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ACE COMBAT 5 RESURRECTION OF RAZGRIZ Episode3

前スレッド No.108
23 ゼネラル・マーシュ 2006/04/06 Thu 09:49:01
エースコンバット5 リザレクション・オブ・ラーズグリーズ エピソードV

CONTENTS Episode1

1:クルイーク要塞攻防戦  2:姫君の青い鳩  3:反撃への離陸
4:名前負け        5:精鋭の戦闘   6:消えた足跡
7:フランブルク強襲    8:翼のために   9:ベルカの陰謀

CONTENTS Epsode2

10:共鳴する声      11:混迷の海   12:紅のセレス海
13:ジャーニー・ホーム  14:ACES   15:天空からの落雷
16:栄光を目指して    17:暁の空    18:降り注ぐ爆弾
19:黒い翼の天使     20:墜落天使

2レス目から本編に以降します。 お暇潰しにどうぞ。

※第4話の最後の「トムキャット・・・」の文章は忘れてください。(謝罪
※12話で亡霊に撃沈されたのはシバリーではなく、カニェークです。(続、謝罪

なお、これ以降は「ACE ZERO」のネタバレも入ります。
24 ゼネラル・マーシュ 2006/04/06 Thu 22:03:40
―――――第21話 『姫君の青い鳩U』


ユークトバニア、シーニグラード空軍基地

「イカロス、反対するわけではないが・・・」

ニコライとイカロスは、基地の格納庫に配備されたSu−37ターミネーター戦闘機の垂直翼に新たなエムブレムを書き込んでいた。機体全体を青く染め、垂直翼には『姫君の青い鳩』に登場する鳩が描かれていた。

「ラーズグリーズが実在するのであれば、青ハトも有りでしょう?」
イカロスは他のメンバーのターミネーターにも青鳩を書き込んでゆく。

そんな2人の元にミハイルがやってくる。
「ニコライ大佐?ヴィンシンスキー将軍の所に用事があると言っていませんでしたか?」
「将軍は休暇だ。」

2人の会話をよそに鳩を書き続けるイカロス。

現在、オリオン中隊は再編成され、ターミネーター10機による構成となった。周囲からは「ラーズグリーズに最も近い部隊」と呼ばれている。だが、ユークは先の大戦での処理に殆どの人員が狩り出され、正式な部隊編成は常に先送りとなっていた。

とは言え、戦争は終結したので、無理に正式な編成をする理由は特に無い。平和以上に素晴らしいことはないのだから。エレノアが故郷のユージア大陸、サンサルバシオンから戻ったらオリオン中隊全員で航空ショーによる展示飛行をする約束になっている。

ニコライは缶コーヒーを買いに行こうとして、イカロスに一言告げようと彼を見上げた。
「おい、俺のエムブレムだけ皆と違わないか?」
「“ちげくないですよ”大佐。」
「いや、鳩が1匹多いぞ?」

ニコライのターミネーターのエムブレムは皆とは違い、構図は鳩が2匹交差するエムブレムだ。イカロスは「隊長の識別」だと言い張る。

そして、イカロスはミハイルや他の新人を集めて青ハトを書き込むのを手伝わせている。
25 ゼネラル・マーシュ 2006/04/13 Thu 20:48:16
―――――第22話 『終末への序曲』


イカロスはミハイルや他の新人を集めて青ハトを書き込むのを手伝わせていた。だが、突然遠くの空が光る。
数秒後に衝撃波がシーニグラードを覆った。
「なあ、ミハイル?今日は花火大会か?」
「そうには見えませんよ、イカロス大尉。」

最近、オーシア、ユーク両国にて航空機、弾薬、燃料の消滅事件が多発していた。偵察に出た航空機が通信を遮断し、そのまま消息を消す事件が相次いでいる。


そして今、ユークトバニア首都シーニグラードが突然核攻撃を受けたと知らされた。


その核攻撃は首都防空部隊が阻止したものの、多数の国籍不明機によりユーク軍は甚大な被害を受けた。また、オーシアでも同じ事例が報告されている。
そして数日後、世界各地の主要都市は突然出現した長距離によるミサイル攻撃を受けた。各地の防衛隊は迎撃するものの、同時に現れたアンノーン(国籍不明機)により甚大な被害を受けた。

相次ぐ戦闘から両国の情報部は、この攻撃を行った組織の正体を突き止めた。その組織の名前は


『壁無き世界』


情報部はこの組織がベルカ人、交戦派の残党だと推測している。現在、“壁無き世界”はラーズグリーズ海峡より北上した南極に拠点を構えているとの情報がもたらされた。数日前に偵察機が北極へ向かったが、その偵察機は「熱源探知」の報告の直後に通信を断った。

そこで、壁無き世界の本拠地と思われる地点に戦闘部隊を派遣することとなった。ユーク、オーシア両国共同の戦闘部隊は両国の中間にある「サンド島基地」に集合することとなる。

真の平和を取り戻す為に。
26 ゼネラル・マーシュ 2006/04/17 Mon 21:57:18
―――――第23話 『極北の空へ』


2011年、サンド島上空。

壁なき世界の奇襲により大きな被害を受けた両国。ユークトバニアとオーシアは平和の為に再び手を取り合い、同じ目的の為に最後の戦いに備えていた。

ラーズグリーズ海峡に対する拠点としては、距離的に近いパビエータ半島が候補として選れたが、「安全に集結できる」という理由でここサンド島が選ばれたらしい。

「物凄い数だ、これならすぐに決着がつくだろうな。」
サンド島上空で旋回するニコライ達。周りには両国の戦闘機部隊が空中給油を受けており、給油が完了した部隊から北に向かい始めている。

「・・・下に見えるのは火山島か?」と、ニコライがつぶやくと、アンドレイが答えた。
「そうですよ。あの島にこれ以上接近した場合、レーダーが乱れるとか・・・」
ラーズグリーズ海峡へ向かう途中、スクラップヤードがある火山島の上空を通過した。だが、このスクラップヤードには殆ど飛行機が無い。
「ここは飛行機の墓場・・・のはずだが、飛行機が無いな。前に見た時は100以上あったはずだが・・・」
地上には飛行機を牽引した後が残っている。何者かが最近ここに訪れたのかもしれない。


2011年、ラーズグリーズ海峡上空。


「こちら空中管制機サンダーヘッド、目標地点まであと5分だ。各機、警戒を怠るな。」
両国の残存部隊とはいえかなり大規模な部隊なので、空中管制機4機にて部隊を統制している。

「サンダーヘッド、ユーク空軍のニコライ大佐だ。敵の拠点は大体どこら辺にある?位置を教えてくれ。」
「ニコライ大佐か?記録ではフランブルクで戦死とあるが、どうゆうことだ?」

ニコライはそのまま黙止した。自国の手際の悪さに呆れるばかりだ。これが事実であれば、初期のオリオン部隊は全員死亡と記録されたままである。ニコライはこの任務が終わり、帰還したら司令部へ問い合わせることを自分に誓った。だが、突然オーカ・ニエーバから無線が飛び込む。
「こちらオーカ・ニエーバ、前方に熱源を探知!警戒せよ!」

同盟軍の編隊に向かって遠くから収束された細くて赤いレーザーが数本突き刺さる。

「各部隊、被害を報告しろ!」
サンダーヘッドの管制官が無線に向かって吼える。今の攻撃でかなりの被害を出したようだ。攻撃に参加していたオーシアのデルタ、レイピア部隊、ユークのネレイド、ハレー隊からの返答がない。

ニコライはレーダーに映る16機のアンノーンを確認した。
「レーダーに国籍不明機!数は16、12時方向!」
正面には赤い機体と灰色の機体が8機ずつ。その灰色の敵機がXLAAを一斉射撃し、大量のミサイルが迫る。

「全部隊へ!散開せよ!交戦を許可する!」
27 ゼネラル・マーシュ 2006/04/19 Wed 22:30:02
―――――第24話 『赤い翼』


ニコライのターミネーターは大きく旋回し、側面から敵編隊に迫る。どちらも見たことの無い戦闘機だ。
「交戦を開始する!ミハイル、後方から付いて来い!」
「了解、ニコライ隊長。」
味方にレーザーを照射している赤い敵機にミサイルを放つニコライとミハイル。ミサイルは命中したが、敵機はまだ飛行している。

「ケツに付かれた!振り切れない!」
可変翼を搭載した灰色の機体を相手にする味方オーシア軍機が撃墜され、更に2機のユーク軍機が追撃するが、機体の性能差が大きい。
「エレノア!6時方向に敵機だ!」
エレノアのターミネーターの背後に可変翼機が迫り、機銃で襲い掛かってくる。エレノアは追撃者を必死で振り払おうとするが、相手は磁石に吸い寄せられるかのように離れようとはしない。エレノアはターミネーターの機動性を生かし、90度機体を垂直に起こしたまま静止して相手を追い抜かせる。
「捕らえた!」
機体を水平に戻し、ターミネーターの機銃で敵機を穴だらけにした。撃たれた敵機は両翼がもぎ取れ、バランスを崩してそのままラーズグリーズ海峡の冷たい海に墜ちた。

オーシア空軍オメガ中隊長のストーン大尉が味方に報告する。
「赤いやつは知らんが灰色の奴は知っているぞ!隣国ユージア製の試作戦闘機、X−02“ワイバーン”だ! 可変翼を搭載したあの機体の運動性はかなりのものだぞ!」
その直後、赤い機体の放ったレーザーがストーンの背後にいたオメガ中隊所属機を粉砕した。

「真正面から行くぞ!」
「援護します、イカロス大尉!」
敵機の放つレーザーをかいくぐり、イカロスとアンドレイは赤い機体に格闘戦を挑もうとする。やがて距離が詰まり2人と敵機が衝突寸前で交差する。
「何だあの敵機は・・・奇妙な形だ。まるでSF映画に登場する飛行機のプラモデルみてぇじゃねえか・・・」
2人は旋回して敵機への攻撃を開始した。


「<ゼウス5!後方にユークのターミネーターだ!気をつけろ、そいつらは既に同士を2機落としている!>」
「<ジュピター1!そこらじゅう敵だらけだ!・・・いや、正面に“青い鳩”のエムブレムの奴が・・・>」

未確認の赤い戦闘機をイカロスとアンドレイが共同撃墜した。他の仲間もそれに習い、次々と敵機を落としてゆく。

「・・・こちらオーカ・ニエーバ。作戦展開中の全部隊へ、未確認航空機の正体が判明した。赤い機体が“ファルケン”。宇宙船アークバードと同時に開発された戦力レーザーを搭載している。 灰色の機体が・・・」


オーカ・ニエーバの通信の最中に、北極の氷の中から青白い光が立ち上った。
28 ゼネラル・マーシュ 2006/04/22 Sat 22:52:22
―――――第25話 『太古の船』


北極の氷山を書き割り、青白い光が同盟軍の編隊を襲った。一同が光の発信元を必死で探し始めると、北極の表面が蒸発し始めている。やがて氷山が溶け、次々と崩れ始めた。

そして、氷山の中から吹き上がる巨大な物体。

「おいおいおいおい!今度は何なんだ!遺跡・・・!?」
イカロスがコックピットのキャノピー越しに地上を見下ろすと、崩れ落ちる氷山と濃霧の中から巨大な遺跡が姿を現す。
その直後、霧の中から大量のミサイルが飛来し、一瞬で同盟軍の4個飛行中隊を壊滅させた。

「ブルー・ドヴ(青鳩)中隊、皆無事!?」
エレノアとイカロスは仲間の無事を確認しようとしたが、帰ってきたのはアンドレイとミハイル、そして、「いつからオリオンは青鳩部隊になった?」というニコライの呟きのみ。
「こちらオメガ1、AWACS!一体どうなっている!?」
「敵の攻撃だ!全機散開!」

瞬く間に再びミサイルアラートが鳴り響く。

周囲を見回すと、先程まで存在した多くの味方機が消えていた。地上の遺跡から放たれたレーザーとミサイルの餌食となり、降下するパラシュートがいくつか確認できた。

「・・・ハンマー中隊へ!XAGM発射準備!」
デニス少佐率いるA−10攻撃機部隊、ハンマー中隊が一斉にXAGMを発射した。放たれたミサイルは遺跡に命中したものの、何の変化もうかがえない。そして、デニス隊に反撃するかのように、遺跡に配置された地対空ミサイルがA-10を狙う。
「撃ってきた!回避する!」
デニスの寮機が右旋回すると彼の真後ろをミサイルが飛び抜けてった。だが、そんなハンマー隊に対し、先程の赤い翼“ファルケン”が狩人の目を光らせていた。
「ハンマー4!ファルケンに狙われているぞ!逃げろ!」と、デニス。
ハンマー4は上昇するが、鈍重なA-10はファルケンにとって格好の的だ。ファルケンは獲物を攻撃範囲に捕らえると、ミサイルでA-10を粉砕した。

「こちらサンダーヘッド。目標の詳細が判明した、あれはかつて・・・待て、目標に更なる動きが・・・」
例の遺跡の全体から凄まじい量の蒸気が吹き上がり、遺跡の下部が稼動。氷山を押しのけながら移動を開始し、開放された格納庫から戦闘機が射出される。
「レーダーに新しい敵影!小型の無人戦闘機が多数!」
ニコライ達は突然動き出した遺跡に驚きつつも、攻撃態勢で遺跡へ降下した。
29 ゼネラル・マーシュ 2006/04/23 Sun 23:02:01
―――――第26話 『ラーズグリーズの復活』


「管制官、状況を報告しろ。」
広い部屋の中には大勢のスタッフとコンピューター、巨大なディスプレイが配備されている。まるで宇宙船の打ち上げ管制室みたいな場所だ。
「敵機による被害は軽微。全システム良好、オールグリーン。出航可能です!」
「エネルギー再充填終了、主砲発射準備完了。」

そして、中央に立っていた将校が言い放った。
「主砲の発射を許可する。攻撃再開!」
「了解。目標、同盟軍航空機部隊。レーヴァテイン発射!」


遺跡の上部甲板が解放され、巨大な砲身がゆっくりと姿を現す。砲身の先には高高度を飛行する空中管制機の姿が。
「―――あれはかつてオーシア、ユーク共同で進めていた宇宙開発計画の第1段階。宇宙船アークバードの架け橋となった宇宙船“スキーズブラズニル”・・・」

その遺跡のような外見をしたスキーズブラズニルの主砲、レーヴァテインがAWACSサンダーヘッドに直撃。管制機は真っ二つに割れ煙を吐きながら四散した。

「くそ、サンダーヘッドが墜ちた!こちらヴァイパー1、これより独断で行動する!」
スキーズブラズニルの対空攻撃を潜り抜けて爆弾を投下するオーシアのF−16。爆弾は命中したが、致命傷とは言い難い。
「ヴァイパー1、連続で爆撃する!ヴァイパー2、ヴァイパー3、付いて来い!」
再び急降下するヴァイパー部隊。だが、激しい対空砲火と無人機の攻撃により次々と叩き落される。ニコライたちはファルケンやワイバーンの相手でスキーズブラズニルの攻撃に手を回せないでいた。

「撃たれた!エンジン推力低下!高度を維持できません!」
真上で味方のタイフーンがファルケンの戦略レーザーより粉砕され、破片を必死で避けるイカロス。更に遺跡からの8発の対空ミサイルが襲い掛かる。
「あの要塞、一体何発ミサイルを撃てるんだァ!?」

童話、“姫君の青い鳩”に登場する伝説の悪魔を思わせる強さを見せ付けるスキーズブラズニル。そして、ここはラーズグリーズ海峡。伝説の悪魔“ラーズグリーズの復活”と呼ぶのに最適な状況だった。

「こちらオメガ1、スキーズブラズニルにより被害拡大!援軍は来ないのか!?」
次々と撃墜される連合軍機。いつの間にか形勢は逆転し、この空域にはファルケンとワイバーン。そしてスキーズブラズニルから射出されたドローンが埋め尽くしている。

「アンドレイ、下から奴らの背後に回りこめ!俺は正面から行く!」
ミハイルは正面角度からミサイルをファルケン向けて放ったが、ファルケンはミサイルを回避どころかレーザーでミサイルを墜ち落としし、そのままミハイルのターミネーターをレーザーが捕らえた。

「おい!?ミハイルどうした!?ニコライ中佐ァ!何があったのです!?」
イカロスはワイバーンとの戦闘に追われて何が起こったのか判らなかった。
「・・・レーダーからミハイルの機体が消えた・・・」

だが、レーダーに新たな反応が現れた。5機の航空機で識別信号は“ラーズグリーズ”だった。
「こちらオリオン1、・・・味方の増援、ラーズグリーズの英雄だ!」
30 ゼネラル・マーシュ 2006/04/24 Mon 21:35:45
―――――第27話 『ラーズグリーズの死神とラーズグリーズの英雄』


ジェット音と爆発音が響き渡る戦場の中、オーシア空軍ハンマー飛行中隊の隊長、デニス少佐はこちらに向かってくる5機のラーズグリーズ編隊の姿を確認した。だが、最後に見たときは4機だったはず。

ニコライ達はラーズグリーズ部隊と共同でスキーズブラズニルへの攻撃を敢行した。
ラーズグリーズはファルケンやワイバーンを次々と駆逐し、ニコライたち連合軍もラーズグリーズを支援する為にドローンを排除する。

周辺の敵航空機を排除した後、ニコライ達はラーズグリーズの後方で編隊を組んだ。彼らは次々とスキーズブラズニルへミサイルを叩き込む。
「中央にブリッジらしき部分がある。そこに攻撃を集中するぞ!」と、ニコライ。
エレノア、イカロス、アンドレイもそれに続く。
だが、突然スキーズブラズニルからミサイルが射出され、ラーズグリーズ部隊の1機から「高度を上げろ」という通信が入る。

一同が上昇した後、スキーズブラズニル上空で空が炸裂した。

「駄目だ、破片を喰らった!ハンマー6脱出する!」
「今のはなんだ!?空が爆発したぞ!?」

スキーズブラズニルは、かつてこのラーズグリーズ海峡で戦闘を行ったユークの超弩級潜水艦に搭載された散弾ミサイルを搭載していた。これは低空、中空域の航空機に対して絶大な威力を誇るミサイルで、少し前にはオーシア海軍の空母と航空隊を壊滅に追い込んだ悪魔の兵器である。

「アレを喰らったら1発で落とされるぞ!気を抜くな!」
ニコライは再び降下してスキーズブラズニルのブリッジにミサイルを叩き込み、対空砲、SAMの攻撃をかわしつつ上昇し、再び目標を振り返った。

すると、再び主砲のレーヴァテインが光を噴出し、放たれた光は遠くの大地目掛けて突き進んだ。数秒後、ユーク方面から光の翼が浮かび上がり、同時に無線が乱れてレーダーなどの機器も一時的に麻痺する。
「AWACS!状況は!?」
主砲の砲撃による反動は凄まじいものだった。鐘を鳴らしたような音が頭の中で鳴り続けており、操縦桿もぶるぶると震えている。
「・・ら・・・エーバ・・・敵・・・主砲・・・シーニ・・・・壊・・・」
無線が通じない。通信が回復するまで待っているわけには行かないので、今は独断で動くしかないようだ。

デニスのハンマー隊のA−10が再びXAGMを発射し、スキーズブラズニルのブリッジを攻撃する。対空砲の迎撃により1機落とされつつも、旋回して攻撃に復帰するハンマー中隊。ストーンのオメガ部隊もそれに続く。

スキーズブラズニルの対空砲弾とミサイルが嵐のように吹き上がり、彼らは被害を出しながらも何度も攻撃を繰り返した。

幾度の攻撃を受けたブラズニルのブリッジが一部崩壊し、そこにラーズグリーズ部隊が追い討ちを加えた。ラーズグリーズのミサイルによりブリッジが爆発し、スキーズブラズニルは停止した。
31 ゼネラル・マーシュ 2006/04/29 Sat 23:27:36
―――――第28話 『リノヴァティオ』


「シーニグラード基地が壊滅!?」
イカロスが聞いたオーカ・ニエーバからの情報では、シーニグラードは光学兵器による攻撃を受けて壊滅したようだ。これは恐らく先程スキーズブラズニルが放ったレーザー兵器と関係している可能性が高い。


ラーズグリーズの英雄が去った後、ニコライは沈んでゆくスキーズブラズニルを眺めていたが、何か様子が妙だ。
「・・・まだ終わってないぞ!全機ブレイク!」
青いレーザーがデニス達のA−10を完全に破壊し、そのレーザーは付近のヴァイパー隊も巻き込んだ。その直後、スキーズブラズニルの装甲板を吹き飛ばし、内部から複数の航空機が舞い上がってくる。ニコライたちの真下から無数のプラズマ弾が襲い掛かり、ストーン指揮下のオメガ7が粉砕される。
敵機はワイバーンでもファルケンでもない。金色戦闘機で4枚の翼を装備していた。

「(聞こえるかニコライ?私だ。まだユーク人に成り済ましているのか?)」
ニコライには、正確にはオリオン中隊全員に聞き覚えのある声だった。ユークトバニア空軍、首都防衛司令官の“ヴィンシスキー将軍”の乗った戦闘機が4機の金の翼を引き連れている。
「ヴィンシスキー将軍?ユーク人に成り済まし?一体どうなっているのですか、大佐?」
アンドレイとイカロスは全然状況を把握できなかった。何故ここにヴィンシスキーが居て戦闘機に乗っているのか?そして、この戦闘機は何なのか?先程の遺跡とファルケン、ワイバーンに続き謎が更に増えてしまった。

「(ニコライ、貴様には誇り高きベルカ騎士団の血が流れている。我々は使命を果たさねばならないのだぞ?)」
イカロス達は今の言葉に耳を疑った。ニコライ大佐はてっきりユーク人だと思っていたが、今の言葉が真実であれば、ニコライはベルカ生まれで、しかも伝統あるベルか騎士団の末裔ということになる。
「将軍・・・」
ニコライはヴィンシスキーの暴露を全く否定しない。ニコライ達とヴィンシスキーたちの2勢力はスキーズブラズニルの上空で旋回しながらにらみ合いを続けていた。
「(分かっているだろう、ニコライ?何故人間は何度も同じ過ちを犯すのか?それは人間の強欲さが原因だ。人種、出身、外見・・・互いの違いを受け入れられない為に、人は何回血を流した?)」

この組織、“壁なき世界”を結成した張本人がヴィンシスキーだった。彼はオーシア、ユークトバニア両国に潜伏したベルカ人と両国の共感者を率い、これまで15年間ずっと奮起の機会をうかがっていたらしい。

「将軍、自分はいままで仲間たちと過ごして分かりました。」
ニコライは複雑な自分の過去の事実を抱きながらも、今の自分の意思を語り始めた。
「確かに人間は相手を信じるのに大変な苦労を要します。しかし、それは我々に与えられた使命で、それを乗り越えて初めてお互いの信頼が生まれるのです。」

思い返せば、ユーク軍に入隊した時に友達は誰一人としていなかった。
そして、数年後には“セント・ヒューレット軍港”への空襲作戦に狩り出された。そこで偶然助けたのがイカロスだった。2人は戦いを経験するたびに交流を深め、今では兄弟のように生活している。

「ベルカは過去の出来事です。これからは未来を・・・」
「(・・・愚か者が、何をふざけたことを言っておる!そう甘いことばかり言っているから人間は争いをやめられないのだ!)」
すると、スキーズブラズニル内部から巨大なミサイルが射出され、凄まじい速度で上昇してゆく。
「ロケットか!?」
上を見上げるイカロス。ロケットは大量の煙を吐きながら上昇を続ける。


「(人の心は歪みすぎている。この歪みを修正する手段はただ一つ・・・・我ら人類を区分ける“壁”を取り除くことだ。この、“V3―リノヴァティオ・ロケット”で。)」
32 ゼネラル・マーシュ 2006/04/30 Sun 21:09:45
―――――第29話 『ベルカの黄金翼』


クーデター組織“壁無き世界”の世界再生兵器“リノヴァティオ・ロケット”は手出しできない高さまで上昇。反転し、軌道上で静止する。


「(今から10分後にリノヴァティオがここ、ラーズグリーズ海峡をレーザー照射する。北極の氷山を完全に粉砕し、世界を洗い流し、我々壁無き世界は世界を再建する。)」

気が付けば2つの編隊は頭合わせになり、互いに向かって進んでいた。

オリオン、オメガがヴィンシスキーの部隊と交戦状態へ突入し、各自すぐさまミサイルを放った。ミサイルに続き機銃、収束レーザーが飛び交う中、ストーンの寮機のF−22がレーザーを受け爆発した。四散した破片を急旋回して裂ける一同。


「(もう一度だけ言うぞ、私と主に来い。お前は選ばれし者だ。ベルカ騎士の血を継いでいる限り約束された未来がある。)」


イカロスは旋回を終えると、ヴィンシスキーの寮機にミサイルを放った。だが、相手は信じられないほどの急角度で旋回してミサイルを回避する。
「ちょい待て!今の旋回は反則だろう!」

敵機とヘッド・トゥ・ヘッド状態になり、金の翼が真正面から迫る。イカロスは本能的に機体をロールさせ、敵機と背中合わせにすれ違う。
だが、機体を水平に戻して敵機を探すとすぐさまミサイル警報が鳴り響く。奴は既に機体を反転させ、イカロスの後方についていた。
「大尉!援護します!」
アンドレイがすぐさまミサイルを発射して敵機を追い払った。ミサイルを回避した敵機は上昇すると、異常なまでの急角度で回転して再びこちらに向かってくる。

「ロックされた!回避します!」
逃げるアンドレイの後方にしがみ付く金の翼がミサイルを2発放つ。2本のミサイルが迫り、アンドレイは急上昇してミサイル回避を試みる。更に急降下してミサイルの追撃を振り切った。

「捕らえたぞ!喰らえ!」
イカロスのターミネーターが金色の後方から機銃を浴びせる。急旋回して逃げる敵機と追撃するイカロス。機銃は全く目標に当たらないが、イカロスは確実に敵機に食らい付いている。
「オリオン2、フォックス3!」
イカロスは高機動のQAAMを発射した。鋭い軌跡で敵機を追撃し、回避されても再び旋回して目標を追撃する高性能ミサイルである。
それでもQAAMが回避されそうだったので、イカロスは更に通常ミサイルも発射し、追い討ちを加えた。

敵兵はイカロスのQAAMと通常ミサイルを回避したのを確認すると、反撃する為に宙返りで一気にイカロスの後方に回り込む。

だが、敵兵が見たのはイカロスのターミネーターの姿ではなく、急速で接近してくるアンドレイの放ったQAAMだった。
33 ゼネラル・マーシュ 2006/04/30 Sun 21:11:17
―――――第30話 『四枚翼の知天使』


雪が降り始めた極北のラーズグリーズ海峡上空、エレノアはストーン大尉と共闘していた。

「敵機の分析が完了した、コードネームは“ソフィア”。グランダーIG社が秘密裏に開発していた“レデュース・グラヴィティ”式のコックピットを採用している。」
オーカ・ニエーバから通達された情報では、ADF-04ソフィアは急旋回、急上昇、急下降によるパイロットへの圧力を軽減し、ブラックアウトを起こす危険性を減らすことに成功しているようだ。

「気をつけろ青鳩!6時方向にソフィアだ!」
エレノアの後方にソフィアが迫る。彼女はロックされると自らの死を覚悟したが、自機と敵機の間にストーンが割り込み、相手の攻撃を妨害した。敵機の追撃から解放されたエレノアは相手と距離をとり、体勢を立て直して再び反撃へ向かう。

「クソ!振り切れない!」
ストーンのF−22ラプターはソフィアに追撃されていた。パルス・レーザーによる機銃がストーンのラプター襲う。
「主翼に被弾した!支援を!」
「今度は私の番、援護します。」
エレノアはストーンを狙っているソフィアに向かってミサイルを発射した。敵機はストーンの追撃を中断してすぐさま回避行動に移るが、背後にはエレノアの青いターミネーターが迫る。
ソフィアのパイロットは補助ブースターを全開にして急上昇、射線上から逃れようとした。だが、空中で失速したところにエレノアの放ったミサイルが飛来、直撃して四散した。

「俺の愛機によくも傷をつけてくれたな!」
体制を立て直したストーンはソフィアの後方からXMAAをロックした。ラプター下部のウェポンベイが開き、中距離ミサイルが切り離されてソフィア向かって一気に加速する。

ソフィアは180度のターンを決めてミサイルを回避。だが、回避した途端に別方向から飛来したエレノアが機銃を叩き込み、右上の主翼が剥ぎ取られた。
「翼の無い天使が羽ばたけるとでも?」
エレノアは反転し、バランスを崩しているソフィアにQAAMを2発放った。ミサイルで射抜かれた天使はやがて墜落への道を辿ることになる。
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