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ACE COMBAT ZERO NIGHTS OF ROUND TABLE EpisodeV

前スレッド No.120
18 アドミラル・マーシュ 2006/07/14 Fri 21:03:50 aUlt..D3Q.EmbO
ACE COMBAT ZERO  THE NIGHT OF ROUND TABLE
エースコンバット・ゼロ   ナイツ・オブ・ラウンドテーブル


―――――”New blood、 New Battles”―――――
―――――”新しい血は新しい戦いを生む”―――――


この作品は「”エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー”」のサイドストーリーです。
尚、この作品は「エースコンバット・ゼロ」の内容を大幅に暴露している為、ゼロをクリアしていない方には観覧を推奨できません。

よろしければ、前作”リザレクション・オブ・ラーズグリーズ”にも目を通していただけると幸いです。

3レス目から本編に入ります。 お暇潰しにどうぞ。


―――主な登場人物 『ウスティオ空軍・サークル飛行中隊』

ハンク・ライト大尉:元オーレリア共和国の警察特殊部隊。
レオン・ライト大尉:ハンクの双子の弟。戦争前は旅客機の操縦士。
イーシャ・モンゴメリー中尉:スチュワーデス経由の元旅客機パイロット。
カイル・ガーランド中尉:前向きで活発な性格。経験は浅いが優秀である。
サム・レッドフィールド少尉:少し肥満体質。明るく社交的らしい。
デイヴィット・コネリー少尉:新人のパイロット。 どちらかというと知的。


『その他のウスティオ空軍』

サイファー:最近入隊した傭兵。臨機応変な戦い方をする。
ラリー・フォルク:過去に片羽を失いつつも生還した為、“片羽の妖精”と呼ばれている。
パトリック・ジェームズ・ベケット:クロウ隊の3番機で、ムードメーカー的な存在。
ウェルチ・マクナイト中尉:クロウ隊の隊長。
テイラー・デイヴィス中尉:同じくクロウ隊の2番機。ジョーク好き。
ウィリァム・ジェファーソン中佐:ウスティオ空軍、ドミノ飛行大隊の隊長。


『連合軍』

ジェリコ・リンカーン大佐:オーシア陸軍の大隊指揮官。
エドワード・ワシントン・スミス:ウスティオ軍の特殊部隊隊長。
ロナルド・カーター少佐:ウスティオ陸軍の軍人。
ジョシュア・ブリストー:オーシア国防軍“ウィザード隊”の隊長。


『ベルカ公国空軍』

アルヴェルト・ヴァイゲル少佐:ベルカ空軍、“リッター”飛行中隊隊長。
ドミニク・ズボフ大尉:ベルカ公国空軍、“シュヴァルツェ隊”隊長。
ディトリッヒ・クラーマン:ベルカ空軍、“ズィルバー隊”隊長。別名「銀色の大鷲」。
19 アドミラル・マーシュ 2006/07/14 Fri 21:36:48 aUlt..D3Q.EmbO
Ace Combat Zero  Nights of Roundtable EpisodeV

ここまでのあらすじ

―――1995年3月25日。
 経済恐慌の中、極右政党が政権を獲得したベルカ公国。元ベルカ自治領ウスティオ共和国に眠る膨大な天然資源発見の報を機に、ついにベルカ公国は周辺国への侵攻作戦を開始。

『“ベルカ戦争”』の開幕である。

 開戦から数日後、既にウスティオ陸軍はベルカ陸軍により壊滅し、ウスティオ政府は山岳地帯にある“ヴァレー空軍基地”への後退命令を下す。
だが、既に国境の防衛線は突破され、ウスティオ首都ディレクタスの完全占拠は時間の問題であった。

 ウスティオ空軍・サークル飛行中隊に所属するハンク・ライトと、レオン・ライトは新たに登場した凄腕の傭兵2人組みである『”ガルム隊”』と出会い、彼らと共にベルカの手から首都ディレクタスを解放した。

 そして、ベルか陸軍と連合軍の大規模な戦車部隊がヘイムガルド平原で決戦を迎えるが、ベルカのレーザー兵器”エクスキャリバー”の攻撃により、サークル隊は撤退を余儀なくされる。
 彼らは撤退するが、とある場所に迷い込んでしまう。そこはベルカの重要防衛空域である”円卓”であった。そこでハンクは昔の因縁の相手である”ドミニク・ズボフ”と再会する。ハンクは奴と決着を付けることは出来なかったが、何とかウスティオまで無事に生還できた。
 そんな彼らはすぐに次の作戦に参加し、「エクスキャリバー」を破壊。その直後、「バトルアクス作戦」が発動され、彼らはエリアB7R”円卓”への進撃を開始した。


Mission log

0# 序奏 “Introductory chapter”
1# 『ディレクタス防衛線』 “Defense line Directas”
2# 『ベルカン・ナイツ』 “Ritter”
3# 『凍空の猟犬』 “Glacial Skies”
4# 『絶対的な力』 “Juggernaut”
5# 『ディレクタス解放』 “Diapason”
6# 『葬送曲』 “Funereal tune”
7# 『暁の戦場』 “Battlefield of daybreak”
8# 『ヘイムガルド平原の決戦』 “Hamugald plain”
9# 『円卓の夜T』 “Nights of Roundtable T”
10#『嵐の中を走れ』 “Silverstone”
11#『復讐者』 “Avenger”
12#『クロウ隊のPJ』 “Crow3 PJ”
13#『巨人の刃』 “The Excalibur”
14#『約束の場所・円卓』 “The Roundtable”
15#『B7R制空戦』 “Mayhem”
16#『ザ・ベルカン・ウォー』 “The Belkan War”
17#『サイファーとラーズグリーズ』 “Tow Demon”
18#『円卓の夜U』 “The Nights of Roundtable U”
19#『大いなる天使』 “Ark Angel”
20#『第2の敵』 “Second Enemy”
21#『円卓の夜V』 “The Nights of Roundtable V”
22#『王の谷』 “The Valley of Kings”
23#『アヴァロン』 “Avalon”
24#『モルガン』 “Molgun”
25#『ZERO』 “ZERO”
26#『ZERO‐“サイファー”‐』 “ZERO‐Cipher-”
27#『ZERO‐“ラーズグリーズ”‐』 “ZERO‐Razgriz‐”
28#『スレイプニル』 “Sleipnir”
29#『生命の終わり』 “End of Life”
30#『エピローグ』 “Skies of Deception”
20 アドミラル・マーシュ 2006/07/15 Sat 20:28:06 aUlt..D3Q.t07f
―――――第14話 『約束の場所・円卓』 “The Roundtable”


  連合軍は順調にベルカに支配された土地を奪還し、徐々にベルカを追い詰めていた。そして、遂に「あの戦場」が連合軍の前に立ちふさがる。

   エリアB7R。 通称『“円卓”』

 この区域に眠る膨大な地下資源を巡り、太古の昔から戦場となっていた場所である。地形が粗く複雑で、地上部隊が介入できないこの戦場は各国の精鋭が飛び交い、戦闘機乗りにとって雌雄を決するのに最適な“伝説の場所”。


 そして、ここでの交戦規定は『“生き残れ”』。 ただそれだけであった。


―――ベルカ絶対防衛空域・B7R周辺空域

「サークル1から各機、円卓まであと少しだ。」
 ハンク率いるサークル中隊、ウスティオのドミノ大隊、クロウ隊、ジョーカー隊。そして、オーシアのレイピア隊、ウィザード隊、オメガ隊、連合軍航空兵力は「バトルアクス作戦」に参加し、噂の“円卓”へと向かっていた。

「こちらイーグル・アイ、エリアB7Rのベルカ軍を掃討する。激しい戦闘が予想されるが、この戦いに生き残り生還せよ!幸運を祈る。」

 すると、早速ベルカの戦闘機部隊が出迎えてきた。敵はMig-21が4機、Mig-29が8機、Su-27も8機、ミラージュが4機、トーネード戦闘機が8機。見ての通りの大部隊だ。
「ドミノ・リーダーからドミノ各機へ、あまり離れるな!」
 ウスティオ空軍第6航空師団第1飛行隊、ドミノ大隊の指揮官、“ウィリアム・ジェファーソン中佐”は優れた判断力とリーダーシップを持つ人物で、古い時代から何度も空戦を経験してきた歴戦の勇士である。

 ベルカのSu-27フランカーがミサイルをドミノ大編隊に向かって発射すると、ドミノ大隊機は様々な方向に散開してミサイルを回避した。そして、再び編隊を組みなおすと一斉にミサイルでの反撃を開始する。
「ドミノ1、フォックス3!」
「ドミノ4、フォックス3!」
「ドミノ7、発射!」
 ドミノ大編隊から凄まじい数のXLAA長距離空対空ミサイルが飛翔した。ミサイルから吐かれる煙が蜘蛛の巣のように空を飾り、ベルカ軍機も回避行動を実施する。

 「よし、敵を包囲して1機ずつ始末するぞ!」

 ドミノ大編隊のタイフーン戦闘機部隊が散開し、敵部隊との空中格闘戦に突入する。ハンク達も敵部隊の懐に突入し、相手の陣形を内部から崩そうとした。敵の陣形や戦略を上手い具合に乱せば、他の仲間も戦いやすくなるだろう。

 「誰か援護してくれ!ベルカのフランカーに背後を取られた!」
 何所かに助けを呼ぶ仲間がいる。だが、こんな混戦では何所にいるのかも分からない。

 「駄目だ!うああっ!」
 どこかで爆発音が聞こえる。この爆発が今、助けを求めていた味方と関係があるのかは分からないが、ぼんやり飛んでいると確実に撃墜されるのは確かだろう。

 一方で、レオンはオーシア空軍の“ジョシュア・ブリストー”率いる“ウィザード隊”と共闘していた。サークル隊から離れるつもりは無かったが、やはり敵機を落とすことに集中していると、いつの間にか最初の位置から離れているものだ。

「よし、あらかた方つけたな。先へ進むぞ。」
 機体不調のタイフーンが1機反転して離脱してゆく。ハンクたちが円卓に来たのは2度目だが、前回は夜だった為に景色を眺めることは出来なかった。今改めて円卓を眺めると、非常に広大な山岳である。
「サークル1全部隊へ、これより円卓に突入する。油断するな。」
円卓に侵入した連合軍。すると、ベルカの増援部隊が出迎えてきた。
「来たぞ!サークル2交戦!」
「よし、クロウ3交戦!」
 2つの軍勢が交わり、円卓は一瞬にして無数の航空機が飛び交う修羅場と化した。

「くそ!敵が多すぎる!」
 ベルカのフランカーがオーシアのF-14トムキャットを撃墜し、そのフランカーを付け狙うウスティオのタイフーン。しかし、そのタイフーンもベルカ軍機に落とされてしまう。これではイタチごっこではないか。

「援軍はまだか!?」
 そんな時、彼らの期待に答えるかのように味方の援軍が現れた。2機のF-15イーグルが太陽をバックにして降下してくる。 “ガルム隊”だ。


  『―――よし!花火の中に突っ込むぞ!』
21 アドミラル・マーシュ 2006/07/16 Sun 20:17:43 aUlt..D3Q.t07f
―――――第15話 『B7R制空戦』 “Mayhem”


―――ベルカ絶対防衛戦略空域B7R 通称“円卓”


「くそ、数が多すぎる!手に負えん!」
陸軍同様、世界最強を誇るベルカ空軍を相手に連合軍航空兵力は既に戦力の40パーセントを損失していた。しかし、そんな連合軍の元にウスティオの傭兵、“ガルム隊”が援軍として駆けつける。

『生き残るぞ!ガルム1!』

2機のF-15イーグル。サイファーとピクシーが太陽をバックに急降下し、XMAAでベルカのフランカーを一気に8機血祭りに上げた。

「援軍が来た!?何所の隊だ!?」
「識別信号を確認! ガルムだ!援軍はガルム!」

ガルムの名を聞いただけで、連合軍の士気は急激に上昇した。戦線は押され気味だったが、サイファーとピクシーが次々とベルか軍を蹴散らし、戦線を復活させてゆく。

「諦めるな!まだ終わっていない!」
各部隊も体勢を立て直し、ガルムの後に続く。
「どうだ!俺の飛び方を覚えておけ!」
PJがベルカのMig−29を火だるまに変えた。PJを含むクロウ隊の3機は集団戦法をとり、3機で1機の敵機を狙っている。万が一別の敵に狙われても、他の2機がすぐにカバーできるのが利点だ。

『俺は平和のために戦っている!だから世界の空で飛ぶ!』
PJは若さゆえに戦争の悲惨さを知らないのだろう。そんなPJの理想的な発言を聞いていたラリーが、彼の知らない真実を言い明かした。

『その平和の下、世界には何万ガロンの血が流れているんだよ、小僧。』
『――あんたが流す血も、俺が止めてやるよ!』


ハンクたちの上空から3機のMig−29がSAAMで襲い掛かる。高い誘導性能と射程を誇るSAAM(セミ・アクティブミサイル)をぎりぎりでかわすと、ハンク達は上昇して相手とヘッドオン状態になる。
「サークル1、フォックス3!」
「敵機、12時方向。サークル3、フォックス3!」
ハンクとイーシャのXMAAが2機のミグを撃墜し、撃ち漏らした敵もデイヴィッドが始末した。機体を水平に戻し、また別の敵に狙いを定める。


「まだこんなに沢山いるのか・・・」

未だに航空機とミサイルが数多く飛び交っている。ついさっきもミサイルがコックピットの真上をかすめたり、上から航空機の残骸が降ってきたりと全く油断できない。


「サム!今からそっちに敵を送るぞ!」
レオンの追跡しているベルカのトーネードが、サムのイーグルの方へと逃げてくる。レオンはサムと連携し、敵を挟撃しようとする。
「よし、撃て!」
2人は同時に引き金を引く。しかし、ベルカのトーネードは上昇し、それを追っていたレオンとサムが激突しそうになった。
「危ねぇじゃねえかサム!」
「わいのせいかいや!?」
だが、2人が言い争っている間に、先程のトーネードが彼らの背後についていた。これはマズイと言わんばかりに2人は回避行動を取る。
「サークル6、フォックス2」
そんな時、デイヴィッドのイーグルが急に現れ、ベルカのトーネードにヘッドオンでミサイルを撃ち込んだ。爆発の中を付きぬけ、デイヴィッドは大きいカーブを描きながらブーメランのようにレオンの横に戻って来た。


「……ありゃ?はぐれた!?みんなどこだ!?」
カイルはサークル隊から離れていた。円卓は広いが、飛び交っている航空機やミサイル、銃弾を考慮すると、とてもではないが広いとは言えない。むしろ空が狭いと言うべきだ。

「<見ろ、ウスティオ軍機が1機はぐれているぞ>」
「<いいカモだ。狙え!>」

ベルカ軍機がこちらに向かって来る。まずい、1人であれだけの数は相手に出来ない。何所かに味方はいないのか? いた、少し遠くに3機のF-16が見える。恐らくクロウ隊だ。

「PJ!俺も仲間に入れてくれ!」

カイルのイーグルが高速でクロウ隊の持ち場に乱入する。

「クロウ2からサークル4へ、転属は歓迎だが、敵機まで引き連れてくるのは勘弁だぜ」
「なら敵を落すのを手伝ってくれ!」

結局サークルはどの辺りにいるのだろう?今しばらくはクロウ隊にお世話になるしかなさそうだ。

「こちらクロウ2。カイル、終わったら転属手続きな。」
「ええ!?」
どうやらテイラーはクロウ隊に4番機が欲しいようである。
22 アドミラル・マーシュ 2006/07/17 Mon 20:56:16 aUlt..D3Q.t07f
――――――第16話 『ザ・ベルカン・ウォー』 “The Belkan War”


「ん?ベルカの援軍か?」
 レーダーに新たなシグナルが5つ見える。ハンク達はすぐさまその方向に目を配った。


「<ボス、戦線が後退しています。>」
 1機のF-4ファントム戦闘機を先頭に、4機のF-16ファイティング・ファルコンが続く。
『<奴らは素早い、しっかりと付いてゆけ。私の最後の授業だ!>』
「<了解、ボス!>」
 ゼブラカラーで統一された部隊。これは“ディトリッヒ・クラーマン中佐”率いるベルカ空軍第51航空師団126飛行隊の“ズィルバー隊”だ。彼は数年前に引退し、空軍アカデミーの教官だったはずだが、軍の士気向上を目的として再び戦場に派遣されたのだろう。
「敵部隊の増援を確認!気を抜くな!」
 歴戦のエースであるクラーマン中佐は、自分の教え子と共に戦うわけだが、彼は機体の基本性能を超えた戦いをすることから“銀色の大鷲”と呼ばれ恐れられている。
「・・・?クラーマン先生!?先生ですよね!私ですよ!イーシャです!」
「<イーシャ!?モンゴメリー君か?何故こんな場所にいる?>?」
 イーシャは誰にも話していなかったが、実はイーシャはベルカの航空会社で個人的に旅客機の操縦を教わっていたのだ。その時彼女に操縦を教えたのがクラーマンだ。
「こちらPJ、サークル3どうかしましたか?」
「皆待って!彼は私の俺の先生よ!」
 しかし、かつての先生と言えど今は敵同士。相手も容赦なく攻撃を仕掛けてくる。相手が仕掛けてくるならこちらも反撃するので、やはり戦う結果となってしまった。
「もらった!」
 レオンはガンサイトに敵機を捕らえた。相手も必死に素早く逃げるが、レオンはそれ以上に鋭く追跡している。そして、レオンが引き金を引こうとした瞬間、背後にズィルバーのF-16が現れた。だが、背後にいた敵機が爆発し、爆炎の中から片羽の赤い機体が現れる。ピクシーが敵機を追い払ってくれたようだ。
「こちらガルム2、敵機撃墜!」
 ピクシーは方向転換してサイファーの元へ戻ってゆく。また、そのころサイファーはクラーマンと激しい戦闘を繰り広げていた。
「サイファー!ミサイルだ!逃げろ!」
 クラーマンのミサイルをぎりぎりでかわすサイファー。しかし、クラーマンやズィルバー隊以外にも、サイファーを落として名声を得ようとするベルカ兵達が集中的に狙ってくるので、サイファーが戦場の中心と言っても過言ではない。
「正面からベルカのSu-35“スーパー・フランカー”が4機!」
 ハンクとカイル、デイヴィッドがベルカのSu-35に向けて同時にXMAAを発射して早めの退場を強制した。
「サイファー!少し待って!彼は敵ではないわ!」
 ズィルバー隊のクラーマンとの戦闘が続く。クラーマンの機体は旧式のF-4ファントムだが、彼の最大の特徴は機体の限界を超えることであり、十分にガルムを苦戦させている。
「駄目だ!墜ちる!」
「誰かやられたぞ!ハンク!もう我慢できん!奴を落とすぞ!」
 ズィルバー隊の前に次々と連合軍機が撃墜されてゆく。これ以上の被害を防ぐ為にも、サイファーとサークル隊はクラーマンへの攻撃を再開した。
「よし、ロックした!サークル1、フォックス2!」
 ハンクのF-15からミサイルが切り離され、クラーマンのF-4向かって飛んでゆく。射線から判断すると、これは当たるだろう。しかし、1機の戦闘機が射線上に割り込んできた。
「イーシャ!?」
 突然、イーシャのF-15が射線上に割り込み、クラーマンをかばうかのようにハンクの放ったミサイルに体当たりした。突然の出来事に言葉を失う一同。
「サークル3が撃墜された!パラシュートは確認できず!」
「イーシャはんが墜ちた!?」
 ハンク。どちらかと言うと、彼女の婚約者であるレオンの頭の中は真っ白だった。何故イーシャは死んだのか?ハンクのミサイルに当たって死んだのか?それとも事故?いや、違う。周りを確認しなかったハンクの犯した過ちだ。イーシャを殺したのはハンク・・・

「<ボス!ベイルアウトを!>」
 サイファーの放ったミサイルがクラーマンのF-4ファントムに直撃した。彼の機体は空中で四散し、円卓の地上へと墜ちていった。

「こちらイーグル・アイ、敵の第3派接近を確認!撃墜して制空権を確保せよ!」
 イーグル・アイからの通達を受け、すぐさま各部隊が迎撃に向かう。しかし、サークル隊はまだ進路を変えていない。
「イーシャ……俺は……」
「……落ち着けレオン。イーシャはまだ死んだと決まったわけではない。皆、行くぞ。」
「……(自分でイーシャを殺しておいてその態度か)」
23 アドミラル・マーシュ 2006/07/18 Tue 21:31:53 aUlt..D3Q.t07f
―――――第17話 『サイファーとラーズグリーズ』 “Tow Demon”


「ああ言うのはな、“鬼神”って言うんだよ」
 凄まじい勢いでベルカ軍機を始末してゆくサイファーの姿はまさに“鬼神”そのものだった。
「味方からは英雄のように慕われ、敵から見れば悪魔・・・“ラーズグリーズ”か!?」
「カイル、それは“姫君の青い鳩”の中の悪魔だったか?」
「はい、そうです。サイファーとラーズグリーズ、似ていませんか?」

 だが、その時警報が鳴り響く。前方に5機編成のF-22ラプターが姿を現し、XMAAで連合軍機に先制攻撃を仕掛けてくる。

「<リッター・ワンから各機へ。今回は注意しろ、“ウスティオの鬼”がまぎれているとの情報がある。>」

 一般的に太古から伝わる“ベルカ騎士団”の末裔は、ベルカ軍そのものだと言われている。しかし、実際にベルカ騎士団の真の末裔で編成された飛行隊が存在した。それが“アルヴェルト・ヴァイゲル少佐”率いるリッター飛行中隊であった。

 澄み切った円卓の青空の彼方から姿を現した5機の戦闘機。中央の隊長機を先頭にした逆V字編隊がマッハ2で連合軍の軍勢に突っ込んでくる。

「落ち着け皆、1機ずつ料理するぞ。」
 ドミノ大編隊は真正面からリッターとの格闘戦に突入する。敵とすれ違う再に、ジェファーソンの寮機である3機のタイフーンが撃墜された。だが、ここで先にターンを終え、相手の背後を取ればこちらにも十分チャンスはある。
「よし、どこだ?」
 だが、リッターの姿が見えない。その時、ミサイルアラートが鳴り響き、数秒後にジェファーソンの寮機が上下から飛来したミサイルによって一瞬で4機撃墜された。上と下からの同時攻撃に苦戦しながらも、一同は戦闘を継続する。

「ケツに食らいついたぞ!喰らえ!」
 クロウ2のテイラーが引き金を引き、リッターのF-22を銃弾で穴だらけにしてゆく。

「<限界だ!リッター5脱出する!>」

 リッターの1機が被弾し、徐々に高度を下げてゆく。やがて空中分解して円卓の雲の中に姿を消した。

「1機やった!このまま残りの4機も潰すぞ!」

 各国のエースパイロットが飛び交う円卓。生き残ったものが次の戦いに進むことが出来てそれをまた勝ち残る。その規定の繰り返すことでエースへの道が開けるのかも知れない。


「よし、2機仕留めたぞ!」
 ピクシーとサイファーが周辺のベルカ軍機を排除しつつ、更にリッターを2機仕留める。その一方で、ヴァイゲルのラプターとハンクのイーグルがヘッドオン状態で接近していた。両者はXMAAの射程に入ると、同時に発射ボタンを押した。両方のコックピット内でミサイルアラートが鳴り響き、同時に回避行動を実施する。
 しかし、ハンクの方が先に旋回していたため、必然的にヴァイゲルが背後をとっていた。これでは格好の的だ。ハンクはすぐさまエアブレーキを使って減速し、相手をオーバーシュートさせようとした。

「やはり引っ掛からないか・・・」
 ヴァイゲルも減速して対応し、中々ハンクに背後をとらせようとはしない。すぐに旋回してミサイルの攻撃に備える。
「クロウ3フォックス2!」
 その時、PJのミサイルがヴァイゲルのラプターに迫り、やむを得ずハンクの追撃を中断して回避行動に移る。そんなヴァイゲルの機体をカイルが追撃して上昇してゆく。

「いくぞ!ベルカの騎士!」

 別方向から現れたカイルのミサイルはぎりぎりのところで回避された。しかし、PJが俺に任せろと言わんばかりにミサイルで追い討ちを加えた。

「<中々やるな。だがその程度で私を落とす気か?>」
「まだやで、わいの存在を忘れたんか!?」

 サムのイーグルがヴァイゲルの正面からミサイルを発射したが、ヴァイゲルは軽々とミサイルをかわした。だが、既に体勢を立て直したハンクが、ヴァイゲルの正面で待ち構えていた。照準が重なると同時に、ハンクは引き金を引いてヴァイゲルの機体を銃弾でミシン縫いにする。

「<連合軍の犬が……>」

 銃撃を受けたヴァイゲルの機体が爆発し、残骸が燃えながら遥か遠くの地上へと姿を消した。

「ベルカの騎士を始末したぞ!残りのベルカ軍機も敗走した!」


 一方で、サイファーとピクシーはサークル隊の遥か上空で落ち合い、互いの無事を確かめていた。

『――よう相棒、まだ生きているか?』
24 アドミラル・マーシュ 2006/07/19 Wed 20:45:27 aUlt..D3Q.t07f
―――――第18話 『臨界点』 “The Stage of Apocalypse”


レオンはディレクタス郊外の見晴らしの良い場所にたたずんでいた。此処からはディレクタスの全景が見え、沈み行く太陽を見届けるのにも最適な場所だ。此処は昔、まだウスティオが誕生する前に展望台があったそうだが、ベルカから此処が独立する際に取り壊されたそうだ。

「ハンクか・・・」
ハンクがレオンの足元を見ると、ディレクタスの全景が見えるように小さな墓が建てられていた。その墓には花束と小さなケース、そして勲章が供えられている。
「明日だった。 イーシャと結婚式を挙げようと思っていた・・・」

レオンは見晴らしの良い丘で腰を下ろす。

「俺とイーシャはベルカの航空会社で知り合い、意気投合した。厳しいクラーマン教官の指導を受け、俺とイーシャは旅客機のパイロットになった。」
そして、レオンとイーシャはベルカ経済恐慌となるとウスティオに帰郷した。その直後にベルカがウスティオへの侵攻を開始。パイロットの経験を生かし、祖国を守るべく軍に志願したわけである。

「……俺たちは似ているな。愛した人物を失って……」

だが、レオンはハンクの発言をかき消した。

「同じ?いや、違う。イーシャは“お前に”殺されたんだ。」
「違う!あれは完全に事故だった。俺はクラーマンを落とそうとして、イーシャがそれを拒んだ結果だ。俺にはどうしようも無かった・・・」
「嘘をつけ!お前がイーシャを殺した!人殺しめ!」

 レオンは腰に付けていた拳銃、“スタームルガー”の銃口をハンク向かって構える。しかし、微妙に手が震えているようだ。

『撃てよ臆病者』
 ハンクはオーレリアの警察時代に何人もの悪党を銃で撃ってきたが、レオンは動物すら撃ったことが無い。しかも今撃とうとしているのは生身の人間で実の兄。

 だがその時ウスティオのヘリ、ブラック・ホークが2人の真上でホバリングし、徐々に高度を下げてくる。

「大尉!すぐ基地に戻ってください!緊急事態です!」
 ヘリのドアを開け、乗員がヘリの騒音に負けないぐらいの大声で叫んだ。


―――ディレクタス飛行場・上空

「こちら基地管制塔、ウスティオ軍のクーリッジ元帥だ。現在核弾頭を搭載したベルカ爆撃機部隊がこちらに向かっているとの報告があった。敵爆撃機部隊は、最短ルートであるエリアB7Rを通過する可能性が高い。何としてでも核攻撃を阻止せよ!」

 ハンク、レオン、カイル、サム、デイヴィッドはすぐさまディレクタス飛行場から出撃し、上空で編隊を組んで円卓へと向かった。
「円卓は俺たちの支配空域ではないか?」
「いや、24時間体勢で航空機が駐留しているわけではないからな。」


―――1995年、6月。エリアB7R “円卓”

「前方にベルカ軍爆撃機を視認!護衛機が多数!」
 ハンクはレオンとサム、デイヴィッドに護衛機を任せ、カイルと共に爆撃機への攻撃を開始した。しかし、敵の数が多い、どの爆撃機に核弾頭が搭載されているか分からない。

「爆撃機の後部ターレットに注意しろ、うっかりしていると蜂の巣にされるぞ!」
「ハンクはん、わいらはそんな時代遅れの防御砲塔にやられまへんがな。」

 サークル中隊は徐々にベルカ軍機を排除し、残るはBM335重爆撃機が3機。
「よし、奴らで最後だ!」


 だが、その瞬間に爆撃機は凄まじい閃光を放って光の中に消えた。それと同時に激しい爆音と振動がサークル中隊を襲う。


「くそ!今のなんだ!? サークル・リーダーから各機、状況を報告しろ!」
「空が爆発した!? くっそー!計器がイカれた!サークル4通信不調!」
「今の爆発は何なんや?しかもミサイルアラートがなっとるで!」
「こちらサークル6!計器は全部イカレた!レーダーも駄目だ!」

 ふと気が付くと、レオンからの応答が無い。レオンは何所だ?一同は肉眼でレオンの期待を探す。

「あそこや!」

 レオンのイーグルが遠くに見える。だが、あの方角はウスティオではない。

「(探したぞ王子様。お迎えに参ったぜ。)」
「(よおレオン。新たな旅立ちの前に兄との別れは済ませたか?)」
 どこからかオーシアのF/A―18と片羽の赤いF-15が飛来し、レオンを誘導するかのように遠ざかってゆく。

「レオン!?応答しろ!何所へ行く!?」


 ハンクの叫びはレオンに届くことは無かった。実際には、レオンが無視していたのだが。
25 アドミラル・マーシュ 2006/07/20 Thu 21:08:44 aUlt..D3Q.t07f
―――――第19話 『円卓の夜U』 “The Nights of Roundtable U”


「駄目だ!レオンを見失った!」
 レオンはオーシア空軍のジョシュア・ブリストーと片羽の妖精、ラリー・フォルクと共に円卓の夜空へと姿を消した。

 だが、それでけではなかった。突如何所からか国籍不明のSu-47“ベルクト”が8機出現する。

『<“――ゴルド1より各機、状況を開始する”>』

 不明機はためらい無くサークル中隊に襲い掛かる。洗練されたこの部隊の動きには全く無駄が無い。ハンクはすぐさま仲間に交戦するように呼びかけた。

「サークル1から各機、交戦を許可する!」
「ネガティブ!計器がイカレている!武装システムも駄目だ!」

 先程の爆発の影響でサークル中隊の戦闘能力は限りなくゼロに近づいていた。此処は逃げるしかないのだが、更に敵の増援が現れる。

「またか!?」

 しかし、薄暗い円卓の空に1本の赤いレーザーが横切った。それと同時にゴルド隊はサークル隊への攻撃を中断し、後から現れた1機の不明機に向かって行く。

「<ゴルド1から全機へ。“奴”が再び脱走した。追撃に変更。>」
「<了解、目標を変更。>」

 その航空機は非常に不気味な形をしていた。正体は分からないが、複数の装甲と触手らしき物体が確認できる。


「今のは・・・」
「隊長、心当たりが?」
「いや、無い・・・」


 その後、増援として駆けつけたウスティオのジョーカー飛行中隊と合流してサークル隊はウスティオまでエスコートされた。


 この日、ベルカ人は7発の核爆弾を起爆させて連合軍の進撃を阻んだ。公式記録では12000人が犠牲になったこの核爆発に乗じでベルカ陸軍は連合軍に対して最後の反撃に出る。


 また、少し前にガルム隊とクロウ隊はバルトライヒ山脈のベルカ軍攻略に出動していたのだが、サークル隊と同じようにベルカの爆撃機部隊と交戦。その最中に核が爆発し、ガルム2である“片羽の妖精”ことラリー・フォルクが消息を絶つ。


 そして1995年6月20日。ルーメンで停戦条約が無結ばれてこの戦い、ベルカ戦争は連合軍の勝利と言う形で幕を閉じた。
26 アドミラル・マーシュ 2006/07/21 Fri 23:25:37 aUlt..D3Q.t07f
――――――間奏『シルバーストーンの少女』 “Interlude ―Silverstone Girl―”


―――1991年。オーレリア共和国


「ハンクは何故そんな危ない仕事をするの?」

病院のベッドに座り、イスにまたがったハンクと話しているのは“アンジェラ・ハリソン”だった。

「給料がいいからさ。危険だがやりがいがある。」

学力はともかく、ハンクは子供の頃から運動神経が素晴らしかった。判断力、反射神経も優れ、警察官としては有り余る能力を保持し、職場のコネで特殊部隊のテストに合格。オーレリア史上最年少で特殊部隊の隊員となった。

「ところで、アンジェラの病気は治らないのか?」
「生まれつきの病気なの。オーシアの進んだ医学ならもしかすると・・・だけど。」


ちなみに、普段外に出られないアンジェラとハンクがどうやって出会ったか?と多くの人が疑問に感じる。それは今から2年前の1989年に坂上る。

まだハンクが仕事に慣れ始めたばかりのことで、交通事故の対処の支援に向かったことだった。乗用車と軽トラックの衝突事故で、トラックにはいくつかのピザが載せられていた。その軽トラの運転手は重傷を負い、救急車で病院に運ばれる直前に「此処にシーフードを1つ届けて欲しい」と、メモを渡してハンクに頼んだ。

ハンクは乗り気ではなかったが、断ることも出来那かったので、素早く済ませようとメモに書かれた住所へと向かった。そこは病院の中の特別区画の1室だった。
部屋の中には1人の少女がいて、その部屋には窓がひとつも無い。あるのはテレビと本棚、花瓶と府警がのみ。

「……だれ?」
「…突然ですまない。代理でピザを届けに来たんだ。」

ハンクはピザを置いてすぐに立ち去ろうとした。しかし、その少女が重そうな口を開き、ハンクを呼び止めた。

「……お巡りさんは色々な場所を廻るのですよね?」
「…ああ。」
「羨ましい・・・私は外へは出ることが出来ないから・・・」

彼女は太陽に含まれる一定の紫外線を受けることが出来ない“シルバーストーン病”という特別な病気に犯され、1度も外へ出たことが無いと言う。
部屋には窓が無く、外を見ることが出来ない。彼女にとって、この部屋が全てなのだろう。

「…何か出来ることがあっあら俺に言ってくれ。」
「?・・・いいの!?」

一度も外へ出たことが無く、これからも外へ出られない。それではあまりにも可愛そうだ。同情ではなく、あくまで良心でハンクは彼女の力になりたいと感じた。


それから2年ぐらい経った今、ハンクは今までに貯めた貯金をアンジェラの手術の為に提供した。これでオーシアの進んだ技術でアンジェラは外へ出られるようになる。ちなみに、彼女は外へ出られないので、オーシアの技術者に来てもらうことになった。


そして1週間後、手術が終了し、彼女が外へ出る日がやってきた。しかし、「あの事件が」起きたのもこの日だった。“ドミニク・ズボフ”を含む巨大な密輸組織が世界にも一握りしか居ない“人工神経”を持ったアンジェラを拉致した。ハンク達はすぐさま追跡を開始し、何とか橋に追い詰めた。

しかし、此処での戦闘でハンクはチームと気力、アンジェラを失ってしまった。責任を取るために仕事をやめて、故郷であるウスティオへ帰郷したが、失われた物が戻るわけではない。

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