー・ドヴ。イーグル中隊へ、敵機に関する最新情報が入りました。 ユークトバニア共和国第の特殊部隊です!」

 敵の無線を傍受した通信情報艦セレニティーからもたらされた情報によると、この青いターミネーターは最前線への派遣率が比較的高い「ユークトバニア “共和国の特殊部隊” 」(リパプリック・コマンド)だそうだ。

 「ち、近くにその部隊の他の戦闘機がいるはずです! 気をつけてください!」

 とは言われても、あたり一面戦闘機だらけである。そのなかから特定の戦闘機を探すのは少々面倒だと思ったが、敵の方からこちらにやってくるのではないか?と思い、捜索はほどほどにして、戦闘に集中した。

 「奴の仲間が来る前に撃墜する! イーグルス、油断するな!」

 マーシャル、ステラ、ミラが青いターミネーターを再度追撃しなおす。
54 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:56:47 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第47話 『オーシア海軍の剣士』  Swordsman

 「ガンマ4ロスト! ガンマ5、防御位置を引き継げ! シグマ7、シグマ8は敵ヘリコプターを! 俺が空母の直援につく!」

 「こちら巡洋艦シルバー・キャニオン!敵の集中攻撃を受けている! 浸水が激しくてマトモに回避行動をとれない!」

 敵艦隊の旗艦スヴィェズダーの撃沈により敵艦隊の統制に乱れが生じている。しかし、これは時間がたてば回復するだろうし、他の艦船がこちらへの攻撃を継続している限り危険に変わりはない。

 「提督、第3艦隊の航空隊がこちらに向かっています!」

 「第3艦隊? スノー大尉の部隊?」
 「はい、多数の戦闘機と戦闘攻撃機を引き連れています!」

 海軍のデルタ、アルファ部隊を従えて第8艦隊の援護に出向いてきたスノー大尉。 実はこのとき、第3艦隊自体が後方数百キロから別の輸送船団を護衛してユークトバニアを目指していたのだ。

 「こちらソーズマン、第8艦隊を支援する! 各機散開して対処に当たれ!」

 スノーは戦場に飛び込むと最初に敵攻撃機を撃墜した。寮機と連携をとりつつ次々と敵を排除していく。だが、スノーは戦場を飛ぶうちにある敵機に興味を引かれる。 イーグル中隊と交戦する青いターミネーターだ。

 「うおっ! マーカス!いつの間に!?」
 「ポール!たった1機相手になにを手間取っている!?」
 「奴は間違いなくユークのエースだ! 見ていないで手伝え!」

 トムキャットとホーネットを2機ずつ従えたスノーが加勢する。

 「―――お前は知っているぞ! セント・ヒューレットでフランカーに乗っていた奴だな!?」

 どうやら、スコットのみならずスノーも敵エースのことを知っているようだ。一通りミサイルで攻撃したが命中はせず、そのまま接近して格闘戦に突入する。

 「ポール! 俺の後方からカバーしろ!」
 「おし、任せておけ!」


 スノー大尉の援護に回るマーシャル大佐。


 「……むお!? ―――うぉい! マーカス! なにさり気なく命令してんだ! お前は「大尉」で俺様は「大佐」だぞ! どちらが上官だ!? んあ!?」

 だが、スノーは既に敵ターミネーターと交戦状態に入っており、マーシャルの言葉は聞こえていないようだ。 4機の寮機とともに敵ターミネーターへ集中攻撃を加えるが、先ほどスコット達が目撃したのと同じ軌道でスノーたちの追撃を振り切る。

 「コブラだと!」

 相手を追い抜かせることをオーバーシュートという。コブラ軌道で空中静止すれば、オーバーシュートさせるのは簡単なことだ。その後は機体を立て直し、無防備な相手の背後から攻撃を加えることが簡単に出来る。
55 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:57:21 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第48話 『リパブリック・コマンド』 The Republic Commando Part2

 スノー大尉らが加勢してくれたが、その直後にこちらにまっすぐ接近してくる敵影があった。どうやらその青いターミネーターの所属する部隊らしい。

 「こちらファイアフライ! 大佐、あれは……」

 ステラが見たこともない戦闘機が飛来してくることを告げた。しかも凄まじい速度で。

 「こちら ぶっ、ブルー・ドヴ、あれは隣国ユージア。 えっ、エルジア軍の最新鋭戦闘機「ワイバーン」です! ステルス性と可変翼を装備したあの機体の性能はかなりのものです!」

 隣国の新型戦闘機「ワイバーン」1機が2機のターミネーターを連れ、射程に入るとスノー大尉の部隊向かってXLAAを発射した。

 「ブレイク!ブレイク! くそっ!デルタ7が撃墜された! デルタ8、まだ狙われているぞ!」

 あっという間にスノーの寮機である2機のトムキャットが鉄くずに変貌する。残った2機のホーネットはすぐさま体勢を立て直して反撃に移るが、基本性能で劣る為になかなか思うように主導権を握れない。

 「くそ、早い!」

 スコットは敵ワイバーンをガン・サイトに捕らえたが、すぐ範囲外に逃げられてしまう。 だがそのとき、彼のファルコンの背後に先ほどの青いターミネーターが迫る。

 「<立ちはだかるのなら、お前でも容赦はしないぞ!スコット!>」

 「またか!」

 放たれたミサイルをぎりぎりで回避するスコット。敵機の追撃を振り切る為にありとあらゆる回避行動を続ける。海面が頭上に流れ、続けて雲が見える。そして今度は爆発が見え、ミサイルや銃弾、航空機の群れが繰り返し流れた。縦横全方向に敵機がいるため、どこへでも逃げればいいというわけではない。だが、少し上空に見慣れたファルコンの姿が。

 ステラのファルコンが2機のターミネーターとワイバーンに狙われている。すぐに援護が必要だ。スコットは背後に先ほどのターミネーターがいないことを確認すると、即座にステラを狙うワイバーンとターミネーターをミサイル・ロックした。

 「<ミサイルだ! 回避する!>」

 スコットの放ったXMAAがステラを狙う3機の敵向かって飛んで行き、相手も回避行動に入る。 続けてスコットは通常ミサイルでワイバーンの背後から追い討ちを加えた。ワイバーンはチャフ・フレアを散布しながらブレイクし、ミサイルを回避する。

 「ミサイル命中せず。 接近して機関砲を使う!」

 飛び交うミサイル、銃弾の嵐の中を急降下してゆくワイバーンとファルコン。ワイバーンは可変翼を装備しており、速度によっては翼が自動で折りたたまれて変形する構造を持っている。
56 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:57:35 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第49話 『この大空にオーシアの翼をはためかせん』  The Wing of the Osean

 ワイバーンは速度が圧倒的に速い。ファルコンの速度でワイバーンについていくのは少々困難である。 相手はスコットとある程度距離をとると、どこかで反転し、ヘッドオン状態で再接近してくる。

 「真正面から来るか!」

 ロックオン警報に続いてミサイルアラートが鳴り響く。スコットはチャフ・フレアを散布しつつ、機体に緩やかなループを描かせるバレル・ロールでミサイルをやり過ごす。

 「ファイアフライ、フォックス2」

 スコットの後方に飛び去った敵ワイバーンにミサイルを放つステラ。彼女はスコットの後を追い、彼の背後を守っていたのだが、今は彼女の背中が無防備だ。今まさに敵のターミネーターが彼女のファルコンの真後ろに居る。

 「ステラ!上に逃げて! 僕が援護する!」

 彼女が上昇してスコットの斜線上から退避すると同時に、彼女の背後を狙うターミネーターに機関砲を放った。

 「<畜生! 機体に風穴が開いた!>」
 「<無理をするな。今すぐ戦線から離脱しろ>」

 スコットの機関砲がターミネーターに命中し、機体のどこからか黒鉛を吹いている。そのターミネーターは方向を変えて戦場から離脱し始めた。 味方のライトニングUがそれを追撃しようと試みたが、他の敵機に阻まれ止めを刺すチャンスは奪われてしまった。

 「お前のケツの穴が丸見えだぜ!」

 友軍機を狙うターミネーターの背後を奪ったマーシャル。敵の軌道を把握し、完全に後ろに密着している。 だが、マーシャルがミサイルを放とうとした瞬間、ターミネーターが真後ろにミサイルを放ってきたのだ。驚きながらもブレイクし、ミサイルはコックピットすぐ近くをかすめた。

 「これではきりが無いな…… イーグルス、ワイバーンを狙うぞ! 奴が親玉に違いねぇ! ……奴はどこだ?」

 ワイバーンは今、スコットとステラとドッグファイトを繰り広げている。マーシャルはミラを呼び出し、共にワイバーンを包囲し始める。 違う方向から全員でワイバーンを捕捉し、連続で攻撃を仕掛ければいくら性能の高いワイバーンといえど、すべての攻撃を回避するのは困難なはず。

 「逃がすな! 奴を叩き潰せ!」

 連続でワイバーンに攻撃を仕掛けるイーグル中隊。 そして、ミラの放ったミサイルを回避する為にワイバーンがスコットのすぐ近くで無防備な姿を見せた途端、スコットは機関砲の引き金を引いた。

 「よし!」

 機関砲に撃たれ、ワイバーンは黒鉛を吐きながら海面へと姿を消した。 それと同時に、敵部隊は撤退を開始する。
57 マーシュ 2006/12/30 Sat 20:58:28 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――第50話 『決別への引き金』 The Trigger


 「敵艦隊撃滅! 提督、我々の勝利です!」

 スノー大尉が引き連れてきた攻撃機部隊と、エンデュアリング所属部隊の活躍で敵艦隊は撃滅。 上空では青い敵精鋭部隊が撤退すると、他の部隊もそろって引き返し始めた。 先ほど撃墜したワイバーンに関係があるのだろうか?


 「こちら、空母エンデュアリング。アンダーセン提督。 本艦隊は無事に目的地に到達することが出来ました。 海、そして空の英雄たちに心から感謝します」

 困惑のスコットをよそに、オーシア兵士は歓声を上げた。多数の被害を出しつつも輸送船の損失は免れ、オーシア第8艦隊は何とか上陸部隊搬出地点であるバストーク半島へたどり着くことに成功した。 また、この戦闘で敵精鋭部隊を撃破したイーグル中隊の活躍が評判になっているとの話も浮上している。

 「うむうむ。 みんな、今日はハイエルラークに帰らず、ドレスデネ地方の前線基地に行けってよ。別の基地でお泊りだ!」と、マーシャル。

 一方で、この戦闘でスコットが撃墜した「ワイバーン」は最寄りの基地、サンド島に送られることとなった。この機体は格好の研究資材となるとのことで、わざわざサルヴェージ船を使用して海底から引き上げたのだ。

 「ねえ、スコット。 バクーニンって誰?」

 ステラは無線越しにスコットを呼びかける。あの戦闘からスコットの様子がおかしい。 仲間として相談に乗るべきだと思い、ステラはもう一度彼の名を呼んだ。


 「おーい、シカトかー?」と、マーシャル。


 「……バクーニンは僕がまだ子供のころに出会った、特別な親友だった」

 「今も子供だろう?」


 「こちらシャーベット。たいさ、少しうるさいですー」

 マーシャルの機体がズルズルと編隊から遠ざかっていく。 そんなマーシャルのことは気にせず、ステラとミラはスコットの身を案じていた。


 「子供のころって言うと、いつの話なの?」


 「―――あれは、僕がまだユージアのサン・サルバシオンという所に住んでいたときの話」


 スコットはキャノピー越しに青い空を見上げて、その敵のエース、バクーニンに関して語り始めた。

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