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ACE COMBAT ZERO NIGHTS OF ROUND TABLE Epilogue

前スレッド No.126
53 まーしゅ 2006/11/30 Thu 19:52:47 DXjf..D3Q.5iAv
―――――”New blood、 New Battles”―――――
―――――新しい血は新しい戦いを生む―――――


ACE COMBAT ZERO  THE NIGHT OF ROUND TABLE  FINAL CHAPTER
エースコンバット・ゼロ   ナイツ・オブ・ラウンドテーブル 最終章


―――――主な登場人物  Main Character

 ハンク・ライト・ブルーネル大尉  Hunk light Bluenel
ウスティオ、ディレクタス出身の元オーレリア共和国の警察特殊部隊。
オーレリアでの生活に座礁し、ウスティオに戻って来たところで「ベルカ戦争」に巻き込まれる。

 レオン・ライト・ブルーネル大尉  Leon light Bulenel
ハンクの双子の弟で、戦争前は旅客機の操縦士。 負けず嫌いな性格で、ハンクではなく自分が兄だと信じている部分もある。 また、同期のイーシャとは恋仲。

 カイル・ガーランド中尉  Kyle Garland
前向きで活発な性格。経験は浅いが優秀なパイロット。

 サム・レッドフィールド少尉  Sam Redfield
少し肥満体質な青年。明るく社交的で、独特の喋り方をする。 外見とは対照的に空戦では回避行動を得意とする。

 デイヴィット・コネリー少尉  David Connery
新人のパイロット。 どちらかというと知的。

 パトリシア・ジェイムズ・ベケット  Patricia James Becket
兄であるパトリックに憧れて入隊した少女。しかし、パトリックと生まれた時間が765秒違うだけで、どちらが先に生まれたかははっきりとしていないため、どちらが上かは曖昧である。


 サイファー Galm1 “Cipher”
最近入隊した傭兵。臨機応変な戦い方をする。
圧倒的な空戦技術と活躍から「円卓の鬼神」と呼ばれる。

 ラリー・フォルク  Rally Folk
過去に片羽を失いつつも生還した為、“片羽の妖精”と呼ばれている。

 パトリック・ジェームズ・ベケット  Patrick James Becket
クロウ隊の3番機で、ムードメーカー的な存在。

 ウェルチ・マクナイト中尉  Wealth McKnight
クロウ隊の隊長。テイラーとは幼馴染。

 テイラー・デイヴィス中尉  Taylor Davis
ウェルチと同じくクロウ隊の2番機。 非常に食いしん坊。

 イーサン・クーリッジ元帥  Commander Esan Coolidge
ウスティオ軍の司令官の一人。オーシア戦争で活躍した歴戦の勇士。


Mission Contents  EpisodeT
序奏# 『翼の起源』 “Introductory chapter”
01# 『ディレクタス防衛線』 “Defense line Directas”
02# 『ベルカン・ナイツ』 “Ritter”
03# 『凍空の猟犬』 “Glacial Skies”
04# 『絶対的な力』 “Juggernaut”
05# 『ディレクタス解放』 “Diapason”
06# 『葬送曲』 “Funereal tune”
07# 『暁の戦場』 “Battlefield of daybreak”

Contents EpisodeU
08# 『ヘイムガルド平原の決戦』 “Hamugald plain”
09# 『円卓の夜T』 “Nights of Roundtable T”
10# 『嵐の中を走れ』 “Silverstone”
11# 『復讐者』 “Avenger”
12# 『クロウ隊のPJ』 “Crow3 PJ”
13# 『巨人の刃』 “The Excalibur”

Contents EpisodeV
14# 『約束の場所・円卓』 “The Roundtable”
15# 『B7R制空戦』 “Mayhem”
16# 『ザ・ベルカン・ウォー』 “The Belkan War”
17# 『サイファーとラーズグリーズ』 “Tow Demon”
18# 『臨界点』 “The Stage of Apocalypse”
19# 『円卓の夜U』 “The Nights of Roundtable U”
間奏# 『シルバーストーンの少女』 “Interlude―Silverstone Girl―”

Contents EpisodeW
20# 『円卓の夜V』 “The Nights of Roundtable V”
21# 『王の谷』 “The Valley of Kings”
22# 『アヴァロン』 “Avalon”
23# 『運命の再会』 “Fateful Encounter”

Contents EpisodeX
24# 『モルガン』 “Morgan”
25# 『ゼロ』 “ZERO”
26# 『灰色の男達』 “The Gray Wing”
27# 『ZERO‐“サイファー”‐』 “ZERO‐Cipher-”

Contents EpisodeY
間奏# 『生命の名前』 “Life of Name”
28# 『翼と兄弟の近くで』 “Near the Wing and Brother”
29# 『ZERO‐“ラーズグリーズ”‐』 “ZERO‐Razgriz‐”
30# 『生命の終わり』 “End of Life”

Contents Epilogue
31# 『新世界』 “Erector Sophia”
32# 『拳の打撃』 “Gauntlet Strike”
33# 『何も無きエースの戦い』 “Ace Combat Zero”
34# 『円卓の夜W』 “The Night of the Round Table W”
35# 『天使の翼』 ”The Wing of the Angel”

終奏# 『詐欺の空』 “Skies of Deception”
54 まーしゅ 2006/11/30 Thu 19:58:12 DXjf..D3Q.5iAv
―――――第31話 『エレクトロスフィア』 The electro sphere

 ハンクは気がつくと、自分の愛機イーグルのコックピット内部に乗っていた。

「各機、状況を報告しろ!」
「ネガティブ! 装置がイカレた!現状不明!」

 スレイプニル・ロケットとラーズグリーズの爆発後、空間が歪み巨大な幕が空を包んだ。まるで空が崩れていくかのように黒い幕が侵食し、やがては地上も黒く染まった。 黒く染まった空間はまるで宇宙空間のように上下感覚が無く、そこにいる者たちの行く先を奪う。

「此処は何所だ? サークル・リーダー、何か分かるか?」
「いや、分からない。 ジャック、そちらは?」
「テュール・ワンから全部隊へ、現状が不明だ。 隊列を乱すな」

 生き残ったのはサークル隊、テュール隊、クロウ隊の3部隊、合計10機。 アンジェラが阻止したとはいえ、あの爆発は相当な威力があったため衝撃で破壊された味方もいるのだろう。

「こちらクロウ1. 前方に何か居るぞ!」

 容器から搾り出される調味料のように空間膜から姿を現す巨大な影。これがクーリッジのハールートだと判明するのには時間がかからなかった。 ハンク達は各計器が回復したのを確認すると、すぐさまエンゲージに備える。

「行くぞ皆!サークル1、交戦!」
「了解だ!サークル2、交戦!」
「テュール・チーム、エンゲージ!」
「任せておけ! クロウ1、交戦!」
「サークル3交戦!」
「しぶとい元帥やな! サークル5交戦!」
「早く帰ってメシにしようぜ! クロウ2交戦!」
「サークル4交戦!」
「サークル6、交戦」


((まだ終わっていない。 命が尽きても、それは終わりではないの))


 国境なき世界の巡洋空中管制航空母艦フレスベルグ2番機、ハールートから多数のミサイルが射出される。先程の戦闘でかなりの損傷を与えたはずだが、それらのダメージは完全に回復している。

((Weapon Reloading……  “Complete”))

「おい。どうなっている? 武器が補給されているぞ!?」

 ジャック・フォスターはコックピットから自分の機体の主翼を見てみた。此処には既にミサイルが発射され、それを主翼とつないでいたパイロンだけが存在するはずだが、いつの間にかミサイルが戻ってきている。

「こっちもだ! ハンク、そっちは!?」
「俺もだレオン。 武器が回復している!」
「おまけに燃料ゲージが振り切れとるで!」

 ダメージも武装も完全に回復した。これならまだ戦える。 状況は不明だが、目の前に存在するハールートが敵だと言うのは確かだろう。

しかし、ここは本当に何所なのだろうか?
55 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:02:56 DXjf..D3Q.5iAv
―――――第32話 『ガントレット・ストライク』 The Gantlet

「<ついに完成したか……我ら「国境なき世界」が追い求め続けた『壁の無い世界』が。 すばらしい出来だ>」

 白銀の巨鳥、ハールートからイーサン・クーリッジの声が響く。これが無線か生の声かは分からない。だが、空間全体に響いている為、どちらでもなさそうだ。 ただ、ハンクらが各自の高度計を見てみるとマイナスに差し掛かっている。また壊れてしまったのだろうか?

「<どうだ? ここにはまだ何も無い。『ゼロ』から世界の全てを再建する。 此処、『エレクトロスフィア』という「壁の無い世界」で>」


「……エレクトロスフィア?」


「<妨害が無ければこのエレクトロススフィアはやがて全世界へと拡大するはずだった。だが、これだけの空間があれば十分だ。我らはここから全世界のコンピューター・ネットワークに侵入し、全人類の「新たな旅立ち」を手引きする! 此処、エレクトロスフィアへ!>」

 同時にレーダーに新たな機影が映る。それもかなりの数だ。

「おい!ハンク! まずいぞ!敵の援軍だ! しかも……」

 ロト・グリューン・インディゴ・ゲルプ・シュネー・ズィルヴァー・ゴルド。 ベルカ空軍の黄金時代をリードしたエース部隊が続々と姿を現す。 しかし、ハンク達の反対側からも1機のイーグルと8機のフォックスハウンドが迫る。

「識別信号を受信! 後ろから来るのはサーファーよ!」
「パトリシア、“サイファー”の間違えだろ?」

 そして8機編成のフォックスハウンドはドミニク・ズボフ率いるシュヴァルゼェ隊だ。

「なんだこのザマは? 一体どういうことだ?」
「おいズボフ、此処で何している?」

 一応レオンはアンジェラ奪還までのギャラしか払っていないそうだ。それなのにズボフがここに居るのはおかしいというか間違っている。しかも7機の寮機を連れて。

「―――爆発と同時に此処に引き寄せられた。 気がつけばかつてのダチも勢ぞろいになっている。 しかもウスティオのヨーヘイまでもが居やがる」

 サイファーとズボフが援軍として加わり、ハンク達は謎の空間「エレクトロスフィア」を舞台に、最後の闘いに挑む。
56 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:04:49 DXjf..D3Q.5iAv
―――――第33話 『エースコンバット・ゼロ』  Ace Combat ZERO

 ハールートから大量のミサイルが迫る。とにかく回避行動に入るが、鳥の群れのような大量のミサイルを回避できるはずが無い。しかし、ハンクは何故かやり過ごせる気がした。

「ハンクはん! ミサイルや!回避!」

 ハンクはミサイル直撃寸前に機体を傾けて回避した。その後も続々とミサイルをすり抜け、弾幕を掻い潜った。そしてその先に待ち受けるのは再び姿を現したベルカのエース達。


(―――ハンク、聞こえる? 此処はエレクトロスフィアという電子空間。ここは肉体を必要とせず、精神のみで存在することが出来るの)


「……!! アンジェラ!?」


 アンジェラの声がハンクの脳内に響く。ハンクはふと気がつくと、機体の操縦桿を握る手がもう一つ存在することに気がつく。 真水のように透き通った蒼い手。その蒼い手を辿ってみると、自分の横にアンジェラの顔が存在した。


(―――まだ私はここに あなたの隣に いるよ)


 このときハンクにはあまり深く考えている余裕は無かったが、少なくともアンジェラが力を貸してくれているとだけは確信していた。 そしてそのままの状態で正面から迫る2機のターミネーターにミサイルを放った。

「サイファーか!?」

 ハンクの隣ではサイファーの機体が並び、鏡のように動きを合わせている。2人のミサイルがターミネーターを排除し、後方から他の仲間も追いついてくる。


(―――ハンクは私に光を、生きる希望を与えてくれた。生きる道を導いてくれた。 今度は私の番。私がハンクを未来に導く!)


「おい兄貴! おまえ何所でそんな飛び方を身に付けた!?」 と、ズボフ。

 サイファーと共にクーリッジのハールート真っ直ぐハンク。 だが、そんな2機を追撃するベルカエースの亡霊が殺到する。

「テュール・ワンから各機! ハンクを。サークル・リーダーを支援する!」
「ああ、分かっている! サークル2、サークル・リーダーに続く!」

 この何も無い『ゼロ』の空間、エレクトロスフィアにおける『エースの戦い』には人類の未来を左右する結果が待ち受けている。現存の人類が未来を取り戻すか、クーデター軍の作り出した新たな世界が繁栄するか。


「<―――世界の繁栄を阻む異端者どもめ。 世界は進化すると歴史が証明している。その流れに逆らおうと言うのか?>」
57 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:17:36 DXjf..D3Q.5iAv
―――――第34話 『ザ・ナイツ・オブ・ザ・ラウンドテーブル』   The Nights of the Roundtable

「サークル3、敵機撃墜!」

 パトリシアが撃墜した赤いタイフーンが黒煙を吐きながら分解し、光の粒子と共に爆発した。 その直後、パトリシアの背後からグリューン隊の緑色のホーネットが迫るが、ウェルチがそれを撃墜してパトリシアを支援した。

「大丈夫か!?」
「はい!」

「見てみろ!背景が塗り替えられていくぞ!」

 風が流れるかのように背景が塗り替えられてゆく。そして、現れたのはエリアB7Rこと「円卓」であった。

((ここ、エレクトロスフィアに存在するものは、みんな現存の世界にあるコンピューター・ネットワークにあるのを元に作り出されたもの。 既にエレクトロスフィアによる侵食は始まっている。 急いで!))

「アンジェラ、それはどういうことだ?」

((このエレクトロスフィアは現存世界のデータを飲み込みながら成長する。惑星の構造、酸素、重力、紫外線、原子、生物…… 放置しておけば世界のデータは全て失われて、破滅を迎えてしまう! ハンク、エレクトロスフィアを破壊して!))

 エレクトロスフィアは未完成のため、データ吸収と共に現存の世界のデータが混入して、具現かしてしまうそうだ。サイファーにより撃墜されたベルカ人エース部隊が此処に存在する理由もここにあるのかもしれない。

「どうすればエレクトロスフィアを破壊できる!?」

((エレクトロスフィアの中枢は……ハールートの中に))

 ハンクはすぐさまサイファーと共にXMAAを連射した。しかし、ハールートの防御用機関砲がそれを阻み、ダメージを与えられない。

「おいハンク! 俺たちの存在を忘れるなよ!?」

 ベルカ人エースの亡霊を撃破したレオン達が次々と合流する。ズボフやジャックは寮機を失っているものの、まだこちらにはサークル隊とクロウ隊のメンバーが揃っている。

「ウスティオのヨーヘイは気に入らねぇが、後で弟から報酬をもらうという条件で手を貸してやる」

「……よし、皆! これで大詰めだ! 行くぞ!」

 一同はハンクらを中心に編隊を組み、一斉にミサイルをハールート向けて発射した。
58 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:40:29 DXjf..D3Q.5iAv
―――――第35話 『ウイング・オブ・アンジェラ』  The Wing of Angel

「<元帥! 被害が大きすぎます! システムを維持できません!>」

 ハンクたちの一斉攻撃を受けたハールートはスパークを放ち、虹路のパウダーを撒き散らしている。 同時にエレクトロスフィアに映し出されている円卓も歪み始めていた。


「<…………諸君、どうやら此処までのようだ。今までご苦労だった>」

 クーリッジ元帥は司令席を立ち、ブランデーとワイングラスを取り出した。同時に他のクルーも同類のものを手に取る。ハールートが垂直に飛行しているかは分からないが、今のエレクトロスフィアに重力や物理が組み込まれている保障は何所にも無い。

「<国境の無き新世界(エレクトロスフィア)に乾杯>」

 その直後、ハールートから光の十字架が現れ、エレクトロスフィアを引き裂き始めた。パズルのピースのように空間が砕け、光の粒子が降り注ぐ。パズルピースのように切り裂かれた空間には円卓をはじめ、コモナ諸島、ディレクタス、オーレッド、ノースポイントなど様々な風景が映し出されている。

「こちらサークル6.隊長、エレクトロスフィアが崩壊を始めました! どうしますか!?」

 デイヴィッドのイーグルがハンクの側面につき、他の仲間も後方で待機している。

「どうすんのや!? どうすんのや!? どうすんのや!? このままやとエレクトロスフィアの崩壊に巻き込まれてしまうで!」

 とは言われても、ハンクにもどうすれば言いか分からない。 だがその時、スレイプニル・ロケットと共に散ったアンジェラのADF-00ラーズグリーズが姿を現す。

((ハンク。 こっち、ついてきて))

 蒼く透き通った羽毛の羽を撒き散らしながらハンク達を導くラーズグリーズ。 よく見るとそのラーズグリーズ自身も残像が表れ歪んでいる。

「上が出口か!?」

 ドリルで開けたかのような穴が上に出来ている。中は暗く、先の状況は把握できない。だが、此処しか出口は無さそうだ。一同はラーズグリーズに続いて抜け穴に飛び込んだ。

「何だよ……これは!?」と、カイル。
「俺は夢でも見ているのか? 信じられん!」

 ハンクのすぐ後方を飛ぶかカイルとデイヴィッド。 穴の中に入った途端、赤い洞窟へ出た。その中には赤い球体。赤血球が流れていた。

「ここは血管の中だ」
59 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:42:06 DXjf..D3Q.5iAv
―――――最終話 『未来への帰還』 Back to the Future

 クーリッジのハールートを撃破し、崩壊を始めたエレクトロスフィアから脱出を試みるハンクたち。

 「道が分かれているわ! 隊長、出口はどちらですか!?」

 「落ち着けパトリシア。 こっちだ!」

 アンジェラの導きがある。どうやらハンク以外にアンジェラ。ラーズグリーズは見えてないようだ。 この血管の中は人間の血管同様、複雑に入り組んでおり、案内無しで脱出するのは不可能だろう。

 「レーダーに反応!ハンク、前方から敵機! アンノーンだ! 俺が片付ける!」

 レオンが未確認機にミサイルを放つと、アンノーンは光の粒子となって砕け散った。 レオンに続きジャックとズボフが加わると、他のアンノーンもすぐに姿を消した。

 「出口か!?」
 「サークル・リーダーとサイファーに続け!」

 光の中に飛び込む一同。視界が回復すると、そこは雲の中だった。 厚い雲が上に向かって通路を作り出している。雲の通路の中には雷雲もあり、時折雷が横切る。

((壊れたデータスワロー。 回線の一部なの。 気にしないで))

 数秒後には雲の通路を抜けた。幸い誰も雷には打たれなかったようだ。 そして次に出たのは水が流れる滝の中だ。 流れ落ちる水流の中、一同は更に上を目指す。

 「更にアンノーンやで!」

 進路を塞ぐアンノーンが大量のミサイルを乱射してくるが、ハンクとサイファーが機関砲で全てのミサイルを叩き落した。 普通ではまず不可能に近い行為だが、今のハンクにとってはそれほどでもない。

 「光が見える……」

 ((あれが出口…… ハンク、諦めないで))

 その言葉と共に、アンジェラのラーズグリーズは雪が溶けるように消滅した。

 「―――サークル1から全機、出口が見える! 一気に行くぞ!」

 ようやく終わる。 しかし、アンジェラはどうなるのだろうか? だが、ハンクがそう考えていると、ロックオン警報が機内に鳴り響く。


 「<連合のクズ共が。 逃げられると思っているのか?>」

 後方から1機のX-02ワイバーンが迫る。 リッターことベルカ騎士であるアルヴェルト・ヴァイゲルだ。

 「おいリッター! まだ戦う理由があるのか!?」
 「<あるとも。 最愛の息子を取り戻したい。 それだけで十分だろう?>」

 「何!?」

 「<私の息子はクーデター組織の資金源として売却された! 取り戻すために手段は問わん!>」

 ワイバーンから大量のXLAAが放たれる。 ハンク達は可能な限りの回避行動を実施した。しかし、このままでは皆がヴァイゲルの餌食になってしまうだろう。

 「とにかく速度を上げろ!」

 全力で出口を目指すハンクたち。 だが、出口が徐々に閉ざされてゆく。

 「サークル・リーダーより各機! ミサイルに注意しつつ全力で出口に向かって飛べ! これが隊長としての最後の指示だ!」

 「了解したハンク! 行くぞ!」
 「サークル3了解! さあ、帰りましょう!」
 「了解です! 最大出力!」
 「了解や!わてに任せておけ!」
 「了解! 最後の指令を遂行します!」

 クロウ隊の2機がハンクの横に並び、ジャックとズボフもすぐ後ろから迫る。

 「おい弟! 気をつけろ!ミサイルだ!」
 「くそっ!まずい!」

 レオンのイーグルにヴァイゲルのミサイルが迫る。 モルガンの電子シールドがあるから安心だと思ったが、エレクトロスフィアに来てからイーグルに戻っていたことを忘れかけていた。
60 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:44:04 DXjf..D3Q.5iAv
――――――最終話・第2部 『導きの星』

 「サークル2!回避して!」
 「ダメだ! 当たる!」

 爆音が響く。

 「無事か!? レオン!」

 レオンの機体は無傷だった。 しかし……

 「ハンク! お前………!」

 ハンクの機体が煙を吹いている。 ハンクはレオンの機体にミサイルが当たる直前に射線に割り込み、身代わりとなっていたのだ。

 「レオン、皆を頼む…………」

 「ハンク! よせ!」

 ハンクはそういい残すと、現実空間では不可能な急旋回を成し遂げてヴァイゲルとヘッドオンした。 そして全てのミサイルをヴァイゲルのワイバーン向かって発射した。

 「何!?」

 ヴァイゲルはすぐさま回避行動に入るが、数発を避けただけで他のミサイルを避け切れなかった。 ハンクはヴァイゲルの最後と仲間の離脱を見送ると、機体を流れに任せてエレクトロスフィアの底へと降下させた。 いくら環境が未完成のエレクトロスフィアと言えど、ダメージを受けたこの機体で出口へと辿り着くのは難しい。


 ((私の翼は、あなたを導く。 私の翼と共に、輝く未来へと飛び立って))

 「……アンジェラ?」

 ((さあ、ハンク。 飛んで。 そして“生き残って” ))


 ハンクは自分の手を見てみると、蒼いオーラに包まれていることに気がつく。更に損傷を受けた機体も蒼いオーラに包まれている。 ハンクが操縦桿を握ると、機体のコントロールは回復するどころか敏感までに研ぎ澄まされていた。


 ((ハンクが行くのは天国でも地獄でもない。 光の先に見える 未来))

 オーラに包まれたハンクのイーグルは、眩い光へと向かって突き進んだ。

 「……ありがとう、アンジェラ」
61 マーシュ 2006/12/01 Fri 20:49:03 DXjf..D3Q.5iAv
―――――終奏 『スカイ・オブ・デセプション』  “Epilogue ―Skies of Deception―”

 今ハンクはオーレリア空軍に所属している。 この国の空を守る為に。

 だが、それからしばらくしてだった。隣国の“レサス共和国”が突如オーレリアに侵攻。備えなきオーレリアは瞬く間にほぼ全土をレサスに占拠されてしまう。生き残った首脳陣は残存部隊を再編成し、国土奪還の為に必死の反撃を試みる。

 ハンクは「オーブリー基地」に所属する「グリフィス飛行隊」の一員となり、オーレリア最後の基地であるオーブリーから再び闘いの空へと舞い上がった。

 The End
62 マーシュ 2006/12/04 Mon 22:47:19 DXjf..D3Q.5iAv
 尚、これだけの出来事にも関わらず、このベルカ戦争から半年後の記録は残っていない。 様々な理由があり、一般的にはベルカが起爆させた7発の核爆弾の爆発の影響で電磁波が生じ、あらゆる記録を混乱させた。 と、いうのが一般論だが、後にハンクとレオンの元に届いたズボフからの手紙によると、この現象の原因は世界のネットワーク及びデータベースに干渉していた『エレクトロスフィア』の崩壊が原因だとの事だ。

 円卓の鬼神。
 ラーズグリーズ。

 彼らの死闘を語るものはごく少数の人物のみであった。
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