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前スレッド No.77
10 スナイパー 2005/04/10 Sun 14:00:06
エースコンバット ザ・スカイウィングス 第2話「再会の空 第4章」


「ガンナー1より全機へ、まもなく目標に接近する。ガンナー、グレイフィールドの2隊が先行する。タナトスは給油機、ソードは管制機の援護にあたれ。」

「グレイフィールド1、了解。」

「ソード1、了解。スナイパー隊長、アッシュ副隊長、お気をつけて。」
そう言い残すと白翼率いるソード隊とタナトス隊が反転急上昇していく。僕はそれを確認すると今回の兵装をチェックする。
僕率いるガンナー隊のSu−27に装備できるAAMは12発、その割り振りは赤外線誘導のR−73アーチャーが8発、アクティブレーダー誘導方式のR−27AEアラモEが4発とやや接近戦重視の兵装になっている。
オール ウェポンズ フリー クリア トゥー エンゲージ エンゲージ
「ガンナー1より全機、全兵装使用自由。交戦を許可する。全機無駄死だけはするんじゃないぞ。ガンナー1交戦!!」
僕はそう隊員達を激励すると、先行してくるF−20AとF−16C、そしてその奥にいるF−15C2機をロックオンする。
所々で交戦報告が入る中、僕は敵機をロックすると発射ボタンを押した。

「ガンナー1、フォックス3!!」
4発のR−27AEが勢い良く飛び出した。正面の敵との距離が詰まって行く。アクティブシーカー覚醒。前方の2機がミサイルの接近に気づくが、遅すぎた。
2発のアラモは近接信管が作動させ、敵機は発生した爆風と破片をもろに食らい、どちらも空の塵と消えた。幸いどちらの機のパイロットも咄嗟にベイルアウトしたようで運があればまた飛べるだろう。
一方後方の2機は流石に冷静でチャフをばら撒きつつそれぞれ左右に急旋回してR−27AEの直撃を回避した。
しかしその時には既に、僕はアフターバーナー全開で1機のイーグルの背後に肉薄していた。

「もらった!!」
同時に機首から30ミリ砲弾が吐き出される。それはイーグルに赤い花を幾つか咲かせると、たちまち燃えあがり敵機を血祭りにあげる。
僕はそれを確認しつつ、もう1機のイーグルを狙おうと右旋回で追いかけようとしたが、唐突にそのイーグルがレーダーから消える。
理由は簡単。何時の間にか僕の斜め右上空にいたアッシュがR−73アーチャーを御見舞いしたからだ。
御見舞いを受けた気の毒なイーグルはミサイルの直撃を受けて木端微塵に砕け散った。

「こちらグレイフィールド1、悪いな横取りして、俺はこれで2機だぜ。」

「こちらガンナー1よりグレイフィールド1、別に構わん。僕はもう3機落としたからな。」
僕がそう返すと無線越しにアッシュが舌打ちするのが聞こえてきた。僕は思わず笑いそうになったが、すぐに気を引き締める。レーダーがこちらに向かってくる敵機を捕らえたからだ。

「御喋りはそのくらいにしよう。新手だ。」

「ああ、俺の方に1機、お前の方にも1機・・・・・・・・来るぞ!!」
それと同時に僕とアッシュは散開してそれぞれの敵を迎え撃つ。
敵との距離がどんどん詰まってくる・・・・・・とロックオンアラート、そしてそれはすぐに空気を切り裂くような断続的な音になる。
恐らくこの距離ならAIM−120だろう。僕はそう判断すると、チャフをばら撒きつつ降下しながら機体を右に捻る。
案の定、僕を狙ったミサイルはチャフに突っ込んでそのまま爆散した。
それを確認しつつ機体をミサイルを放った張本人に向ける。機体全体を濃いブルーとやや薄めのブルーであしらった機体、一見するとF−2Aのようだが主翼が微妙に違う。F−16Cファルコンだ。
(エースカラーって所かな・・・・・・・・じゃあ・・)
それを確認しつつ僕はF−16Cの背後につける。高速ですれ違った上にこちらは降下で機速を稼いだ状態だ。敵も旋回で振り切ろうとするが、遅い。

「これが避けられるかな!?ガンナー1、フォックス2!!」
紅いフランカーから2発のR−73アーチャーが飛び出した。
それは白い筋を引きながらF−16Cに向かって迫る。この距離なら逃げられない筈。
だが、F−16Cは意外な行動を取った、突然アフターバーナーを全開にして急降下したのだ。無論それをアーチャーは追尾する。
(血迷ったのか?・・・・・いや、違う!!)
F−16Cはある程度機速を稼いだところで、今度はいきなり急上昇に転じた、2発のアーチャーの内の1つはその急激な機動にに耐えられず爆発した。
(だが、もう1発残って・・・・・・しまった!!)
僕は内心舌を打つ、F−16Cの前方には赤々と燃える太陽がある。F−16Cはこれを狙っていたのだ。
そのF−16Cは急旋回。しかしアーチャーはF−16Cよりも強い熱源、太陽を目指して天に昇って行った。
(このF−16C・・・・・中々やるな、久しぶりに苦戦しそうだ。)
僕は内心、強敵と戦えることへの喜びと高揚を押さえきれず、ついクスリと笑みをもらした。
11 スナイパー 2005/04/13 Wed 19:57:27
エースコンバット ザ・スカイウィングス 第2話「再会の空 第5章」


僕――オーシア第157飛行中隊ヴァイパー隊隊長hericはギリギリの所で死の宣告から逃れたことにホッとしていた。一瞬のひらめきでの行動だったが、結果的に自らの命を救う形になったのだ。
(次も成功するとは限らない、絶対後ろを取らせないようにしなければ。)
そう自分に言い聞かせると相手の背後に回りこむ為、機体を右に急旋回させる。
が相手もそれを察知、同じくこちらの後ろを取ろうと急旋回。自然と2機はぐるぐると円を描く結果になる。
(早く決着をつけないとまずいな・・・・・少ないチャンスをモノにしないと・・・)
旋回のGに耐えながら僕は必死にこの状況の打開策を見つけ出そうとしていた。ぐずぐすとこの状況を続けていると先の空戦で燃料と弾薬を浪費しているこちらが危ない。
兵装をチェック――AIM−9サイドワインダーが2発、ガンの残弾が140発、やや心とも無いがやるしかないだろう。
と、不意にフランカーのスピードが鈍る。どうやらフランカーが得意とする低速旋回で背後に回りこむつもりらしい。しかし、こちらも相手の思惑に乗るほど間抜けではない。
僕はアフターバーナー全開で、思いきり操縦桿を引く。愛機である青いF−16Cは重力に逆らって大きくループを打つ。
先の旋回でスピードが落ちていたフランカーはそれを追撃する事ができない。だが、それでもアフターバーナーを効かせてこちらのループの内側から回りこもうとする。
それを見て取って、僕はすぐさまスロットルを絞ると先程より小さいループで上昇してきたフランカーに機首を向ける―――そして僕は向けた時にはもうトリガーを引いていた。
12 スナイパー 2005/04/13 Wed 19:57:44
「・・・フォックス2」
Gに耐えながら呟くようにコール、同時にファルコンからAIM−9サイドワインダーが吐き出される。それは炎を噴出しながら真っ直ぐにフランカーに向かう。
しかし、敵も然る者である、ヘッドオンで放たれたミサイルを冷静な急旋回で回避しようとする。それを見て取ったサイドワインダーもそれを追う。
レーダー上では赤い点に白い点が徐々に近づいていく・・・・・・・・そして。
白い点が赤い点と交差して明後日の方向に向かって飛んでいく。敵は間一髪でこちらのミサイルを回避してきた。中々の強運の持ち主だ。しかし・・・・・・

「こんどこそ終りだ・・・・・フォックス2!!」
そうこれが本当の狙いだった。1発目の回避に敵が専念している内に僕はフランカーの真後ろに滑り込んでいた。この距離だ。外しはしない。
勝利を確信して僕はトリガーを引き絞る。これで終り、そう感じた表情がフッと緩む―――しかしそれはすぐに引き攣った。
(!?馬鹿な!?)
敵は僕がサイドワインダーを放つのとほぼ同時にフレアを散布してきたのだ。同時に急減速から急降下に転じる。まるでこちらが後ろにつくのが判っていたように。
確かにこの距離ならフレアを散布しても近接信管でダメージを与えることができる。だがそれはこちらの発射から数秒後に散布したらの話である。
そうこちらの狙いは最初がばれていたのである。だからわざわざ相手はループしているこちらを追いかけこちらの罠にわざと嵌ったのだ。ミサイルを撃たせる為に。
(くっそぉ!!)
そう心の中で罵りながら僕はフランカーの後を追って急降下、降下しながら逃げる敵に機銃弾を浴びせようとする。
しかし、相手はこちらの焦りと嘲笑うかのようにヒラリヒラリと回避していく。
僕は焦りながらも、必死で命中弾を与えようとトリガーを絞る。
だが、無情にもその火線が途切れた。遂に弾が切れたのである。
(弾切れ?そんな!!)
その時、僕は一瞬敵機から目を離してガンの残弾を確認した。そしてそれは同時に命取りにもなった。
次に前に眼を向けた時。いるべき筈の敵機はそこにいなかった。僕は一瞬パニックに陥ってしまう。そして高度が下がり過ぎているのに気づき減速して機体を引き起こした時だった。
僕は不吉な物を感じて視線を上に向けて―――――――見た。

太陽を背にしてこちらに悠然と襲いかかってくる、赤いフランカーの姿を。

そしてアラート音が鳴り響く。確認した時はもう手遅れだと僕は悟る。この位置関係。例え旋回で逃げても相手は正確に機銃弾でこちらを撃ち抜くだろう。
(もう・・・・・駄目か)
僕は迫り来る死の恐怖に耐えられず目をきつく閉ざした。ガガガという機関銃独特の発射音。僕は死を覚悟した。
・・・・・・・・・・しかし来るべきはずの死は何時までたっても僕に舞い降りてこない、僕は不思議に思ってもう一度空を仰いで、そしてまたしても見た。
見えたシルエットは二つ、一つは赤いフランカー。そしてもう一つは――――――――――

「おい、heric!大丈夫か!?」
その声を聞いた時の安堵感といったら言葉で形容できないほどだった。
僕ほ二度目の死の宣告から救ってくれた機体―――――垂直尾翼を黒く塗りそこに髑髏のエンブレムを付けた白銀のF−14A。


それは間違い無くオーシア第157飛行中隊副隊長――あいすまん大尉の機体だった。


GO TO NEXT SKY


後書き
やっと2話が完成しました。
今回の第5章は色々と譲れない部分があったので二つに分けて投稿しました。いかがでしょうか。
本当なら第6章に行きたいところですが、これ以降の話をまとめると軽く見積もって実に15章ぐらいまでいくと判ったので今回はここで一端切ります。
本当ならあいすまんと僕との空戦を書きたかったですが。うまい区切りが見つからないのでここでまとめさせていただきます。

では、次回予告。

交わす言葉。それは過去に別れを告げる悲しい物。
かつての友人同士が砲火の中、再会した時。望まぬ戦いが始まる。
それは決別の言葉の代わりになるのか?
次回 エースコンバット・ザ・スカイウィングス第3話 「交差する思いと砲火の中で」

では、次回も御楽しみに。
13 スナイパー 2005/04/17 Sun 10:24:37
すれ違う心

    交差する砲火

     それはやがて

      悲劇を生む


エースコンバット・ザ・スカイウィングス第3話「交差する思いと砲火の中で」第1章


私はフランカーを牽制しつつ弾薬が切れたらしいhericに向かって叫ぶ。

「ここは私が食いとめる、おまえはもう帰還しろ。」

「大尉・・・・・・すいません。御武運を祈ります。」
そう言い残すとhericのF−16Cが戦場から離脱して行く。
それを見送りつつ私は無線のチャンネルを変更した。再会した友と話をする為に。
しばらくすると無線が繋がった。私はそれを待って呼びかけた。

「久しぶりだな、スナイパー。」
相手があのスナイパーなら聞こえているはずである。
ややあって返答が返ってきた。

「こちらこそ、御久しぶりですね。あいすまんさん。」
無線機から聞こえてきたのは昔と変わらないやや高めの声。
忘れるはずも無い、元みぃとろ隊に所属していたエースパイロットの1人であり良き友人であるスナイパーの声だ。
私は機体を彼のフランカーの隣に並ばせる。

「やはり増援はお前か・・・・・・・・・」
そう私は呟く、手際の良さ、熟練した戦略、どこを見てもかつて実戦で培った物が見て取れる。

「ええ、アッシュも一緒ですよ、僕も貴方が来るとは思いませんでした。隊長――みぃとろさんも一緒ですか?」

「そうだ。だがスカイブルーやCielはいない。あいつらは別部隊にいる。」

「そうですか・・・・・・」
無線機ごしにスナイパーが安堵の息をついた。2人の間に沈黙が降りる。
無理もない、彼とCielはみぃとろ隊の中でも特に中が良かった。そんな2人が――――――――
と、そこで私は思考を中断した。おかしい、何かが引っかかる。
(そうだ。何故あいつは安堵の息をついたんだ?)
違和感の正体はこれだ。普通旧友と再会できなかったのだから、この場面では溜息をつくはずなのに。
つまり安堵したって事はCielがいなくて良かったって事になる。だが何故?
(もっと単純に考えてみろ、Cielがいない事によって起こるあいつのメリットは・・・・・・・・・・!?・・・・まさか!?)
そこまで考えて私の脳裏に最悪の答えが浮かび上がった。しかし、私はそれを必死で否定しようとする。
(馬鹿、あいつに限ってそんな事はない!)
14 スナイパー 2005/04/17 Sun 10:24:53
「でも、すいません。あいすまんさん。」
唐突にスナイパーが声を上げた。私は彼の意図がわからない。

「何をいきなり謝ってるんだ?」

「だって、戦争ですから・・・・・・・」
その時、再び私の脳裏に打ち消したはずの恐ろしい考えが浮かび上がる。
と同時に横の紅いフランカーの速度が鈍る。そのまま後ろに下がっていく。
私はそれを否定するかのように叫ぶ。

「ど、どうゆう意味だ!!」
激情のあまり声が裏返る。その中に潜む感情は怒りか、それとも悲しみかよく判らない。
そして、スナイパーは私が最も恐れていた事を努めて冷静に言い放った。

「・・・・・だって僕、貴方を落とさなきゃならない。」
それをスナイパーが言いきらない内に私は右に機体を旋回させていた。
そしてコンマ数秒の差で先程私がいた場所に30mm弾が撃ちこまれる。
私は急旋回しながら紅いフランカーを駆る友人に向かって叫ぶ。

「・・・スナイパー!?何故!?」

「何故?判りませんか?僕は貴方の友人である前にユークの軍人です。これは命令なんです。」
スナイパーは尚も冷静に言う。それは動揺してないと言うよりも冷たい仮面を被ったように思える。

「くっ!?おまえは・・・・・おまえは命令一つで友人の命を奪えるのか!?」
怒りの余りそう怒鳴り散らす。
一緒に空を駆け、共に死線を潜り抜けてきた。
楽しく談笑した時もあれば、激しく意見をぶつける時もあった。
特にスナイパーは人懐っこくて、よくみぃとろ隊長の後を追いかけていた。
隊の誰よりも優しくて、それ故に優柔不断な面もあった。けれど一度決めた信念は必ず貫くそんな・・・・・・・一言で言えば良い奴だった。
そんな彼が命令・・・・・命令一つで簡単に私の命を奪おうとしている。それ程までに私は彼に信用されていなかったのか。では、あの笑顔も言葉も全て偽りだったのか。
そう考えると胸が張り裂けそうになる。
だが、その怒りも次のスナイパーの意外な一言で急に引いていった。

「僕だって・・・・・・・撃ちたいから撃ってるわけじゃないんです。撃たなきゃならないんですよ!!」
それは先程の冷静さとはうってかわって彼の感情が込められていた。

「もしここで貴方を見逃したら、今度は僕の仲間が撃たれるかもしれない。その命を散らすかもしれない。」

「スナイパー・・・・・・お前・・・・・」
彼の言うことは良くわかる。つい先程、私も仲間が彼に撃たれそうになったから。
戦争・・・・・そう戦争だから当然のこと、そして仲間を守るのも隊長としての当然の事。
だから故に切なかった。互いの目的を同時に叶える事はできないという事を知ってしまったから。
仲間を守る為なら、友ですらその手にかけなければならない事を知ってしまったから。
それ故の切なさ、悲しみが私の中で渦巻いていた。

「だから・・・・・・僕は貴方を撃つ。仲間の為に。」
そしてその彼の言葉には確かな決意が秘められていた。
その証拠に彼の機体から吐き出される火線には迷いはない。確実にこちらを仕留める為に放ってくる。
けれど私は・・・・・・・・彼――スナイパー程の決意を持つ事は出来なかった。
友に・・・・・・・・殺意を向ける事が出来なかった。
しかし、同時に死にたくもなかった。私自身にも守りたい者達がいるから。
今、私のトムキャットにある兵装はサイドワインダー4発と機銃が450発程。
これで友を撃たなければ、自分が死ぬ。もし撃てば友を己の手で殺す事になる。理不尽なまでの構図。
死にたくはない・・・・・・・ないけれども・・・・・・・

「やるしかないのか・・・・・・」
その呟きはとても儚く悲しみを帯びて聞こえたような気がした。
15 スナイパー 2005/05/01 Sun 21:57:59
エースコンバット・ザ・スカイウィングス第3話「交差する思いと砲火の中で」第2章


(こんどこそ・・・・・・いけ!!)
その思いと共にまた紅いフランカーから火線が迸る。
しかし、前方を飛ぶトムキャットはそれをまたしても間一髪で避けた。無理も無い前を飛ぶのは旧知の友で、僕はその技量の程を嫌というほど見てきたのだから。
だからだろうか、火線が空を走るたびに悲しくて苦しくて切ない気持ちになるのは。
そしてそれと同時に、行き場のない怒りを他の誰でもなく、自分に感じるのは。
(くっ・・・今は・・・・今は戦争なんだ。振りきらなければ・・・・・・・)
そうやって、機銃を撃ちかけながら何度心の中で呟いたことか、自分でもわからない。
けれど、そうやって自分を誤魔化すしか今の僕にはできない。

「スナイパー!!なんで、なんでお前が!!」
右に左に機銃弾を避けながら、あいすまんさんの叫びが無線越しに聞こえてくる。その言葉一つ一つがまるで鋭利な刃物のように僕の心に突き刺さる。
あいすまんさんの言葉は戦争の定義で考えれば実に可笑しい事だ。敵に「戦いをやめろ。」と言っているのだから。
しかし、「友人」どうしの行為にこれほど不可解な事はないだろう。まず普通は友人同士で殺し合いなどしない。
けれど、今の僕にはそれをしなければならない義務があった。
「仲間を守る」その行為を達成する為には、敵を落とさなければならない。それが例え共に語り合った旧知の仲の友だとしても。

「お前が、お前が・・・・友を撃つなんて私は信じないぞ!!」
以前としてあいすまんさんが叫ぶ声が聞こえてくる。やはり、その一言一言がナイフのように鋭く僕の心を抉る。
それと同時にあいすまんさんとの懐かしい思い出が胸の中をよぎる。
何度も模擬戦で裏をかき、時には逆に裏をかかれたりしながらも競い合った。
戦いの空では、後ろを任せられる数少ない人物の1人だった。
そして僕が知る限りの最強の雄猫乗りだった。

「僕だって、こんな事好きでやってるわけじゃないんです。」

任務の後は一緒に飲みに行って、Cielやみぃとろ隊長、アッシュやスカイブルーさんと一緒に夜明けまで数多くの店をはしごした。
そして、あの時・・・・15年前の戦争が終わった祝いに皆で飲んだ酒の味・・・・・・ただの安物のビールだったけれど、その味は今でも忘れていない。
あれから、何十回とコンタクトを取っていたし、一緒に飲みに行ったりした。最後に会ったのは・・・・・丁度2ヶ月ほど前。
あの時はまさか、こんな形で会うなんて思いもよらなかった。もしこうなると判っていたなら・・・・・・・いや、もうそんな考えはやめよう。

「なら、こんな事すぐにやめればいいだろう!!」

僕はコクピットの中で軽く首を振り、過去の郷愁と友の声を振り払う。
(振りきらなければ・・・・・もうあの頃には二度と戻れないんだ。)
だから、ここで叫ぶのは自分の過去への、自分の友人への決別の言葉。

「けれど、僕だって・・・・貫きたい意地があるんです!!」

「ッ!!スナイ・・」
叫ぶ彼の声を僕はあらん限りの声で遮った。
            ・・・・・
「死んでもらいますよ!!あいすまん!!」
この言葉に反応したのかあいすまんはいきなり急旋回で僕を振り切ろうとする。咄嗟の事に僕は反応できない。
慌てて急旋回で追いかけるが、旋回した先にあいすまん機は見当たらない。
その時,太陽に照らされていたコクピットに不意に影が落ちた―――その感じた時には既に僕は操縦桿を左に倒していた。
刹那の差で先程まで僕がいた辺りを機銃弾とあいすまんのF−14Aが突きぬけて行く。
それを見つつ、僕はあいすまんが向かうであろう未来位置に向かって機首を向ける――それと同時にあいすまんも機体を引き起こし、こちらに機首を向けた。
2機が正面に向き合う・・・・・そして双方から火線が迸る。
僕の放った火線をあいすまんは右に、あいすまんの放った火線を僕は上に交わした。そしてそのまま空中でループを描くと上昇しようとしているF−14Aに襲い掛かる。
と、不意にあいすまんの機が急降下した――――そう見た時にはあいすまんの機体は大きく可変翼を開きながら大きく螺旋を描いた。バレルロールと言われる技である。
その機動に対して降下しながらスピードが出ていた僕の機体はたちまちF−14Aをオーバーシュートしてしまう。
16 スナイパー 2005/05/01 Sun 21:58:26
「私は友を撃ちたくない・・・・・・撤退しろ,お前の不利は明らかだ。」
確かに普通なら絶体絶命のピンチである。実力がある程度ある者ならあいすまんの優位が絶対に揺るがない物だと考えるだろう。
しかし僕は冷静にスロットルを一気に前に倒した。不意に鋭い加速と共に大きなGが僕の身体に掛かる。

「・・・・・勝負は最後まで判らないんですよ。」
そのまま僕は大きくループを打った。バレルロールで速度を殺してしまった上、完全に意表を突かれたあいすまんは追うことが出来ない。再び両者の優位が逆転した。
再び上から僕はあいすまんに襲いかかる。もうバレルロールは通用しない。同じ機動が二度も通じるほど僕は甘くない。
それはあいすまんも承知の上か――今度は急旋回でかわそうとしてきた。
だが僕は、しっかりエアブレーキをかけながら、今度こそ彼の背後にピタリとつける・・・・・・・・・・決着をつけるために。
(これで・・・・終りにする!)
その僕の決意を汲み取ったかのようにHUD上のミサイルシーカーが右に旋回するあいすまんの機体をロックした。
僕はゆっくりと引き金を絞る。

「・・・・ガンナー1、フォックス2。」
僕の紅い機体からR−73が1発、炎を噴出しながらその先にいる標的に向かって空を突き進む。
しかし、やはりというべきかあいすまんの行動は早かった。
フレアを撒きつつ太陽に向けて急上昇。そして近接信管が作動しない距離まで引きつけてから急降下した。
それは先程、青いF−16Cがしたこととまったく同じ――――――否、2つだけ違う点があった。
1つはF−16Cに放ったミサイルは2発だったこと。そしてもう一つは・・・・・・・・・・・・・

「・・・しまっ・・!」

「今度こそ、頂きです。フォックス2。」
僕がミサイル発射後もぴったりあいすまんにくっついていた点だ。
こうなる事はある程度予想していた。混乱しているあいすまんでは目の前の危機にしか対応できない事。
そして彼が「本当に撃つわけない。」と心の何処かで考えている事。
不思議なことに今の僕にはそれが手に取るようにわかった。
そして、彼のその感情が命取りになることも。
2発目のR−73は必死に回避行動を取ろうとするあいすまん機に右から接近し、近接信管を作動させた。
その爆発が彼の機の右エンジンを永久の眠りへと導いた。

「くそッ,速度があがらない!!」
無線越しに彼の毒づく声が聞こえてくる。しかし僕の耳には届かない。
僕は尚も旋回しつづけるF−14Aにガンサイトを合わせた。もはやミサイルすら必要ない、機銃の一連射だけで充分だ。
そして僕は自分自身の良心の叫びを押し殺して止めの言葉を何とか言い放つ。

「これでジ・エンドです。さよなら、あいすまんさん。」

「スナイ―――」
その言葉は機銃の発射音に掻き消された。
17 スナイパー 2005/05/20 Fri 21:25:09
エースコンバット・ザ・スカイウィングス第3話「交差する思いと砲火の中で」第3章


セント・ヒューレット軍港沖の戦いは終焉に向かいつつあった。
スナイパー率いる援軍の活躍により、攻撃部隊の約6割が無事、基地への生還を果たしたのだ。
残存していた敵機もこれ以上の追撃は無理と判断したのか、早々に撤退していく。
しかし、ユークトバニア第327飛行中隊所属――――白翼の胸中は穏やかではない。
それもその筈、彼の隊長でもあるスナイパーがまだ帰ってこないのである。
(もうそろそろ帰ってこないと基地に帰還てできなくなる・・・・・・・・)
そう、いくらフランカーの燃料搭載量が多いからと言っても限度があるのだ。決して無限ではない。
飛び続けている限り、いつかは燃料はなくなるのである。
そして燃料がなくなった飛行機の行く先は、地面のみである。

「まだ、帰ってこないのか?」
と、アッシュさんの乗るMIG−29が僕のSu−27の隣についた。

「ええ・・・・・アッシュさんもそろそろ戻らないと燃料が危ないですよ。」
そう、ファルクラムの燃料搭載量はフランカーより少ないのだ。アッシュもそろそろ燃料の心配をしなければならないのだ。
しかし、彼はその心配を、

「馬鹿、おまえが待ってるのにのこのこ基地になんか戻れるかよ。」
一言で蹴り飛ばした。それを聞いて僕はフッと笑みを漏らした。
普段はそうは見えないが、アッシュさんも隊長もそれ程までに互いを信頼しあっているのだろう。

「おまえこそ、そろそろ帰ったらどうだ?大分無理している気がするぞ。」

「僕だって、一人でのこのこと帰れませんよ。」
そして、無言の沈黙、普段ならここで隊長が話題を振ったりするのだが、その隊長が今はいない。それゆえの沈黙だった。

「なあ、白翼。」
ややあって沈黙を破ったのはアッシュさんだった。

「何ですか?」
僕はセオリー通り(?)聞き返す。

「・・・・・おまえがこっちの基地に来たのは確か5年程前だったな?」

「・・・・・そうですけど・・・・・・どうしてそんな事聞くんですか??」
そう聞き返しながら僕は内心でアッシュさんの意図を探ろうとする。確か普通こんな状況でわざわざこんな事聞くのは変だ。
何か裏があるのは間違いない――――と考えている僕を尻目にアッシュさんは更に聞いてきた。

「・・・・・そのときのあいつに対しての第一印象ってどんなのだった?」

「えっ、・・・・・まぁ、優しくて親切な人だな。って思いましたけど・・・・・・それがどうしたんですか?」

「いや、なんでもないんだ・・・・・・そうか、優しくて親切・・・・か。」
そのアッシュさんの言葉はやや寂しい感じがしたような気がした。
が、それは同時に思い返してしまった5年前の思い出に流されてしまった。
アッシュさんにも言ったように僕が隊長と会ったのは5年前である。
初めてシュバイツァー基地に来たとき、不覚にも基地内で迷子になってしまい、おどおどしている所に隊長が来て道を教えてもらったのが初めての出会いである。
その事件以来、たびたび基地内で迷子になり、その度隊長に助けられていたので自然と関係が深まってしまったのである。
(読者の皆さんは既にお気づきであると思うが、白翼は重度の方向音痴である。byアッシュ)
今思い出しても恥ずかしい思い出なので最近はなるべく思い出さないようにしているのだが、昔の話になるとすぐに思い返してしまうので、かなり迷惑な思い出と言えるだろう。。
(尚、シュバイツァー基地に配属したての頃の白翼は「迷子の白翼ちゃん」の二つ名で呼ばれていたことを補足しておく。byアッシュ)
と、僕が過去の思い出に愚痴を零していると唐突にアッシュが口を開いた。

「・・・・・最近のあいつはどこかおかしいんだよ。」

「・・・えっ?」
と、僕は我ながらあきれるほど呆けた声で言葉を返していた。
それと同時に僕はアッシュさんの口調に内心で少し驚いていた。
普段の彼は仕事は仕事で割り切る一面もあるが、基本的に明朗快活である。
部隊のムードメーカーは間違いなく彼であるし、ネガティブな事は日常生活てでは一切言わないのだ。
(その代わり、隊長は激務の連続なのでいつも愚痴を零しているが・・・・・・by白翼の心の呟き)
その彼がこんな哀れむような口調で喋るなんて・・・・・・・・・
そんな事を考えている僕に構わずアッシュはどんどん言葉を吐き出していく。

「前はこんなこと無かったんだ。おまえの言う通り誰にでも優しかったし、親切だったよ。けど、どこか優柔不断な面もあっていつも誰かと一緒に居たり、誰かの後を追いかけていたんだ。それが昔のあいつだ。」

「あの隊長が・・・・・優柔不断?」
正直、これには驚いた。
いつも的確に指示を飛ばす隊長が優柔不断なんて、にわかには信じられない。
18 スナイパー 2005/05/20 Fri 21:25:34
「それで、今から10年ぐらい前にここの隊長になってからは少しづつ1人で何かを決めたりすることができるようになってきたんだ。それが・・・・・」

「それが今の隊長・・・・・・・」
僕はアッシュさんの言葉を引き継ぐ。そして勿論、彼もそれを肯定した。

「ああ、俺もあれは良い変化だったと思ってた。けど、最近どうもおかしいんだよ。」

「何がどうおかしいんですか?」

「最近、妙に元気なんだ。普通、こんな戦争が始まったら誰でもうんざりした気分になるだろ?だけど、あいつにはそれが無い・・・・いや隠しているというべきかな。」

「隠している?どうして?」

「判らない。けど恐らく内心では人並み以上に落ち込んでるのは間違い無い。何か秘密があるんだろうな・・・・・・・」
それきり2人とも黙り込んでしまう。僕は少し恥ずかしかった。
隊長のことを判ったように思っていて、実は何も知らなかったことが恥ずかしかった。
いつも微笑んでいたあの笑顔の裏には何があったのだろうか・・・・・・・・解からない。
僕は内心をポツリと呟く。

「僕・・・・・隊長の事、何も知らなかったのかな・・・・・・」
それに対してアッシュさんはタイミングばっちり(?)なフォローを入れてくれた。

「最初から他人の全てを知っている奴なんていないと思うぜ。分かり合おうとするのが友情を深めることなんじゃないか?」

「アッシュさん・・・・・・」
確かにその通りだ。他人の全てを始めから知るなんて事、できるわけが無い。もし出来たとしても、僕はそんな事しないだろう。
もしいきなり全てを知ってしまえば、逆に相手を敬遠したりしてしまうかもしれないから。

「今からでも・・・・・遅くないのかな・・・・・」

「ああ、充分間に合うさ。時間はあるんだからな・・・・・」
そして、三度訪れる沈黙の時、しかし、それは呆気なく終わりを告げることになる。
しかし、それはアッシュさんでも、僕でもなかった。

「こちらガンナー1、しつこい敵がいて帰ってくるのが遅れた。すまない。」

「隊長!!無事だったんですね!」

「この野郎!!心配かけやがって!!」
僕もアッシュさんもありったけの喜びをぶちまけながら、隊長の帰りを祝福した。

「よし、じゃあ帰還するぞ・・・・・・心配かけたお詫びに今日は僕がなにか奢るよ。」

「よっしゃあ!さすが隊長殿!!」
僕はそんなアッシュさんの歓声を聞きながら、機首を基地の方角に向ける。
その時の僕の心の中には先程まで漂っていた雨雲も気配など、少しも残っていなかった。


しかしこの時、僕は気づくべきだったのだ。
僕の心の中から消え去った雨雲が、僕のそれとは比べ物にならない大きい雨雲が
隊長の心の中に漂っていたことを。

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