ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD CHAPTERW 進軍
前スレッド No.134
- 36 マーシュ 2006/12/26 Tue 22:45:38 DXjf..D3Q.5iAv
- ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD Chapter W Road to Yuktobania
エースコンバット 5 インヴィシブル・ゴッド 第4章 進軍
When history witnesses a great change, Razgriz reveals itself...first, as a dark demon.
As a demon, it uses its power to rain death upon the land, and then it dies. However, after a period of slumber, Razgriz returns.
“歴史が大きく変わるとき、ラーズグリーズはその姿を現す。 はじめには漆黒の悪魔として、大地にしを降り注ぎやがて死ぬ。 しばしの眠りの後、ラーズグリーズは再び現れる。
―――――And Hervor …………ヘルヴォルと共に現れる
――――――――――主な登場人物 Main Character
オーシア国防空軍第24飛行隊 “ガーディアン・イーグルス”
Osean Air Defense Force 24th Squadron “Guardian Eagles”
スコット・ヘンダーソン Scot Henderson TAC Name:“Mustang”
本作の主人公。国籍不明機の攻撃から生き残った一人。高校卒業と共にオーシア空軍へ入隊。なりゆきか運命かは曖昧だが、現在はガーディアン・イーグルスに所属し、オーシアの空を守っている。また、サンド島のナガセとダヴェンポートとは同期。真面目で控えめな性格だが、熱くなると我を失うところもある。極端に得意や苦手は存在しないが、勉強も運動もそれなりに出来る秀才。TACネーム(ニックネーム)はMustang(ムスタング)
ステラ・バーネット Stella Burnet TAC Name:“Firefly”
オーシア空軍第24飛行隊「ガーディアン・イーグルス」に配属する若手のパイロット。軍隊にはあまり興味が無いが、親友である“ケイ・ナガセ”が空軍に入隊するのをきっかけに彼女も同じ道を進んだ。父親は15年前のベルカ戦争で撃墜されて以来行方不明で、母親も失踪した為、幼いころからポールの親戚が経営するバーネット孤児院で育つ。TACネームはFirefly(ファイアフライ)
ポール・“ジャック”・マーシャル Paul“Jack” Marshall TAC Name:”Rex“
オーシア空軍第24航空隊、「ガーディアン・イーグルス」通称イーグル中隊の隊長。 判断力があり部隊長としては優秀なのだが、テンションが高く私語が多い為に少々浮き出た存在である。空戦技術はオーシア空軍の中でもかなり高い。階級は大佐。15年前のベルカ戦争に参加。そこで彼は同じ部隊に所属していた「2人のジャック」と意気投合し、それ以降彼も「ジャック」と名乗ることがあったそうだ。TACネームはRex(レックス)
ミラ・バーク Mira Burke TAC Name:“Sherbet”
オーシア空軍第24飛行隊所属「ガーディアン・イーグルス」のパイロット。一言で言うと “2重人格” 。戦闘時は凛々しいが、それ以外となると気合が抜けたかのようにだらだらしている。 出身はユージア大陸のサンサルバシオン。また、アイスシャーベットが大好きで、暇さえあればとにかく食べている為、TACネームはsherbet(シャーベット)
―――――その他の登場人物 Sub Character
ジェシカ・ブラッカイマー Jessica Bruckheimer
オーシア空軍のAWACS(空中管制機)ブルー・ドヴに随伴する管制官である才女。学力が非常に高く、この空飛ぶ司令室の中枢を担うが、人見知りで新人の為、まだ緊張気味。ナガセやステラ、ミラとは面識があり、任務中に出会うと若干私語を漏らすことも。
チェスター・ハウエル将軍 General Chester Howell
オーシアの軍司令官のひとり。突如宣戦を布告し、電撃作戦を行使してきたユークトバニアに全力で制裁を加えようとする。15年前のベルカ戦争に参加して負傷するものの、カリスマ的戦略はオーシア軍の道しるべともいえる。しかし、あまり人前には姿を現さない模様。
マオ・アンダーセン提督 Admiral Mao Andersen
オーシア海軍始まって以来の女性提督。第8艦隊の空母エンデュアリング乗艦。彼女も実はバーネット孤児院で育ち、ファミリーネームのない彼女は引き取り先であるアンダーセン夫妻の名前を貰っている。また、育ての父はオーシア海軍の名艦長で知られる “ニコラス・A・アンダーセン” で、父に負けず有能な才能を持ち合わせる。周囲は父との誤解を防ぐため、パイロット時代のTACネームのValkyrie(ヴァルキリー)で呼ぶことがある。趣味は人形(テディベア)集め。
レオン・ライト・ブルーベル Leon light bluebell TAC Name:“Amadeus”
ウスティオ生まれで、15年前のベルカ戦争ではウスティオ空軍の一員として参加。その後はオーシアでプロサッカー選手として活躍。サッカー引退後は戦時での経験を生かし、オーシア空軍で再びパイロットとなるが、勇敢で的確な判断力が評価されて第502戦術航空中隊の指揮官に任命される。TACネームはAmadeus(アマデウス)
- 37 マーシュ 2006/12/26 Tue 22:48:29 DXjf..D3Q.5iAv
- ―――――――――――第31話 『15年前』 “15 Years Ago”
ガントレットは塩が効いた軽食だ。場合によっては野菜、果物、肉類を乗せたり巻いたりして食べるそうだ。 まさにクレープの先祖である。
「僕にも父親が居ないんだ。10年前の「エルジア戦争」で名誉の戦死を遂げたって、お母さんから聞かされている」
「スコット……?」
今二人は同じ事を考えていた。お互いに似た部分を持ち合わせ、もしかしたら互いの知りたい答えを知っているのではないかと。
「君は……」
「スコッ……」
互いに遠慮する辺りも似ているようだ。
「君から言ってよ。 ステラ」
「……私が軍に入隊した理由はケイのこともあるのだけど、もう一つ理由があるの。 私がお世話になっていたバーネット孤児院の院長によると、私の父はまだ生きているみたいなの。勿論母もね。 もし探すのであれば、軍が一番だって言われて」
「つまり、父親探し? それで、お父さんの名前は?」
「―――ジャック」
男性の名前としては珍しくは無い。 しかし、スコットはその名前に聞き覚えがあった。イーグル中隊の隊長、マーシャル大佐は自分のことを「ジャックと呼んでれ」と言っていたはず。
「もしかしてマーシャル大佐が……」
『呼んだか?』
突如スコットの隣の席に座っていたマーシャル。ステラも気がついていなかったようだ。
「残念だが俺はステラのパパじゃぁないぜ。 あと、ジャックってのは俺の本名でもなく、ただの「あだ名」だ」
そこの先ほどのシェフ、サムがマーシャルにベルカ産のビーフステーキを運んでくる。とても美味しそうだ。
「何故俺がジャックって名乗るかと言うとな、あれは15年前のベルカ戦争真っ只中だった。俺は “ハートブレイク“ 中隊に所属していた「2人のジャック」と出会い、そいつらと組むのと同時にジャックと名乗り、「3人のジャック」でベルカの空を駆け抜けた」
スコットは何故わざわざジャックにこだわるのかが気になったが、その内説明してくれると思い、今は黙って話を聴いていた。
- 38 マーシュ 2006/12/26 Tue 22:49:09 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――――第32話 『ザ・ベルカン・ウォー』 THE BELKAN WAR
―――15 Years ago Belkan Priority One Strategic Airspace B7R “The round table”
今から15年前 ベルカ絶対防衛戦略空域 エリアB7R 通称 “円卓”
(ジャック2! チェックビハインド! ケツに付かれているぞ!ブレイクしろ!)
15年前のベルカ戦争最大の空中戦が行われた「エリアB7R」通称 “円卓” の空。若きマーシャルもこの戦場に身を投じていた。
(ネガティヴ! 敵機関砲被弾!舵が鈍い!)
(待ってろジャック2! 俺が今助けてやるぜ!)
マーシャルの機体が寮機を付け狙うベルカ軍機をロックオンした。そしてすぐさまミサイルを放った。
(ハートブレイク・スリー、フォックス2!)
即座にその敵機は炎に包まれた。しかし、落としても墜としても敵は続々と現れる。
(助かったぜジャック3! それにしても、酷い場所だな)
(ジャック2、イヤなら逃げるか? 俺なら戦う)
(バートレット、俺は逃げるつもりはない。 俺が言いたいのは何故上も下も敵だらけの空のど真ん中を飛んでいるかって話だ。 もう少し空域を選ぼうぜ)
この「ハートブレイク隊」は3人のパイロットで編成された飛行小隊だ。1番機は「ジャック・バートレット大尉」、2番機は「ジャック・フォスター大尉」そして3番機がマーシャルだ。
(っと待て、まて、まて! ハートブレイク・スリー、ボギースパイク! こちらに高速で向かってくるぞ!)
1機のフルクラムが彼らの近くを高速で飛びぬけていく。しかし、何か不自然な飛び方に見えた。
(なんだ?)
(分からん。 いや、待て、エネミータリホー。レーダーに3つのシグナルだ)
こちらに向かってくるのはベルカ空軍最新鋭のベルクト戦闘機だ。不運にもここは主戦場より奥らしく、近くに友軍部隊は居ない。ここは敵を落として生き残るしかなさそうだ。
(ハートブレイク・ツー、ハートブレイク・スリー、準備しろ。 方位180、ヘッドオン!)
敵とこちらの数は同じ。3対3だ。敵のほうが機体の性能は高いが、空戦を左右するのは機体性能でも数でもなく、操縦者の技量である。手負いの仲間があるが勝ち目は十分だ。
(ベルカのルフトヴァッフェ(空軍)どもめ)
(こちらハートブレイク・ワン。 先手を打つぞ。 SAAMスダンバイ)
(オーケイ。 ジャック2、SAAM準備よし)
射程の長いセミ・アクティヴミサイルの発射準備に入る3人のジャック。
- 39 マーシュ 2006/12/26 Tue 22:50:52 DXjf..D3Q.5iAv
- ―――――――――――第33話 『円卓の騎士』 The knight of the Round Table
(レーダーロック! ハートブレイク・ツー、フォックス1!)
パイロンから切り離されたセミ・アクティヴミサイルは真っ直ぐと目標に飛んでゆく。命中までレーダーに捕らえておけば、よほどのことが無い限り回避されないだろう。
(くそっ! ロックされた! 誘導を中断して回避に移る!)
敵機が狙ってきたため、ジャック・フォスターはセミ・アクティヴミサイルの誘導を中断し、回避行動に移ることを余儀なくされた。 彼の放ったミサイルは敵に当たることは無く、残ったのは敵が放ったミサイルのみ。
(ダメだ!避け切れん!イジェクトする!)
3番機のフォスターがイジェクトし、もぬけの殻になった機体が炎に包まれる。パラシュートが開くのを確認したので、フォスターは無事だろう。 その間に隊長であるバートレットが敵の背後をとり、機関砲で相手をミシン縫いにした。
(ナイスキル! ジャック1!)
マーシャルもそれに続くように。旋回して敵機の居る方向に機首を向けた。
(ロックしろ……もう少し!)
だがその時、マーシャルの機体が爆音と共に激しく揺れる。どうやらミサイルが近くで爆発したようだ。
(大丈夫かジャック3!? 酷くやられているようだぞ? 今すぐに引き返せ!)
(お前とフォスターを置いて逃げられるか! まだ戦うぞ!)
被弾しても交戦を続けると言い張るマーシャル。だが、そこにミサイルアラートが鳴り響く。 マーシャルは操縦桿を前へ倒して一気に重力降下を開始して、敵の放ったミサイルから逃れようとする。
(待ってな。 今助けてやる)
降下するマーシャルの背後にはベルカ軍機のベルクトの姿が。敵は煙を吐いているマーシャルを容赦なく追跡してくる。バートレットはその更に背後から機関砲で敵機を粉砕した。
(ハートブレイク・ワン! 狙われているぞ!)
マーシャルがそう叫んだ時には、既にバートレットの機体も撃墜されていた。 やはりたった3機で孤立してしまったことに問題があったのだろうか? それとも、円卓の空で「円卓の騎士」にはかなわなかったのだろうか?
- 40 マーシュ 2006/12/26 Tue 22:54:54 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第34話 『ザ・ベルカン・ビーフ』 The Belkan Beef
―――ハイエルラーク基地・食堂 Location:Heierlark Air Force Base
マーシャルは朝っぱらからベルカ産のビーフステーキにかぶりついている。おいしそうだが、朝食向きとは言えなさそうだ。
「俺は敵に撃墜された後、円卓の大地へと降り立った。そこにぁ飛行機の残骸や岩がごろごろしているだけ。しかもよぉ、無線が通じねぇから歩いて基地まで帰る羽目になった」
ステーキを口に運び、ライスもそこに押し込む。更にステーキを食べ、ライスを食べる。時折マッシュポテトも押し込むマーシャル。
「大佐、その、他のジャックはどうしたのですか?」
「俺が基地に戻った時にはもう、戦争の終結が見えていたからな。 あとは病院でおねんねしていたぜ。 バートレットはその後様々な部隊を転々として、今サンド島にいる。フォスターはその後違う部隊の隊長に任命されたらしい」
「フォスター……もしかしてその人が……」
「いや、フォスターはその時未婚だった。 ステラ、お前の父親は「行方不明」なんだよ。マジで」
ベルカン・ビーフを食べるマーシャルを見つめるステラ。彼女の目は明らかに疑惑の視線である。 スコットもマーシャルの額を見てみると、冷や汗らしきしずくが見えた。
「マーシャル大佐。あなたはもしかして、ステラのお父さんを知っているのではありませんか? しかし、それを言えない理由があるとか?」
「(ぎく)」
「大佐、隠し事…ですか?」
「(ぎくぎく)」
「もしかして、ステラのお父さんは……」
「(ぎくぎくぎく)」
「……大佐!?」
「ぎくっ …………って、違う! チガウちがう、違う! 俺にはマイハニーも娘もちゃんといる! 隠し子なんていない!」
怪しいところだらけだが、ステラの性格や品位を考慮すると、マーシャルがそうだとは思えない。と、いうか思いたくは無い。
「俺はお前のパパから “もし俺の身に何かあったら、ステラを頼む” って言われていた。だから責任もって面倒を……」
「大佐、私を孤児院に送ることを “責任を負う" と言うのですか? 別に恨むとかそう言うわけではありませんが、知っているのであれば、父のことを教えてください」
スコットはこのとき初めてステラが孤児院で育ったことを知った。 今の話からすると、ステラは物心がつく前から孤児院に入れられていたようだ。つまり、親の愛を知らずに育ったということになる。
「すまん。 約束は約束なんだ。 俺はこれ以上何も言えない」
ここでステラの父に関する話題は途絶えた。
- 41 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:31:00 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第35話 『憎しみの連鎖』 “Chain Reaction”
サンド島攻防戦から約1ヶ月の歳月が経とうとしていた。 フットプリント作戦によりオーシアの地上部隊はユークトバニア・ヴァストーク半島に上陸。順調に敵国首都シーニグラードを目指している。
「んあ? スクランブル警報の故障か?」
警報が鳴る中、乗員室のソファーに横たわるマーシャル。戦場はユークトバニアであり、オーシアが戦場となることは考えにくい。 しかし、警報は鳴っている。
―――1分後
「大佐!何をしているのですか!?」
整備兵が慌ててマーシャルの元へやってくる。
「なんだ? 警報の故障じゃないのか?」
「空襲警報は本物です! アピート国際空港が攻撃を受けています!」
「マジで?」
「マジです!」
―――――オーシア・アピート国際空港上空 Location:Apito International Airport
「(こちら空港管制塔。緊急!全機離陸中止せよ! アプローチ中の全便は、至急進路を変更されたし!)」
イーグル中隊はスクランブル発進してアピート国際空港へとやってきた。首都オーレッドの南西に突如ユークトバニア軍機が出現したらしい。
「……んだとぉ!?」
「どうしましたか、マーシャル大佐?」
「こっから400キロ離れた “バーナ学園都市” で敵が化学兵器を散布しているらしい! 今ウォードッグがそちらに向かったそうだ!」
ウォードッグ。サンド島部隊はユークトバニア本土進攻に参加し、オーシア本土には居ないはずだが、何か理由があったのだろう。
「(全空港スタッフへ、緊急事態だ。国籍不明機が接近中との情報が入った。こちらのレーダーでも捕捉している。間違いない)」
地上の空港も忙しいようだ。スコット達は散開して敵機の迎撃に当たった。最近は哨戒飛行しかなかったとは言え、訓練を怠っていたわけではないので、実力は十分に発揮できる。本戦争初期から参加していたイーグルスにとって、これしきの敵はさほど苦戦する相手でもなかった。
「さてと、これで全部か?」
しかし、敵味方識別装置の様子がおかしい。 空港には多数の反応がある。
- 42 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:31:31 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第36話 『コインの表側』 Face of the Coin
―――――オーシア・アピート国際空港上空 Location:Apito International Airport
「(こちら空港管制塔。駐機中の輸送機隊は空軍のどの隊か?至急…)」
「首都管区空軍司令部から空港管制塔。こちらでは民間空港に輸送機を派出していない。どうぞ」
空港のスタッフは我が目を疑った。その輸送機からユークトバニア軍の主力戦車が現れたのだ。
「(輸送機から戦車が! 発砲している! 敵だ!空港内に敵軍がいる!)」
兵隊や戦車を次々と降車させる敵の輸送機。
「スコット! 今の見た!?」
「見た! 何でこんな民間空港を攻撃するのだろう!? 敵が空港内に入っていく…」
「(―――こちら首都管区空軍司令部! ともかくその戦車と輸送機も撃破しろ。民間への被害をこれ以上許すな!)」
それにしても、敵の考えが全然理解できない。軍事基地を狙うのならともかく、此処には民間の施設しかない。 破壊してもそれほど価値はないのに、敵はこちらの防空体制を掻い潜ってこんな奥地にまで飛んできた。たとえ目標を達成したとしても、帰る燃料が無いと言う片道飛行の特攻隊にまでなって、一体何を求めているのだろうか?
「よほどの憎しみがないと、ここまでは出来ない……」
「……この戦争を支えているのは、勇気ではなく「憎しみ」なのね……」
「スコット!ステラ! とにかく奴らを叩き潰すぞ!」
空港上空を旋回する民間旅客機に注意しつつ降下するイーグルス。狙うは敵地上部隊と敵輸送機だ。
「誤爆に注意しろ! 下は一面民間施設だらけだ!」
イーグル中隊の接近を察知した敵軍は、対空戦車で応戦を始めた。 民間空港から敵の銃弾が吹き上がっていると言うワケの分からん状況が発生した。
「ムスタング、マグナム!」
スコットは早速そのシルカ対空戦車を空対地ミサイルLAGMで粉砕した。続けて他の戦車も仲間と連携して次々と鉄くずにしてゆく。
「―――敵部隊の壊滅をこちらで確認。空港管制塔、そちらの様子はどうだ?」
「こちらでも確認している。屋外の敵は一掃されたようだ。 空軍の戦闘機に感謝すると伝えてくれ」
―――――突然の出来事だったとはいえ、あくまでも少数の奇襲部隊。空港内に進入した敵軍は数時間後には壊滅・投降したとの事だ。 また、オーシアの軍司令官 “チェスター・ハウエル” 将軍は敵国を屈服させるまで、戦いの矛を収めないと断言した。
- 43 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:32:16 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第37話 『進軍』 Road to Yuktobania
―――セレス海 Location:Ceres Ocean
アピート国際空港とバーナ学園都市への急襲。これによりユーク人に対するオーシア人の憎しみは増加し、オーシア軍は軍事、民間共に一致団結を呼びかけた。結果、戦争の勢いは急激に加速し始めた。
「(諸君、我々は非道なユークトバニアを一刻も屈服させ、この戦争を終結させねばならない。 その為には諸君の力が必要だ)」
無線越しに演説をしているのは、オーシアの軍司令官 “チェスター・ハウエル” 将軍だ。カリスマ的指揮官として知られるチェスター将軍だが、彼はあまり人前に姿を現さないそうだ。
「(まだ作戦内容の伝達が行っていない部隊もあるようだな。 ミッチェル中佐、そうなのか? ……では、私が直接話そう)」
オーシア軍は一気に敵軍を駆逐する為に、本土から大量の戦車大隊を収納した輸送船団をユークに送り出した。しかし、この船団。それを護衛するオーシア第8艦隊自体が大規模であり、既に動きを敵軍に察知されているとの事だ。
「(何としてでも輸送船団を守り抜いてくれ。 諸君に武神の加護があらんことを)」
輸送船は10隻。それを護衛するのはオーシア第8艦隊の軍艦、約40隻。航空母艦エンデュアリング、情報収集戦闘統制艦セレニティー、原子力潜水艦が4隻、イージス巡洋艦が4隻。駆逐艦が10隻、フリゲートが15隻、補給艦が5隻。合計50隻の大艦隊だ。
「こちら502戦術飛行大隊。指揮官のアマデウスだ。 AWACS、何処かにタンカーは居ないか?給油をしないと、この作戦に参加できない」
艦隊の上空に集結している味方飛行隊がいる。マーシャルの話によると、あの部隊は「オーシア空軍第502戦術航空隊フィルマ大隊」だそうだ。 指揮官の “レオン・ライト・ブルーベル” 大佐は15年前のベルカ戦争に参加した歴戦の勇士で知られる。
「AWACS、聞こえるか? こちらフィルマ大隊。 給油が居る。支給空中給油機を回してくれ」
何かブルーベルの様子がおかしい。
「どうした?」
「…? ハイエルラークの。 イーグル中隊か?」
「そうだぜ。 良く知っているな、大佐」
「そこのコックとは昔の仲でな」
つまり、ハイエルラークのコック。サム・レッドフィールドと、レオン・ライト・ブルーベル大佐はかつて同じ部隊でベルカ戦争を戦い抜いた戦友ということになる。
- 44 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:33:20 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第38話 『あおいはと』 A Blue Dove for the princess Part2
「こっ……こちら く、空中……か、管制機。 ぶ、ぶ、ブルー・ドヴ。 ひ、フィルマ隊へ、あと3分で来ますので、も、もう少しお待ちください」
艦隊の遥か後方の上空を飛行するAWACSブルー・ドヴ。このそら飛ぶ司令室のオペレーターはステラやミラと面識のある “ジェシカ・ブラッカイマー” という若い少女だ。しかし、今回が始めての勤務で、その上初めての実戦であるが為か、緊張している。
「こんにちは、じぇしか」
ミラが無線越しにジェシカを呼びかける。
「…ミラ!? ミラなの? 久しぶり!」
「ひさしぶり〜」
「……は、はい! すみません! 気をつけます」
―――どうやら、ジェシカは私語を慎めと周囲から言われたらしい。
「こちら情報艦セレニティー。 AWACSの女が頼り無さそうに見えるのは気のせいか? サンダーヘッドはどうした?」
「エンデュアリングの艦長、 アンダーセンです。 セレニティーへ。サンダーヘッドはユークトバニア本土です。今回は青はと(ブルー・ドヴ)が空中の指揮を執ります」
アンダーセンと言うと第3艦隊ケストレルの艦長だが、彼女はケストレルの「ニコラス・アンダーセン艦長」の娘、 “マオ・アンダーセン” 提督だ。彼女はオーシア海軍始まって以来初の女性提督で、密かに注目を浴びる有名人だったりする。
「マオ姐さんはケイと幼馴染なのよ。 私も孤児院の時からお世話になっていた」と、ステラ。
マオ・アンダーセン提督はかつてバーネット孤児院に居た面倒見のいい姉後肌。孤児院の姉そのものであった。彼女もステラ同様に孤児で、里親がケストレルの名艦長として知られるアンダーセンだ。
「―――マオ嬢にはバーネット夫妻と同じぐらい、ステラのことで世話になったなぁ。 面倒見がよくて、美人で、スタイルがよくて、料理が上手くてな。 しっかし、あのスタイル。たまらない…………って! どわわあああぁぁぁ!!!」
その時、空母エンデュアリングに装備された自衛用のローリング・エアフレイム・ミサイル(以下RAM)がマーシャルの機体を木っ端微塵にした。
…………
「―――マオ嬢は美人で面倒見がよくて、スタイルがよくて、料理が上手かったな。 まさに完璧。 特にウェストのくびれは最高だぜ!」
「…た、大佐。 そういう話は同姓同士でお願いします。 あと、作戦時以外で…」と、ステラ。
スコットは今、マーシャルの発言に対して空母エンデュアリングから(RAMの)突っ込みが発動される気がした。 ……というか、その幻覚を見た気がする。 それはさておき、艦隊は順調に航行している。天候も快晴で、戦艦や戦闘機が居なければ平和そのものだ。
「何だ!?」
突如艦隊の数キロ前方で水柱が上がった。これと同時に先行していた潜水艦部隊からの連絡が途絶える。
- 45 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:33:55 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第39話 『紅の海』 Crimson Sea
「シー・ドラゴン、スピア・シャーク、応答せよ! ウンディーネ、ブルー・ストーンからも通信途絶!」
「こちらセレニティー。 レーダーに遠方から飛来するミサイル多数! 警戒せよ!」
全艦艇。少なくとも防御用機関砲ファランクスを装備する艦艇はすぐさま迎撃を開始した。しかし、こちらに向かってくるのはミサイルだけではなく、水中を進む魚雷が存在した。
「船首にミサイル被弾! 傾斜しているがまだ大丈夫だ!」
前方のフリゲートが魚雷の直撃弾を受けて傾斜を始めている。 別のフリゲートが牽引の為に接近したが、ミサイルの直撃を受けて戦闘不能に陥った。
「セレニティー、AWACS! どうなっているんだ!?」
レオン・ライト・ブルーベルは自体を把握しようとしたが、オーシア軍はまだ敵の姿すら見えていない。 敵の正体が分からない限り、反撃の仕様も無い。
「空中、海上、海中共に反応無し! 敵の位置は不明!」
艦隊が混乱する中、更にミサイル、魚雷が迫る。
「トランスポーター2被弾! ミサイルの飛来方向から急いで敵の位置を判定しろ!」
2号輸送船がミサイルの攻撃を受けて炎上している。更に別方向から飛来したミサイルにより、1号輸送船が狙われる。
「こちらトランスポーター1!被弾した! 船首で火災発生! 消火艇を!」
「各艦前進せよ! 前へ出て輸送船を守るのだ!」
そのころ、上空のミラは海面に不自然な幻覚を見ていた。 海面にゼリーがある。透明のおいしそうなゼリーがあると言い続けている。 イーグル中隊のメンバーはそれが単なる冗談がジョーク、ミラの幻覚だと思っていたが、実際にミラが指摘する場所を見てみると、本当に空間が歪んでいてゼリーがあるかのように見える。
「よく映画に出で来そうなやつだな。 試しに撃ってみるか」
マーシャルは編隊を解き、そのゼリーらしき空間に機関砲を掃射した。
「居たぞ!」
機関砲が命中すると、スパークを放ちながら1隻の船が姿を現す。 マーシャルはあまりよく知っているわけではないが、光の反射や屈折を利用することで「透明」になれる。正しくは光学迷彩を作り出せる技術が存在することを知っていた。
「セレニティーから全艦艇へ! 敵艦船を補足!」
「こっ、こちらブルー・ドヴ! て、敵を発見しました! 攻撃してください!」
ようやく敵艦隊を発見したオーシア軍。空母エンデュアリングからも艦載機が発艦し、他艦艇も反撃を開始する。 ほぼ同時に遠方から敵艦隊の増援がレーダーに映り始める。
- 46 マーシュ 2006/12/29 Fri 00:34:57 DXjf..D3Q.5iAv
- ――――――――――第40話 『戦闘開始』 Engage
「こちらは空母エンデュアリング艦長、ヴァルキリー。アンダーセン提督です。 上空の味方機へ、輸送船と本艦隊の援護を要請します」
謎のステルス工作船を撃破したが、それと同時に遠方から多数の敵軍が接近していることが判明した。
「方位280、ユークのストライク・フランカーが多数! 攻撃に備えよ!」
「セレニティーから全部隊へ。敵の中にはジャミング機能を有した機体が多数あります。このままでは攻撃に支障が出ます」
そうなると最初にやることはひとつ。まずは電波妨害を作り出している電子戦機を落とせばいい。だが、敵航空団は渡り鳥の群れを思わせるかのような大群だ。そう簡単にはこちらの思い通りにさせてくれないだろう。
「レックス、エンゲージ!」
「ファイアフライ、交戦!」
「シャーベット、交戦」 やはり人格が変わっている。
「ムスタング、交戦!」
「こちらブルー・ドヴ。 敵電子戦機は多数。じゃ、ジャミングに惑わされないように注意してください」
敵はブラック・ジャックとベア、バックファイア爆撃機、ストライク・フランカーとフェンサー戦闘攻撃機、フランカーとフルクラム、フォックスハウンド戦闘機からなる大編隊。中には大型の哨戒機やヘリコプターの姿もある。
「<射程に入った。これよりオーシア軍機への攻撃を開始する。 クラースヌイ・ワン、ミサイル発射>」
「れっ……レーダーにミサイルを探知! て、敵部隊、長距離対艦攻撃を始めています!」
戦闘のストライク・フランカーの集団が続々と艦隊の射程外からミサイルを発射してゆく。このまま放置しておくわけにはいかない。 ただ、今回の作戦からか分からないが、最近的の無線が聞こえることがある。無線機の故障だろうか?
「アマデウスだ。フィルマ大隊聞け! アニー(Aチーム)は敵戦闘機、ビールズ(Bチーム)は敵爆撃機、チャールズ(Cチーム)は敵攻撃機、ディック(Dチーム)は艦隊の直営に就け!」
フィルマ大隊のストライク・イーグルがいくつかの集団に分かれて敵に向かっていく。ストライク・イーグルはマルチロール・ファイターと呼ばれ、空中戦、対地攻撃を選ばす両方こなせるのが魅力だ。
「こちらAWACSブルー・ドヴ。 ヴぇ、ベータ中隊は敵艦隊の攻撃へ。高度が高いと敵に狙われる可能性があるので、高度の上げすぎに気をつけてください。 がっ、ガンマ隊は空軍機と共同で艦隊上空を防御してください。 ゼータ部隊、シグマ部隊は敵攻撃機を撃ち落してください」
スコットは海軍航空隊の指揮はマオ提督が執るかと思っていたが、今指揮をしているのはジェシカだ。おそらくマオ艦長は艦隊の指揮で精一杯なのだろう。しかも50隻からなる大艦隊となると、尚更である。
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