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ACE COMBAT 5 RESURRECTION OF RAZGRIZ Final Episode

No.112
1 ゼネラル・マーシュ 2006/05/04 Thu 23:19:50
エースコンバット5 リザレクション・オブ・ラーズグリーズ 最終章

CONTENTS Episode1
1:クルイーク要塞攻防戦
2:姫君の青い鳩T
3:反撃への離陸
4:名前負け
5:精鋭の戦闘
6:消えた足跡
7:フランブルク強襲
8:翼の為に
9:ベルカの陰謀

CONTENTS Episode2
10:共鳴する声
11:混迷の海
12:紅のセレス海
13:ジャーニー・ホーム
14:ACES
15:天空からの落雷
16:栄光を目指して
17:暁の空
18:降り注ぐ爆弾
19:黒い翼の天使
20:墜落天使

CONTENTS Episode3
21:姫君の青い鳩U
22:終末への序曲
23:極北の空へ
24:赤い翼
25:太古の船
26:ラーズグリーズの復活
27:ラーズグリーズの死神と英雄
28:リノヴァティオ
29:ベルカの黄金翼
30:四枚翼の知天使

CONTENTS Final Episode
31:運命の戦い
32:15年前のデジャヴュ
33:未来を紡ぐ翼
34:THE UNSUNG WAR
35:THE UNSUNG WARU
36:知天使の没落
37:鳩の帰還
38:姫君の青い鳩V
39:リザレクション・オブ・ザ・ラーズグリーズ
40:エンディング

3レスめから本編に。 お暇つぶしにどうぞ。
2 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 00:06:43
これまでのあらすじ

ユークトバニア空軍501飛行隊所属オリオン中隊指揮官のニコライ中佐はクルイーク要塞から支援要請を受けてスクランブル発進した。
しかし、援護に駆けつけたオリオン中隊が目の当たりにしたのは「ラーズグリーズの悪魔」だった。彼らユークトバニアの超度級潜水艦を2隻沈めたオーシアのエース、ラーズグリーズはオリオン中隊を壊滅状態に追い込み、オリオン2のイカロスを除き全機が撃墜された。

ニコライはクルイーク要塞から撤退するユーク陸軍のコリンキィ大尉の部隊に拾われて何とかユークの都市、フランブルクへたどり着いた。
オリオン部隊は703飛行隊に吸収され、パビエータ半島へ向かうこととなる。しかし、オーシアの爆撃機が迫っていると聞きすぐさま発進するオリオン部隊。現地の味方と協力して何とか爆撃機を追い払ったニコライ達だが、そこにオーシア海軍の飛行中隊が駆けつける。
「マーカス・スノー大尉」率いる飛行中隊を何とか追い払い、基地に戻ったとき、この先頭で生き残ったモルニヤ部隊のパイロット達と意気投合する。
モルニヤ所属のアンドレイは知的で、この戦争は15年前の敗戦国ベルカの陰謀だという事実を突き止める。その後、彼らはオリオン部隊配属となるが、その夜になると所属不明の軍団がフランブルクに奇襲を開始。ニコライ達は味方やコリンキィ大尉の力を借りて何とかフランブルクから脱出する。

当初の予定通りパビエータ半島へ向かうが、所属不明の航空機に襲われる。しかし、そんな彼らの元にユークの航空機が駆けつける。ニコライ達はその部隊に導かれて空母「アドミラル・ツァネフ」へと降り立つ。そこで彼らはラーズグリーズに撃墜されたエレノアと出会う。

セレス海でユーク艦隊とオーシア艦隊が遭遇する。しかも、オーシア艦隊の空母「ケストレル」にはユークの首相、ニカノールが搭乗していた。
セレス海で大規模な戦闘が勃発。ニコライ達は戦線を離脱し、復活したラーズグリーズと合流。そのまま一気にベルか軍、交戦派の軍勢を撃破する。

数ヵ月後、「壁なき世界」と名乗るクーデター組織が奮起。世界は再び戦乱の嵐に飲み込まれる・・・
3 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 22:45:50
―――――第31話 『運命の闘い』


視界にはラーズグリーズ海峡の氷山とスキーズブラズニルの残骸、そして白く光る淡雪がうっすらと見える。だが、それだけではない。正面からはヴィンシスキーのソフィアとそこから放たれた4本のミサイルが見える。

「(世界を洗い流した後、我々ベルカ人が新たな世界を引率する。リノヴァティオとは“再生”の意だ。我々全人類が待ち望んだ全ての再生をもたらしてくれるだろう。)」

ニコライは左に急旋回してミサイルを回避する。自機のすぐ後ろを2本のミサイルが通り抜けてゆく。更に急降下して残りのミサイルも振りほどいた。
だが、ヴィンシスキーのソフィアが側面から機銃掃射を仕掛けてくる。プラズマ弾が水平尾翼に被弾し、その部分から白い煙が漏れている。
「撃たれた、だがまだ飛べる。」

機体を水平に戻し、ヴィンシスキーを探すニコライ。今ちょうど旋回の真っ只中だ、ニコライは速度を上げてミサイルの射程まで距離を詰める。射程に入ると、相手もこちらに機種を向けていた。
「オリオン1、フォックス2!」
ミサイルが真っ直ぐと向かってゆくが、ヴィンシスキーは機体を90度傾けてミサイルを回避した。それもニコライと殆ど同じ感覚で。

「(世界は粛清されなければならない。無益な戦争を繰り返さない為にも、新たな世界でベルカという国は世界の頂点に立ち、全人類の管理者へ成り上がる。)」

収束された戦略レーザーが勢いよく射出される。ニコライは紙一重でレーザーを回避した。
「選ばれなかった人々を全て摘み取る気か?」
「(分かっているだろう、ニコライ。私は何の為に貴様を助け、育ててやった?)」
「・・・」
ニコライはイカロスやエレノアと過ごす充実した毎日を送る内に、過去の悲惨な記憶を忘れかけていた。


それは、今から15年前の事だった。侵攻してくる連合軍からベルカを護るべく、7発の核兵器を起爆して侵入路を遮断した再、いくつかの町を消滅させた。
まだ少年だったニコライは核爆弾により全てを失ってしまった。住み慣れた町、家、学校、友人、そして家族・・・
ニコライは偶然地下鉄に乗り合わせていた為に命拾いをしたが、行くあてのない少年はたちまちストリート・チルドレンと化した。

そして、全てを失った彼は道方でたそがれていた。汚れた人形のように。

だが、彼の運はまだ尽きていなかった。撤退する敗走兵の中に父の友人、ヴィンシスキーが居たのだ。当時大佐だったヴィンシスキーはベルカ騎士の末裔だった友人の息子を引き取り、生きるすべを与え、終戦後は共にユークトバニアへと移住した。真実を隠したまま・・・

ニコライは新兵時代ヴィンシスキーから様々な戦術を教わった。ニコライの飛び方は殆どがヴィンシスキーのものでもある。
しかし、それはヴィンシスキーが世界を消滅させる再の手駒として働かせる為だった。少年だったニコライには理解できなかったし、悪いことだと疑うことも無い。ニコライは成長するにつれ「そんな話は嘘だよな」と認識し、やがて忘れていた。

しかし、それは今目の前で現実となろうとしている。
4 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 22:46:07
―――――第32話 『15年前のデジャヴュ』


「(15年前、同じ任を請け負った傭兵がいたな・・・)」
雪の降るラーズグリーズ海峡上空、ニコライ、イカロス、エレノア、アンドレイ、ストーンは壁無き組織の世界再生計画を阻止する為に最後の戦いに差し掛かった。
「(この計画の全権は私が握っている。リノヴァティオの制御装置もこのソフィアに内蔵している。)」
「ああ、つまりあんたを落とせばいいんだな?」
イカロスが会話に乱入すると同時にヴィンシスキーの機体に向かってミサイルを放った。エレノア達もそれに続く。
ヴィンシスキーはすぐさま方向転換し、戦略レーザーでミサイルを迎撃した。
「避けろッ!」
「くそ!」
一斉に回避行動を取る一同。だが、ストーンのF−22が直撃を受け消滅した。位置についたアンドレイがヴィンシスキーのソフィアに連続でミサイルを放つが、殆ど回避された挙句命中した1発もさほど大きなダメージを与えられていない。

「オーカ・ニエーバから各機、あれは普通のソフィアではない、特別仕様のADF-05ソフィア2だ。機体は再生式電磁シールドでコーティングされており、防御性能を強化している。連続で打撃を与えてシールドを貫通せよ。」

体制を立て直した各自は再び攻撃に移る。
「各機、散開して攻撃せよ。固まっているとレーザーの餌食になるぞ。」
「オリオン4了解、右から行きます」
アンドレイはQAAM発射体制で大きくバンクし、ニコライは正面から挑む。
「俺は上から行く!」
「了解、私は右から行きます。」

ヴィンシスキーもニコライ向かって真っ直ぐと突進してくる。互いのミサイルがすれ違い、互いに回避行動を実施した。
ミサイルをやり過ごした後、ソフィアのプラズマ機銃から大量の光弾がばら撒かれた。ニコライも負けじと機銃で反撃、1連射してすぐに回避に移る。

「最後のミサイル・・・オリオン4フォックス2!」
最後のミサイルを放ったアンドレイ。他のメンバーもそれに続く。
「オリオン2フォックス2!」
「オリオン5、発射!」
イカロス、エレノアもヴィンシスキーの7時方向からミサイルを発射した。だが、ヴィンシスキーもすぐさま回避行動を実施。チャフとフレアーを散布してミサイルの追撃を妨害した。

エレノアとイカロスはしぶとく背後に食らい付き、最後のミサイルを発射。急旋回で回避行動を取るヴィンシスキー。
ニコライは旋回しているソフィアの真後ろを取った。絶好の射撃地点から機銃で銃撃し、数発がソフィアに命中。ニコライは速度を上げて更に距離を詰める。
「(中々やるな。だが、これは避けられまい。)」
ヴィンシスキーは180度ターンを決め、戦略レーザー発射体勢でニコライと至近距離でヘッドオンする。
「(忌まわしき現世界と共に滅びるがいい)」
この距離では回避は不可能。ソフィアのレーザー発射口が赤く輝いた。


ニコライは自分の死が迫るのを感じた。だが、感覚と現実は直結ではない。
青いターミネーターが凄まじい速度で2人の間に割り込んでくる。
5 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 23:47:10
―――――第33話 『未来を紡ぐ翼』


ベルカの核爆弾で全てを失ったニコライが、ユーク空軍に配属されてから間もない頃だった。周りのユーク兵から見ればニコライはただのガキ。周囲からは冷たい視線・・・だが、ヴィンシスキー以外に彼を受け入れた人物がいた。

当初少尉だったエレノアである。彼女も新人ではあったが、周りの将校とは全く違い、暗黙していたニコライに積極的に接していた。必要最低限の会話を除いて全く口を聞かなかったニコライも徐々に人間らしくなってゆく。

彼の最初の任務はオーシアのセント・ヒューレット軍港の襲撃だった。
ニコライは初陣で5機の味方を救い、無事に生還した。彼らが所属する飛行大隊指揮官のオルガ大佐がオーシアイージス艦エクスキャリバーのミサイルに撃墜された再、ほかの将校は隊長機の損失に動揺し、完全に混乱していた。臨時でエレノアが指揮を引き継いだが、彼女はニコライに指揮権を譲った。
何故彼女がニコライに識見を譲ったか今でも謎である。指揮を継いだニコライは見事セント・ヒューレット軍港の機能を停止させ、部隊を掌握、帰還させた。

その作戦を終えた後、新規のオリオン部隊所属となったニコライは次々と戦果を上げ、中佐にまで昇進した。無論、昇進にはヴィンシスキーの手が回っていたのであろうが。
そして数ヵ月後、ユークトバニアのクルイーク要塞でも攻防が始まり、オリオン部隊は増員され、その中にはエレノアの姿があった。これは、ラーズグリーズと出会う前日の出来事である。


「(ベルカを裏切った罪は重いぞ!)」
ニコライは自分の死が迫るのを感じた。だが、青いターミネーターが凄まじい速度で2人の間に割り込んでくる。

「!!!」
「(正気か下僕の小娘が!?)」

エレノアのターミネーターがフルスロットルでヴィンシスキーのソフィアと重なった。

ニコライの真正面で2機が爆炎に飲まれ、彼は爆炎の中を突っ切った。ニコライはすぐさま2機の行方を捜す。
見えるのは先程の爆炎と、煙を吐きながら不安定に飛行するソフィアのみ。
「おい!エレノアっ!どうした返事しろ!」
イカロスの声は無線越しに響くだけ。

「(おのれ・・・あの小娘、私を裏切ったな・・・・)」
エレノアのターミネーターに激突されたヴィンシスキーのソフィアは、大量の煙を吐きながらバンクしている。
「それは・・・どういうことだ・・・」
「(まあいい、教えてやろう。)」
ヴィンシスキーは雑音の中語り始めた。
「(あの娘は私が送り込んだ手先だ。お前をユーク軍の中でエリートに仕立て上げる為の工作員。15年前の核爆発事故で、戦争孤児として腐っていたのを我らが引き取って育て上げていな。・・・だが、結局は役立たず。挙句の果てには裏切り者の貴様を救う為に自ら命を落とした。愚かなものだ。)」

「エレノアが・・・工作員・・・」
ニコライは信じられなかった。いや、信じることは有り得なかった。彼女との交流での思い出の中に偽り等は一切感じられなかった。そしてエレノアは何度も自分を救い、最後の最後までニコライを支え続けていた。
今、ニコライはこみ上げてくる何かを感じた。それは怒りか、憎しみか、恐怖か、悲しみか・・・
6 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 23:47:57
―――――第34話 『THE UNSUNG WAR』


「こちらオーカ・ニエーバ。ソフィアのシールド消滅を確認!全機ソフィアを撃墜せよ。」

未だに白い淡雪が降り続き、そんな静かな空で弾薬不足の青いターミネーターと損傷した金色のソフィアの対決は続く。
「条件は互角だ!てめぇは叩き落す!絶対に!」

エレノアの活躍によりソフィアのシールドが消滅し、今なら破壊できる可能性が格段と上昇したと判断したニコライ達は引き続き交戦した。

「ケツに食らいついた!墜ちろ!」
イカロスのターミネーターがソフィアの背後から機銃を浴びせる。ヴィンシスキーはすぐさま180度ターンを行い、戦略レーザーをイカロス目掛けて発射しようとした。
「援護します大尉!」
アンドレイが側面からソフィアを銃撃し、弾丸がレーザー射出区間を蜂の巣に仕立て上げる。放たれる筈のレーザーはスパークと蒸気を噴出すだけで、何も起こらない。

「(レーザーが機能不能になったか・・・)」
ヴィンシスキーのソフィアがブースター加速で雲を引きながら一気に上昇する。
「逃げるなよ将軍!」
イカロスがすぐさま追撃し、アンドレイ、ニコライもそれに続く。
上昇するソフィアから何かが射出される。見たところチャフ・フレアではなさそうだ。だが、射出された物体が光り、突然爆発した。
「散弾ミサイル!?」
3人はすぐさま回避行動を取った。その直後に各自のコックピットに眩い閃光が差し込む。

「(愚人めが、何の為にここまで抵抗する?)」
ヴィンシスキーは無線越しにニコライに呼びかけた。
「リノヴァティオで世界を洗い流して新たな時代を作る・・・だが、今生きているこの世界を見捨てるのは間違っている。人間に世界を消し去る権利なんてありはしない!」
ニコライはQAAMを発射した。ミサイルが鋭い奇跡でソフィアを追撃し、対するヴィンシスキーも急旋回で回避を試みる。
「射撃開始!」
イカロスが再び別方向から銃撃を加え、ソフィアの左上の主翼を貫いた。

ヴィンシスキーはプラズマキャノンで反撃し、それを急降下して回避するイカロス。氷山低空を飛ぶイカロスをプラズマ弾が追い、氷山を粉々にしている。
「オリオン1、フォックス3!」
ニコライは最後のQAAMを放った。これで全ミサイルを撃ちつくしたことになり、残りは機銃だけだ。

ヴィンシスキーは補充ブースターを使用して機体を強引に上昇させてミサイルを回避する。
「(まだ分からぬかニコライ!今我々は世界を変えるだけの力を持っている!これだけの力があれば、理想的な世界を作り上げられるのだぞ!)」
体勢を立て直したソフィアがプラズマ機銃でニコライのターミネーター向かって弾丸を吐き出すが、ニコライのターミネーターは射線に入る前にソフィアの真下を潜り抜けた。
「アンドレイは右から背後に回りこめ、イカロスは左だ!俺は正面から行く!」
リノヴァティオ作動までもう時間が無い。しかも、ニコライ達のターミネーターの武装はもはや機銃しか残っていない。
7 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 23:48:37
―――――第35話 『ジ・アンサング・ウォー+』


「全ての壁を取り除く!?んなことしたら何もかもが無くなるだろうが!」
側面からイカロスがソフィアに喰らいつき、アンドレイもそれに続いた。ヴィンシスキーのソフィアはゆるやかなバンクで弧を描く。
「逃げるな!」
更に機銃を撃ち続けるイカロスと回避するヴィンシスキー。だんだんソフィアと射線との距離が縮まる。

それに対しヴィンシスキーはエアブレーキを全開にしてイカロスたちを追い抜かせ、ブレーキにより失速したソフィアを補助ブースターで立て直す。

「あ、くっそ!残り120発しかねえ!だが、あいつ1機なら十分だな!」
しかし、そんなイカロスの背後からソフィアに装備された2門のレーザーキャノンから放たれた銃弾が襲い掛かる。
「撃ってきた!散開!」
イカロスとアンドレイが2手に散会する。ヴィンシスキーはイカロスを狙ったので、援護する為にニコライと反転したアンドレイもそれに続く。

ニコライがソフィアを銃撃すると、ヴィンシスキーは急降下を始めた。
「イカロス、アンドレイ!分散して追撃するぞ!近づきすぎるな!」
ニコライ、アンドレイ、イカロスの順で降下する。予想通り低空で彼らの進路を阻むように散弾ミサイルが炸裂した。爆炎の周囲では空間が歪んでいる。

ラーズグリーズ海峡の海面スレスレを飛行しているソフィアを上方から銃撃するニコライ達。銃弾が海面で水しぶきを上げている。
「正確に狙え!」
「了解!」
再び機銃掃射を加えるアンドレイ。
ヴィンシスキーは散弾ミサイルを低空で発射して急上昇する。数秒後、爆発した散弾ミサイルが大きな水柱を作り上げた。

ニコライ達は水柱の中に消えたヴィンシスキーの姿を必死に探すが、全然見当たらない。
「くぞ、あの野郎っどこえ消えた!?」
突然ミサイルアラートが鳴り響く。既にヴィンシスキーは後方に回り込んでいた。
「イカロス、後方だ!すぐ上にいるぞ!」
8 ゼネラル・マーシュ 2006/05/05 Fri 23:49:01
―――――第36話 『知天使の没落』


沈み行く夕日の中、4機の戦闘機による世界の未来を賭けた戦いは継続していた。
「まだだ!」
イカロスは急上昇してソフィアの弾幕とミサイルから逃れようとする。そして、イカロスを追うソフィアをニコライとアンドレイが更に下後方から狙う。
「ミハイル大尉、こんなときどうします?」
アンドレイはそう呟くと引き金を引いた。
「いいぞ、アンドレイ!」
ソフィアの右上の主翼が銃弾によって引き裂かれる。その直後、翼の残骸が降り注ぎアンドレイは残骸の落下コースからすぐさま離脱する。

破片を避けたニコライの視界には、2枚の翼を失ったソフィアとイカロスのターミネーターが見えた。
だが、突如ヴィンシスキーのソフィアがブースターで180度ターン行い、ニコライと再びヘッドオンした。2人は同時に引き金を引き、2つの銃口が同時に光る。

「真正面からか!」
「(よし、来い!)」

互いの銃弾が交差した。プラズマ弾がニコライのターミネーターから垂直翼をもぎ取り、一方でニコライの銃弾がソフィアに命中してブースター等を穴だらけにしてゆく。そして、上昇するニコライのターミネーターと、下降するヴィンシスキーのソフィアが腹を合わせてすれ違った。


「(没落したベルカ騎士の末裔・・・強く育ったな・・・)」

アラームが混入する無線越しにヴィンシスキーの最後の言葉が響いた。被弾したソフィアは空中分解し、煙を吐きながらラーズグリーズ海峡の氷山に墜ちていった。
「終わった・・・」
ソフィアが爆発すると遥か彼方の空で流れ星が見えた。恐らくリノヴァティオが制御不能に陥り、大気圏へ突入したのであろう。

「・・・リノヴァティオの消滅を確認!」

オーカ・ニエーバからリノヴァティオ消滅の伝達が入ると、ニコライ達は集結してから進路変更してユークトバニアを目指した。
9 ゼネラル・マーシュ 2006/05/07 Sun 22:19:20
―――――第37話 『鳩の帰還』


まだ戦争が始まる前のことだった。
「すまん・・・今の俺にはこれぐらいしか出せないんだ・・・」
新人のニコライは上官のエレノアに、布で包んだ物体を差し出した。彼女が布を解くと、中には変わった拳銃が。
「これは、何?」
「・・・ライアー。父の形見だ。」
2人は顔を見合わせる。
「え、貰ってもいいの?お父さんの形見なのに・・・」
ニコライは別にいいと言った。イカロスには酒や食べ物で満足するが、彼女の誕生日に何を差し出せばいいか分からず、自分の一番大切なものを送ったのだ。

その後、イカロスに報告したが、「そりゃぁ駄目っしょ」と言われてしまう。イカロスなら恋人には花束を贈るとニコライに助言した。
だが、ニコライにとってエレノアは恋人や友人ではなく、かけがえの無い特別な人物である。

しかし、そんな彼女も今はもうここには居ない。
何故ミハイルもプシュフィもエレノアも救えなかったのか?自分が間違っていたのか?


だが、突然機体が激しく揺れる。


「くそ、右エンジン停止!」
ダメージを負ったニコライのターミネーター。左垂直翼を失い、機体も穴だらけである。残り燃料も少なく、ユークトバニアまで辿り着けるかどうか分からない。その上、シーにグラード飛行場に着陸できるかどうか分からない。

「んなあ、アンドレイ。俺の目が正しければ、アレは艦隊だよな?」
彼らの前方にはオーシア艦隊が出迎えに来ていた。護衛艦が6隻とその中央に航空母艦が1隻と空中給油機がおり、ニコライ達の進行方向と重なるように進んでいる。
「こちらオーシア第5艦隊旗艦、空母オーディン艦長のフィクサーだ。接近中のユーク軍機へ、話は聞いている、着艦を許可する。」
「こちらユーク空軍オリオン中隊。機体の損傷が激しい、給油するだけの安定飛行は不可、それにこちらは艦載機ではない。空母へは降りられないぞ?」

空母オーディンの甲板では既に緊急着陸用のネットが張られていた。
まさかオーシアの、そして艦載機以外の機体で着艦する羽目になると思ってもいなかったニコライ。
「・・・着陸態勢に入る。」
「大佐。着艦ではなく、墜落の間違えでは?」
必死で機体をコントロールするニコライの元にイカロスから付け加えの言葉が。

だが、着陸用のギアを出した途端もう片方のエンジンが停止してしまう。ニコライは操縦桿を精一杯引くが、高度を維持できずギアが空母の甲板の後部に引っ掛かり、タイヤなどの部品が海面へと落下してゆく。
ニコライのターミネーターは火花を散らしながら甲板を滑り続けた後、ネットに引っ掛かって停止した。武器、燃料を殆ど使い果たしていた為か大事には至らなかった。
10 ゼネラル・マーシュ 2006/05/07 Sun 22:19:37
―――――最終話 『姫君の青い鳩V』


数時間後、ニコライ達はオーシアのノヴェンバー市の総合病院へと向かった。

一同が病院の一室に入ると、ベッドを囲む医師とベッドに横たわるエレノアの姿が。彼女は生きていたのだ。しかし、なにやら空気が重い。
「先生、エレノア大尉の容態は?」
アンドレイが医師に問う。しかし、医師は首を横に振った。

ニコライはエレノアの側に寄り添った。彼女の額を始めとし、複数の場所に包帯が巻かれている。
「・・・ニコライ大佐・・・ご無事でなによりです・・・」
それはどちらかと言うとニコライの台詞と思えるが、彼女がニコライの身を案じていたのは確かだという証拠なのだろう。
「エレノア、スパイだと言うのは本当なのか?」
「・・・はい・・・事実です・・・私は15年前の核爆発で両親を亡くしました。・・・その後、ヴィンシスキー将軍に拾われてユークに・・・。」
すると、エレノアは布に包まれた品物をニコライに差し出した。中には研ぎ澄まされた銃剣とリボルバー式の大型拳銃が包まれていた。
「これは・・・ライアー?何故これを?」
ベルカ騎士の拳、ライアー。これは記憶に薄いニコライの父の形見である。
「・・・忘れましたか?私の誕生日に・・・貴方から頂いたのですよ。・・・ニコライ大佐のとても大事な物なのに・・・嬉しかった。」

医師との会話を終えたアンドレイがエレノアとニコライの会話に参入する。
「大尉、怪我はすぐに治るそうです。直ったら皆でまた飛びましょう。平和な空を・・・」
「有難うアンドレイ、みんな・・・でも、分かっている。もう、遅いみたい・・・」
エレノアはニコライを見つめて力強く発言した。

『人の間に壁があるとすれば、それは“自分の中にある心の壁”。なんです・・・』

そういい残すと、彼女は息を引き取った。ニコライは崩れ落ち、イカロスも一同に背中を向けている。

ふとアンドレイはエレノアの枕元に赤い本があることに気づく。
「これは・・・」


本のタイトルは
『“姫君の青い鳩 〜オリオンポプラのこずえに伝わる物語〜”』

本にしおりが挟まっている。場所は第10章の「帰還」。
「“鳩は魔法の木の実を携えてお姫様の待つ城へと戻ってきました。しかし、城では皆が泣き、王も悲しみの声を上げていました。鳩は、遂に間に合わなかったのです。しかし、鳩は自分がしたことを悔やんだり、がっかりしたりはしませんでした。姫の最後の表情がとても安らかだったからです。最後まで希望を失わず、世界を愛して死んでいったことが分かるような、やさしくおだやかな表情だったからです。”」

アンドレイは物語の中の青い鳩と、今までのエレノアの状況が非常に似ていると感じた。


その後、彼らは今までの事を思い返してみた。オリオン中隊は物語に登場する魔法の木、オリオンポプラと同じ名で、その後オリオン部隊は青鳩部隊となった。そして伝説の悪魔ラーズグリーズとの遭遇・・・これらは全てただの偶然だったのか?

オーシア連邦、ユークトバニア共和国による環太平洋戦争はラーズグリーズ部隊によって終結へと導かれた。そして、同時期にこの戦争を駆け抜けたオリオン部隊もスキーズブラズニル主砲、レーヴァテインによる攻撃で首都、シーニグラードの軍司令部が壊滅し、あらゆる情報が混乱した。結果、ラーズグリーズのように歴史上から痕跡を消し、戦果を謳われぬ部隊となってしまった。

しかし、オリオン部隊は勲章や戦果を上げるために戦ったわけではない。
世界が求める平和で満たされた今、何一つ不満などありはしないのだから。
11 ゼネラル・マーシュ 2006/05/19 Fri 21:52:10
―――――エピローグ 『リザレクション・オブ・ザ・ラーズグリーズ』


オーシア、ノヴェンバー市上空。 環太平洋戦争から1年後。

「こちらマクネアリ管制塔、予定の時刻だ。展示飛行を開始せよ」
ニコライ達の部隊はオーシア空軍M中隊と民間の専門チームと共同で展示飛行を実施していた。
4機編成の民間チームは息の合った飛行で国際スタジアム上空を駆け抜け、ニコライ達とオーシア軍機を引き離してゆく。
「あいつら、何者だ!?」

夕日をバックにして急上昇する4機のF−14。だが、この軌道には明らかに見覚えがある。

展示飛行終了後、イカロスは例のチームに直球で問い合わせた。
「あんたら、何者だ?」


少しの間、沈黙が走る。


『“・・・・・我は、ラーズグリーズなり。”』


THE END
12 アドミラル・マーシュ 2006/06/26 Mon 20:59:34
おまけ

ソフィア/ハールート:神話に登場する天使の名前
スキーズブラズニル:神話に登場する”箱舟”
レーヴァテイン:神話に登場する剣
オリオン:”姫君の青い鳩”・オリオンポプラ
ウェルテス戦車中隊:(架空の)町の名前
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