ACE COMBAT ZERO NIGHTS OF ROUND TABLE EpisodeX
前スレッド No.122
- 35 アドミラル・マーシュ 2006/07/24 Mon 21:37:01 aUlt..D3Q.t07f
- There is Only One Ultimate Rule in War
―――――“交戦規定はただ一つ”―――――
―――――SURVIVE―――――
“生き残れ”
ACE COMBAT ZERO THE NIGHT OF ROUND TABLE
エースコンバット・ゼロ ナイツ・オブ・ラウンドテーブル
Mission Contents
序奏# 『翼の起源』 “Introductory chapter”
01# 『ディレクタス防衛線』 “Defense line Directas”
02# 『ベルカン・ナイツ』 “Ritter”
03# 『凍空の猟犬』 “Glacial Skies”
04# 『絶対的な力』 “Juggernaut”
05# 『ディレクタス解放』 “Diapason”
06# 『葬送曲』 “Funereal tune”
07# 『暁の戦場』 “Battlefield of daybreak”
08# 『ヘイムガルド平原の決戦』 “Hamugald plain”
09# 『円卓の夜T』 “Nights of Roundtable T”
10# 『嵐の中を走れ』 “Silverstone”
11# 『復讐者』 “Avenger”
12# 『クロウ隊のPJ』 “Crow3 PJ”
13# 『巨人の刃』 “The Excalibur”
14# 『約束の場所・円卓』 “The Roundtable”
15# 『B7R制空戦』 “Mayhem”
16# 『ザ・ベルカン・ウォー』 “The Belkan War”
17# 『サイファーとラーズグリーズ』 “Tow Demon”
18# 『臨界点』 “The Stage of Apocalypse”
19# 『円卓の夜U』 “The Nights of Roundtable U”
間奏# 『シルバーストーンの少女』 “Interlude―Silverstone Girl―”
20# 『円卓の夜V』 “The Nights of Roundtable V”
21# 『王の谷』 “The Valley of Kings”
22# 『アヴァロン』 “Avalon”
23# 『運命の再会』 “Fateful Encounter”
24# 『モルガン』 “Morgan”
25# 『ゼロ』 “ZERO”
26# 『灰色の男達』 “The Gray Wing”
27# 『ZERO‐“サイファー”‐』 “ZERO‐Cipher-”
28# 『ZERO‐“ラーズグリーズ”‐』 “ZERO‐Razgriz‐”
29# 『生命の終わり』 “End of Life”
30# 『翼と兄弟の近くで』 “Near the Wing and Brother”
終奏# 『詐欺の空』 “Skies of Deception”
3レス目から本編に突入いたします。
エースコンバット・ゼロが好きで、お時間があるときには是非どうぞ。
- 36 アドミラル・マーシュ 2006/07/24 Mon 21:49:37 aUlt..D3Q.t07f
- ―――――”New blood、 New Battles”―――――
―――――”新しい血は新しい戦いを生む”―――――
―――主な登場人物 連合軍
ハンク・ライト大尉
元オーレリア共和国の警察特殊部隊。サークル隊のリーダー。
4年前オーレリアでとある事件がきっかけで自分に対するミスを責め続けている。
カイル・ガーランド中尉
前向きで活発な性格。経験は浅いが優秀である。サークル4
サム・レッドフィールド少尉
少し肥満体質。明るく社交的だが、少し喋り方が独特。サークル隊の5番機
デイヴィット・コネリー少尉
判断力があり、どちらかというと知的。コールサインはサークル6.
パトリシア・ジェイムズ・ベケット
兄であるパトリック・ジェイムズ・ベケットに憧れて入隊。コールサインはサークル3.
サイファー
最近入隊した傭兵。臨機応変な戦い方をする。ベルカ軍に対し、数多くの作戦を成功させ、今では「円卓の鬼神」と恐れられている。コールサインはガルム1.
パトリック・ジェームズ・ベケット
クロウ隊の3番機で、ムードメーカー的な存在。現在はガルム2としてサイファーの相棒。
ウェルチ・マクナイト中尉
クロウ隊の隊長。テイラーとは幼馴染。コールサインは「クロウ1」
テイラー・デイヴィス中尉
ウェルチと同じくクロウ隊の2番機。ジョーク好き。
ウィリァム・ジェファーソン中佐
ウスティオ空軍、ドミノ飛行大隊の隊長。
ジェリコ・リンカーン大佐
オーシア陸軍戦車大隊、ブラック・ナイト指揮官。
アンドリュー・ワシントン・スミス
ウスティオ軍の特殊部隊隊長。好物は豚肉。
ロナルド・カーター少佐
ウスティオ陸軍、ザイオン戦車部隊の隊長。
―――「国境なき世界」
レオン・ライト大尉
ハンクの双子の弟。戦争前は旅客機の操縦士。恋人を失った衝撃で我を失いつつある。
ラリー・フォルク
過去に片羽を失いつつも生還した為、“片羽の妖精”と呼ばれている。
アルヴェルト・ヴァイゲル少佐
元ベルカ空軍、“リッター”飛行中隊隊長。
ドミニク・ズボフ大尉
元ベルカ公国空軍、“シュヴァルツェ隊”隊長。
アントン・カプチェンコ
元ベルカ公国空軍、“ゴルド隊”隊長。
ジョシュア・ブリストー
元オーシア国防軍“ウィザード隊”の隊長。
イーサン・クーリッジ元帥
元ウスティオの軍司令官。“オーシア戦争”での英雄だった。
- 37 アドミラル・マーシュ 2006/07/24 Mon 21:58:25 aUlt..D3Q.t07f
- ―――#フラッシュバック
「何てこった!サークル1が撃墜された!」
「こちらイーグル・アイ、サークル4が指揮を引き継げ、繰り返す・・・」
自分の前方でF-15が空中で爆発し、残骸がアヴァロンダムへと墜ちてゆく。周囲では航空機とミサイル、対空砲火で染まり、いつそれらに撃ち抜かれるか分からない。
だが、降下中に突然風船が割れるような音がした。ハンクのパラシュートに穴が開き、どんどん降下速度が増している。このままではアヴァロンの硬い外壁へ叩きつけられてしまう。
ふと周囲を見渡すと、アヴァロンダムの1部に貯水区間か水路らしき場所に水が溜まっている。ハンクは必死で乱れるパラシュートを制御してその部分に着水した。
「<総員Aハンガーに集結せよ!V2発射施設に“鬼神”が迫っている!繰り返す!戦闘員は直ちに鬼神の迎撃に向かえ!V2を死守せよ!>」
ハンクはベイルアウトした場所から水路に流され、水力発電タービン周辺の広い部屋から見知らぬ空間へと出た。
「<アルファ部隊は渓谷上空で連合軍部隊を攻撃、ベータ部隊はアヴァロン上空の制空権を確保!ガンマ部隊はV2発射軌道上を死守せよ!>」
施設内では絶えず指令放送が鳴り響いている。ここは既に“国境なき世界”の中枢なのだろう。
「<アヴァロン内部防衛部隊に告ぐ!連合軍のガンシップがハンガーDに侵入した!直ちにDハンガーへ向かえ!繰り返す・・・>」
安全を確認すると、ハンクは警戒しつつガンシップの仲間のもとへ向かった。
「ライト大尉!?半年前に失踪したはずでは!?」
「…俺はハンクだ。」
スミス大尉を先頭にハンク、ロイド軍曹、ハートソック軍曹、リコ伍長、チャーリー2等兵の6人は施設内の案内表示を頼りに、目的地であるGハンガーへと向かっていた。
更に施設を進むと、通路先の部屋にエレベータがある。それで上のフロアへいけるだろう。だが、既にエレベータには誰かが乗っていた。
「お前は・・・“ジョシュア・ブリストー”か!?」
『<破壊という名の新たな創造は、正道な力を以って我々が行使する。領土、人民、権力、今その全てをあらゆるものからを開放する。『“国境なき世界”』 が創造する 新しき国家の姿だ。>』
一同はエレベータの操作パネルを操作したが、既にアクセスが出来なくなっている。
『<国籍や国家も意味を成さない。その線引きは今我々が消し去り、『“国境なき世界”』 が新しい物語を書き連ねる。そして、世界は変わる>』
- 38 アドミラル・マーシュ 2006/07/24 Mon 22:02:10 aUlt..D3Q.t07f
- ―――――第23話 『運命の再会』 “Fateful Encounter”
「嘘だ・・・・・・・・」
ハンクの手からマシンガンがすり抜け、カタンと音を立てて床に墜ちた。
「あれは・・・人だなよな、リコ。」
「…みたいですね、スミス大尉。」
未知の航空機と思える物体から分離したコックピットの中には、ハンクの恋人であった“アンジェラ・ハリソン”が閉じ込められていた。彼女に意識は無く、眠っているようだった。ハンクは拳銃でコックピットの結合部分を狙い撃ち、彼女を救出しようとしたがコックピットには傷一つ付いていない。
「落ち着け大尉。この人は誰なんだ?」
一方で、ハートソックが散らばっている書類の中からこの機体の資料を見つけ出した。
「ADF−00“ラーズグリーズ”・・・」
だが1回の爆音が響き、彼らの部屋にクーデター軍の兵士が再び殺到してきた。リコ、ハートソック、ロイドはすぐさま物陰に隠れてから反撃したが、逃げ遅れたチャーリー2等兵が手榴弾に吹き飛ばされた。
スミスはライフルに取り付けられたM203グレネード・ランチャーで数名のクーデター軍兵士を吹き飛ばしたが、敵は次から次へとやってくる。減るのは手持ちの弾薬だけだ。
ハンク達とクーデター兵士の激しい撃ち合いの中、突如天上が爆発し、何者かが爆発で出来た穴から飛び降りてきた。2人は両手に小型のスコーピオン・マシンガンで次々とクーデター軍の兵士を撃ち倒してゆく。
「大尉が2人!?」
現れたのは“ドミニク・ズボフ”とレオン・ライトだった。ハンクはすぐさまズボフ向かってマシンピストルを構える。
「はっ。てめぇの女の面倒を見てやった上に、今助けた俺に銃を向けるのか?」
「何!?」
スミスはハンクの銃を下ろさせた。誰が見ても今のズボフとレオンは自分達を助けてくれた味方である。周囲の安全を確認し、ライト兄弟とズボフは対談し始めた。
「俺はと様々なソースからイーシャの行方を捜した。まだ生きていると信じてな。だが、探している間にハンクの恋人であるアンジェラの存在を掴んだ。」
レオンに続けてズボフが言い付け加える。
「この組織、“国境なき世界”はそこにある試作戦闘機“ラーズグリーズ”を完成させたが、操作できる人間がいなかった。元々無人戦闘機として開発していたんだが、肝心の頭脳が完成せず、その代わりが要求された。」
ズボフは“国境なき世界”の設立者の1人であり、ウスティオ軍の司令官である“イーサン・クーリッジ”から多額の報酬を受け取り、体内に神経回路を内蔵された人材をクーデター組織に提供することとなった為、オーレリアでアンジェラを拉致したと言う。
「そして、俺が高額の報酬を支払い、ズボフに協力を依頼した。」
しかし、レオンがそんなに金持ちにも思えない。ハンクがその部分を聞くと、レオンは“国境なき世界”のメンバーになる際に、受け取った報酬をズボフに支払ったと言う。
「勘違いするな、俺は金を目当てに動く悪党だ。そういう仕事だからな。」
ズボフ本人はそう言うが、誰も彼が悪党とは思っていない。後はここに居るアンジェラを何とか救出し、ここから脱出するだけだ。
「レオン・・・?イーシャは・・・」
「いや・・・それは俺が悪かった。その・・だな、ハンクはただ任務を遂行していただけで・・・」
「正直に言えばいいだろう。もったいぶるな。」
ズボフがそう言い付け加えると、レオンは自分の気持ちを正直に言い明かした。
「父さんも母さんも死んだ。もうハンクだけが唯一の家族なんだ。それなのに俺は・・・」
その時、1発の銃声が響き、レオンの左肩を銃弾が貫いた。
- 39 アドミラル・マーシュ 2006/07/25 Tue 20:08:46 aUlt..D3Q.t07f
- ――――――第24話 『モルガン』 “Morgan”
放たれた銃弾はレオンの左肩を貫通した。
「よくも私を裏切ったな!」
「クーリッジ元帥!?」
レオンを撃ったのはウスティオ軍司令官のイーサン・クーリッジ元帥だった。彼の周囲を数十名の親衛隊が取り囲んでいる。
「すまねえな元帥、俺は金で動く傭兵だ。悪いが今回の件はキャンセルさせてもらうぜ。」
ズボフがクーリッジ元帥と言い争っている間に、ハンクはレオンの容態を確認しつつアンジェラを助け出そうとしていた。レオンは無事だが、どうしてもアンジェラを解放できない。
「――なら報酬を返してやる。受け取りな」
ズボフのスコーピオン短機関銃から銃弾が吐き出され、次々とクーリッジ元帥の親衛隊をなぎ倒してゆく。
「裏切り者を処刑しろ!」
ズボフは敵の反撃を受ける前にコンテナの陰にダイブした。ハンク、レオン、スミス、ロイド、ハートソック、リコも応戦し、再び激しい銃撃戦へと発展した。
「大尉!早くここから脱出しないと!弾薬がなくなるぞ!」
部屋の左後方に出口がある。しかし、ズボフだけが右側に孤立していた。こちらに来る為に部屋の中央に出れば、必ず敵の格好の的になるであろう。
「駄目だ!まだアンジェラが!」
だが、今の彼らに“ラーズグリーズ”のコックピットを取り壊す手段も無ければ猶予もない。今すぐ此処から撤退しなければ、やがて全滅するだろう。
「諦めろ大尉!このままでは犬死だ!」
すると、ズボフがコンテナの陰からハンクを優しい目で見ていた。
「おい兄貴、ここは俺に任せておけ。」
「?お前・・・!?」
「勘違いするなよ。おれは金で動いているだけだ。」
一同はズボフと分かれ、その部屋を後にした。レオンの案内でGハンガーに向かった。だが、しばらくするとクーデター軍の兵士に発見されてしまう。
「俺が援護する!先に行け!」
細長く狭い通路で、ハートソック軍曹のM60重機関銃が通路の壁を砕き、追跡してくる敵を威嚇した。M60の弾が尽きると、背中のスパス・ショットガンに持ち替える。
「きりが無いです!大尉!」
「構うな!先に進むぞ!」
相手を押しとどめておく為に、銃を撃ちながら移動するわけだが、敵は通路の様々な場所から出現する為、通路の分岐点で足止めを受けてしまう。
「敵だらけだ、進めない!」
通路を右折した先の左側にGハンガーがあるのだが、通路の先で敵兵がバリケードを設けている。通路を渡れば“飛んで火に入る夏の虫”のようなオチになるだろう。
「任せろ!」
ロイド軍曹がライフルに取り付けられたグレネード・ランチャーでバリケードを粉砕し、更にライフルで威嚇射撃を行使した。
「ここがGハンガーだ。」
レオンがドアをロックして照明をつけると、ハンガーの四隅には3思試作戦闘機“モルガン”と中央にクーリッジ元帥の専用機である改良型スペクター・ガンシップが待機していた。
「ADFX-01“モルガン”。国境なき世界が開発途中だったベルカの機体を押収して完成させた戦闘機だ。」と、レオン。
だが、よく見ると明らかにもう1機戦闘機が駐機されていた後がある。
「モルガンは4機作られた。1機はラリーが使っている。」
「ピクシーが!?それで今奴はどこに?」
―――アヴァロンダム・V2ロケット発射施設上空
「やったぞ!俺たちは英雄だ!」
サイファーとPJのガルム隊はV2ロケットの発射施設を破壊し、アヴァロン上空で次の指示を待っていた。
『これで戦争も終わる。 実は俺、基地に恋人が待っているんですよ。花束も買ってあったりして。戻ったらプロポーズしようと・・・』
だが、遥か彼方の上空にいる空中管制機イーグル・アイは彼らガルムに接近する1機の未確認機を確認。迫る危機を急いでガルムに次げた。
『警告!アンノーン接近!ブレイク!ブレイク!』
1本の赤いレーザーがサイファー目掛けて飛来してきた。だが、そこにPJのF-16が割り込み、サイファーをかばうかのようにレーザーの直撃を受けた。
目の前でPJの機体が粉々に砕け、サイファーは硬直していた。しかし、彼の心境を知る者はいない。
雪が降り始めたアヴァロンダム上空。サイファーの前方から1機の未確認航空機が接近してくる。赤い翼、白い胴体。サイファーにはこのカラーリングに見覚えがあった。
『“―――戦う理由は見つかったか? 相棒。”』
- 40 アドミラル・マーシュ 2006/07/26 Wed 21:45:12 aUlt..D3Q.t07f
- ―――――第25話 『ゼロ』 “ZERO”
『<“戦う理由は見つかったか? 相棒”。>』
2番機を失ったサイファーと試作機体“モルガン”に乗った片羽の妖精、ラリー・フォルクがヘッドオン状態で接近する。
『駄目だ!各サイロの再起動を確認!敵機を撃墜せよ!解析結果は追って知らせる!』
AWACSイーグル・アイから指令が下ると同時に、ピクシーのモルガン上部に搭載された収束レーザー砲が再び発射された。サイファーはバレルロールでレーザーを寸前で回避し、ミサイルを2発モルガンに叩き込んだ。
『<不死身の英雄ってのは、戦場に長く居すぎた奴の過信だ。お前のことだよ相棒!>』
サイファーのミサイルは確かにモルガンに命中した。しかし、ピクシーは平然と飛んでいる。
―――アヴァロンダム・内部Gハンガー
ハンクとレオン、ロイド軍曹は試作戦闘機“モルガン”に乗り込んだ。ロイド軍曹は陸軍の輸送機やガンシップの操縦経験があり、戦闘機もある程度操縦できるそうだ。
残ったスミス大尉、ハートソック軍曹、リコ伍長はガンシップに乗り込み、開かれた後部ハッチでハートソックがいつ敵が来てもいいようにと、使い捨てのRPG7ロケットランチャーを足元に並べ、両手にも持っている。
「こちらは最後に出る。大尉、先に行ってください!」
「分かった、行くぞレオン!」
ハンクはフルスロットルでモルガンを発進させた。背中が座席のシートに食い込み、体の感覚が麻痺しかけた。モルガンは地下鉄のようなトンネルを猛スピードで進み、どんどん加速してゆく。
「出口だ!」
ハンク、レオン、ロイドのモルガンは雪の降る曇りの空へと舞い上がった。。
―――エンゼルブルク上空
アヴァロンダムと攻略と同時に、連合軍はアヴァロン後方にある“国境なき世界”の拠点がある“エンゼルブルク”という都市にも部隊を派遣していた。今でも2つの勢力による大規模な戦闘が続いている。
「クロウ1から各機、地上のガンタワーの中にはSAMも含まれているぞ!」
ウスティオ、オーシア、ユークトバニア、ザピンの連合航空部隊により、徐々にクーデター軍を追い詰めているようだ。
「こちらクロウ2、レーダーに新たな機影!所属不明だ!」
ハンクを中心にレオンが左、ロイドが右で編隊を組み、連合軍に接近していた。
「こちらウスティオ空軍、サークル1、ライト大尉だ。誰か聞こえるか?」
「感度良好、聞こえるぜハンク」
「こちらクロウ1、一体何所からそんな機体を持ってきたんだ!?」
「話せば長くなる。」
ハンク達はクロウ隊と合流し、エンゼルブルクのクーデター軍掃討を開始した。
「モルガンには大型の散弾ミサイルが装備されている。こいつで敵の陣地を一気に吹き飛ばせるぞ!」
ハンクは機内のコントロール・パネルを操作し、レオンに聞いた武器を探し出した。主翼の両脇に2発だけ大型の散弾ミサイルが装備されている。そして、3機のモルガンはエンゼルブルクのクーデター軍地上部隊向かって散弾ミサイルを放つ。
「凄い威力だな・・・」
炸裂した散弾ミサイルの爆発を眺めつつハンクは同時に、サイファーとPJ、ガルム隊の行方を捜したが、ここには居ないそうだ。
「現在ピクシーのモルガンと交戦中!?」
ハンクはサイファーがピクシーのモルガンと対等に戦えるようにと、AWACSイーグル・アイにこの機体のデータを伝送した。
「敵司令部の沈黙を確認!これでこの戦いも終わるだろう!」
だが、突然エンゼルブルクの噴水広場が割れ、水が地下へと流れ落ち、巨大な電磁式カタパルトの滑走路が空向かって押し伸ばされる。航空機発進用の射出カタパルトとしては、明らかに大きすぎるサイズである。
「アレは一体何だ!?」
「レーダーに巨大な敵影!でかいぞ!」
- 41 アドミラル・マーシュ 2006/07/27 Thu 21:12:08 aUlt..D3Q.t07f
- ―――――第26話 『灰色の男達』 “The Gray Wing”
―――エンゼルブルク地下・アヴァロンダム内部
アヴァロンダムの地下格納庫で、巨大な航空機が発進準備を整えていた。燃料供給コネクタを始めとするワイヤーやケーブルが次々と切り離され、本体がカタパルトに移動する。
「<軌道上に敵勢航空機多数。しかし、発進に影響はありません>」
「<全システム良好、オールグリーン。カタパルト問題なし。>」
未知の航空機内部で、“イーサン・クーリッジ元帥”が発進の合図を出した。
「<白銀の巨鳥、“ハールート”出撃!>」
カタパルトの滑走レールがスパークを放ち、“しろがねの巨鳥・ハールート”を空に射出した。未塗装のXB−0B“ハールート”は薄暗い空の下に出ると表面が灰色に染まる。
「おいおい!奴らはまだあんなもんを隠し持っていたのか!?」
「テイラー、知っているのか!?」と、ハンク。
ウェルチとテイラーは数日前“ルーメン”という村を哨戒していた際、国境なき世界の巨大ガンシップ“フレスベルグ”と交戦し、今目の前にいる奴がそれと殆ど同じだと言う。
早速ハンク、レオン、ロイドはもう片方の散弾ミサイルをハールート向かって発射したが、放出されたチャフ・フレアーに誘導を妨害されてしまい、ミサイルは地上へとそれた。
「<私は“国境なき世界”の設立者の1人として最後まで使命をまっとうするつもりだ。私の翼、“ハールート”を中心に世界は再生への道を歩みだす。>」
ハンク達は旋回を終えて再びハールートに後方から迫る。ハールートの上には大口径の機関砲や対空ミサイルランチャーを始め、様々な武装が施されており、それ以外にも内臓式の武器もあるようだ。
「“モルガン”には収束指揮の戦略レーザーが搭載されている。こいつなら厚い岩盤でも真っ二つだ!」
ハンクとレオン、ロイドはレーザーをハールート向けて発射したが、機体表面に膜のようなものが出来てレーザーを屈折させた。
「どういうことだレオン!?“甲板”でも真っ二つじゃなかったのか!?」
「俺は“岩盤”と言ったんだ!かんぱんとは言っていない!」
2人の言い争いをよそ目に、ロイドはミサイルで攻撃したが、やはり機体表面で弾かれてしまう。
「いや、待て!これは“エクスキャリバー”の時と同じだ!どこかにジェネレーターみたいな装置があるはずだ!」
ハールートのちょうど中央になにやら大きい円形の装置が見える。恐らくこれがシールド発生装置なのだろう。早速ハンク達はモルガンに搭載された機関砲でその装置を狙う。
「対空砲に気をつけろよ!俺たちが援護する!」
クロウ隊のウェルチとテイラーの支援を受け、ハンク達は上空から一気にハールート向けて急降下した。巨大なハールートに吸い込まれるようにジェネレーターが迫る。ハンク、レオン、ロイドの順で機関砲を掃射し、ジェネレーターを粉砕した。
「<元帥、6時方向に敵機です。>」
「<よし、“レーヴァテイン”放て!>」
ハンク達は旋回してハールートの背後を取り、レーザーの照準を合わせる。そして、引き金を引こうとした瞬間、ハールートがレーザーで先制攻撃を仕掛けてきた。レーザーはロイドのモルガンのECMバリアを貫通し、跡形なく消し去った。
「<こちらクーリッジ元帥だ。ヴァイゲル少佐、準備は良いか?>」
「<リッター、準備よし。いつでも行けます>」
「<ハンガーを解放しろ、リッター出撃。 それと、“片羽”にもGOサインを出せ。>」
ハールートの機首下にあるハッチが開き、アルヴェルト・ヴァイゲル少佐率いる“リッター飛行中隊”の“X-02ワイバーン”が9機射出された。どの機体も未塗装のままで、灰色の機体で表れ、すぐさまヴァイゲルを中心にして逆V字の編隊を組んだ。
「<リッター1から全部隊へ。“スレイプニル”作動まででいい。行くぞ。>」
リッター中隊のワイバーン部隊がハンク達連合軍部隊へと襲い掛かる。ハンク達やクロウ隊もそれに対抗して散開するが、こちらはハンクとレオン、ウェルチとテイラーの4機。それに対し、相手は9機プラス多数のクーデター軍機。
「“灰色の男達”か。ハンク、奴らを潰して俺たちは「“ゼロ”」からやり始めよう。」
「そうだなレオン。“ゼロ”からやり直そう。全てを終えてからな。」
この戦いの前に、2人がかつての絆を取り戻すことは容易であった。
- 42 アドミラル・マーシュ 2006/07/28 Fri 20:16:49 aUlt..D3Q.t07f
- ――――――第27話 『ZERO “サイファー”』 “ZERO‐Cipher-”
『<時間だ。>』
片羽の妖精・ラリー・フォルクの台詞と共に、アヴァロンのサイロから巨大なV2ミサイルが飛び立った。
『<惜しかったなぁ、相棒。歪んだパズルは一度リセットされるべきだ。このV2に全てを“ゼロ”に戻し、次の世代に未来を託そう!>』
薄い淡雪が降る空。かつてのガルム隊の2人が皮肉な最終対決を迎えている。
『こちらAWACS!聞け、ガルム1!敵機体の解析が完了した。コードネームは“モルガン”。この機体はECM防御システムによって守られている。唯一の弱点はエア・インテークだ。』
ハンクの送ったモルガンのデータがAWACSイーグル・アイに通達され、それを解析した結果、機体下部にある吸引口。エア・インテークには防御が施されていないとのことだ。
『――今そこで彼を討てるのは君だけだ。“円卓の鬼神”、幸運を祈る!』
唯一の弱点はエア・インテーク。しかし、そこを狙うには真正面から接近しなければならない。サイファーのイーグルが大きなバンクを描いてピクシーのモルガンにヘッドオンする。
『<此処で全てが来決まる>』
無線越しにラリー・フォルクの声が響く。
『<此処から国境が見えるか!?国境は俺たちに何をくれた!? 全てをやり直す。 その為のV2だ。>』
上昇するV2をバックにピクシーのモルガンが接近。二人は射程に入ると同時にミサイルを放った。サイファーはS字旋回でミサイルをかわし、モルガンにはミサイルが命中した。しかし、エア・インテークに直撃しなかったようだ。
『V2再突入まで後4分38秒!』
既にV2が最高高度に達し、反転して着弾するまでのカウントダウンが始まっている。このカウントが“ゼロ”になった場合、V2の力を持って世界は焼き払われるだろう。
『<もう一度、正面からだ。>』
お互いにターンを終え、更にヘッドオンする2人。射程に入ればすぐにミサイルを放つ為、少しでも旋回が遅れると相手のミサイルを避ける猶予がそれだけ減ってしまう。
『<さあ、来い!>』
互いのミサイルが交差し、それぞれが目標に向かって行く。だが、今度は両者とも回避した。回避したのを確認すると、再び旋回して次の攻撃の準備に入る。
『<お互い腕は衰えていないな。 俺とお前は鏡みたいなものだ。とはいえ、正反対だがな。今こうして向かい合い、初めて違いに気づく。>』
2人の距離が迫る。
「<サイファーとは“ゼロ”という意味も持ち合わせている。その“ゼロ”は俺たちの目指す再生後の“ゼロ”か。それとも終焉後の何も無い無の“ゼロ”か・・・>」
ピクシーはロックオンと同時に発射ボタンを押した。だが、正面から向かってくる筈のミサイルが見えない。サイファーはミサイルを発射していなかった。
かつての相棒を撃つのをためらったのか?奴、サイファーはこんなに臆病者だったのか?
『<撃て! 臆病者!>』
しかし、ピクシーはまだ自分がロックオンされていることに気が付いた。そして、サイファーは自分の正面のやや下からエア・インテークを狙っていた。この距離では回避できない。
あとはサイファーのミサイルが直撃するのを待つだけだ。
相棒がためらわなければ。
『<“撃て!!”>』
サイファーの放ったミサイルがピクシーの乗るモルガンのエア・インテークに吸い込まれて内部で爆発した。制御不能になったモルガンは、そのままサイファーのイーグルへと突進してゆく。
サイファーは衝突寸前に機体を右にロールさせ、モルガンと腹と腹を合わせてすれ違った。数秒後、ピクシーのモルガンが後方で爆発した。
- 43 アドミラル・マーシュ 2006/07/29 Sat 22:46:50 aUlt..D3Q.t07f
- ―――――間奏 『生命の名前』 “Life of Name T”
―――1991年、オーレリア国立総合病院。
「……シルバーストーンが……直る?」
「ああ、完全とまでは行かないが、手術をすれば直るそうだ!」
ハンクは給料やボーナス、特別手当をかき集め、アンジェラの手術代として提供した。
「…いいの?こんな大金を…」
「いいんだ。これで自由になり、太陽の下に出られるのであれば安いものさ。」
明日にはオーシアの技術者達が来て、アンジェラを直してくれる筈だ。そうすれば、彼女はようやく太陽の下を自由に歩ける。その為なら高額の治療費も安いものだ。
しかし―――
「・・・シルバーストーンは直せない!?どいうことだ先生!」
医師によると、元々これは直せない病気で、今回の手術は体内の一部を機械化して太陽光に対する耐性を補強し、今オーシアで開発されている特別な服を着用して初めて外へ出ることが出来るという。
「今の科学力では、シルバーストーンの存在を突き止めるのが精一杯なのです。」
―――数日後。
目が覚めると、アンジェは病院のベッドに横たわっていた。いつもとは違う病院の1室。すると、自動ドアが開き、看護婦が朝食を運んできてくれた。
「お早うアンジェ。よく眠れた?」
「はい・・・」
今気になるのはやはり手術の結果である。成功したのか?それとも失敗だったのか?しかし、この部屋には『“窓”』がある。アンジェラが窓に見とれていることに気が付いた看護婦は・・・
「大丈夫よ。長くは駄目だけど、少しぐらいなら先生からの許可は下りているわ。」
それを聞いて安心したアンジェはすぐにベッドから起き上がり、窓へと歩み寄った。窓からは美しい朝日が見え、陽光が彼女の体を照らした。が、しばらくすると目眩がして倒れてしまった。
――更に数日後
アンジェの元に新しい服が届いた。服と言うか、見た目は宇宙服みたいな大きいサイズの特別なスーツというところだ。これでようやく外の世界へ行ける。
そして今日、アンジェラはハンクと共に外へ出かけることになった。とはいえ、今まで外に出かけることが無かった為、どうすればいいか分からなかった。両親は共働きで、病気の娘アンジェラを完全に放置していたこともあり、なお更わからなかった。こんなときはハンクに聞くと良いかもしれない。携帯電話を取り出してハンクに電話しようとした瞬間だった。
「何・・・?」
突然窓ガラスが割れ、数名の武装した人間達が彼女の部屋に侵入してきた。謎の集団はアンジェラの両腕を掴み、部屋から連れ出した。一体何所へ連れて行かれるのか?
気が付けば、オーレリア警察のパトカーがサイレンを鳴らしながら謎の集団の車を追跡していた。警察とテロリストが激しい銃撃戦を繰り広げていると、突然すぐ近くで爆発が起きて車を横転させた。
アンジェラは横転した車から逃げようとした。だが、1人の男の腕が彼女の自由を奪った。手にはダイナマイトと大きな拳銃が握られ、ダイナマイトを握った手でアンジェラを引きずっている。すると、煙幕の仲から誰かが飛び出してきた。
「アンジェラ!?」
現れたのは特殊部隊の戦闘服に身を包んだハンク・ライトだった。これで助かった。ハンクが助けてくれる。もう少しすれば……
だが、テロリストがハンクと少し話した後、いきなりダイナマイトの導火線に引火した。爆発の衝撃で海へと投げ出された時、アンジェラは死を覚悟した。このまま水の中に転落したら助かる見込みはない。言うまでも無く泳げないからだ。
だが、彼女の手を引き、海面へと導く者がいた。誰かと思えば先程ダイナマイトを爆発させた男だった。その男、“ドミニク・ズボフ”は爆破した橋から離れたところで海面に顔を出し、組織の船が来るのを待ち、それに乗り込んでオーレリアを後にした。
続きスレッド