ACE COMBAT オリジナルSS投稿スレッド(5)
前スレッド No.86
- 23 HIROKI 2005/11/09 Wed 22:23:10
- エースコンバットのショートストーリーを書き込むスレッドです。
・短いライトなお話や、自分(のキャラ)のモノローグ、そういったものを書き込んでください。(あまりに長い話は新しい専用スレを建てたほうがいいかも)
・混乱をさけるため、既存の長編に登場するキャラクターを登用する場合は同一世界の人物がどうか等、書いておくことをお勧めします。
・別の人の話の途中で割り込むのは極力避けましょう。
皆さんで書く短編集みたいな感じで楽しんでください。
気軽に書き込んでくださいね。
( ´∀`)つ【以上、テンプレにどうぞ】
- 24 HIROKI 2005/11/18 Fri 23:19:40
- 『死のうと思っていた。今年の正月、よそから着物一反もらった。お年玉としてである。
着物の布地は麻であった。鼠色の細かい縞目が織り込まれていた。これは夏に着る着物であろう。
夏まで生きていようと思った。』
――――――太宰治
−−−−−−−−−−−−−「サギ」〜heron or deceit?〜(3)
―――2006年、2月20日。天気、吹雪。
遭難から二日目。
彼は、本日30回目の言葉をつぶやいた。
「・・・くそったれ」
コンパスで方角を確認し進んでいるため、自分の行く先に基地がある事には自身があった。
だが、まったくわからない距離は彼の心を強く蝕んでいた。
蒸留水パックと食料は凍りつき、狭い視界の端々に死神が見えるような気さえする。
数時間後の事だった。
唐突に空が晴れ、まぶしさで目がくらんだ。
彼は71回目の悪態を吐こうとして、硬直した。
目の前に、ベルカのマークをつけたパイロットスーツがいる。基地を襲ったベルカ兵の一人が、同じくベイルアウトしていたのだった。
ヘルメットバイザを下ろしていているため、表情は読めない。
膠着。次の瞬間は本能で動くしかない。今は、そんな状況だった。
腰のマテバに手を伸ばす。同時に、敵も腰の拳銃に手を伸ばす。
グリップをつかむのは同時。
次の瞬間、二人は弾かれたように木の後ろに身を隠す。彼は、敵よりやや動きが鈍い。
訓練で叩きこまれた技術と、実践で叩き上げられた技術の差は小さい。だが、絶対的でもある。
ベルカ兵が発砲。放たれた銃弾は、彼の足をかすめて後ろへ行く。だが、彼に撃ち返す余裕はない。
マテバを持つ手が震え上がっている。
状況は再び膠着し、風と雪も帰ってきた。
寒い・・・。このままでは、どちらかか両方が死ぬだけだ。
いや、経験の差からして、死ぬのは自分だろう。
なら・・・どうするか。
彼は背中の先にいる相手に問いかけた。
「なぁ、あんたはベルカに帰りたいんだろう?」
返答はない。かまうものか。相手を自分のペースに巻き込めればそれでいい。
「俺は自由オーシアに帰りたい。だから、ここはお互いに銃を退かないか?」
『自由オーシア』の単語を少し強調した。
「オーシアのヒナ鳥が!誇りあるベルカ人と交渉するつもりか!?」
答えは嘲笑の響きを連れている。
声はあまり若くない。30後半から40代前半、といった所か。
「そうかい・・・。で、お前ら敗戦国の野犬は、どうするんだ」
嘲弄の気配はやんだ。今度はピリピリと張り詰めた殺気が伝わってくる。
「貴様・・・今なんと言った!!」
「犬が人間の言葉を喋るな。虫唾が走る」
「きさま!」
激昂したベルカ兵が飛び出し、訓練生の隠れる木に向かって銃を構える。
インサイトまでコンマ数秒。だが、すでに相手にインサイトされていればどうなるか。
訓練生は、ベルカ兵よりも先に銃を構えて待っていた。吹雪で音がさえぎられ、潔白な世界が彼を隠し通していた。
パン!
乾いた銃声は一発。
正確に放たれた銃弾は、ベルカ製G-スーツの胸を貫き、反対へ抜けた。
だが、彼のM2006はシングルアクションリボルバーだ。
次弾を撃つため、ハンマーをあげなければならない。
カチャリ・・・
ハンマーが上がるのと、ベルカ兵のハンドガンの狙点が眉間へ揃うのは同時だ。
「神よ・・・!ベルカとわれに栄光を!」
破裂音は、同時に二つ。
−−−−−−−−−−−−−To Be Continued...
- 25 HIROKI 2005/12/21 Wed 23:31:11
- 『私はあの世なんて信じない。
だけど、着替えと、少しばかりの金は持っていくつもりさ。』
――――――ウディ・アレン(Woody Allen)
−−−−−−−−−−−−−「サギ」〜heron or deceit?〜(4)
いま、世界にはほとんど白しかない。
空も、木も、大地も、真っ白だ。かろうじて雲の裂け目からこぼれる光が、さらに銀の色を世界に与える。
そんな世界に例外的な色が、自然なまでに不自然にあった。
ダークグレイ。
北の地方の国は、この色をよくG-スーツに使う。もちろんヘルメットも、フライトグローブも。ブーツはブラックだが、白い大地に埋まってしまって見えない。まるで喰われているようだ。
そのダークグレイから、新たな色が生まれている。
ワインレッド。
スカーレットほどの深みはなく、バーミリオンほどの鮮やかさもない。
赤く、暗い生命の色。
ダークグレイの頭、胸、そして『右手首』からワインの染みは生まれている。
まっさらな自然のテーブルクロスは、すでに汚されてしまった。
―――2006年、2月20日。天気、快晴。
破裂音は二つ。銃声は一つだけ。
「ッ!!」
ベルカ兵は、自分の右手が吹き飛ぶのを見た。
悲鳴は出ない。出して入る暇はない。
暴発によりマガジンの弾も引火し、彼の右手首から先は赤い霧になった。
彼のオートマチック式拳銃、トカレフは暴発した。銃口から吹雪が入り、中で固まっていた。
トカレフ、しかも粗悪な地下組織の模造品では雪上の環境に耐え切れなかったのだ。
赤い自分の血と赤い炎。その向こうから自分に迫ってくる弾丸を、鍛え上げられた目ははっきり捉えた。だが、それに体は反応できない。
まっさらな自然のテーブルクロスが、弾ける音とともに赤く汚される。
―――2006年、3月4日。天気、曇り。2:50pm。
エメデュエル基地に、一人の訓練生が帰還した。
そして彼は、事件に関係した訓練生の中で唯一のパイロットになった。
認証番号P0429、第4学年、出席番号29番。
氏名、『HIROKI』
−−−−−−−−−−−−−To Be Continued...
まだ続きます。今回みじけぇ〜
- 26 HIROKI 2006/02/11 Sat 12:22:29
- 『ある人が嘘を吐くと言うことを考えてみれば、それは、
その人が神に対しては大胆であり、人間に対しては卑怯である、ということにほかならない。』
――――――フランシス=ベイコン
−−−−−−−−−−−−−「サギ」〜heron or deceit?〜(5)
私はどうやら、人の心を読めないから賭け事に弱いらしい。
<観察者>heric
2009.12/7 時刻は0:17am。第一食堂。
静まり返っていた。
HIROKIは表情を空っぽにし、自分の手札のみを見つめている。
その目に映るものが何か、私にはわからない。
「2枚チェンジ」
HIROKIがつぶやく。ディーラーの隊員があわててカードを配った。
全員のチェンジが終了する。
「全賭けだ」
「コール(同じく)」
「・・・コール」
手持ちの全てのチップを、テーブルの真ん中に押しやる。
HIROKIは、テーブルを滑ってきた2枚のカードには指一つ触れず、言い放つ。
「コール」
4人の輪の中でチップが躍る。
沈黙。破りたいと思ったわけではないが、言葉は自然に出た。
「・・・それが・・・HIROKIさんの駆け引きだったんですか」
私は、テーブル上の2枚のカードを拾わないHIROKIに聞いた。
HIROKIは3枚のカードで目元を押さえる。
そして、唇がゆがみ・・・
「もちろんウソ♪」
全員がずっこけた。
こ、こいつは・・・。忘れていた、HIROKIのこの性質を・・・。
頭が痛くなってきた。
「えっと、ちょっと待ってください。するとあなたは実に2時間以上も作り話をしてたんですか?」
「ああ、即興で」
頭痛はひどくなった。
HOROKIはあの悪童の笑みを浮かべている。
「だけど、俺が言いたい事はなんとなくわかっただろ?」
「まぁ、なんとなく・・・」
「マテバは最高だ」
私は、もう彼について驚くのをやめたいと思った。でも不可能だと実感した。
「オ、オープン・・・」
隊員たちもなんだか渋い顔をしている。
時計回りに手札を見せる。
隊員A:フラッシュ(スペードの2,3,5,クイーン,キング)
隊員B:ストレート(5〜9)
私:2ペア(8とクイーン)
HIROKI:スペードのA、ジャック、10(残り2枚が不明)
「勝ったな」
Aが呟いた。
「ロイヤルストレートフラッシュを狙ったみたいだが、あいにくキングとクイーンはこちらの手札にある。この勝負は俺の勝ちだ」
勝ち誇った顔。だが、HIROKIは笑っている。
「まだ2枚あるだろ。急ぎすぎると負けやすいぜ」
さっきから伏せられていた2枚のカードを、HIROKIは軽く裏返した。
「ハハッ!あんたの手札は絶対ブ・・・タ、じゃない」
スペードの7と9。フラッシュだ。しかもエースを含んでいる。
「勝ちぃ〜♪」
最高に悪童な笑顔がHIROKIの顔を包んでいた。
―――3日後
悪童でもかなわない存在を、hericは厨房で見かける事になる。
「・・・マジですか?」
HIROKIの顔が凍りついている。
「ああ、マジだ。賭けは御法度だからな」
悪人な笑みを浮かべた<厨房のヌシ>は言った。
「と言うわけで、この前のポーカーの利益は没収だ」
「いや、それはちょっと、うぅぅぅぅ」
「若い隊員が二人、食う飯に困ってんだが?」
「・・・わかりました。返してきますよ。もう」
「良い子だ」
HIROKIは小さく悪態をつく。
(そうか・・・。『蛇の道は蛇』っていうから・・・かなぁ?)
世界は一応、平和にある。
−−−−−−−−−−−−−End
「サギ」〜heron or deceit?〜(1)(2):
ttp://snow.freespace.jp/mitoro/acecombat/?3/a83#S
「サギ」〜heron or deceit?〜(3)〜:
ttp://snow.freespace.jp/mitoro/acecombat/?3/b86#S
---あとがき---
謎作品を再び投下。
前よりわけわからん出来になってるような気がする・・・。
それと、シリアスなガンアクションとか書きたかったけど技量的に無理っぽい・・・。
そんなこんなで変なネタが出来上がりました。
誰か笑ってくれるような人がいると良いんですが・・・。
- 27 スラマー 2006/03/01 Wed 01:14:44
- 指摘スレの回答を考えているうちに「海軍もののショートストーリーを書いてみよう」と思い立って書きました。タイトルはSubmarine Sunk。AC5のM26「混迷の海」のあとに、ケストレルを撃沈した潜水艦の話です。ユーク海軍の潜水艦だったという設定で書いています。また可能な限りセリフは英語で表現したいと思います。
「なんてこった…」
What the hell...
艦船の位置がプロットされた海図を見ながら、ドゥビーニン艦長はそう呟くことしかできなかった。
ことの始まりは10日ほど前にさかのぼる。セレス海を通過した我が国のRORSAT(レーダー海洋偵察衛星)がオーシア北部のカーウィン島を出発した小規模なタスクフォースを発見した。護衛が手薄なその艦隊を攻撃するよう、ドゥビーニン大佐率いるユークの最新鋭攻撃潜水艦セヴェロドヴィンスクに命令が下った。艦隊は一度ユークトバニア側に大きく転進したのち、オーシア寄りに戻り南下を続けた。
そして、数時間前にこのタスクフォースは我が国の艦隊と遭遇した。潜望鏡深度に浮上してESMマストを上げると、多数の無線が飛び交っていた。それらを傍受して分かったのは、ユーク艦隊の一部がオーシアに寝返ったこと、そしてオーシア艦隊が残りのユーク艦隊を短時間のうちに殲滅したということであった。さらに南から接近してきた別の艦隊とも交戦したが、見通し線の向こう側の出来事で、これについて分かることはなかった。
そして現在の状況は…ユークの脱走艦を吸収したオーシアのタスクフォースは、さらに南下を継続しているのである。現在、しんがりのオーシア駆逐艦、シエラ20をCZで捕捉している。CZは音源からおよそ30マイルごとに存在し、CZにうまく位置し続けることができれば、遠距離から安全に追尾できる。この駆逐艦は、一定の速度で直進しているところから見て、尻尾(曳航ソナー)を垂らしてタスクフォース後方を監視しているようだ。オーシアの尻尾はそれなりに良くできているので、この艦を探知するのはそう困難ではないだろう。艦隊後方から接近するのは恐らく無理だ。そこでどちらか側面から接近することになるが…ここはオーシア近海で、沿岸に近づけば沿岸警備隊にも対処しなければならない。となれば海側から回り込むしかない。艦隊がこのままの速度で南下すると仮定し、尻尾の探知範囲外ギリギリを通るとすると…針路は…
「操舵手、面舵10度、新針路2-0-3」
Rudder helmsman, right ten degrees rudder, come to new course two-zero-three.
「面舵10度、針路2-0-3、アイ」
Right ten degrees, course two-oh-three, aye.
「両舷前進全速3分の2、速度26ノット」
All ahead two-thirds, speed twenty-six knots.
「両舷前進全速3分の2、速度26ノット、アイ・サー」
All ahead two-thirds, twenty-six knots, aye, sir.
ケストレル艦隊の護衛陣、北西の角を担当するのは駆逐艦パッカードであった。艦長であるマック中佐の不満は、ユーク艦隊にはデータリンクが装備されておらず、情報交換ができないことであった。その問題を避ける(解決ではない)ため、艦隊司令官のアンダーセン大佐(注:ゲーム内のケストレル艦長)は、東側にユーク艦、西側にオーシア艦を配置した。西側としんがりのオーシア艦はデータリンクで結ばれているので、強固な防御壁を築くことができる。マックはときどき艦を旋回させ、北西から忍び寄る敵潜がいないか目を光らせていた。現在は旋回の真っ最中で、艦はやや左に傾いている。艦首が北を向いたとき、ソナー探知があった。
「ソナー探知。方位3-4-7。信号は微弱。潜水艦の可能性あり」ソナー担当下士官が報告した。こういう探知は大抵何かの雑音だが、万が一ということもある。
「舵を中立に。方位3-4-7を維持。聞き耳を立ててみよう」マックは操舵員に命じた。
「何か聞こえるか?」
「いえ、何もありません」ソナー員が答えた。
「さっきのは何だった?」
「恐らくダイレクトパスですが、いかんせん信号が弱くて…」ダイレクトパスというのは、水中で音が直進してきたもので、長くても20マイル程度である。
「きっとクジラの屁でも捉えたんだろう。転針を再開だ」中佐は命じた。
続く…
- 28 スラマー 2006/03/01 Wed 01:33:23
- …続き
「発令所、ソナー室です」
Conn, sonar.
「発令所、アイ」ドゥビーニン艦長は答えた。
Conn, aye.
「ソナー探知、方位1-7-3。水上艦の可能性あり」
Sonar contact, bearing one-seven-three. Possible surface ship.
「艦種は分かるか?」
「2軸スクリュー…速度10ノット…待って下さい。オーシアの駆逐艦と音響特性が一致しました」
「距離は?」大佐はさらに聞いた。
「まだ不明ですが、ダイレクトパスです」
「よし、このまま接近しよう。この探知をシエラ21と命名。両舷前進全速3分の1、速度10ノット」艦長は命じた。
みんな疲れているようだな、とCIC(戦闘情報センター)を見回したマック艦長は思った。カーウィン島を出発して以来、乗員たちは神経を張り詰めっぱなしだった。無理もない。ユークは劣勢とはいえ、セレス海をウロウロしている潜水艦がいないとは言い切れない。恐らく開戦時のシンファクシ級のことがトラウマにもなっているのだろう。
時計を見ると、再び回頭する時間だった。マック艦長は右旋回を命じた。
「ソナー探知。方位3-5-8。信号は微弱。潜水艦の可能性あり」当直士官が報告した。
またか、とマックは思った。全員が疑心暗鬼になりすぎて、ちょっとした雑音でもすぐに『潜水艦の可能性あり』と報告するのだ。
「さっきから二度目です。対潜ヘリを発進させて確認しては?」当直士官が言った。
カーウィン島を出発してからこのかた、1日に3度は対潜ヘリを飛ばしていた。ヘリのソノブイ(投下式ソナー)もスペアパーツも底をつきかけている。そのことがマックの頭をよぎった。
「探知消失しました」さらに報告がなされた。
「ヘリは飛ばさん。このまま回頭を続けろ」マックは命じた。
10マイル北の水中では、ドゥビーニン大佐がシエラ21ことパッカードの動きを注視していた。
「さっきの動きからすると、旋回を終えたら艦隊に合流するために増速するはずだな?」彼は副長に聞いた。
「そのはずです」
「よし、旋回が終わったら20ノットに加速して一気に防御円陣の内側に潜り込むぞ「
「アイ・アイ・サー」副長は答えた。
「やった!」20分後、ドゥビーニン艦長と副長は顔を見合わせた。シエラ21の裏をかき、うまく防御の内側に入ったのだ。海図台の中央にはセヴェロドヴィンスクがマークされており、北東にはシエラ20、北西にはシエラ21がプロットされている。
「発令所、ソナーです」
「ソナー、アイ」
「方位1-6-4にソナー探知。4軸スクリュー艦。でかいです」
よし!恐らくこいつが空母に違いない。ドゥビーニン艦長は飛び上がりたいのをこらえた。
「データが出ました。ヒューバート級7番艦、ケストレルです」
「いいぞ。このまま南下しつつ発射解析値を出そう」艦長は命じた。
続く…
- 29 スラマー 2006/03/01 Wed 02:12:18
- オーシア空母の位置を捕捉する間に、さらに探知が得られた。空母に随伴する情報船、そしてシエラ21の南で哨戒活動にあたる駆逐艦である。前者がシエラ23、後者がシエラ24と命名された。空母はシエラ22である。
「シエラ22に関するデータは?」ドゥビーニンはソナー士官に聞いた。
「方位1-7-1、距離18マイルです」
セヴェロドヴィンスクには8本の魚雷発射管がある。1番から4番までには魚雷が装填されていた。ドゥビーニンは5番から8番に潜対艦ミサイルの装填を命じた。
「5番6番7番8番、対艦ミサイル装填完了」魚雷室から報告が入った。
「5、6、7、8にシエラ22のデータを入力しろ」艦長は命じた。2分後、発射準備が完了した。
「発射」ドゥビーニンは短く命じた。
4発の対艦ミサイルは、魚雷発射管を飛び出すと水面を目指した。水中を飛び出すと、防水パッケージを突き破りミサイルが飛び出した。そしてロケットに点火し、巡航高度まで上昇してから目標に向かって飛翔した。しばらくしてから弾頭のレーダーを作動させ、最も大きい探知にロックオンして終末誘導に入った。
「11時方向にミサイル!」パッカードの見張り員がいち早く気付いた。マック艦長は毒づいた。いつの間にか円陣の内側に潜水艦が入り込み、あろうことかミサイルまで発射したのだ。
「発射地点に急行しろ!対潜ヘリ、緊急発進(スクランブル)!」中佐は叫んだ。
シエラ22ケストレルのブリッジに立っていたウォッチャー(見張り員)は警告を発したが、それが操舵室に伝わるまでに4発のミサイルが右舷に命中した。弾頭はHEAT弾で、映画のように大きな火の玉となって爆発することはない。爆発のエネルギーは内側に向かい、舷側に穴を開けた。
その間にセヴェロドヴィンスクはさらに南下していた。そして発射管を再装填し、さらに4発の対艦ミサイルを放った。さらなる対艦ミサイルの命中は、ケストレルにとって決定的なものとなった。
「ちくしょう!」対潜ヘリSH-9のコックピットから、ハリスン中尉は叫んだ。ちょうど敵潜のミサイル発射地点に到達してソノブイを投下し始めたところだった。ソノブイに何の反応も出ないのはおかしいと思い始めていた矢先、3マイルほど南からさらにミサイルが発射されたのだ。
「パパ、こちらホテル!第1のミサイル発射地点に反応なし!第2発射地点に向かう!」
「こちらホテル、了解した。現在第1地点から北に2マイルのところだ」マック中佐が答えた。
「ラジャー、アウト」
SH-9は機首を沈めて南へ向かった。そしてミサイルの発射された辺りに到着するとソノブイを投下した。
「ソナー探知、方位0-8-9。コンピューターによるとセヴェロドヴィンスクです」
Sonar contact bearing zero-eight-nine. The computer says that this is Severodvinsk.
後部のソナー員が報告した。まったくオーシアの対潜装備は素晴らしい。シンファクシの時もそうだったが、初めて遭遇する艦をちゃんと識別してくれるとは。
「吊下ソナー降ろせ」
Down dome.
ハリスンは命じた。ヘリから水中にソナーを降ろして水中の音を拾うのである。
「奴は南下してます。現在の方位は0-9-5」
It's moving south. Current bearing is zero-niner-five.
ソナー員が報告した。
「よし。ヤンキーサーチ(アクティヴソナー)だ!ぶっ叩け!」
Got it. Yankee-search! Hammer it!
「方位0-9-8、距離2500ヤード、深度325フィート」
Bearing zero-niner-eight, range two thousand five hundred yards, depth three hundred twenty-five feet.
ソナー員がデータを読み上げた。ハリスンはそのデータを魚雷に入力させ、攻撃準備を整えた。
「魚雷投下!」
Torp away!
Mk50バラクーダ対潜魚雷が落下した。
「水中に魚雷!方位3-0-2!」ソナー員が叫んだ。
Torpedo in the water! Bearing three-zero-two!
「両舷前進全速!取り舵いっぱい!針路1-0-0へ!」ドゥビーニンは反射的に叫んだ。
All ahead full! Left full rudder! Come to new course one-zero-zero!
微妙なところですが制限をオーバーしたので一旦切ります。
- 30 スラマー 2006/03/01 Wed 02:12:47
- 続きです。
ハリスンは目標を確実に撃沈するために、駆逐艦の支援を要請していた。パッカードの艦上では、士官たちがデータリンクで得られたデータをアスロック対潜ミサイルに入力した。そしてランチャーをハリスンが投下した発煙弾の方向に向けて発射した。
「ノイズメーカー(囮)射出!」
Shoot off a noisemaker!
ドゥビーニンは命じた。だがMk50はノイズメーカーの作り出す泡には惑わされず、泡の中心を突き抜けて真っ直ぐ目標を目指した。そして艦尾から50ヤードのところで磁気信管が作動して爆発した。
「方位0-9-0で爆発音。魚雷が命中した模様。ただし圧壊音は聞こえません」ソナー員が報告した。ハリスンはサイクリック・スティックの無線のスイッチを押した。
「ホテルよりパパ、魚雷は目標に命中し損傷を与えた模様だが撃沈には至っていない。オーヴァー」
「こちらパパ。アスロックがそろそろ着水する。引き続き音を聴け」
「テンフォー(了解)。ホテル、アウト(以上)」
2発のアスロック対潜ミサイルは、目標地点まで飛翔したところでブースターを切り離し、尾部からパラシュートを展開して着水した。Mk46は予めパッカードの士官にプログラムされた通りに航行し、セヴェロドヴィンスクの方を向いたところで弾頭部のソナーを作動させた。
「魚雷がアクティヴソナーの使用を開始!目標を捉えたと思います!」
Fishes start pinging! I think they've got it!
よーし、とハリスンは思った。行け、行け…
All right. C'mon, c'mon...
2発のMk46はほぼ同時に爆発し、セヴェロドヴィンスクにとどめを刺した。艦体は圧壊し、残骸はセレス海の底に沈んだ。そしてアスロックの作った水柱は、あちこちで歓声を生んだ。
- 31 スラマー 2006/03/02 Thu 13:16:17
- 遅くなりましたが、あとがきのようなものを…
書きながら実感したのは、自分の文章の拙さと、感情表現が難しいということですね。そして全てのセリフを英語で表現するのには結局挫折しました。
・技術的なことについて
オーシアの駆逐艦はゲーム画面ではカサール級です。ですが「パッカード」はアスロックを発射しています(カサールはアスロックではなく固定式の魚雷発射管のみ。書き終えてから気付いた)。スプルーアンス級かキッド級だと思ってください。ちなみにパッカードの名前の由来は「セント・ヒューレット港」からパソコンの「ヒューレット・パッカード」を連想したのが理由だったりします。
セヴェロドヴィンスクはロシア連邦が開発中(と噂される)第四世代の原子力攻撃潜水艦で、西側のロスアンジェルス(688)級とほぼ同等の性能だと言われています。