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ACE COMBAT ZERO NIGHTS OF ROUND TABLE EpisodeU

前スレッド No.118
10 アドミラル・マーシュ 2006/07/08 Sat 10:05:22 aUlt..D3Q.EmbO
―――――”New blood、 New Battles”―――――
―――――”新しい血は新しい戦いを生む”―――――


ACE COMBAT ZERO  THE NIGHT OF ROUND TABLE
エースコンバット・ゼロ  ナイツ・オブ・ラウンドテーブル


この作品は「エースコンバット・ゼロのサイドストーリー」です。
尚、この作品は「エースコンバット・ゼロ」の内容を大幅に暴露している為、ゼロをクリアしていない方には観覧を推奨できません。

よろしければ、前作”リザレクション・オブ・ラーズグリーズ”にも目を通していただけると幸いです。

3レス目から本編に入ります。 お暇潰しにどうぞ。


―――主な登場人物


『ウスティオ共和国空軍・サークル中隊』

ハンク・ライト大尉:元オーレリア共和国の警察特殊部隊。
レオン・ライト大尉:ハンクの双子の弟。戦争前は旅客機の操縦士。
イーシャ・モンゴメリー中尉:スチュワーデス経由の元旅客機パイロット。
カイル・ガーランド中尉:前向きで活発な性格。経験は浅いが優秀である。
サム・レッドフィールド少尉:少し肥満体質。明るく社交的らしい。
デイヴィット・コネリー少尉:新人のパイロット。 どちらかというと知的。


『ウスティオ共和国空軍』

サイファー:最近入隊した謎多き傭兵。臨機応変な戦い方をする。
ラリー・フォルク:過去に片羽を失いつつも生還した為、“片羽の妖精”と呼ばれている。
パトリック・ジェームズ・ベケット:クロウ隊の3番機で、ムードメーカー的な存在。
ウェルチ・マクナイト中尉:クロウ隊の隊長。
テイラー・デイヴィス中尉:同じくクロウ隊の2番機。ジョーク好き。


『連合軍』

ジェリコ・リンカーン大佐:オーシア陸軍の大隊指揮官。
エドワード・スミス:ウスティオ軍の特殊部隊隊長。
ロナルド・カーター少佐:ウスティオ陸軍の軍人。
ジョシュア・ブリストー:オーシア国防軍“ウィザード隊”の隊長。


『ベルカ公国空軍』

アルヴェルト・ヴァイゲル:ベルカ空軍、“リッター”飛行中隊隊長。
ドミニク・ズボフ大尉:ベルカ公国空軍、“シュヴァルツェ隊”隊長。通称”ハゲ鷲”
ディトリッヒ・クラーマン:ベルカ空軍、“ズィルバー隊”隊長。別名「銀色の大鷲」。
11 アドミラル・マーシュ 2006/07/09 Sun 20:47:38 aUlt..D3Q.EmbO
ここまでのあらすじ


―――1995年3月25日。
 経済恐慌の中、極右政党が政権を獲得したベルカ公国。元ベルカ自治領ウスティオ共和国に眠る膨大な天然資源発見の報を機に、ついにベルカ公国は周辺国への侵攻作戦を開始。

『“ベルカ戦争”』の開幕である。

 開戦から数日後、既にウスティオ陸軍はベルカ陸軍により壊滅し、ウスティオ政府は山岳地帯にある“ヴァレー空軍基地”への後退命令を下す。
だが、既に国境の防衛線は突破され、ウスティオ首都ディレクタスの完全占拠は時間の問題であった。

 ウスティオ空軍・サークル飛行中隊に所属するハンク・ライトと、レオン・ライトは新たに登場した凄腕の傭兵2人組みである『”ガルム隊”』と出会い、彼らと共にベルカの手から首都ディレクタスを解放した。

 しかし、その戦闘でライト兄弟は母を失ってしまう。それ以降、2人の心に何らかの変化が出始めていた・・・・
 そして、連合軍と世界最強のベルカ陸軍による「ヘイムガルド平原」での決戦が始まろうとしていた。


Mission Chapter

0# 序奏 “Introductory chapter”
1# 『ディレクタス防衛線』 “Defense line Directas”
2# 『ベルカン・ナイツ』 “Ritter”
3# 『凍空の猟犬』 “Glacial Skies”
4# 『絶対的な力』 “Juggernaut”
5# 『ディレクタス解放』 “Diapason”
6# 『葬送曲』 “Funereal tune”
7# 『暁の戦場』 “Battlefield of daybreak”
8# 『ヘイムガルド平原の決戦』 “Hamugald plain”
9# 『円卓の夜1』 “Nights of Roundtable T”
10#『嵐の中を走れ』 “Silverstone”
11#『復讐者』 “Avenger”
12#『クロウ隊のPJ』 “Crow3 PJ”
13#『巨人の刃』 “The Excalibur”
14#『約束の場所・円卓』 “The Roundtable”
15#『B7R制空戦』 “Mayhem”
16#『円卓の騎士』 “Knights of Roundtable”
17#『サイファーとラーズグリーズ』 “Tow Demon”
18#『臨界点』 “The Stage of Apocalypse”
19#『大いなる天使』 “Ark Angel”
20#『第2の敵』 “Second Enemy”
21#『円卓の夜2』 “The Nights of Roundtable”
22#『王の谷』 “The Valley of Kings”
23#『アヴァロン』 “Avalon”
24#『モルガン』 “Molgun”
25#『ZERO』 “ZERO”
26#『ZERO‐“サイファー”‐』 “ZERO‐Cipher-”
27#『ZERO‐“ラーズグリーズ”‐』 “ZERO‐Razgriz‐”
28#『スレイプニル』 “Sleipnir”
29#『生命の終わり』 “End of Life”
30#『エピローグ』 “Skies of Deception”
12 アドミラル・マーシュ 2006/07/09 Sun 20:51:43 aUlt..D3Q.EmbO
――――――第8話 『ヘイムガルド平原の戦車戦』 “Hamugald plain”


「後方にベルカ軍戦車部隊ッ!」
 一斉に方向転換する連合機甲部隊。何故やつらが我々の後ろに回りこんでいるのか?ザピンとユークの軍団がいる限り、回り込む隙は無かったはずである。

「こちらザイオン1、戦車と装甲車は前へ、ハンヴィーは後方へ退避しろ!」
「ザイオン2から各車へ、ベルカ軍はまだたくさん残っているぞ、気を抜くな!」
 ウスティオ陸軍指揮官、“ロナルド・カーター少佐”の部隊は戦力の半数を失っていた。現在彼に残されているのは戦力はチャレンジャー戦車2両とウォーリア装甲車が2両、ハンヴィーが10両。

「ナイト1から各車へ、近い奴から狙え!」
 その時、リンカーン大佐の乗る戦車の隣を走行していたエイブラムズがベルカ軍戦車の砲弾の直撃を受けた。砲弾はエイブラムズの砲塔部分に直撃し、衝撃で車体部分が地面にめり込んだ。
 その真横からウスティオの1台のハンヴィーが機銃を撃ちながら横切り、その後にカーター少佐率いる数両の戦車と装甲車が追従してゆく。

「サークル1、投下!」
 ハンクのF-15から切り離された爆弾がベルカ軍戦車に命中し、破片が宙を舞った。その戦車の背後にいたマルダー装甲車が機関砲で応戦してくるが、全然脅威ではない。
「地上部隊が散開し始めたな、援護を継続するぞ!」
 地上部隊を援護するべく、サークル中隊は急降下攻撃を繰り返した。敵の中に対空戦車が居ないのが幸いと言える。敵航空機はオーシア軍機とウスティオの“クロウ隊”で十分だった。
「こちらクロウ1、ミサイルが切れた。補給に戻る」
「クロウ2、こっちも武器が無い。補給が必要だ。」
 そう言うと、3番機のPJと一緒に素早く引き上げていった。今残っているのはオーシア軍の“ウィザード隊”と“ハンマー隊”、ザピンの“エスクード”隊である。ウィザード隊とエスクード隊が制空任務を担当し、オーシアのハンマー中隊とサークルが味方地上部隊を支援しているのだが、正直この数相手に勝てるのか分からなくなってきた。

「装填急げ!敵が真正面にいるぞ!」
 ベルカ軍も必死らしく、オーシア・ウスティオ地上部隊に突撃を仕掛けてくる。砲弾や銃弾をかいくぐり進撃してくるベルカ軍戦車の姿は、まるでおとぎ話に登場する古の怪物のようだ。
「くそ、ザピンやユークの連中はどうした!?」と、リンカーン。
「ザピン軍とは通信が途絶えています!」

 そんな時、彼らの背後からユーク軍戦車部隊が姿を現した。どうやら基地を攻略し、こちらの援護に来たのであろう。
「こちらウェルテス・リーダー、ベルカの支援部隊を潰してきた!今から加勢するぞ!」
 ユーク軍のT-80戦車の軍勢がオーシア・ウスティオの戦列に加わる。砲弾が飛び交う中、連合軍は1両のベルカ戦車に対して数量の戦車が集中的に攻撃する個別撃破戦法をとった。連合軍部隊はそのまま一気にベルカ軍の機甲部隊を押し返して撃滅した。
「敵部隊撃滅!この平原は我々の物だ!」


 敵基地を制圧した地上部隊を見守るレオン。すると、基地の外れから何かが動いた。
「ベルカのクズどもめ、逃げられると思うなよ!」
 基地を失い、生き残ったベルカ軍の歩兵がトラックで戦線離脱を図っている。レオンはそんな敗走部隊にガンで追い討ちを加える。
「どうだ!?恐ろしいか!?俺を怒らせるとどうなるか思い知らせてやる!」
 レオンのF-15イーグルから発射された銃弾がベルカ軍のトラックに命中して横転すると、敗走兵達が一目散に逃げ出す。レオンはそんなベルカ兵を見逃さなかった。
「レオン!やりすぎだぞ!」
「黙っていろハンク!お前は甘すぎるんだ、奴らのせいでお袋は死んだ!その仕返しをするまでだ!」


 戦闘終了後、朝方の空の遠方から飛来したザピン軍のエスクード隊がハンクたちサークル隊の側面についた。
「こちらエスクード1、俺たちの地上部隊は一体どうなったんだ?」
 友軍機、地上部隊にも問い合わせるが、誰もザピンの地上部隊を見たと言うものは居ない。40両の戦車部隊は一体何所へ消えたと言うのか?

「お?流れ星や・・・」

 サムにつられて空を見上げる一同。だが、明らかに様子が妙だ。

「こんな朝方に流れ星か。これは俺たちへの祝福…………!?」

 カーター少佐も空を見上げたその時だった。1本の青白い光が、彼を照射するように降り注いだ。光は連合軍の地上部隊を焼き払い、大地を切り裂いた。


「今のは何だ!?空が光った!?」


 リンカーンは本能的に全部隊に撤退命令を下した。だが、謎の光はそんな彼らを家畜のようにひねり潰してゆく。各部隊は全速で撤退しているが、光の速度には到底かなわない。
13 アドミラル・マーシュ 2006/07/11 Tue 21:08:41 aUlt..D3Q.EmbO
――――――第9話 『円卓の夜1』 “Nights of Roundtable T”


「デイヴィッド!ここどこやねん!」
「俺に聞くな、サム!」

未知の光学兵器の攻撃から何とか生き残ったサークル中隊。しかし、逃げる方向を間違えたようだ。此処は明らかにウスティオでもザピンでもなく、ベルカの支配地域だった。

「どうやら・・・一番危ない場所みたいだな・・・」

ハンクは此処の座標を確認すると、“B7R”と表示されていた。


「何だ!?ベルカ軍か!?」
レオンの声に反応し、一同がレーダーを見ると8機のベルカ軍機がこちらに接近していた。こんな真夜中に出現するベルカ軍航空機部隊は存在しない。存在するとなると、ベルカ軍の特殊部隊ぐらいだろう。


「<シュヴァルツェ・リーダーから各機へ、こんな真夜中だが獲物だ。 狩をはじめるぞ。>」

黒い8機のMIG-31フォックスハウンドで編成された“シュヴァルツェ隊”。この部隊は味方に対する無条件の攻撃権を持つことから、恐怖により戦線を離脱しようとする味方機を躊躇無く撃つ為、他のパイロット達から蔑みと畏怖の念を込めて“ハゲタカ隊”というありがたくない名前を頂戴しているようだ。


「こいつはまずい!ハンク、逃げるなら今のうちだぞ!」
「分かっている、俺たちの手に負える相手ではない!」

一斉に逃げ出すサークル中隊。しかし、相手は脱走者の狩人(エスケープ・キラー)。逃げる相手を攻撃するのは得意分野である。


「<シュヴァルツェ4、フォックス2!>」
敵機のミサイルがサムのイーグルに迫る。サムは無理矢理な急旋回で何とかミサイルを回避した。だが、敵機はサークル中隊1機につき2機で追撃を仕掛けてくるので、逃げてもまたすぐに背後を取られてしまう。

「ベルカめ、なめるな!」
すると、レオンは機体を急減速させて相手を正面へと追い抜かせる。いわゆるオーバーシュートだ。敵が正面に抜き出る。後は引き金を引くだけでいいのだが、別のシュヴァルツェ機が狙われている仲間を助けるかのようにレオンを狙ってくる。

「<貴様達が負け犬ウスティオの双子か? 俺たちの仲間を皆殺しにしたそうじゃないか。>」

レオンを狙っているのはシュヴァルツェ隊の隊長、“ドミニク・ズボフ大尉”である。かれはヘイムガルド平原の数キロ後方で彼らの戦いを監視していたのだろうか?
「“夜の円卓”でベルカの夜間戦闘部隊と遭遇・・・まずいな・・・」
今のハンクには一刻も早く部隊を此処から離脱させることしか頭に無かった。しかし、相手は熟練のエスケープ・キラー。簡単には逃がしてくれないだろう。

「サークル2・・・・くそ、ミサイルが尽きる!」
サークル中隊は先程のヘイムガルド平原での戦闘で、武器をほぼ使い果たしていた。残っているのは少数のミサイルとガンぐらいである。そして、燃料にも余裕が無い。

「サム、真下だ!逃げろ!」
再びサムのイーグルにシュヴァルツェのミグ31が喰らい付く。ミグの銃弾がサムのイーグルの主翼に穴をいくつか空けた。

「何すんねん!この前貰ったわいの新しい機体に何傷つけてんじゃ!」

いつの間にかサムの背後には4機のシュヴァルツェ隊機が続いていた。恐らく彼の独特な喋り方にいらだっているのだろうか?
「<うざいな、さっさと墜ちろ!>」

サムが危険だ。早く助けなければすぐにやられてしまうだろう。

「止まるなサム!動き続けろ、俺が助けてやる!」
ハンクはすぐさまサムの元へ向かう。だが、1機のシュヴァルツェ隊機が彼を阻んだ。

「<・・・今の声は・・・懐かしいな、オーレリアのサツか。4年ぶりじゃねぇか。>」
「<隊長、知り合いですか?>」
「<ああ、昔密輸していた時からのダチだ。>」ズボフは腐れ縁を表すかのような口調でそう言った。


密輸、オーレリア・・・・4年・・・ズボフの言葉を聞いたハンクには、過去の記憶がよみがえってきた。
14 アドミラル・マーシュ 2006/07/11 Tue 21:11:09 aUlt..D3Q.EmbO
―――――第10話 『嵐の中を走れ』 “Silverstone”


―――1991年、オーレリア共和国。

オーレリア市内で激しいカーチェイスが繰り広げられていた。
「<犯人は現在車で港から東に逃走している。こなままだと橋に出るはずだ、橋を封鎖しろ>」

とある密輸業者とテロリストのアジト突き止めたまでは成功だった。しかし、相手は隠していた車で逃走した上に、人質までとっていた。

「あれだ、間違いない!」
ハンクと相棒の運転するパトカーもようやく犯人の車に追いつく。テロリスト達が窓から身を乗り出してライフル銃を乱射している。

「ハンク?今日は彼女とデートの約束じゃなかったのか?」

ハンクには、生まれつき太陽の光を浴びることが出来ない“シルバーストーン病”という特別な病気に犯されている恋人がいる。しかし先日、オーシアで特別な手術を受けた今の彼女は体の一部を機械化することにより、制限があるものの自由に外に出ることができるようになった。

今日、彼女は18歳の誕生日で生まれて初めて太陽の下を歩くので、心配したハンクはそれに付き添う約束をしていたようである。


「ようやく奴を追い詰める時が来たんだ。このチャンスを逃がすわけにはいかない!」
「彼女は?」
「これが方付いたら向かう!」

 ハンクは携帯電話と取り出し、彼女に電話した。しかし、中々でない。そのとき、テロリストの1人が小型をのM79グレネード・ランチャーでハンクの前を走行していたパトカーを吹き飛ばした。
「気をつけろ!予想以上に強力な武器を持っているぞ!」

ハンクの助手席に座っていた特殊部隊の隊員が拳銃で応戦しているが、全然当たっていないので、ハンクは相棒に運転を交代してもらい、グロック・マシンピストルを構えた。

「ハンク、相手がランチャーを構えたぞ!撃て!」

ハンクは相棒の警告を聞いていない。だが、テロがグレネード・ランチャーを構えた瞬間、ハンクは引き金を引いた。銃弾はタイヤに命中し、バランスを崩したと同時にテロはランチャーを下方に発射。自らの爆風で車を横転させ、数百メートル転がりながら橋の中央で停止した。

テロリスト達は急いで武器を車内から取り出し、オーレリア警察に応戦してくる。

「<犯人は“ドミニク・ズボフ”と呼ばれる傭兵を始めとするをかねた密輸業者。ダイナマイトを所有し、橋の中央で人質を取っています。人数は8名、武器はファマス・ライフル及び拳銃多数です。>」
「…了解、現在目標の真下だ。部下も配置に着いた。」

オーレリア警察の特殊部隊のリーダー、ハンクは橋の下の連絡橋からテロリストグループの真下に到達。彼らは煙幕弾を投げると、橋の表に這い上がった。

煙幕により視界は遮られている。しかし、赤外線ゴーグルを装備した彼らには何の影響もない。ハンクのチームメンバーが次々とテロリストを排除してゆく。しかし、テロのリーダーと人質が見当たらない。ハンクはすぐさまテロのリーダーを探して煙幕の領域を飛び出した。

「武器を捨てろ!もう逃げられないぞ!」
カスタマイズされたMP5クルツ=サブ・マシンガンをズボフ向かって構えるハンク。
「動くな。動くとこの小娘の頭を吹き飛ばすぞ!?」
「アンジェラ・・・!?」

ズボフは少し前に拉致したハンクの恋人である、アンジェラ・ハリソンの頭に大型のマグナム銃、デザート・イーグルを突きつけ、人質を捕らえている手にはダイナマイトの束が握られている。

更に、奴の腰には大量のダイナマイトが括り付けられていた。もし手持ちのダイナマイトを爆発させれば、人質のアンジェラや自分達、それどころか橋を吹き飛ばすこともできるだろう。

「早く人質を放せ!」

 アンジェラはようやく自由になったんだ。こんなとこで死なせるわけにはいかない。しかし、下手に手出しすると奴が何をしでかすか分からない。

ハンクのチームメンバーも追いつき、ズボフ向かって次々とマシンガンを構える。

「“世界に国境があり限り、我々に自由はない”。まあ、俺にはどうでもいいことだがな。」
「何を言っている!? いいから武器を捨てろ!」

すると、ズボフは導火線に火を点火した。
「消し飛べ。オーレリアの犬が。」


爆発音が響く。
15 アドミラル・マーシュ 2006/07/12 Wed 20:00:21 aUlt..D3Q.EmbO
―――――第11話 『復讐者』 “Avenger”


「<くそ!シュヴァルツェ7被弾した!脱出する!>」
ハンクのミサイルがシュヴァルツェの1機に命中し、爆発音が響く。

「貴様が“ドミニク・ズボフ”…………覚悟しろ!」

ハンクは撤退すると言うことを忘れ、反転してシュヴァルツェ隊へと交戦状態へ突入した。ハンクは迫り来る敵機の中を繰り抜け、真っ直ぐとズボフのミグへと向かう。ハンクはズボフの乗るミグをロックオンした。ハンクはすぐさまミサイルを放ち、ミサイルがズボフのミグに命中した。
「<貴様ぁ・・・各機へ、今回は引き上げるぞ!>」

ズボフのミグが煙を吐きながら引き返してゆく。相手が戦闘不能でも構うものか。いや、奴だけは許せない。ここで奴を地獄へ落とさなければならない。

「お前はエスケープ・キラーだろ!?追撃されるのはどんな気分だ!?」
被弾したズボフ機をかばうかのように、シュヴァルツェ隊の機体が行く手を阻む。しかし、残りの武器、燃料を考えるとこれだけの敵機を落とすのは戦力的にも困難である。

「ハンク!目を覚ませ!どうした!?」

引き上げてゆくシュヴァルツェ隊を見送ると、レオンがハンクのイーグルの横につけた。正直ハンクがここまで暴走したのは初めてであり、見ているこちらは非常に気難しかった。

「奴は……俺の大事な物を奪った。」

ハンクが無線越しに怒りを込めた声で発言した。
立ち話ではないが、このような物騒な場所(円卓)に残留するのは危険な為、詳しい話は基地に帰還してからにするべきだろう。


―――ウスティオ・ディレクタス飛行場。

「サークル1へ、着陸を許可する」
「了解・・・」

 正面に見慣れたディレクタス空港の滑走路が見えてくる。夜の飛行場は誘導灯で飾られ、滑走路が見えないと言うことはない。


ハンクは基地の搭乗員室で自分の過去を仲間に暴露した。
「あれは4年前だった。俺がまだオーレリア警察として、とある密輸業社を追っていた。」
ハンクが追っていた密輸業者の取り扱っていた商品は“人間”だった。世界中から集めた奴隷を、様々な組織に売り渡すという非人道的な行為をして報酬を頂く。正義感あるハンクは、絶対に阻止してやろうという執念があった。

しかし、相手もオーレリア警察の動きを感知し、営業防護の為に凄腕の傭兵を雇った。その人物が“ドミニク・ズボフ”である。

ハンクは様々なソースから情報を集め、遂に次回の取引先を知ることが出来た。だが、あと少しのところでこちらの動きがバレてしまい、相手に逃げる隙を与えてしまう。それでもハンク達警察特殊部隊は追跡を開始し、連中を橋に追い詰めた。

だが、最後にズボフが人質として捕らえていた、そしてズボフはハンクの恋人であるアンジェラごとダイナマイトで自爆した。その爆発での生存者はハンクのみだと思われていたが、ズボフが生きているとは思いもしなかった。


ハンクは本能的に気分を入れ替えたくなったので、部屋を出てラウンジへと向かった。


「よおハンク。無事だったか?」
基地のラウンジではクロウ隊のテイラーがやはり食事をしていた。片手にハンバーガーとコーラを持ち、足を組んでソファーに座っている。

「ああ、何とかな。……あのレーザー攻撃は一体何だったんだ?」
「少し前に次回の作戦会議があったんだが、あれはベルカが開発した弾道ミサイル迎撃用の光学兵器、“エクスキャリバー”という代物らしい。」


ハンクはふと気が付いた。今彼は“次回の作戦会議”と言った。次回の作戦会議でそのエクスキャリバーが出てくると言うことは、次の作戦でその“エクスキャリバー”を攻撃するのだろうか?


―――翌朝、ディレクタス近辺上空


朝方の空の遠方から5機の戦闘機がこちらに向かってくる。ヴァレー空軍基地からやってきたガルム隊とクロウ隊だ。


今回この作戦に投入されたのはサークル隊、ガルム、クロウ、オーシアのレイピア、ヘイロー、ガンマの6部隊である。
16 アドミラル・マーシュ 2006/07/13 Thu 21:07:23 aUlt..D3Q.EmbO
―――――第12話 『クロウ隊のPJ』 “Crow3 PJ”


「パトリック・ジェイムズ・“ベネット”か、よろしくな!」
「こちらクロウ3。サークル4、わざと間違えていませんか?」

 サークル4のカイルがクロウ3のPJと交流を深めているようだ。さらにクロウ2のテイラーとサークル3のイーシャも乱入する。

「いいや、正しくはパトリック・ジェイムズ・“バケット”だ」
「私は“パトラッシュ・ジェイムズ・ブレッド”って聞いてたけど、違うのかしら?」
 クロウ1のウェルチと2番機のテイラーならともかく、サークル隊のメンバーにもからかわれるPJは反撃できずにいた。そんな彼らの後方に噂の“ガルム隊”の姿が。恐らく会話に入れなくて困っているのだろう。と、判断したPJは軽く自己紹介をした。

「こちら、クロウ隊の3番機、PJ。ガルム隊、可能な限り援護する!」
これで話の流れが変わるだろう。しかし、PJの期待は裏切られ、サイファーもピクシーもだんまりだった。結局、次に口を開いたのはテイラーとウェルチだった。
「ところでPJ、花束はいつ買いに行くんだ?」
「のんびりしていると、他の奴に彼女を撃墜されてしまうぞ?」
PJには付き合っている女性が居るようだ。これが彼をからかうネタになっているのも事実なのだが。

「……たった数機の戦闘機が心強い援軍…か。」

“片羽の妖精”、ラリー・フォルクが相棒の“サイファー”と共に後方で彼らの様子を見守っていた。その右方ではオーシア軍機が空中給油を完了し、タンカーから離れてゆく。


「エクスキャリバーか。ベルカのインチキ兵器のことだ、どうせソーセージみたいなひょろいレーザーが(ふお〜っ)って飛んでくるぐらいだろう?」

だが、テイラーがそういった瞬間、遠くから青い光線がこちらに向かっくる。

「危険空域内だ、全機ブレイク!」

青い光は後方のタンカー(空中給油機)を粉砕し、近くに居たオーシア軍機を爆発に巻き込んだ。AWAXSイーグル・アイが警告する頃には既に、一同は素早く散開して次の攻撃に備えた。
「くっ、読みが甘かったな。ソーセージじゃなくてフランクフルトだったぜ!それも特大のな!」
再びエクスキャリバーからレーザーが放たれる。
「くそっ!ガンマ部隊が全滅している!」
ハンク率いるサークル隊は奇跡的にもまだ無傷だ。エクスキャリバーに接近するにつれ、段々とレーダーの映りが悪化してゆく。

「やはりジャミング施設があるか。隊長、どうしますか?」
デイヴィッドの話ではこの先にいくつかのジャミング施設があり、レーダーの映りを妨げているようだ。ハンクは寮機にそれらを狙うように通達したが、既にガルム1、“サイファー”が施設の除去に乗り出していた。

「凄いなサイファーは…俺も見習わないと!」
カイルも多くの兵士同様、サイファーの純粋な強さに憧れを抱いていた。話によると、最近では他の傭兵や基地の整備員までもがサイファーの出撃を見送るほどの大人気だそうだ。
「ガルム2からサークル2へ、そこはレーザーが来るぞ!」
「分かった!射線上から退避する!」
レオンの後ろをエクスキャリバーのレーザーがかすめてゆく。
「一つ借りだな、ピクシー。」
「同じ2番機同士だ。生き残るぞ!」

その直後だった。各機の情報ディスプレイに内蔵された“アクス・アンド・ハンマー社製”のソフトが機動し、レーダー機器に情報がアップロードされた。(ガルムと少数の機体には既にアップロード済み)これにより各機のレーダーでエクスキャリバーの射線を知ることが出来る。

サイファーがジャミング施設の掃除を終えると、空中管制機との通信も回復した。
「こちらイーグル・アイ。ジャミングクリア、全機エクスキャリバーを攻撃せよ」
ここからエクスキャリバーまで何とかしてたどり着かねばならない。やはり散開して別々に攻めるのが得策だろう。

「ヘイロー部隊からの応答が無いぞ!?」
エクスキャリバーは飛来する長距離ミサイルを射抜く精度を持っているので、撃ち落す対象が航空機でも全然問題が無いのだろう。その正確なレーザーの前に、に次々と仲間が餌食となってゆく。

「もうすぐだ、皆気を抜く・・・・ぐあーっ!」
ハンクの少し近くを飛んでいたオーシア軍のF/A―18がレーザーの中に消えた。レーザーの発射元を追ってみると、巨大な建造物が見える。それは突き立てられた剣のような形をしていた。
17 アドミラル・マーシュ 2006/07/14 Fri 20:52:45 aUlt..D3Q.EmbO
―――――第13話 『巨人の刃』 “The Excalibur”


「見えたぞ、あれがエクスキャリバーだな!」
一気に相手の懐に飛び込むレオン。しかし、エクスキャリバーの周囲には防衛用のレーザー対空レーザー砲が配備されていた。

「サークル中隊各機へ、付近の対空施設から始末するぞ!」
「了解やで隊長!」

ハンクが仲間に指示を下している間にも、サイファーとピクシーのガルム隊は既に行動を始めていた。また、クロウ隊はレーザーの攻撃に妨害されて中々こちらに接近できないようだ。

「サークル4、フォックス2!」
エクスキャリバー周辺に大量配備されたSAMのうち一つを破壊したカイル。このエクスキャリバーはベルカの国防を担っているだけあって、防護が厳重だ。
「ガルム2から全機へ、エクスキャリバーを止めるには発電機を潰すんだ。」

再びエクスキャリバーの先端が光る。今度はハンクのイーグルを狙っていた。
「くそ!今度は俺か!」
出力を上げて射線上から退避するハンク。彼のイーグルを追うようにエクスキャリバーのレーザーが照射され、外れたレーザーは大地を焼き切ってゆく。
だが、レーザーが急に停止した。エクスキャリバー本体は、外部に大量の蒸気を吐きながら硬直していた。

「敵の発電機を全て破壊した。本体を狙うぞ!」
一同は一斉にエクスキャリバー本体への攻撃に移る。
「ガルム2、フォックス2!」
「クロウ3、フォックス2!」
ピクシーとPJはミサイルを放った後、すぐに離脱して後続の味方の為に射線を開ける。すかさずハンクとレオンもエクスキャリバーにミサイルをお見舞いした。
「ロックオン!サークル1、フォックス2!」
「サークル2投下!」
ハンクとレオンのライト兄弟によるミサイルと爆弾が命中しても、エクスキャリバーはまだ健在だった。
そんな中でも、防御用レーザーを華麗にすり抜けながら空を舞う“サイファー”は特に目立っていた。凄まじい軌道と、無駄の無い飛行はまさに芸術とも言える。

「サイファーが対空レーザーで狙われているぞ!援護しないと!」
カイルとサムは急降下し、対空レーザー砲塔の死角からミサイルを放った。ミサイルを放ち、砲塔を破壊して急上昇したカイルの真正面には、対空レーザーの光と踊るサイファーの姿が。

「……あいつは何者なんだろう?」

サイファーは機体を反転させ、高高度から一気にエクスキャリバー向けて降下してくる。ミサイルを放ち、サイファーがエクスキャリバーとすれ違ったと同時にエクスキャリバーが爆発を起こして沈黙した。

「止まった・・・な?」
「イーグル・アイから各機へ、目標の沈黙を確認。皆よくやった!」


―――ウスティオ・ディレクタス飛行場


「レオン・・・少し良い?」
「・・・俺はハンクだが?」
自分をレオンだと勘違いしたイーシャに、認識票を見せるハンク。彼女は謝ると、駆け足で立ち去っていった。ハンクは少し不自然だった彼女の行動が気になり、後を付けてみた。
 人気の無い場所でイーシャはレオンと2人きりになっていた。もうすぐ次の作戦のブリーフィングがあるため、ハンクは2人に声をかけようとした。しかし、レオンはポケットから小さなケースを取り出す。中には結婚指輪が。
「・・・」
 2人が婚約するような話は聞いていたので、驚くことは無かった。俺の恋人は死んでしまったが、あいつには幸せになってもらいたい。ハンクは兄としてその場を立ち去ろうとした。
「・・・あ。」
「・・・別にわいらは覗き見では・・・」
ハンクがこの場を離れようとすると、彼の背後にはサムとカイルが。言うまでも無くこいつらは覗き見だろう。

「邪魔をするな。ブリーフィングに行くぞ。」
サムとカイルを引きずり、ハンクは集会室へ向かった。

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