Mitoro's page - Acecombat Fan Site -

Acecombat BBS / 小説
BACK

ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD CHAPTERV 伝説の悪魔

前スレッド No.133
25 マーシュ 2006/12/25 Mon 22:35:34 DXjf..D3Q.5iAv
ACE COMBAT 5 INVISIBLE GOD Chapter V  The Demon of the Razgriz
エースコンバット 5  インヴィシブル・ゴッド   第3章 ラーズグリーズの悪魔

When history witnesses a great change Razgriz reveals itself
“歴史が大きく変わるとき、ラーズグリーズはその姿を現す”

First as a dark demon As a demon it uses its power to rain death upon the land and then it dies
“はじめには漆黒の悪魔として。 悪魔はその力で大地に死を降り注ぎ、やがて死ぬ”


――――――――――主な登場人物   Main Character

 オーシア国防空軍第24飛行隊 “ガーディアン・イーグルス”
 Osean Air Defense Force 24th Squadron “Guardian Eagles”

 スコット・ヘンダーソン  Scot Henderson   TAC Name:“Mustang”
 本作の主人公。国籍不明機の攻撃から生き残った一人。高校卒業と共にオーシア空軍へ入隊。なりゆきか運命かは曖昧だが、現在はガーディアン・イーグルスに所属し、オーシアの空を守っている。また、サンド島のナガセとダヴェンポートとは同期。真面目で控えめな性格だが、熱くなると我を失うところもある。極端に得意や苦手は存在しないが、勉強も運動もそれなりに出来る秀才。
 TACネーム(ニックネーム)はMustang(ムスタング)

 ステラ・バーネット  Stella Burnet   TAC Name:“Firefly”
 オーシア空軍第24飛行隊「ガーディアン・イーグルス」に配属する若手のパイロット。軍隊にはあまり興味が無いが、親友である“ケイ・ナガセ”が空軍に入隊するのをきっかけに彼女も同じ道を進んだ。
 父親は15年前のベルカ戦争で撃墜されて以来行方不明で、母親も失踪した為、幼いころからポールの親戚が経営するバーネット孤児院で育つ。
TACネームはFirefly(ファイアフライ)

 ポール・“ジャック”・マーシャル  Paul“Jack” Marshall  TAC Name:”Rex“
 オーシア空軍第24航空隊、「ガーディアン・イーグルス」通称イーグル中隊の隊長。 判断力があり部隊長としては優秀なのだが、テンションが高く私語が多い為に少々浮き出た存在である。空戦技術はオーシア空軍の中でもかなり高い。
 階級は大佐。15年前のベルカ戦争に参加。そこで彼は同じ部隊に所属していた「2人のジャック」と意気投合し、それ以降彼も「ジャック」と名乗ることがあったそうだ。
TACネームはRex(レックス)

 ミラ・バーク  Mira Burke   TAC Name:“Sherbet”
 オーシア空軍第24飛行隊所属「ガーディアン・イーグルス」のパイロット。一言で言うと “2重人格” 。戦闘時は凛々しいが、それ以外となると気合が抜けたかのようにだらだらしている。 出身はユージア大陸のサンサルバシオン。
 また、アイスシャーベットが大好きで、暇さえあればとにかく食べている為、TACネームはsherbet(シャーベット)

―――――However after a period of slumber Razgriz and Hervor returns
“―――― しばしの眠りの後、ラーズグリーズはヘルヴォルと共に再び現れる”
26 マーシュ 2006/12/25 Mon 22:43:05 DXjf..D3Q.5iAv
―――――その他の登場人物  Sub Character

 ベン・ウォーカー  Ben Worker  TAC Name:“Gladius”
 ガーディアン・イーグルスのパイロット。 ノアとは兄弟のように仲がよく、何時も一緒に居る。敗戦国のベルカ出身だそうが、それに影響されず堂々と生きている。また、グリム兄弟とは学生時代の同級生。TACネームはGladius(グラディウス)

 ノア・クルーズ  Noah Cruise  TAC Name:“Albion”
 ガーディアン・イーグルス。通称イーグル中隊のパイロット。ベンとは常に一緒に居る為、本当に兄弟と間違えられることがある。TACネームはAlbion(アルビオン)

 ジェシカ・ブラッカイマー  Jessica Bruckheimer
 オーシア空軍のAWACS(空中管制機)ブルー・ドヴに随伴する管制官である才女。学力が非常に高く、この空飛ぶ司令室の中枢を担うが、人見知りで新人の為、まだ緊張気味。
 ナガセやステラ、ミラとは面識があり、任務中に出会うと若干私語を漏らすことも。

 チェスター・ハウエル将軍  General Chester Howell
 オーシアの軍司令官のひとり。突如戦線を布告し、電撃作戦を行使してきたユークトバニアに全力で制裁を加えようとする。15年前のベルカ戦争に参加して負傷するものの、カリスマ的戦略はオーシア軍の道しるべともいえる。しかし、あまり人前には姿を現さない模様。

 マオ・アンダーセン提督  Admiral Mao Andersen  TAC Name:Valkyrie
 オーシア海軍始まって以来の女性提督。第8艦隊の最新鋭航空母艦エンデュアリングに乗艦。彼女も実はバーネット孤児院で育ち、ファミリーネームのない彼女は引き取り先であるアンダーセン夫妻の名前を貰っている。また、育ての父はオーシア海軍の名艦長で知られる “ニコラス・A・アンダーセン” で、父に負けず有能な才能を持ち合わせる。周囲は父との誤解を防ぐため、パイロット時代のTACネームのValkyrie(ヴァルキリー)で呼ぶことがある。趣味は人形(テディベア)集め。


 レオン・ライト・ブルーベル  Leon light bluebell  TAC Name:“Amadeus”
 ウスティオ生まれで、15年前のベルカ戦争ではウスティオ空軍の一員として参加。その後はオーシアでプロサッカー選手として活躍。サッカー引退後は戦時での経験を生かし、オーシア空軍で再びパイロットとなるが、勇敢で的確な判断力が評価されて第502戦術航空中隊の指揮官に任命される。TACネームはAmadeus(アマデウス)

 マーカス・スノー  Marcus Snow  TAC Name:“Swordsman”
 オーシア第3艦隊の航空隊指揮官。海軍機、特にトムキャットに彼を乗せた場合、まず右に出るものは存在しないほどの実力を持ち、隣国ユークトバニアにもその名をとどろかせている。 階級は大尉。TACネームはSwordsman(ソーズマン)

 ジャック・バートレット  Jack Bartlett  TAC Name:“Heartbreak One”
 オーシア国防空軍108飛行隊。通称ウォードッグの隊長。国籍不明機の攻撃から生き残ったパイロットのひとり。仲間思いで命令に従わないことが多く、その為に15年前から昇進していない。TACネーム/コールサインは「ハートブレイク・ワン」


―――――オーシア国防空軍108飛行隊・ウォードッグ  Osean Air Defense Force 108th Squadron Wardog

 ブレイズ  TAC Name:“Blaze”
 “ACE COMBAT 5 THE UNSUNG WAR”の主人公。 オーシア空軍の新入り。成り行きで108飛行隊ウォードックのリーダーとなり、才能を開花させる。 同期で同部隊のダヴェンポートとは対照的に無口な傾向にある。 本名不明。

 ケイ・ナガセ  Kei Nagase  TAC Name:“Edge”
 オーシア空軍108飛行隊、ウォードック飛行隊に所属する女性パイロット。国籍不明機の攻撃から生き残った一人。ステラの親友かつメールフレンドで、ステラが空軍に入るきっかけを作った人物。優れた空戦技術をもち、精神的肉体的にも非常に頑丈。TACネームはEdge(エッジ)

 アルヴィン・H・ダヴェンポート  Alvin H Davenport  TAC Name:“Chopper”
 オーシア空軍108飛行隊、ウォードック飛行隊の3番機。スコットの同期で、面識がある。部隊内ではムードメーカーを務めており、ややオーバーリアクション気味。TACネームはChopper(チョッパー)

 ハンス・グリム  Hans Grimm  TAC Name:“Archer”
 オーシア空軍108飛行隊、サンド島飛行隊の訓練生。経験の無い新人だが、度胸は人一倍ある。趣味は機械いじり。後にウォードッグに加わる。TACネームはArcher(アーチャー)
27 マーシュ 2006/12/25 Mon 22:45:28 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第22話 『旅立ち』  Odyssey

 「除雪は完了した。 ウォードッグ、離陸を許可する」

 教科未修の新人達がサンド島部隊とともにハイエルラークを飛び去ってゆく。近い内ユークがサンド島に大規模な上陸作戦をするとの情報があり、軍上層部は戦力の不足を補う為に熟度を問わず前線に送り出すのだろう。


 ―――数日後。

 「これでこの基地に残っているのは俺たちとド新人だけか」

 「僕たちだけみたいですね」

 ハイエルラークに残っているのはイーグルスの4機と数名の訓練生のみ。元々辺境の基地ではあるが、此処まで人気がなくなると静かで仕方が無い。 ハンガーにあった機体も殆どがサンド島に旅立ち、空しいほど広く感じる。此処にあるのはイーグルスの機体と、コンテナなどで粗末に作られたマーシャルのオンステージ用の舞台だけだ。

 「整備する機体が減って仕事が楽になりましたが、いざそうなると退屈でしかたがありませんねぇ」

 どうやら整備兵もこの状況に納得できていないらしい。 よほど暇なのか、ゼロから戦闘機を作り上げてしまうほど時間があるそうだ。

 「ところで大佐、イーグルスのファイティング・ファルコンを更新しておきました。 何か問題がありましたら、いつでも申してください」

 そう言うと、その整備兵はスマイルで歯を輝かせながらその場を後にした。 今思い出したが、朝刊オーシアン・タイムズでハイエルラーク基地は「笑顔が素晴らしい」基地というタイトルで特集をやっていた気がする。ここは整備兵のみならず、士官やパイロットも皆笑顔を忘れていない。 が、退屈を隠し切れないのが事実みたいだ。

 「大佐、私達の機体が膨張していませんか?」

 「んあ? ステラ、コンフォーマル燃料タンクを知らないのか?」
 「はい」

 「俺たちのファルコンはブロック60に更新された。 空気抵抗を抑えつつ追加の燃料タンクを装備し、航続距離の増加を図ったんだ。 エンジンとレーダーも更新されているだろうから、以前より早くなったって言えば分かるか?」

 「航続距離と出力が増大。よく分かりました」

 機体は更新されたが、今のこところ出撃の予定は無い。 スコット達は当分暇をもてあますことになると確信していた。


 「―――こちら基地司令部。 イーグルスのパイロットは直ちに会議室へ」

 基地内の放送が入る。 流石に出番がやってきたのだろうか。 不安と期待を伴いつつも、スコットらは会議室へと向かった。
28 マーシュ 2006/12/25 Mon 22:46:27 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第23話 『サンド島防衛戦』  “Front Line”
 ―――――サンド島上空  location:Sand Island

 「こちらサンド島基地守備隊! 水際で敵上陸部隊と交戦中! 上空の味方機へ、至急支援を求む!」

 ユークトバニア軍はサンド島に大量の上陸集団を派遣していた。ハイエルラークで暇をもてあましていたスコットたちイーグル中隊は、サンド島を死守する部隊の援護を命じられていた。

 「ムスタング、1個投下!」

 浅瀬からサンド島に戦車を送ろうとしていたホバークラフトを粉砕するスコット。あの中に人が乗っていると思うと、引き金を引くのをためらってしまう。だが、撃たないと話にならない。

 「こちらサンド島、敵戦車水没! 援護に感謝!」

 小型艇から次々とサンド島に上陸するユーク軍。それらはスコットたちが上を通過すると消極的になるが、完全に通り過ぎると再び活性化する。 天候は素晴らしいまでの快晴で、視界も良好。はっきりと敵の上陸部隊を目視できる。

 「こちらシャーベット。隊長、これではキリがありません」
 「海上はウォードックに任せておけ! 俺たちの任務はここだ!」

 だが、海上で敵艦隊と交戦しているのはウォードッグだけではなく、ハイエルラークの研修生も参加している。もちらんマーシャルたちにとっては面識のある連中ばかりだ。

 「大佐、私はみんなのとこを援護したいと思っています。 勿論ここも心配ですが……」
 「マーシャル大佐、僕も海上が心配です。 此処の敵をある程度倒したらあちらの援護に行きませんか?」

 ステラとスコットもやはり海上のほうが心配である。だが、ここでサンド島防衛部隊を見捨てることも出来ない。

 「っくそ! 俺も海上へ行きたい! 行くぞ! 向かうぞ!」

 装甲車両と戦闘ヘリコプターを始末し、イーグルスは海上へと進路を向けた。

 「こちらサンド島のペロー大佐だ! 上空の味方機! どこへ行く!? 我々を見捨てる気か!?」

 スコットは彼のことをよく知っている。オーソン・ペロー大佐といえば、肥満体質で常に部下を叱っている人物だ。

 「イーグルス・リーダーだ。 海上の援護が必要だ。俺たちはそっちへ向かう!」
 「命令に背く気か!? これは命令だ!」

 「俺たちが受けた命令は差サンド島の援護だ。地上部隊とは言われていない! だからサンド島部隊を援護するまでだぜ!」

 そう言うと、イーグル中隊は残りの爆弾を全て浅瀬から上陸する敵部隊の真上に投下した。身軽になった一同は改めて海上のサンド島部隊、ウォードックのもとを目指す。

 「ペロー大佐、敵部隊に大打撃です! イーグルス、支援に感謝する!」
29 マーシュ 2006/12/25 Mon 22:46:38 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第24話 『伝説の悪魔』  Demon of Legend

 「海岸線の敵はとりあえず片付いたな。 ウォードッグの援護に向かうぞ」

 ハイエルラークの新人を含むウォードッグ中隊が先行してユークトバニア艦隊に攻撃を仕掛けている。だが、既に多数の被害を出していた。

 「こちらイーグルス・リーダー。 ウォードッグ、助けに来たぞ!」

 ウォードッグからの返事は無い。どうやら新人の面倒で精一杯のようだ。

 「助けてくれ! 狙われている!」
 「頑張れKC!ブレイクしろ!」

 新人の乗るタイガーUがユーク軍機に追い回されている。スコットはすぐさまその敵機を追い払った。 だが、別の新人が敵の攻撃を受けて海面へと落ちていった。

 「撃たれた! おちる!」

 これでは無駄に犠牲者を増やしているようなものだ。サンド島の基地司令官であるペロー大佐は一体どんな考えをしているのか全く理解できない。

 「大佐、こちらシャーベット。 敵強襲揚陸艦から多数のホバークラフトが発進。放置しておけばサンド島が危険です」

 「まだ増援がいたか……ミラ、そいつらを任せてもいいか? ステラ、ミラと一緒に敵上陸部隊増援を叩いてくれ! スコット!俺と一緒にサンド島部隊を援護するぞ!」

 「了解です!」

 二手に分かれるイーグルス。スコットとマーシャルはサンド島部隊に接近する敵機を可能な限り追い払おうとする。

 「ムスタング!? 何時の間に居たの?」
 「どうも、ナガセさん。 手助けが必要みたいだったので、こちらにやってきました」

 また、隊長のブレイズはとても忙しそうだ。部下と新人の指揮と対艦攻撃を一度にこなさなくてはいけない為、他のことにかまう余裕が全く無いのだろう。 敵の増援部隊は続々と現れ、こちらの防衛線は徐々に破られつつある。だが、そんなところにあの悪夢が再び訪れる。

 「―――潜水艦発射ミサイル!」

 ナガセはレーダーに映ったミサイルの存在をいち早く告げた。 続けてチョッパーが無線向かって吠える。

 「昇れ、昇れ早く! 皆!上昇しろ! 高度5000フィート以上に昇れ!」

 ウォードッグ、イーグルス、ハイエルラークの新人部隊は先のシンファクシから放たれたと思える散弾ミサイルの攻撃に備え、一斉に高度を上げ始める。
30 マーシュ 2006/12/25 Mon 22:59:39 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第25話 『Aサット照準』  A-sat Targeting System

 「潜水艦発射ミサイルを確認! 空中で炸裂する弾頭と思われる。 全機、高度1500メートル以上に退避!   …………どこか上位のコマンドが割り込んできた。 “Aサット照準データリンク表示” とは何だ? 勝手にカウントダウンしている」

 空中管制機サンダーヘッドの司令室に未知の情報が割り込んでいる。やがてカウントダウンがゼロになると、天空から青い光が舞い降り、スコットの背後を通過して海面へと落ちた。

 「今のは!?」

 レーザーは海面に着弾したが、同時に発射されたミサイルを撃ち抜いていた。

 「軌道上からのレーザー狙撃で敵ミサイルは消滅した。アークバードだ。頼れるぞ!
各機、敵艦隊への攻撃を続行せよ!」

 サンダーヘッドからの情報によると、宇宙空間にいるアークバードが戦略レーザーでミサイルを狙撃したらしい。 更にサンド島周辺を飛ぶ対潜哨戒機ブルー・ハウンドが敵潜水艦の存在をキャッチした。

 「こちら対潜哨戒機ブルー・ハウンド、ソノブイが潜水艦を探知。 音紋分析シンファクシに合致。 シンファクシ、ミサイル発射準備中らしき音キャッチ」

 宇宙からサンド島部隊を見守るアークバード。その白い鳥がシンファクシのミサイル第2弾を叩き落す。

 「ミサイル連続発射! 第3弾、第4弾、第5弾……!」

 「こちらシャーベット。 アークバードでも全てのミサイル撃墜は困難だと思われます」
 「俺もそう思うぜ! 皆!高度を上げろ!」

 一度は安心していた為、一同は高度を上げていない。 ウォードッグやイーグルスをはじめ、攻撃か退避なのか混乱していた。

 「本当に潜水艦からの攻撃なのか!? 先輩!おいていかないで!」

 アークバードのレーザーが海面に落ち、ミサイルを撃墜する。 だが、ミサイルはまだ現存である。

 「着弾まで10秒、 8、7、6、5、4、3、2、弾着……今!」

 イーグリン海峡と同じように空が炸裂し、高度5000フィート以下の航空機を全て吹き飛ばした。

 「座席射出ハンドルが動かない!」
 「いやだ! 死にたくない! 死にたくない……」

 今の攻撃でどれだけの損害を出したのだろうか? それを考えただけでも空気が重くなる。 しかし、今はサンド島の防御を何より優先しなくてはならない。

 「このままでは敵上陸艦隊に手が出せない。 やむをえん、敵ミサイルの合間を縫ってでも対艦攻撃を続行せよ!」
31 マーシュ 2006/12/25 Mon 23:00:20 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第26話 『ラーズグリーズの悪魔』  The Demon of the Razgriz

 「―――んだとぉ? “やむをえん”であの中に飛び込めってのかよ! 馬鹿野郎!」と、チョッパー。

 ウォードックを除き、サンド島航空隊は壊滅状態だ。今此処で戦闘を続けられるのはウォードックと生き残ったごく少数の新人サンド島部隊、イーグル中隊のみ。

 「残った部隊は再結集を。 攻撃の布陣を整えて」

 そんな中、ナガセ少尉は他部隊の状況を確認していた。更にまだ実践に慣れぬ新人部隊の面倒まで見始めている。彼女は少しでも隊長であるブレイズの負担を減らそうとしているのだろう。

 「こちらムスタング。マーシャル大佐、どうしますか?」
 「どうするもこうも、ここで逃げるわけには行かないだろ! イーグルス、サンド島部隊を援護するぞ!」

 その間に宇宙船アークバードと対潜哨戒機ブルー・ハウンドは一通りのやり取りを終えると、アークバードは再び海面目掛けてレーザーを発射した。

 「水中で破壊音! 潜航中のシンファクシを損傷させた。 メインタンク排水音。 シンファクシ、浮上する!」


 突如青い海に出現する巨大な塊。 正直潜水艦としては異常なサイズである。


 「こちらサンダーヘッド。敵潜は潜航不能に陥った模様。各機、攻撃せよ」

 潜れなくなれば潜水艦の長所は無い。スコットは袋叩きでシンファクシを撃沈できると思っていたが、このシンファクシはまだまだ驚くべき能力を備えていた。

 「待て! シンファクシから何かが出てくるぞ! あれは……戦闘機だ!」

 マーシャルはシンファクシから出撃する敵機をいち早く感知した。どうやらイーグリン海峡で遭遇した敵機もシンファクシから出撃したのだろう。 これで何故イーグリン海峡にて敵機が出現したか説明がつく。

 「またミサイル!? ファイアフライから各機へ、敵散弾ミサイルに備えて!」

 一同は高度を上げて散弾ミサイルをやり過ごす。

 「まるで悪魔の伝説と符合するようなこの敵。 …そんなはずはない。そんなはずはない!」

 「ケイ、私も今同じ事を考えていた。 この強さ、“ラーズグリーズの悪魔”を思い浮かべるわ。 “死を降り注ぐ力” そのもの……」

 更にシンファクシ船体に埋め込まれた対空砲各種が火を噴き、上空を飛行する一同を狙い撃つ。 潜水艦が浮上してもここまで強力だと言うのは少々卑怯な気がする。無論、戦争に。兵器にルールがあるとも考えにくいが。
32 マーシュ 2006/12/25 Mon 23:00:42 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第27話 『シンファクシ』  “Scinfaxi”

 「僕たちが援護します! ナガセ少尉たちはあの潜水艦を!」
 「了解、イーグル中隊。 ひよっこたちのことお願い」

 シンファクシ攻撃はウォードッグに任せ、イーグルスはそのウォードックを援護する。


 「うわ! 後ろに敵が!」
 「今僕が追い払う! ムスタング、フォックス2!」

 スコットは追われている新人をカバーした。しかし、敵機の性能が高い。上手い具合にミサイルを当てることが出来ない。

 「こちらシャーベット。 シンファクシ、散弾ミサイルを発射。 上昇して退避」

 シンファクシは味方まで巻き込む気だろうか? 敵も味方も高度を上げてミサイルの着弾に備える。 スコットは先ほどの敵機を探し出し、更にミサイルを放った。その敵機は寸前で回避したものの、爆風で損傷してエンジンにダメージを受けた為、徐々に高度を下げて散弾ミサイルの範囲内に浸かっていった。

 「シンファクシ! 俺様の気持ちだ、受け取れ!」

 マーシャル大佐がシンファクシに突っ込んでいく。だが、爆弾はもう無いはず。

 「イーグル1、投下!」

 マーシャルのファルコンから投下されたのは燃料タンクだ。これらは追加燃料用のタンクで機体の下部に取り付ける代物だが、その気になれば無誘導の自由落下爆弾としても使えなくは無い。

 「外しちまった。 サンド島自然保護委員会に謝ってこねえと」

 意味も無く燃料を綺麗な海に破棄するのは少々罪悪感に駆られる。だが、よく考えるとこれ以上に海を汚しているのが戦争である。

 「レーザー命中!大破孔! 艦載機発進不能に陥った模様!」

 いつの間にかシンファクシは黒煙を吐きながら撤退している。もしかすると撃沈は時間の問題ではないのだろうか? ウォードッグはそんなリムファクシに止めを刺すべく攻撃を続行した。

 「いいぞウォードッグ! 止めを刺せ!」

 対空砲火をかいくぐり、シンファクシに向かうのはウォードッグ・リーダーのブレイズだ。 彼の放ったミサイルが直撃した後、アークバードのレーザーが追い討ちを加え、シンファクシは海中に姿を消した。 凄まじい水しぶきが発生し、シンファクシが一同の前に姿を再び現すことは無かった。
33 マーシュ 2006/12/25 Mon 23:29:53 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第28話 『ミラのカキ氷』  Mira’s Frappe

 南国のサンド島とは違い、ハイエルラークはその逆だ。寒くて外に居るのがイヤになる。しかし、ミラは例外だったようだ。

 「ミラ少尉、何をしているんですか?」

 防寒具に身を包んだミラ・バークの元へ歩み寄るスコット。そこで彼が目にしたのは、旧式の飲料水運搬タンク車の上に積もる雪に、メイプルシロップをかけているミラだった。

 「ふらっぺ だよー」

 スコットは混乱した。 まずこんな寒い時にかき氷(フラッペ)を食べること、そして積もった雪、しかもタンク車に積もった雪を食べること。更にかき氷なのにメイプルシロップを使用すること。何所から突っ込みを入れるべきか。

 「スコットも食べる〜?」

 そういってプラスチックのスプーンを差し出すミラ。 すると、背後からステラもやってくる。

 「スコット……かき氷が好きなのね」


 ……まだ食べてない。


 「ステラ少尉、此処で何を?」

 「うん、ただ、退屈だから。 ミラ、メイプル以外にシロップは無いの?」


 ……あなたも食べるのか と、突っ込みたくなるが、ミラは懐から小さな水筒を取り出し、それをステラに手渡した。 ステラがそこから雪にかけたのはストロベリー・シロップだ。それでもって、スプーンでそれを口に運ぶ。


 「―――知っている? ミラの好物は3つに分けられるの。 砕いた氷に味付けをする “かき氷” 牛乳を原料にして作られる “アイスクリーム“  低脂肪で、気にしている人に好まれる ”シャーベット“  この3つね」


 さりげなく立ち上がるミラとステラ。

 「これはとっても美味しい冷菓よ」
 「これはとってもおいしい冷菓だよ〜」


 バケツに山盛りになったかき氷を手に、スコットに迫る二人。 これを食べろと言うのか? ふと気がつくと、マーシャル大佐や基地の人員も同じようにスコットの周囲を取り囲んでいる。


 「スコット。 アイスは嫌いか?」

 「好きよね?」

 「すきだよね〜?」


 徐々に包囲網を縮めていく一同。


 「ま、待って! 僕は……アイスは好きです! でも、今は要りません! だから取り囲まないでくださいっ!」


 「受け入れろスコット。 これがアイスシャーベットだ。 アイスを嫌う奴は、この基地には要らん。 好きだよな? 食べるよな? 断らないよな?」と、マーシャル。


 数秒後、スコットの視界は真っ白になった。
34 マーシュ 2006/12/25 Mon 23:30:59 DXjf..D3Q.5iAv
――――――――――――第29話 『悪夢?』  The Doom?
 ―――ハイエルラーク基地  Location:Heierlark Air Force Base

 「スコット、大丈夫?」

 スコットは頭痛に悩まされていた。マーシャル大佐の命令で先日ミラとコイントスで賭け事をし、面が出た為、スコットがアイスシャーベットの一気食いをする羽目になったのだ。更にその日の夜は “妙な悪夢“ にうなされ、一睡も出来なかった。

 「ひとつ、聞いてもいい?」
 うずくまるスコットを横から覗くステラ。

 「悪夢って、どんな夢?」

 「……ミラ少尉に無理矢理アイスを食べさせられる夢です……」


 ―――実際には、今となりにいるステラを含め、基地職員全員だった気がする。


 「ところで、ミラ少尉は?」

 「ミラなら外にいると思うわよ。 多分、ナチュラル・アイスクリームをしているんじゃないかな?」

 「ナチュラル・アイスクリーム?」
 「外に積もった雪の上に、シロップをかけて食べるのよ」

 スコットは背筋が凍りついた。もしかして、正夢かもしれない。 だが、正直ジョークとしか思えない出来事だった為、あれが本当に起こりうるのか微妙なところだ。

 「ねえ、スコット。朝食はどうするの? まだだったら、一緒にどう?」

 「はい、何か暖かいものを……」

 スコットとステラは共に基地の食堂へと向かった。 周辺には “ウスティオ共和国“ があり、そこは農作物や農業がさかんな国だ。隣国のベルカの食品も中々だが、特にウスティオ産の食べ物は美味しいらしい。

 「元気か少尉。 今日は何にするんや?」

 食堂に入ると、少々肥満で威勢のいい男性が手をこまねいて注文を待っている。

 「そうですね…… “ガントレット” をください。 スコットは何にするの?」
 「僕はシチューを。クリームシチューをお願いします」

 「よっしゃ。ガントレットとクリームシチューやな。 任せておけや」

 二人は席についてそれらの完成を待った。食堂は面積のわりには机やイスの数が少ない。ユークトバニアとの戦争が勃発して以降、此処ハイエルラークに所属していた部隊や人員は他部隊や他の基地に引き抜かれてしまい、いつの間にかイーグル中隊のみになってしまったのだ。

 「……ステラ?」

 先ほどからステラが微笑している。スコットは自分の顔に何かがついているのかと思い、窓に映る自分の顔を見てみるが、特におかしなところは無い。

 「別に。 ただ、此処の料理はとても美味しいの。 食べたら驚くわよ」
35 マーシュ 2006/12/26 Tue 22:25:44 DXjf..D3Q.5iAv
―――――――――――第30話  『食卓の鬼神』   The Cock of Round Table

 「それと、よく見て。 此処の食堂、テーブルが円形になっているでしょう?」

 確かにテーブルが円を書いている。文字通り「円卓」(ラウンドテーブル)だ。 元々は縦に整列されていたそうだが、利用者の減少と共にテーブルの配置がこうなったそうだ。

 「それで、此処で料理を作っているコックさんは「円卓の鬼神」と呼ばれているのだけど、私はこれ以上細かいところを知らないのよね…… でも、凄腕のコックさんで、そこから「鬼神」と言われているみたい」

 窓から見える白い景色、白いテーブルクロス。白い床、白い柱と天上。軍事基地の食堂と言うより、何処かのレストランみたいだ。 やはり滑走路は除雪車が今でも忙しそうに動き回り、滑走路を何時でも使用できる状態に保っている。

 「毎度お待ち! シチューとガントレットの完成や!」

 スコットは多少ながらも驚きを表情に表した。このシチューは普通の皿ではなくパイ生地で出来た器に入れられていたのだ。 軍の食堂のメニューとしては少々手が込みすぎているのではないか。

 「おまえさん、新人か?」

 そのコックがスコットに呼びかける。

 「はい、最近転属してきたスコット・ヘンダーソンといいます」

 「スコットか。ありふれた名前やが、宜しくたのむで! わいは “サム・レッドフィールド” や。 このハイエルラーク基地の厨房を指揮っとる」

 彼、サム・レッドフィールドは15年前の「ベルカ戦争」に参加したパイロットのひとり。戦争の序盤からその身を投じており、知る人からは歴戦の勇士として知られているそうだ。

 「他に食べたいものがあったら、じゃんじゃん言ってや! いくらでも作ったるで」

 彼が厨房に戻った後、スコットはステラの注文した「ガントレット」のことが無性に気になった。ガントレット(拳)の名前を持つこの食べ物。今までに見たことの無い形だ。

 「ステラ、ガントレットって……何?」

 「石焼パンケーキね。 ウスティオのヴァレー方面では主に朝ごはんとして流行っているのよ」

 あまり良く知らないが、ウスティオ共和国のヴァレーというと極寒の山岳だったはず。

 「ウスティオのヴァレー地方は小麦の栽培が困難で、主にそば粉が常食とされているのよ。これを溶かして焼くと薄いパン。すなわちクレープみたいな食べ物になるのね」

 「小麦粉の代用品なのか……なるほど。 ステラはウスティオの出身なのかな?」

 「…………私に故郷は無いわ。 小さいころ、母が行方不明になったの。父も15年前のベルカ戦争以来……」

 「ごめん、もういいよ。 それよりもさ、食べよう」

続きスレッド

BACK