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ACE COMBAT ZERO NIGHTS OF ROUND TABLE EpisodeY

前スレッド No.124
44 アドミラル・マーシュ 2006/07/29 Sat 23:00:53 aUlt..D3Q.t07f
―――――”New blood、 New Battles”―――――
―――――”新しい血は新しい戦いを生む”―――――


ACE COMBAT ZERO  THE NIGHT OF ROUND TABLE
エースコンバット・ゼロ   ナイツ・オブ・ラウンドテーブル


ようやく最終章に突入しました。
予定よりも長くなりましたが、責任を持って最後までやり遂げます。

”エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー”発売から時間が経っていますが、まだ未プレイの方はネタバレにご注意ください。

ちなみに、前作『エースコンバット5 リザレクション・オブ・ラーズグリーズ』も宜しくお願い致します。

スレッド右端にある『前スレッド』からこれまでのストーリーを観覧できます。

3レス目から本編に。
これで終わりますので、もうしばらくお付き合いを
45 アドミラル・マーシュ 2006/07/30 Sun 22:15:45 aUlt..D3Q.t07f
―――――”歴史が大きく変わるとき、「ラーズグリーズ」はその姿を現す。―――――


Mission Contents


序奏# 『翼の起源』 “Introductory chapter”

01# 『ディレクタス防衛線』 “Defense line Directas”
02# 『ベルカン・ナイツ』 “Ritter”
03# 『凍空の猟犬』 “Glacial Skies”
04# 『絶対的な力』 “Juggernaut”
05# 『ディレクタス解放』 “Diapason”
06# 『葬送曲』 “Funereal tune”
07# 『暁の戦場』 “Battlefield of daybreak”

08# 『ヘイムガルド平原の決戦』 “Hamugald plain”
09# 『円卓の夜T』 “Nights of Roundtable T”
10# 『嵐の中を走れ』 “Silverstone”
11# 『復讐者』 “Avenger”
12# 『クロウ隊のPJ』 “Crow3 PJ”
13# 『巨人の刃』 “The Excalibur”

14# 『約束の場所・円卓』 “The Roundtable”
15# 『B7R制空戦』 “Mayhem”
16# 『ザ・ベルカン・ウォー』 “The Belkan War”
17# 『サイファーとラーズグリーズ』 “Tow Demon”
18# 『臨界点』 “The Stage of Apocalypse”
19# 『円卓の夜U』 “The Nights of Roundtable U”

間奏# 『シルバーストーンの少女』 “Interlude―Silverstone Girl―”

20# 『円卓の夜V』 “The Nights of Roundtable V”
21# 『王の谷』 “The Valley of Kings”
22# 『アヴァロン』 “Avalon”
23# 『運命の再会』 “Fateful Encounter”

24# 『モルガン』 “Morgan”
25# 『ゼロ』 “ZERO”
26# 『灰色の男達』 “The Gray Wing”
27# 『ZERO‐“サイファー”‐』 “ZERO‐Cipher-”

間奏# 『生命の名前』 “Life of Name”
28# 『翼と兄弟の近くで』 “Near the Wing and Brother”
29# 『ZERO‐“ラーズグリーズ”‐』 “ZERO‐Razgriz‐”
30# 『生命の終わり』 “End of Life”

終奏# 『詐欺の空』 “Skies of Deception”


主な登場人物・連合軍


ハンク・ライト
元オーレリア共和国の警察特殊部隊。サークル隊のリーダー。
4年前オーレリアでとある事件がきっかけで自分に対するミスを責め続けている。


カイル・ガーランド
前向きで活発な性格。経験は浅いが優秀である。サークル4


サム・レッドフィールド
少し肥満体質。明るく社交的だが、少し喋り方が独特。サークル隊の5番機


デイヴィット・コネリー
判断力があり、どちらかというと知的。コールサインはサークル6.


パトリシア・ジェイムズ・ベケット
兄であるパトリック・ジェイムズ・ベケットに憧れて入隊。コールサインはサークル3.


サイファー
最近入隊した傭兵。臨機応変な戦い方をする。ベルカ軍に対し、数多くの作戦を成功させ、今では「円卓の鬼神」と恐れられている。コールサインはガルム1.

パトリック・ジェームズ・ベケット
クロウ隊の3番機で、ムードメーカー的な存在。現在はガルム2としてサイファーの相棒。

ウェルチ・マクナイト
クロウ隊の隊長。テイラーとは幼馴染。コールサインはクロウ1

テイラー・デイヴィス
ウェルチと同じくクロウ隊の2番機。ジョーク好き。

ジャック・フォスター少佐
ウスティオ空軍、”テュール中隊”隊長。戦争前はサークル中隊の一員だった。

ウィリァム・ジェファーソン
ウスティオ空軍、ドミノ飛行大隊の隊長。

ジェリコ・リンカーン
オーシア陸軍戦車大隊、ブラック・ナイト指揮官。

アンドリュー・ワシントン・スミス
ウスティオ軍の特殊部隊隊長。好物は豚肉。

ロナルド・カーター
ウスティオ陸軍、ザイオン戦車部隊の隊長。


―――「国境なき世界」

レオン・ライト
ハンクの双子の弟。戦争前は旅客機の操縦士。恋人を失った衝撃で我を失いつつある。

ラリー・フォルク
過去に片羽を失いつつも生還した為、“片羽の妖精”と呼ばれている。かつてはサイファーの相棒だったが、自分の意思を貫いて彼に別れを告げた。

アルヴェルト・ヴァイゲル少佐
元ベルカ空軍、“リッター”飛行中隊隊長。彼は正当なるベルカ騎士団の末裔で、高いプライドと空戦技術を持ち合わせている。

ドミニク・ズボフ大尉
元ベルカ公国空軍、“シュヴァルツェ隊”隊長。過去にハンクとその恋人と関連があった。

アントン・カプチェンコ
元ベルカ公国空軍、“ゴルド隊”隊長。

ジョシュア・ブリストー
元オーシア国防軍“ウィザード隊”の隊長。

イーサン・クーリッジ元帥
元ウスティオの軍司令官。“オーシア戦争”での英雄だった。
クーデター組織、”国境なき世界”の設立者の1人である。
46 アドミラル・マーシュ 2006/07/30 Sun 22:22:17 aUlt..D3Q.t07f
――――――間奏 『命の名称』 “Life of Name U”


 あれからかなりの時が経った。しばらくアンジェラは真っ白な個室に監禁されていた。

 此処にあるのはベッドと小さな机、そして反対側からしか見えない大きなマジックミラーのみ。


 彼女は再び深い孤独に取り残された。普段彼女に面会するのは、この組織の科学者とどこかの軍の上級将校ぐらい。この時既に“国境なき世界”は動き始めており、これらの人物がオーシア、ベルカ、ウスティオの人間であることを、アンジェラが知るはずがない。

 だが、以外にもあの男“ドミニク・ズボフ”が時折アンジェラの個室にお土産持参でやってきて、この組織“国境なき世界”の目的などを始め、様々な話題を振る舞い、アンジェラを楽しませていた。

 これはズボフが個人的に善意で行ったのか、それとも組織の命令で行ったのかはわからない。しかし、アンジェラを孤独から救っていたのは事実だろう。

 そして、更に時が経ち、アンジェラは自分の体内に埋め込まれた神経基盤と、国境なき世界の作り上げた“ラーズグリーズ戦闘機”を直結し、手足のように操れるようになった。そして、彼女はオーシア首都“オーレッド”を始め、各国の主要都市と軍事基地の破壊を命じられた。

 無論アンジェラはそれを拒んだ。しかし、相手は世界から国境を取り除こうとする強大な組織。アンジェラがそれを拒もうとしても、相手は無理にでもアンジェラを使用するであろう。その為にドミニク・ズボフがわざわざーレリアまで行って、彼女を拉致してきたのだから。


 だが、彼女は一瞬の隙を見てラーズグリーズで脱走。あても無く空へと逃げた。しばらくすると、山岳地帯に差し掛かる。


 彼女は知らないが、此処は伝説の空“円卓”であった。彼女はそこで「彼」と再会した。


『―――ハンク!』


 しかし、何か状況がおかしい。

 何故遠方の飛行機にハンクが乗っていると分かるのか?そもそも何故ハンクが戦闘機に乗り、こんなところを飛んでいるのか?理由はともかく、ハンク達が非常に危険だという状況は分かる。


――実際には、このラーズグリーズに搭載された高解像カメラがそれらの情報を読み込み、それをアンジェラの体内にある機械化神経を経由してアンジェラ本人が見ているのだが。


 アンジェラはハンクたちを助けるべく、自らがおとりとなり、敵を引き付けた。


 だが、しばらくすると機体の制御が効かなくなった。機体は勝手にかつてアンジェラがこのラーズグリーズに乗せられた基地、“アヴァロン”へと機首を向けている。アンジェラは抵抗したが、もう手の施しようがない。


 つかの間の自由はあっけなく終わってしまったが、彼女は別にそれほど悔やんではいなかった。今回の行動で、少しでもハンクの役に立てたのであれば、それで十分満足だった。


―――そして数日後、彼女は長い苦しみと絶望、小さな希望の末、生まれて初めて空から“夕日”を見た。
47 アドミラル・マーシュ 2006/07/30 Sun 22:24:45 aUlt..D3Q.t07f
――――――第27話 『ZERO “サイファー”』 “ZERO‐Cipher-”


『<時間だ。>』

 片羽の妖精・ラリー・フォルクの台詞と共に、アヴァロンのサイロから巨大なV2ミサイルが飛び立った。

『<惜しかったなぁ、相棒。歪んだパズルは一度リセットされるべきだ。このV2に全てを“ゼロ”に戻し、次の世代に未来を託そう!>』

 薄い淡雪が降る空。かつてのガルム隊の2人が皮肉な最終対決を迎えている。

『こちらAWACS!聞け、ガルム1!敵機体の解析が完了した。コードネームは“モルガン”。この機体はECM防御システムによって守られている。唯一の弱点はエア・インテークだ。』


 ハンクの送ったモルガンのデータがAWACSイーグル・アイに通達され、それを解析した結果、機体下部にある吸引口。エア・インテークには防御が施されていないとのことだ。


『――今そこで彼を討てるのは君だけだ。“円卓の鬼神”、幸運を祈る!』


 唯一の弱点はエア・インテーク。しかし、そこを狙うには真正面から接近しなければならない。サイファーのイーグルが大きなバンクを描いてピクシーのモルガンにヘッドオンする。

『<此処で全てが来決まる>』
 無線越しにラリー・フォルクの声が響く。
『<此処から国境が見えるか!?国境は俺たちに何をくれた!? 全てをやり直す。 その為のV2だ。>』


 上昇するV2をバックにピクシーのモルガンが接近。二人は射程に入ると同時にミサイルを放った。サイファーはS字旋回でミサイルをかわし、モルガンにはミサイルが命中した。しかし、エア・インテークに直撃しなかったようだ。

『V2再突入まで後4分38秒!』

 既にV2が最高高度に達し、反転して着弾するまでのカウントダウンが始まっている。このカウントが“ゼロ”になった場合、V2の力を持って世界は焼き払われるだろう。

『<もう一度、正面からだ。>』

 お互いにターンを終え、更にヘッドオンする2人。射程に入ればすぐにミサイルを放つ為、少しでも旋回が遅れると相手のミサイルを避ける猶予がそれだけ減ってしまう。

『<さあ、来い!>』

 互いのミサイルが交差し、それぞれが目標に向かって行く。だが、今度は両者とも回避した。回避したのを確認すると、再び旋回して次の攻撃の準備に入る。

『<お互い腕は衰えていないな。 俺とお前は鏡みたいなものだ。とはいえ、正反対だがな。今こうして向かい合い、初めて違いに気づく。>』

 2人の距離が迫る。


「<サイファーとは“ゼロ”という意味も持ち合わせている。その“ゼロ”は俺たちの目指す再生後の“ゼロ”か。それとも終焉後の何も無い無の“ゼロ”か・・・>」


 ピクシーはロックオンと同時に発射ボタンを押した。だが、正面から向かってくる筈のミサイルが見えない。サイファーはミサイルを発射していなかった。
 かつての相棒を撃つのをためらったのか?奴、サイファーはこんなに臆病者だったのか?


『<撃て! 臆病者!>』


 しかし、ピクシーはまだ自分がロックオンされていることに気が付いた。そして、サイファーは自分の正面のやや下からエア・インテークを狙っていた。
 この距離では回避できない。あとはサイファーのミサイルが直撃するのを待つだけだ。

 相棒(サイファー)がためらわなければ。

『<“撃て!!”>』
48 アドミラル・マーシュ 2006/07/30 Sun 22:28:16 aUlt..D3Q.t07f
―――――第28話 『翼と兄弟の近くで』 “Near the Wing and Brother”


―――アヴァロンダム上流・エンゼルブルク上空


「くそ、敵はまだこんなにも!」

 ハンク達は“灰色の男達”の繰り出す未塗装の航空機と死闘を繰り広げていた。


「<貴様達に勝ち目は無い!ここで新たな時代の幕開けを見届けるがいい。>」


 突然ハールートの上部ハッチが開き、中型のミサイルが発射される。ミサイルは速度を上げて、数秒で視界から姿を消した。

「アレは・・・“アイリーン・ロケット”か!?」

 レオンは組織の一員として、このロケットの説明は聞いていた。これは人工衛星を打ち上げるだけのごく普通のロケットである。しかし、それだけではない。

「<こちらクーリッジだ。アヴァロン、聞こえるか?“イグドラシル”を開放しろ。>」
「<こちらアヴァロン。イグドラシル作動開始、攻撃態勢まで1分。>」


 エンゼルブルクの地表が割れ始め、筒状の建造物が地下から姿を現した。どうやらこの町は完全に国境なき世界の基地と化しているようだ。
 筒状の建造物は花のようにつぼみを開き、花びらような外部装甲を展開。その中心から細長い筒が頭を出した。


「よし、何とか間に合ったようだな!レオンもいるようだ!」
「こちらサークル4、これよりサークル1の指揮下に入る!」
 カイル、パトリシア、サム、デイヴィッドが合流し、更に見味方連合軍も応援にやってきたようだ。

「こちらオーシア軍所属のテュール隊、攻撃を開始する!」

「ユークトバニア軍のグランツ隊だ。サークル隊を支援する!」

「サヴェージ隊各機、敵部隊との交戦を許可する!」

「エスクード1からエスクード6、国境なき世界に終止符を打とう!」


 援軍としてやってきた味方が次々とミサイルを放ち、ハールートに大量のミサイルを叩き込んだ。だが、ハールートに命中したと思われたミサイルは全て、ハールートの機関砲が撃ち落としていた。


「<“アイリーン”が目標地点に到達。“イグドラシル”準備良し!>」


 アヴァロンのエンゼルブルク司令部のスタッフが、クーリッジ元帥に“イグドラシル”の攻撃準備が整ったことを次げた。


「<攻撃を許可する!目標座標はエーオン64、エッセ24、エアラ7.>」
「<了解、イグドラシル攻撃開始。>」


 エンゼルブルクにたたずむ筒状の施設から、青いレーザーが飛翔した。レーザーはほぼ垂直に放たれ、やがて視界外へと消えるが、数秒後に先程のレーザーが天から舞い戻った。

「空が光った!?」

 降り注ぐ光の玉が超高速でエンゼルブルクの郊外へと落ちた。大地が吹き飛び、エンゼルブルクも吹き飛んだ。同時に着弾点が光の太陽に変わり凄まじい衝撃波が一同を襲った。

「くそ、イグドラシルは完成していたのか!?」


 レオンによると、この“イグドラシル”はレーザー発射施設だそうだ。しかし、あまりにも威力が大きい為、精度に問題があったそうだ。そこで、そのレーザーの精度を向上させる装置を作ったのだが、事情により搭載できなかった。

 そこで、その装置を衛星として宇宙空間へ配置し、レーザーをそこに当てることによって照準の調整を行うだけではなく、衛星の位置を変更することによって惑星の反対側にまで攻撃する能力を持ち合わせたそうだ。


「あんなのを喰らったら1発でおだぶつやで!」
「落ち着けサム!当たりはしない!」

 連合軍機と“灰色の男達”の軍勢が入り乱れる中、ハールートの巨体は非常に目立つ。この空中要塞を相手に、連合軍部隊は既に多くの犠牲を出していた。

「テュール1からサークル隊へ、我々は灰色の男達を阻止する!あのデカブツは任せたぞ!」
「了解テュール1。いや、もしかしてジャックか?」
「そうだ。久しぶりだなハンク!」


 ハンクとジャックはかつてのサークル隊チームメイト。とはいえ、ベルカ戦争が始まる直前にジャックは別部隊に転属してしまったのだが、2人はそれなりに仲が良かった。

「ハンク!無駄話している暇は無いぞ!」
 レオンのモルガンがハンクの正面を横切り、彼の後を灰色のYF-23“ブラック・ウィドウ”が追いかけてゆく。敵機はレオンのモルガンにミサイルを放ったが。モルガンの電子防御システムが作動し、ミサイルを弾き返した。


「クーリッジのガンシップを叩き落さないとこの戦いは終わらない! 行くぞ!」
49 アドミラル・マーシュ 2006/07/31 Mon 21:26:22 aUlt..D3Q.t07f
――――――第28話+ 『エースたちの生き様』 Chapter28+ “Life on an aces”


 白銀の巨鳥、ハールートは圧倒的な火力を持ち合わせるが、ECM防御機能を持ったモルガンに対してはその火力を存分に発揮できない。無論、相手もこちらの弱点を知っている為、エア・インテークを撃たれないように注意する必要がある。


「<リッター・ワンから全機へ。モルガンは正面から攻撃しろ。それ以外は無駄だ。>」


 ヴァイゲル率いる臨時編成のリッター中隊はハンクたちのモルガンを狙おうとしたが、サークル隊と10機編成のジャック率いるテュール隊、F/A-18“スーパー・ホーネット”戦闘攻撃機が立ちはだかる。

「俺たちが相手だ!テュール隊交戦!」
「隊長のところに行くなら俺を倒してから行け! サークル4フォックス3!」

 カイルの放ったXMAAが薄暗い空を駆け上るX-02に直撃した。被弾したX-02は徐々に速度と高度を下げてゆく。

「<ヴィンシスキー、ベイルアウトしろ!アシュレイ、あのイーグルをやれ!>」

「<リッター・ファイブ了解。 ……ネガティブ!攻撃されている!>」

 テイラーとウェルチのF-16がガンとミサイルで交互に攻撃し、徐々に追い詰めて最後には金属のミンチへと変えた。


「駄目だ!逃げ切れない!テュール7イジェクトする!」

 テュール隊のF/A-18を撃墜した2機のワイバーンの背後から、ジャックのホーネットがXMAAを放ち、更に通常ミサイルで追い討ちを加えた。更にジャックは寮機と協力してリッターと交戦を続ける。

「ベルカ航空騎士団は円卓で滅んだ!今ここに居るのは単なる寄せ集めだぞ!」

 そんな中、ハールートの主砲レーヴァテインがデイヴィッドのイーグルとジャックのホーネットをかすめて、地上に大きなたんこぶのような爆炎を作り出した。

「イグドラシルや敵機だけではない!レーヴァテインにも気をつけろ!」

 戦闘を続ける内に、ハールートのチャフ・フレアーの残弾が尽きたようだ。ハールートに残るミサイルに対する残る自己防衛兵装は大口径の機関砲のみ。

「もらった!」
 ハンクとレオンはハールート向かってミサイルを発射しようとしたが、ハールートから放たれた大量のミサイルが先手をとった。2人は急旋回してミサイルをやり過ごす。ECM防御システムがあるとはいえ、これも万能ではない。


「<我々はあらゆる束縛から人類を解放する。全てを消し去り、世界を“ゼロ”から立て直して真の平和を提供する。貴様達はそれのどこが気に食わないのだ!?>」


 確かにクーリッジ元帥が言うように、国境が原因で多くの問題が起きている。しかし、それだからと言って世界を消し去るという考えはあまりにもかけ離れている。


「くそ、硬すぎる!もっと強力な武器は無いのか!?」
 ハールートの巨体は連合軍の攻撃を全て吸収しているかのように見えた。何発ミサイルを叩き込んでも、白銀の鳥はレーヴァテインと無数防御兵装でいくらでも反撃をしてくる。

「クロウ1、フォックス2!フォックス2!」
 ウェルチのミサイルが白い線を引いてハールートの右翼に命中したが、見た目ではダメージがうかがえない。コンクリートの上で爆竹をしているようなものだ。

「ウェルチ!6時方向に敵機!逃げろ!」

 ウェルチのF-16の背後からリッターのワイバーンと2機のMig-29が迫り、3機が順にミサイルを放った。ミサイルは彼の機体のすぐ真上で爆発したようだ。

「クロウ1被弾した!だが飛行に問題は無い!」

 ウェルチはスロットルを戻し、エアブレーキを使って相手をオーバーシュートさせる。追い抜かせた敵機向かってウェルチは引き金を引いた。

「ワイに任せろ!」
 ウェルチの攻撃を逃れたリッターの1機をサムがミサイルロックした。だが、別方向から現れたリッターがサムのイーグルを機関砲で狙い撃ってきた為、回避を余儀なくされた。
「あかん、邪魔された!」

「奴ら、一体何機飛行機を持っているんだ!?きりが無いぞ!」
 上も下も戦闘機だらけだが、相手は皆灰色な為、識別が容易である。しかし、ここまで入り乱れていると誤射の危険性も否定できない。


「ハールートの主砲がこちらを狙っているぞ!みんな逃げろ!」
 主砲、レーヴァテインがザピン空軍、エスクード隊のJas-39“グリペン”を2機消滅させた。残った4機は散り散りに散会している。


「おい!“イグドラシル”がまた動き始めたぞ!」
50 アドミラル・マーシュ 2006/08/01 Tue 21:46:23 aUlt..D3Q.t07f
―――――第29話 『ZERO‐“ラーズグリーズ”‐』 “ZERO‐Razgriz‐”


―――アヴァロンダム・エンゼルブルク上空


「<こちらアヴァロン・コントロール。イグドラシル、エネルギー再チャージ完了。>」
「<よし。撃て!>」

 再び天空から光が降り注ぐ。光は大地を剥ぎ取り、あらゆるものを吹き飛ばした。

「こちらサークル1、状況は!?」
「判らない!今のでかなり墜ちたぞ!」

 これ以上イグドラシルを撃たせれば国境どころか世界まで消えてしまう勢いがある。一国も早くハールートを撃墜し、イグドラシルも沈黙させなければならない。

「大尉、どうしますか?私達の武器では力不足です!」

 ようやくリッターの1機を撃墜したパトリシアが口を開いた。兄同様訓練学校を優秀な成績で卒業したとはいえ、今回初めての実戦。口数が減るのも当然だろう。

「サークル1から6、このモルガンのレーザーは既にバッテリー切れだ!何か他の手段はないか!?」
「大尉!まずは主砲の破壊を!本体の攻略はその後です!」

 ハールート主砲、レーヴァテインはハールートの自己防衛火器によって守られているので、まずはそれらを排除しなければならない。
 連合軍部隊はハールートを攻撃する部隊とリッターを始めとする敵航空機を攻撃する部隊、“イグドラシル”本体を叩く部隊に分かれて交戦した。

「ウェルチ!?何機落とした?」
「ベルクトを2、ブラック・ウィドウを3、ラプターを2、ワイバーンを1機!俺は8機だ!お前は!?」
「俺は9機だ!敵はまだまだいるぞ!」

 クロウ隊、エスクード隊、テュール隊はサークル隊と共にハールート本体と同時に灰色の男達の軍勢を相手にしている。そんな中でもクロウ隊の2人はぐんぐんと撃墜スコアを稼いでいた。

 ハールートを中心に数対数の凄まじい戦闘が続く。単なるミサイルの撃ち合いだけならば数分で終わるが、機関砲による格闘戦も発生しているため、中々数が減らない。

「敵機がしぶとい!これでは補給どころではないぞ!」
 補給に戻ろうにも、敵機に無防備な背中を見せるほど猶予がない。それ以前に、イグドラシルを破壊しなくてはならない為、此処で補給のためとは言えど、戦場を離れる訳には行かなかった。


「<ハールートを防護する。全部隊、私に続け!>」

 連合軍部隊の放火をかいくぐり、ヴァイゲル少佐のワイバーンが生き残った寮機と多数のブラック・ウィドウを引き連れてハールート周辺のハンクたちにミサイルを放つ。

「レオン、リッターだ!5時方向にいるぞ!」

 レオンはハールートの機関砲をECMで弾き返しながら上昇、宙返りでヴァイゲルの乗るワイバーンの背後を取る。相手もそれに気づき、機体をバンクさせてレオンを振り払おうとした。

「<何をしている裏切り者?我らの目指す理想を忘れたのか!?>」
「その理想が多くの血を流している。“血は新たな戦いの火種となる”。そんな古臭い考えとベルカ騎士団は過去の遺物だ。そろそろ消えろ!」

 レオンの放った2発のミサイルが命中し、ヴァイゲルのワイバーンは空中で消滅した。レオンは対空砲火を避けつつ高度を下げ、ハールートの真下に出た際、偶然何かの供給ラインらしきものを発見した。

「もしや・・・」

 レオンは機関砲でその装置を破壊した。


「<元帥!レーヴァテインにエネルギーが充填されません!>」

「<何?もう一度試してみろ。 …………駄目か。 アヴァロン、もう1発だ。連合軍を殲滅する。>」

「<了解、イグドラシルスダンバイ!>」


 地上にあるイグドラシルがうなりを上げ、レーザーを発射しようとした瞬間、突然大爆発を起こした。眩い閃光と衝撃波が収まると、イグドラシルの真上には1機の航空機が。


「<アヴァロン!?どうした、応答しろ!>」

「<元帥!レーダーに新たな機影!連合軍ではありません!>」


 1機の未確認機は真っ直ぐハールートに向かってくる。そして、収束された赤い戦略レーザーレーザーを放った。


 レーザーが直撃したハールートは爆発を起こし、煙を吹きながらも飛行を続けている。


「<今のは…………!?“ラーズグリーズ”!>」
51 アドミラル・マーシュ 2006/08/01 Tue 22:00:52 aUlt..D3Q.t07f
――――――第30話 『生命の終わり』 “End of Life”


「<誰だ!?誰が“ラーズグリーズ”の発進を許可した!?>」

 ハールート機内にクーリッジ元帥の叫びが響く。ハールートは傾斜し、徐々に高度を下げている。


「(……ハンク?)」


 雑音の中、無線越しにアンジェラ・ハリソンの声が聞こえる。

「アンジェラ!やはり生きていたのか!」

 だが、返事がない。ハンクは何度か呼びかけたが、全く反応しない。


「ハンク!奴に止めを刺すぞ!」
 レオンの声に反応し、ハンクがハールートに視線を向けると、既にハールートは火災が発生して長くは持たない状態だった。今なら確実にハールートを破壊できるはずだ。

「エンジンを潰せばすぐにでも墜ちるぞ!」
 サークル中隊は他の部隊に周辺の敵機と支援を任せて、ハールートの後方に回り込む。

「これで全てが終わる……!」
ハンク達のミサイルが次々とハールートのエンジンに命中し、ハールート後部でエンジンの爆発が連鎖した。


 ハールートはやがて失速し、後部から落下を始めた。だが…


「<――世界は一つになる。“スレイプニル”リリース!>」


 墜ち行くハールートの下部ハッチが開き、巨大なミサイルが切り離される。ミサイルが切り離された直後にハールートは爆滅し、アヴァロン上空で空の欠片となった。


「まずい!クーリッジめ、最後の手札を使いやがった!」


 8機のブースターに点火した“V−2スレイプニル・ロケット”は勢い良く上昇を始める。レオンの話によると、このロケットには8発の核弾頭を搭載しているそうだ。


「アレが着弾したら大変なことになるぞ!」
「なら撃墜するまでだ! 行くぞみんな!」


 連合軍機はすぐさまスレイプニルを追跡した。しかし、航空機で凄まじい速度で上昇するミサイルには到底追いつけない。


「駄目だ!射程外だ!ロック出来ない!」


 もう俺たちにはどうしようも無いのか?このまま世界が焼かれるのをただ指をくわえて見ているしかないのか?


「誰だ!?誰の機体だ!早いぞ!」


 そんな時、連合軍機の編隊から通常の航空機には手の届かない4万フィートをぐいぐいと昇っていく戦闘機の姿があった。


 「…………ラーズグリーズ! アンジェラ!」


 ADF-00ラーズグリーズは反則的は速度でスレイプニルに追いつく。だが、この距離でスレイプニルを撃てば彼女の機体も巻き込まれてしまうだろう。


「アンジェ!聞こえるか!?撃つんじゃない!巻き込まれるぞ!」


 緊迫した状況の中、無線越しにアンジェラの落ち着いた声が一堂に響く。


「…ズボフさんから聞いたわ。“このラーズグリーズの力があれば、何でも出来る”って。だから、私は……」


 アンジェラのラーズグリーズとスレイプニル・ロケットが雲の中に消え、ハンクたちの視界から消え去った。それと同時に無線も途絶える。


「アンジェラーーー!」


 雲を突き抜け、ラーズグリーズとスレイプニルは沈み行く夕日に照らされながら上昇を続ける。もうここは成層圏を超え、空が紫色をしている。じきに大気圏を離脱するだろう。

 アンジェラは終止符を打つために、スレイプニルを破壊した。このベルカ戦争、対クーデター戦争、そして自分の人生を終える為に。


 遥か上空の空で、爆音と共に星が光った。 それはまるで誰かが泣いているかのような音だった。


―――アヴァロンダム上空


『“撃て!”』

 サイファーのミサイルが片羽のモルガンを仕留める。彼は衝突寸前に機体を右にロールさせ、モルガンと腹と腹を合わせてすれ違った。数秒後、ピクシーのモルガンが後方で爆発。それと同時にピクシーが発射権を握っていたV2も空中で消滅した。


『――サイファー、任務完了だ。 帰還しよう。基地で皆がお前の帰りを待っている』


 サイファーとAWACSイーグル・アイはアヴァロンに背を向け、ヴァレーへの帰路に着いた。


 尚、これだけの出来事にも関わらず、このベルカ戦争から半年後の記録は残っていない。様々な理由があるが、一般的にはベルカが起爆させた7発の核爆弾の爆発の影響で電磁波が生じ、あらゆる記録を混乱させたことにある。


 こうして、謎多きベルカ戦争は幕を閉じた。
52 アドミラル・マーシュ 2006/08/03 Thu 21:35:51 aUlt..D3Q.t07f
―――――終奏 『スカイ・オブ・デセプション』“Epilogue ―Skies of Deception―”


 あれからどの位の時間が経ったのか?詳しくは判らない。ベルカ戦争を駆け抜けたハンクは様々な人物と出会い、多くの戦友を失った。


 死亡したかと思われていたアンジェラとの再会。これは彼の予想外の出来事だった。レオンもこちらに復帰し、これで全てを取り戻したかと思ったが、クーリッジがスレイプニルを作動させ、アンジェラはそれを阻止する為に命を奉げた。

 1人の犠牲で大勢の命を救ったのは偉業であるが、いくらシルバーストーンに侵されているからとは言え、先に旅立たれてしまったハンクにとっては大きなショックを与えた。


 だが、アンジェラ以外にも彼を支える存在があった。レオンを始めとするサークル隊のメンバー達だった。何があろうとも彼らのと“絆の輪”は滅びない。彼らの力を借り、ハンクは再び未来を目指して歩み始めた。


 今、カイルとサム、デイヴィッドはウスティオに残り、この国の空を守っている。そして、兄であるPJを失ったパトリシアはしばらくショックで立ち直れなかったが、今はクロウ隊の3番機としてウスティオ空軍に所属している。


 また、ドミニク・ズボフの行方は分からないが、裏の世界で暗躍しているのは確かだろう。
 ジャック・フォスターはその後、故郷である“ノースポイント”という島国に帰郷。レオンはオーシアでサッカー選手として活躍しているそうだ。


 今、ハンクは双子のレオンとは別れ、オーレリアに戻って来た。最愛のアンジェラと出会い、分かれたこの場所へ。


 最後に彼女が言い残した言葉「“力があれば何でも出来る”」この言葉を本当に大悪党のドミニク・ズボフが教えたのかは疑わしいが、言葉自体に偽りは無いだろう。
 その言葉を受けたハンクはベルカ戦争での経験を生かし、今はオーレリア空軍に所属している。この国の空を守る為に。


 だが、それからしばらくしてだった。隣国の“レサス共和国”が突如オーレリアに侵攻。備えなきオーレリアは瞬く間にほぼ全土をレサスに占拠されてしまう。生き残った首脳陣は残存部隊を再編成し、国土奪還の為に必死の反撃を試みる。


 彼らオーレリア空軍の最初の目標は、重要拠点である“パターソン港”。オーレリア航空部隊の中にはハンクの姿もあった。


―――まだ、彼の戦いは始まったばかりだ。


          THE END

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