インタビュー・ウィズ・エース
No.113
- 1 飛龍瑞鶴 2006/06/07 Wed 21:09:52
- オーシア海軍第110戦術飛行隊一番機機長 シンヤ・ササキ
通称:アテナの寵愛を受けた男
戦後も軍に残り、地道に任務に励んでいる
また、110戦術飛行隊隊長のトモミ・シノツカと結婚し、もう直ぐ二児の父になる
「さて、何処から話しましょうか」
ベンチに腰掛けた彼は、私に尋ねた。
ココは、近くに海がある病院の屋上である。
彼の妻は分娩室入っている。
私はインタビューを断ろうとしたのだが、彼が“上で話ませんか?潮風が気持ちいですよ”と言うので、私は彼にカメラを向けた。
「左のエンジンに鳥を吸い込んだ事から全てが始まりました」
彼は思い出すように、空を眺めた。消えかけた一筋の飛行機雲が空に曳かれていた。
「その後、帰還中に敵機に襲われアトールを撃たれましてね。交わしたんですけど、破片を喰らってしまって、もう終わりだなと直感的に思いました」
瞑目した彼の手が、微かに震えていた。
「その時ですね。彼が現れたのは」
国際線の旅客機だろうか?甲高い音が他の音をかき消す。
「敵機は殺虫剤をかけられた虫の様にクルクル回って落ちていきました」
彼の声は弾んで来る。
「彼らの翼が太陽を反射してキラキラ輝いていました。アレは本当に綺麗でした」
- 2 飛龍瑞鶴 2006/06/07 Wed 21:10:51
- エースゼロのエースに対するインタビューを元ネタにした創作です。
- 3 飛龍瑞鶴 2006/06/09 Fri 19:29:44
- 彼は“話をこれで終わりにしたい”と身振りで示す。
私はそれを無視して、インタビューを続行する。
「わかりました。話しましょう」
彼は軽く両手を挙げた。
「確かに公式記録に載っていますから、隠す事でも無いのですが、当事者としては恥ずかしくてね」
彼は恥ずかしそうに手を振った。
「ガルムの二機と編隊を組んで、最寄の基地へ降りる事になりました」
彼はベンチに座り直した。そして、覚悟を決めた様だ。
「機体の後席には妻、当時は隊長が乗っていたのはご存知ですね」
私は彼の問いに、頷いて答えた。
「私はこう言いました。“隊長、戦争が終わったらつきあって下さい”って」
言葉として発音するのも恥ずかしかったのだろう。最後の方の言葉は掠れていた。
「何でそんな事を言ったか?」
私の問いに、彼は腕を組んだ。
「その時は、言わなきゃいけないって思ったんです」
彼は私を真直ぐ見据えて言う。その瞳は澄んでいて、酷く綺麗だった。
「妻からの返事?それは知っているでしょ?」
彼の顔は真っ赤だった。私は懐より小型のレコーダーを取り出す。
「それは・・・まさか・・・」
彼の顔が真っ青になる。忙しいお方だ。
私は、彼の問いに頷いて答えた。
「解りました。言いますよ」
抵抗を諦めたらしく、彼は一度深呼吸をした。
「妻はこう言いました。“だ〜め、私はそれだけじゃ満足しないもん。・・・私と、結婚してくれる?”」
彼は、耳まで赤くなり俯いた。
「私の答え?聞くまでも無いでしょう。イエスです。だから、私はここに居る」
彼は両手を広げた。
「“見せ付けてくれるな。お二人さん”口笛と共にピクシーの声が無線から聞こえてきました。私たちは慌てて計器を確認しました。無線はOFFに成っていたんですが、被弾の影響で無線が入りっぱなしになってしまった様です」
彼は乾いた笑いを漏らした。
「サイファーは軽くバンクを振っただけでしたが、作戦区域中の友軍機から祝福とやっかみの無線が流れてきました。言葉の洪水とはあの事を指すと思います」
彼は昔を懐かしむ顔をしていた。
「ササキさん。見に行って下さい」
看護婦が屋上に現れた。そう、彼は父になったのだ。
「それでは、取材は又後日と言う事で」
私は彼にそう言い。子供と妻の元へ行く彼を見送った。
先ほどまでササキ氏が座っていたベンチに座り、空を眺める。
空は何処までも青く澄んでいた。
インタビュー・ウィズ・エース 終
- 4 ゼネラル・マーシュ 2006/06/16 Fri 20:58:58
- (感想スレッド4参照)
『インタビュー・ウィズ・エース』引き継ぎます。
――――――――『カラスの記憶』
ウスティオ空軍 第6航空師団第所属 4飛行小隊「クロウ隊」1番機
”ウェルチ・マクナイト大尉”
同じくクロウ隊2番機
”テイラー・デイヴィス中尉”
私、”ブレッド・トンプソン”は戦時中『鬼神』と呼ばれた傭兵、”サイファー”の奇跡を追い続けている。
そして、1度は中断していたが、鬼神を知る者がまだ居ると聞いて私はウスティオに駆けつけた。
ウスティオの軽食店”レダ”で待っていたのがこの2人。テイラーとウェルチだ。テーブルの上にはサンドイッチとポテフが置かれており、食べている最中みたいだ。
待ち合わせの時間にはまだ早かったようだ。
ウェルチ:「・・・”円卓の鬼神”・・・。今もあの勢いは記憶に残っているな。」
テイラー:「そうだな。噂では何度も聞いていたが、実際に出会ったのはフランブルクだったか?」
ウェルチ:「”タウブルク”だ。」
テイラー:「んそうそう、”ベルカのレーザー兵器”エクスキャリバー”を叩き潰す任務だった。」
ウェルチ:「そこで初めて彼ら、”ガルム隊”をこの目で見た。」
テイラー:「サイファーとピクシー。2機のF−15が俺たちの後ろからついて来ていた。他にもオーシアや他の連合軍も参戦していたな。」
ウェルチ:「俺とテイラー、3番機の”PJ”はいつも通り三角編隊で飛行していて・・・」
テイラー:「いつも通りPJをからかっていた時だ。突然青いレーザーが飛んできた。」
ウェルチ:「”エクスキャリバー”だ。」
テイラー:「”エクスキャリバー”だ。」
ウェルチ:「後ろに居たタンカーが一瞬で粉砕された。俺たちはすぐに散開し、単独でエクスキャリバーを目指した。」
テイラー:「エクスキャリバーの攻撃をかいくぐり、たどり着いた時には俺たちクロウ隊とウスティオのサークル隊が2〜3機。そしてガルムだけが残っていた。」
ウェルチ:「たどり着いたのは良かったが、エクスキャリバーの周囲に防御用の対空レーザーがあり、俺たちは全然近づくことが出来なかった。」
テイラー:「ああ、攻撃を避けるだけで手一杯だった。」
ウェルチ:「お前は遠くで逃げ回っていただけだろ?」
テイラー:「サイファーとピクシーは対空防御を潜り抜け、簡単にエクスキャリバーを”抜いた”。流石ガルムって感じだったな。」
軽食店レダのウェイトレスが更に追加のレモネードを運んできた。
オーシア名物のビーフハンバーガーもある。
- 5 アドミラル・マーシュ 2006/06/18 Sun 23:23:00
- 私はコーヒーのエルジアン・ブレンドを。2人はビーフバーガーを食べ終えると、再び語りだした。
ウェルチ:「エクスキャリバー破壊後、俺たちクロウ隊は”あの場所”へと派遣された。」
テイラー:「B7R。”円卓”だ。制空権を巡って各国のエースが飛び交う場所。そして、そこにおける交戦規定は”生き残れ”。ただそれだけだ。」
店内はクーラーが効いている筈だが、だんだんと暑くなってきた。
テイラー:「俺とウェルチ、PJは集団戦法でベルカ軍機と交戦していた。だが、相手は物凄い数で、腕も抜群だ。味方の連合軍は次々と落とされ、俺たちの全体兵力は4割以下になっていた。」
ウェルチ:「生き残れてもこの作戦は失敗するだろう。そう考えていた時だった。あの2人がやってきたのは。」
テイラー:「噂のバケモノ傭兵コンビ。”ガルム隊”が太陽をバックに急降下してきた。」
ウェルチ:「俺らはガルムと残存部隊と協力してベルカ軍機を落とし、戦線を押し返した。」
テイラー:「たった2機で戦況を覆すとはな・・・まさにバケモノだ。」
店のウェイトレスがベルカン・ビーフステーキを2人前運んでくる。
先程ハンバーガーを食べていたはずだが・・・・
- 6 アドミラル・マーシュ 2006/06/21 Wed 21:38:29
- 運ばれてきたベルカ産ビーフステーキがジューシーな音を立てている。
少し暑く感じるのはこのステーキのせいだろうか?
テイラー:「円卓を陥落させ、俺たちはとある市街地を爆撃する連合軍爆撃グループの援護の任務に就いた。 前回の円卓からPJとピクシーの痴話喧嘩が出ていたが、この作戦で2人の意見は完全に対極となっていたな。」
ウェルチ:「”受け入れろ小僧、これが戦争だ” だったか? PJは若さゆえに”理想”で戦っていた。まだ戦争の悲惨さを知らなかったんだな。」
2人は大ジョッキのビールを飲むと、少し息を抜いた。
ウェルチ:「そして、俺たちはガルム隊と一緒にバルトライヒ山脈のベルか軍攻撃に向かった。」
テイラー:「だが、突然管制機イーグルアイから連絡が入り、核爆弾を搭載したベルカ爆撃機を迎撃しろと言われた。」
ウェルチ:「今回は何かがおかしかった。 いつも並んでいたガルムの2人が離れていた飛行していたんだ。そして・・・」
ウェルチ:「爆撃機の核が爆発した。」
テイラー:「ベルカの核が爆発した。」
2人は疑惑の目で互いの目を見合わせた。 実際、どちらが正しいか分からない。
テイラー:「その爆発の間に・・・ピクシーは消えていた。」
2人はステーキを完食し、ビールも飲み干した。
恐らくデザートが出るだろう。 しかし、”軽食店”でステーキを販売しているのも珍しい。 何か特別な理由があるのだろう。
ウェルチ:「この任務を最後に、PJはクロウ隊を去った。」
テイラー:「あいつは新たに”ガルム2”としてサイファーの相棒となった。寂しいようで誇らしかったな。」
- 7 アドミラル・マーシュ 2006/06/26 Mon 21:43:58
- ウェルチ:「表向きにはこれで”ベルカ戦争”は幕を閉じた。」
テイラー:「だが、あんたも知っている通り、まだ話は終わっていない。」
彼らはまだ語る。私も少し前までは知らなかった”ベルカ戦争”の裏。
彼らも目撃し、体験した貴重な生存者の一部だ。クーデター組織、”国境無き世界”がベルカ地方の奥にある都市エンゼルブルク背後にある”アヴァロンダム”を拠点にし、世界を作り変える大規模な革命を起こした出来事。
2人はフルーツ・ポンチを口に運びながら話を続けた。
テイラー:「俺たちゃクロウ隊は半年後、平和条約を結んだ村、”ルーメン”の上空で哨戒飛行をしていた。特に問題も無く、お家に帰ろうとしたその時、レーダーに妙な反応があった。」
ウェルチ:「レーダーを見る間でもなかった。肉眼でもはっきりと見える大きさの航空機が迫っていた。名前は”XB−0”。通称”くろがねの巨鳥”。」
テイラー:「俺たちは近くの味方と協力して撃墜にはいたらなくとも、フレスベルグを追い払うことに成功した。しかし、とんでもないガンシップだったな・・・」
ウェルチ:「確かにな・・・まさに空中要塞そのものだ。XB−0外部には機関砲、対空対地ミサイル。地上の味方や戦闘機を次々となぎ払い、結局ルーメンも破壊された。」
テイラーは食事を終え、タバコを吸い始めている。
真昼とは言え、レダは大通りに面していないのでなかなか静かだ。迎えにある花屋の周辺を4匹程度の蝶が滞空し、客と店員が雑談で盛り上がっているようだ。
私の記録と彼らの証言を照らし合わせると、彼らがフレスベルグを追い払った直後に、フレスベルグは”ヴァレー空軍基地”を攻撃しとようだ。そして、”円卓の鬼神”が巨鳥に止めをさしたのだろう。
ウェルチ:「俺たちの最後の闘いは”国境無き世界”の拠点、”アヴァロンダム”の攻略だった。」
テイラー:「峡谷内部を低空で飛行し、ダムまで敵の対空放火を潜り抜けて最深部までたどり着いたときには、既にガルムを除く先遣隊は壊滅していたんだよ。」
ウェルチ:「だが、ガルム隊のサイファー。あいつがダムの内部にあるV2ミサイルの発射を阻止すべく危険な局地飛行をしていたから、俺たちは上空で敵をサイファーから引き離すように戦った。」
彼ら2人は知らないようだ。
この後、サイファーが”最後の敵”と対決したことを。
テイラー:「多くの仲間を失ったが、サイファーは最後まで生き残り、任務を果たした。」
ウェルチ:「俺たちはヴァレーであいつとPJの帰りを待っていた。だが、戻って来たのはサイファー1機だけだった。」
彼らはまだどこかでPJが生きていると信じている。
そして、期待はしていないが、サイファーやピクシーとの再会も心のどこかで望んでいるのかもしれない。
”インタビュー・ウィズ・エース” 第2章「カラスの記憶」 完
- 8 マーシュ 2007/05/20 Sun 11:02:14 DXjf..kn3.bD05
- INTERVIWE WITH ACES
CHAPTER V ”PRESIDENT AND COMMANDER”
インタヴュー・ウィズ・エース チャプターV 『プレジデント・アンド・コマンダー』
――――――――――Sequence 1 Indepenence Day シークエンス 1 『独立記念日』
―――――Location:Ustio/Delectus 1993/05/12 ウスティオ・ディレクタス 1993年5月12日
ここはウスティオ共和国。ベルカ公国の南東に位置する小国家だ。今から5年前の1988年5月12日に、ベルカ連邦法の改正によって分離。国家としての独立を果たした。首都はディレクタスで、ベルカ連邦時代は優れた技術力と工業力を持ち、ベルカ公国の発展の中核を成した場所だ。それは独立した今でも変わらず、かなり裕福な国として世界に知られている。裕福な小国という特徴が影響してか、国民の税金も周辺国と比べればかなり低い。田舎と言われれば田舎だが、それなりに暮らしやすい土地であった。
独立記念日の今日。首都はウスティオ陸軍がパレードを行い、上空では空軍が展示飛行を行っていた。独立から5年という短期にも関わらず、この国の軍隊は旧ベルカ軍の装備などは一切存在せず、完全純国産の代物ばかりだ。そう言うとここは軍事主義的な国だと感じるかもしれないが、実のところこのあたりに基地や軍事施設などは一切無い。国民の生活環境を優先しているため、首都には基本的に交通機関や外交に関する施設がありふれる状態だ。
っと、忘れていた。
俺の名は「パトリック・ジェイムズ・ベケット」通称PJだ。今、バイクでオーシア旅行を終えたところだ。今日からは世界旅行になる。その第一歩として、隣国のウスティオにやってきた。
道中聞いた話によるとウスティオが暮らしやすい場所だというのは、大統領がすごく民主かつ理想主義者だからだそうだ。正直国民が不安になることがあるくらい暮らしやすい国を作っているということは、指導者はかなりすごい人物なんだろうな。
いきなり大統領府にお邪魔して話を聞けるとは思えないけど、もしかしたら1パーセントでも可能性があるかもしれない。大統領府は最低限の警備があるものの、基本的には自由公開されているので、大統領に会って話をするぐらいは不可能ではないかもしれない。
- 9 マーシュ 2007/05/20 Sun 12:24:49 DXjf..kn3.bD05
- ――――――――――Sequence 2 President and Commander シークエンス 2 『指揮官と大統領』
まさか、本当に話を聞けるとは(笑
案外あっさりと受け入れてくれた。
―――――Location:Ustio/Delectus 1993/05/12 ウスティオ・ディレクタス 大統領官邸 1993年5月12
赤いカーペット。高そうな壷と花。高価なシャンデリア。なんだか1流のホテルみたいだ。PJは秘書に案内された客間のソファに腰を下ろし、大統領がやってくるのを待った。 部屋にある暖炉の上には奇妙な模型が飾られている。PJは立ち上がり、その模型を近くで観察してみた。どうやらこれは飛行機。戦闘機のようだ。
「―――それは私が第2次オーシア大戦時に使用した戦闘機。XF5の模型だ」
その声につられてPJが背後を向くと、そこにはスーツを着た大柄の男性がいた。
「あなたが、ウスティオ共和国大統領ですね?」
奇妙な形をした戦闘機の模型を元の場所に戻すPJ。
「いかにも。 私が初代ウスティオ共和国大統領 ”イーサン・クーリッジ” だ。とはいっても、肩書きにしか過ぎない。まだ私は自分の夢を1割程度して実現していない」
「夢ですか?」
「どうしたら世界は平和になるか。 どうしたら人々は幸せになれるか。 私は学生時代、世の中の常識を知らずにオーシアの大統領官邸に殴りこんだことがある。軍隊を解散させてもらうためにね。そう、今の君のように」
にっこりと微笑むクーリッジ大統領。PJは参ったように頭をかいていた。 しかし、クーリッジは昔の自分、今のPJのように積極的な人物が好みであり、突如現れたPJと対談する時間を設けた理由もここにある。
「それで、君は何を話したいんだい? 政治の話だけは無いと思うけど、それを望むのなら喜んで」
「いえ。 自分はクーリッジ大統領がかつて、『伝説のエースパイロット』や『貧しい市民に手を差し伸べる正義の味方』などという評判聞いてここにやってきました。 この国の暮らしやすさからすると、あなたは国民に尽くしている神のような人物だと」
- 10 マーシュ 2007/05/20 Sun 16:19:01 DXjf..kn3.bD05
- ―――――――――――Sequence 3 Interviwe with Ace 『インタヴュー ウィズ エース』
The Republic of Ustio First President Ethan Coolidge Nickname:President and Commander
ウスティオ共和国 初代大統領 イーサン・クーリッジ 通称:指揮官と大統領
前の世界大戦。第2次オーシア戦争に参加し、終戦時の階級は大佐。その後は一時軍から姿を消すが、再び軍へと復帰。戦後のベルカ現地で平和活動を行う駐留軍の司令官に任命され、人道支援に尽くす。やがて彼はその努力が認められたのか、険悪な関係にあったベルカ市民とも和解。数年後には軍もろとも彼はベルカのディレクタスを後にするが、またその数年後にはウスティオのヴァレーに住む女性と運命の出会いを果たし結婚。ベルカに移住する。後にディレクタスがウスティオとして独立する際には周囲に押される形で大統領となった。
「―――自分はクーリッジ大統領がかつて、『伝説のエースパイロット』や『貧しい市民に手を差し伸べる正義の味方』などという評判聞いてここにやってきました。 この国の暮らしやすさからすると、あなたは国民に尽くしている神のような人物だと」
「ふぅむ。そうか。 私が神とか正義の味方というのはともかく、前の大戦でエースパイロットだったのは事実だ。 教科書を見れば載っている『第2次オーシア戦争』に私はオーシア軍として19歳で参加した。軍に入隊したのは18歳のときで、1年間はエンジニアとして活動していた。飛行機がすきでね」
イーサンは先ほどPJが興味を示していた「奇妙な飛行機」の模型を手に持ち、そのままソファに腰を下ろした。イーサンはPJにも腰をかけて楽にするように呼びかけ、その直後にイーサンの秘書がレモネードとチョコチップきクッキーを運んできた。
「変わった飛行機ですが、それは実在した機体なのですか?」
「うむ。 これは私がオーシア陸軍の飛行隊に入隊し、初めて手に触れた機体。 XF5U- ”フライング・パンケーキ”だ。見てのとおり、上から眺めるとパンケーキ(ホットケーキ)に見えるだろう?」
この飛行機には翼がない。丸いホットケーキのようなボディそのものが翼となっているのだ。パンケーキというか、卓球に使うラケットやUFOのような形をしている。
「開戦当初私はP-38.ライトニングという双発の機体に乗っていたが、軍の技術部が「パンケーキの実践データが必要」と言い出したので、もっともパンケーキに詳しいパイロットである私が実践テストを任されるこっとなった。正直映画にでも出てくる宇宙人の円盤みたいなパンケーキで戦うのは非現実的だが、かくかくしかじかで私はこのパンケーキでエースの仲間入りを果たした」
イーサンは古い写真を取り出し、それをPJに見せた。ほかに彼と同じぐらいの男性が二人写っている。そして、3名の背後にはペイント途中のフライング・パンケーキが堂々と写っていた。
- 11 マーシュ 2007/05/20 Sun 17:16:05 DXjf..kn3.bD05
- ―――――――――――Sequence 4 Flying Pancake! 『空飛ぶホットケーキ!』
「この模型と写真では色が違うようですね」
パトリック・ジェイムズ・ベケットは写真とクッキーとともに差し出されたカステラと見比べるようにそう言った。すると、イーサン・クーリッジは狙ったかのように色に関しての答えを暴露した。
「リアリティを出すためにクリームとキツネ色に染めているのだよ」
一瞬PJは噴出しそうになった。 形がこれなのに、クリーム色に染めたりしたら本当にパンケーキそのものになるからだ。最初は冗談かと思っていたが、クリーム色は案外目立たず、パンケーキの焦げ目を再現したキツネ色も特に目立つというわけではなかったそうだ。 しかし、敵戦闘機との空中戦ではかなり大量の敵機に狙われたらしい。
「それで、戦闘はどんな感じだったのですか?」
イーサンはレモネードを口に運び、その後でゆっくりグラスをテーブルに置いた。
「パンケーキはかなりクセのある扱いにくい機体だった。だが、機体の体積が通常の機体より遥かに大きいためかとても安定した飛行機だった。特に低空、低速での安定性は桁外れに高く、地上攻撃もこなすことが出来た」
模型では6問の12ミリのマシンガンが搭載されているだけだが、ほかにも爆弾やロケット弾。57ミリキャノン砲などを搭載できたようだ。また、イーサンは撃墜王(エース・パイロット)であるが、同時に「戦車撃破王」でもある。パンケーキは戦闘機としても申し分ない能力を保持し、攻撃機としても優秀であったため、それに乗っていたイーサンは対地攻撃においてすさまじい戦績を残したらしい。
「イーサン・クーリッジ 〜ベルカ陸軍最大の敵〜 ―――これは当時発行されていたベルカン・パワーの記事だ。実際には私よりも実力の高いエースは数十名いたが、やはり「 ”空飛ぶパンケーキ” にやられた」というのがかなりの屈辱だったのだろうな」
彼の戦績は戦闘機が30機以上。爆撃機が7機。 当時のエースとしてはとても平凡なものだ。しかし、イーサンはベルか陸軍の戦車を519台破壊し、装甲車やトラック・ジープなどを1000両以上粉砕。見てのとおりベルカ陸軍に多大な損害を与えていたのだ。
- 12 マーシュ 2007/06/08 Fri 21:32:18 DXjf..kn3.bD05
- ――――――――――― Sequence 5 The Black Star 『シュヴァルツ・シュテルン』
イーサンは戦争中盤まではパンケーキで戦った。しかし、彼は旧ベルカ領のディレクタス上空で「ある特殊部隊」と遭遇。その部隊により友軍部隊は壊滅的打撃を受け、イーサンもパンケーキを失う羽目になったそうだ。
「―――その部隊はベルカ空軍のエースたちが集う特殊部隊 ”シュヴァルツ・シュテルン” という部隊だ。真っ白なフォッケ・ウルフ190に書かれた「黒い星」は今でも覚えている」
黒星飛行隊。シュバルツ・シュテルンは歴史の教科書にも載っている。パトリックも数年前学校で習ったばかりだ。 その部隊は人類史上初、ジェット戦闘機Me262 ”シュヴァルベ” で編成された部隊だ。もっとも、ジェット戦闘機の本格的デビューは「円卓」における大空中戦が有名である。しかし、シュヴァルツ・シュテルンは実践テストを兼ねてその数週間前に実戦投入していたのだ。
「パンケーキを失った私に新たに支給されたのは、デ・ハヴィラント・モスキートという木製の大型戦闘攻撃機だ。モスキートでの初陣は味方機甲部隊の上空支援だったが、モスキートはパンケーキに劣らぬ火力を持ち合わせていた。4門の機銃と4門の20ミリキャノン。そして爆弾ロケット砲と57ミリキャノンを装備したこいつは戦車の撃破も可能で、あらゆる任務に対応できる万能機だった」
イーサンは次の任務でもモスキートで出撃した。任務は連合軍の進路を阻むベルカの軍事要塞を爆撃する爆撃機部隊の護衛だった。200機からなる爆撃機と80機の護衛機は難なく任務を達成できると思っていた。 しかし、イーサンらはそこでジェット戦闘機を駆るシュヴァルツ・シュテルンと遭遇したと言うのだ。
- 13 マーシュ 2007/06/08 Fri 23:12:17 DXjf..kn3.bD05
- ――――――――――― Sequence 6 Mosquito 『蚊』
―――――1945 Schayne Plains (48years ago) 1945年未明 シェーン平原 (48年前)
「―――タイタン1から各機、まもなく敵軍事要塞が見える。敵戦闘機の迎撃に備え、密集形態をとれ」
200機からなるB-17フライング・フォートレス爆撃機は、80機の戦闘機とともにシェーン平原にあるベルカの要塞上空へと襲来した。このシェーン要塞には滑走路と多数の航空部隊が配備されており、ある程度の抵抗が予想されるので、イーサンらはその先導についていた。
「こちらレイピア7! 1時方向からベルカ軍戦闘機!メッサーシュミットBf109が20機! 11時方向からもフォッケウルフFw190が20機!」
「来たな!オメガチーム、迎撃に行くぞ! レイピアは爆撃機の護衛を!」
オーシア陸軍飛行隊のP-51部隊は前へと出て、敵機が爆撃機に手を出す前に撃墜を狙った。一方でイーサンらのモスキート部隊はそのままコースを維持して先導を続けた。 友軍のP-51とベルカの航空隊が交戦状態に入るが、その空域から数機の敵機が抜け出してて爆撃機部隊へと迫る。
「クーリッジ!ベルカの連中が抜けてきやがったぞ!」
「らしいな! 行くぞ!」
イーサンらの隊は友軍の部隊をすり抜けてきたベルカ軍機の迎撃に向かう。爆撃機は自衛のために機体のいくつかの場所に機銃などを装備しているが、それでも防御には限界がある。護衛の無い爆撃機は敵戦闘機のよいカモだ。
イーサンは正面から迫るフォッケウルフに機関砲を浴びせて粉々に粉砕し、他の仲間もそれに続いた。撃ちもらした敵機と交差する際に多数の銃弾が被弾したが、モスキートは木製ゆえの頑丈さが魅力だ。多少の被弾では飛行士支障はないし、修理も簡単だ。
「こちらタイタン2! 君らが撃ち漏らしたベルカ軍機が我々を攻撃している! 支給支援を乞う!」
フォッケウルフが友軍のB-17にまとわり付いている。友軍爆撃機を狙う敵機は5機。1機は爆撃機の機銃が撃ち落したが残りの4機に苦戦している。
「メイデイメイデイメイデイ! こちらタイタン11!エンジン1基停止!早く敵機を追い払ってくれ!」
「イーグル1了解した。今すぐいく!」
イーサンは3機のウィングマンと共に爆撃機部隊の元へと舞い戻った。味方爆撃機の銃弾に注意しつつ、自分らが爆撃機に攻撃を当てないように慎重に敵機を狙う。
- 14 マーシュ 2007/06/17 Sun 10:28:47 DXjf..kn3.bD05
- ―――――――――― Sequence 7 Schwalbe 『ツバメ』
―――――1945 Schayne Plains (48years ago) 1945年未明 シェーン平原 (48年前)
「あのフォッケ・ウルフをやるぞ。イーグル4援護しろ」
「了解イーグル3」
いまだにベルカ軍機は爆撃機へしぶとく攻撃を続けている。爆撃機のうち1機はエンジンから火を噴き、1機は機体を穴だらけにされていた。
「味方への流れ弾に気をつけろ! イーグル1から各機、敵の応援がやってくる前にこいつらを始末するぞ!」
イーサンはタイタン11を攻撃しているフォッケウルフに狙いを定める。爆撃機に機銃掃射していたフォッケウルフもイーサンのモスキートに感づき、爆撃機への攻撃をやめてこちらに機首を向けた。これはいい状況だ。相手が正面から挑んでくるのであれば、モスキートの高火力で圧倒できるはずだ。 だが、イーサンのモスキートが1発も撃たないうちに敵機は煙を吐いて急降下を始めた。
「へっ!爆撃機をなめるな! こちらタルタロス7! fw1901機撃墜したぜ!」
爆撃機の機銃が独自に敵機を落としたので、イーサンは別の敵機を探す。イーグル3と4が1機のfw190を追撃し、イーグル2は爆撃機部隊から少々はなれた空域で敵機と空中で円を描いている。イーサンは数的有利を確立する必要のあるイーグル2のほうへ向かった。
「ヤゥホゥ! こちらイーグル4!撃墜だ! そっちの助太刀に行くぜ!」
「って!イーグル2何やっている! 撃たれているぞ!回避しろ!」
モスキートは機動性に優れる爆撃機で、戦闘機としても運用されるが所詮は爆撃機。ベルカを代表するフォッケウルフと1対1で格闘戦を行えば勝ち目は高くない。
「くそ!エンジンをやられた! 脱出する!」
「イーグル2がフォッケウルフに食われた」
「イーグル1から各機、仕返しだ!」
3機のモスキートはイーグル2との格闘戦で速度の落ちたfw190を難なく捕らえ、撃墜した。 それとほぼ同時に他の友軍機もメッサーシュミットの排除を完了した。
「こちらタイタン1、制空権を確保出来たか?」
「そのようだな。 こちらタルタロス1、全爆撃機へ。爆弾倉を開け。繰り返す、爆弾倉を開け」
「待て!レーダーに反応! イーグル4から各機へ!10機の航空機がものすごい速度でこっちに向かって来る!」
「見えた!あれだ! 恐ろしく早いぞ!」